977 / 1,315
第二十九章
962 答え
しおりを挟む
( リーン )
「 すみません!!急患です!!どうか助けて下さい!! 」
叫んだ男の人はもう一人の人に肩を貸し、殆ど引きずる形でやってきた様だ。
肩を借りてなんとか歩いてきた男の人の方の顔色は真っ青で、意識も混濁しているのか震える唇でブツブツと何かを呟いていた。
一体何事かと周りの人達が悲鳴を上げる中、すぐにソフィア様は駆け寄りそのぐったりしている男の人の状態を観察する。
「 ……【 魔素中毒 】ですね。 」
「 ーーはいっ!こいつ、仲間を助ける為に魔素の固まりに突っ込んで……
どうか助けて下さい! 」
肩を貸していたその人をゆっくりと床に降ろし、祈る様にソフィア様に訴える男の人を見て……周りで見守っていた人達と私達は悲しげに目を伏せた。
【 魔素中毒 】は、魔素を吸い込みすぎた魔力耐性の低い人が稀に起こす症状で、症状が重ければ死に至る非常に恐ろしい現象だ。
仮に命が助かったとしても、後遺症が残り今までの様な戦闘職に復帰できない身体になってしまう事だってある。
仲間を助ける為に無茶をしてしまったという男の人が、死んでしまうかもしれない。
嫌だと思っても何もできない自分にはどうすることもできなくて、ただ下を向く私の前でソフィア様はニコッと笑った。
えっ・・?
驚く私達の前で、ソフィア様は床に横たわる男の人に向かって祈りを捧げ始め、それと同時に男の人の顔色がみるみる良くなっていく。
< 聖妃者の資質 > (ユニーク固有スキル)
< 祈りの聖風 >
魔素によるデバフ効果を弱め、その状態異常を治療する特殊系回復系スキル。
術者の聖属性魔力が高い程その効果は高く、更に回復属性の魔力が高いほどその成功率はUPする。
(発現条件)
一定以上の魔力、魔力操作、聖属性魔力、回復属性魔力を持つこと
一定以下の精神汚染度である事
一定人数以上の状態異常者を治療した経験値を持つ事
そしてーーーー…………
「 あ……あれ? 」
さっきまで重症な魔素中毒だった男の人が何でもない様子で起き上がり、不思議そうに周囲を見回した。
そして更にその直後、泣きながら抱きついてくるもう一人の男の人をこれまた不思議そうに見た後、目の前にいるソフィア様に気づくとギョッ!!と目を剥いて二人は揃ってその場に土下座。
” ありがとうございます! ”
” 聖女様! ”
何度も何度も繰り返し言う男たちに向かって、ソフィア様は優しげに微笑んだ。
「 こちらこそ日々この国を守るために尽力して頂き感謝いたします。
私に戦う術はありませんが、違う形で皆さまのお力になれればと思います。
どうかご無理はせず、これからも共に国を守っていきましょう。 」
二人の男は感極まった様子で「「 ハイッ!! 」」と返事をして、その場を去っていった。
その時、私の身体にピシャーーーーンッ!!!と雷が落ちたかの様な衝撃が走る。
戦い方は一つではない。
こういう戦い方もあるのか!
それはまさに天啓のように私に舞い降りた。
そしてギュッと握った両手の拳を見下ろし、自分が現在持っている回復魔法について考える。
物心ついた頃のおぼろげな記憶。
毎日怪我をして返ってくる母を助けたいと思って突然発動した私の回復魔法。
それが初めて発動した時はお母さんもお父さんも凄く驚いてしまったらしい。
ーーーというのも、回復魔法も使える者達は限られている様で、更にはお父さんもお母さんもそれとは関係ない資質であったためだ。
今まではただ漠然と ” 将来は教会に仕えよう ” と思っていたのだが、それがクッキリと形づいていった。
母の選んだ ” 力 ” とは違い、戦う術を持たぬ私が自分の正義を突き通す方法。
人を助けたいと思う気持ち。
それを叶える方法がこんな身近にあったのだ。
私は ” 聖女 ” 様になりたい!
そう強く願った。
しかし、そう思ったのは私だけではなく、ナッツちゃんも同じだったようで「 私、聖女様になりたい! 」と大声で叫ぶ。
それを隣で聞いてしまった私は、自分の決意がシュンシュン……と凄い勢いでしぼんでいくのを感じた。
ナッツちゃんは凄く可愛くて優しくて回復魔法も上手な私の大事な友達、そして同時に憧れの存在でもある
そんな凄いナッツちゃんが聖女を目指すなら……私はこの夢を諦めるしかない、そう思った。
「 うん!ナッツちゃんにピッタリの夢だね。 」
せっかく形づいた自分の形がぐにゃりと不明瞭に歪んでしまった気がしながら、私は誠意いっぱいの笑顔を見せる。
ナッツちゃんの想いを諦めさせたくない。
だから諦めるのは私でいい。
そう納得して、私達は教会を後にした。
それから何となくモヤッとした日々を過ごしたが、ある日、リーフさんにパンを届けた時に思い切って聖女様に対する想いを打ち明けてみる事にしたのだ。
” 聖女様に憧れている事 ”
” 親友のナッツちゃんがそれを目指しているため諦めるしかない事 ”
重くならない様に軽い感じで話題にしてみたのだが、リーフさんはそれをどう思うんだろう?
ドキドキしながらその答えを待つ。
「 すみません!!急患です!!どうか助けて下さい!! 」
叫んだ男の人はもう一人の人に肩を貸し、殆ど引きずる形でやってきた様だ。
肩を借りてなんとか歩いてきた男の人の方の顔色は真っ青で、意識も混濁しているのか震える唇でブツブツと何かを呟いていた。
一体何事かと周りの人達が悲鳴を上げる中、すぐにソフィア様は駆け寄りそのぐったりしている男の人の状態を観察する。
「 ……【 魔素中毒 】ですね。 」
「 ーーはいっ!こいつ、仲間を助ける為に魔素の固まりに突っ込んで……
どうか助けて下さい! 」
肩を貸していたその人をゆっくりと床に降ろし、祈る様にソフィア様に訴える男の人を見て……周りで見守っていた人達と私達は悲しげに目を伏せた。
【 魔素中毒 】は、魔素を吸い込みすぎた魔力耐性の低い人が稀に起こす症状で、症状が重ければ死に至る非常に恐ろしい現象だ。
仮に命が助かったとしても、後遺症が残り今までの様な戦闘職に復帰できない身体になってしまう事だってある。
仲間を助ける為に無茶をしてしまったという男の人が、死んでしまうかもしれない。
嫌だと思っても何もできない自分にはどうすることもできなくて、ただ下を向く私の前でソフィア様はニコッと笑った。
えっ・・?
驚く私達の前で、ソフィア様は床に横たわる男の人に向かって祈りを捧げ始め、それと同時に男の人の顔色がみるみる良くなっていく。
< 聖妃者の資質 > (ユニーク固有スキル)
< 祈りの聖風 >
魔素によるデバフ効果を弱め、その状態異常を治療する特殊系回復系スキル。
術者の聖属性魔力が高い程その効果は高く、更に回復属性の魔力が高いほどその成功率はUPする。
(発現条件)
一定以上の魔力、魔力操作、聖属性魔力、回復属性魔力を持つこと
一定以下の精神汚染度である事
一定人数以上の状態異常者を治療した経験値を持つ事
そしてーーーー…………
「 あ……あれ? 」
さっきまで重症な魔素中毒だった男の人が何でもない様子で起き上がり、不思議そうに周囲を見回した。
そして更にその直後、泣きながら抱きついてくるもう一人の男の人をこれまた不思議そうに見た後、目の前にいるソフィア様に気づくとギョッ!!と目を剥いて二人は揃ってその場に土下座。
” ありがとうございます! ”
” 聖女様! ”
何度も何度も繰り返し言う男たちに向かって、ソフィア様は優しげに微笑んだ。
「 こちらこそ日々この国を守るために尽力して頂き感謝いたします。
私に戦う術はありませんが、違う形で皆さまのお力になれればと思います。
どうかご無理はせず、これからも共に国を守っていきましょう。 」
二人の男は感極まった様子で「「 ハイッ!! 」」と返事をして、その場を去っていった。
その時、私の身体にピシャーーーーンッ!!!と雷が落ちたかの様な衝撃が走る。
戦い方は一つではない。
こういう戦い方もあるのか!
それはまさに天啓のように私に舞い降りた。
そしてギュッと握った両手の拳を見下ろし、自分が現在持っている回復魔法について考える。
物心ついた頃のおぼろげな記憶。
毎日怪我をして返ってくる母を助けたいと思って突然発動した私の回復魔法。
それが初めて発動した時はお母さんもお父さんも凄く驚いてしまったらしい。
ーーーというのも、回復魔法も使える者達は限られている様で、更にはお父さんもお母さんもそれとは関係ない資質であったためだ。
今まではただ漠然と ” 将来は教会に仕えよう ” と思っていたのだが、それがクッキリと形づいていった。
母の選んだ ” 力 ” とは違い、戦う術を持たぬ私が自分の正義を突き通す方法。
人を助けたいと思う気持ち。
それを叶える方法がこんな身近にあったのだ。
私は ” 聖女 ” 様になりたい!
そう強く願った。
しかし、そう思ったのは私だけではなく、ナッツちゃんも同じだったようで「 私、聖女様になりたい! 」と大声で叫ぶ。
それを隣で聞いてしまった私は、自分の決意がシュンシュン……と凄い勢いでしぼんでいくのを感じた。
ナッツちゃんは凄く可愛くて優しくて回復魔法も上手な私の大事な友達、そして同時に憧れの存在でもある
そんな凄いナッツちゃんが聖女を目指すなら……私はこの夢を諦めるしかない、そう思った。
「 うん!ナッツちゃんにピッタリの夢だね。 」
せっかく形づいた自分の形がぐにゃりと不明瞭に歪んでしまった気がしながら、私は誠意いっぱいの笑顔を見せる。
ナッツちゃんの想いを諦めさせたくない。
だから諦めるのは私でいい。
そう納得して、私達は教会を後にした。
それから何となくモヤッとした日々を過ごしたが、ある日、リーフさんにパンを届けた時に思い切って聖女様に対する想いを打ち明けてみる事にしたのだ。
” 聖女様に憧れている事 ”
” 親友のナッツちゃんがそれを目指しているため諦めるしかない事 ”
重くならない様に軽い感じで話題にしてみたのだが、リーフさんはそれをどう思うんだろう?
ドキドキしながらその答えを待つ。
195
お気に入りに追加
1,993
あなたにおすすめの小説
聖女召喚!……って俺、男〜しかも兵士なんだけど?
バナナ男さん
BL
主人公の現在暮らす世界は化け物に蹂躙された地獄の様な世界であった。
嘘か誠かむかしむかしのお話、世界中を黒い雲が覆い赤い雨が降って生物を化け物に変えたのだとか。
そんな世界で兵士として暮らす大樹は突然見知らぬ場所に召喚され「 世界を救って下さい、聖女様 」と言われるが、俺男〜しかも兵士なんだけど??
異世界の王子様( 最初結構なクズ、後に溺愛、執着 )✕ 強化された平凡兵士( ノンケ、チート )
途中少々無理やり的な表現ありなので注意して下さいませm(。≧Д≦。)m
名前はどうか気にしないで下さい・・
勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話
バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん< 山野 石郎 >改め【 イシ 】
世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中・・俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない< 覗く >という能力だけ。
これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。
無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。
不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜
7ズ
BL
異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。
攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。
そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。
しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。
彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。
どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。
ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。
異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。
果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──?
ーーーーーーーーーーーー
狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛
【 完結 】お嫁取りに行ったのにキラキラ幼馴染にお嫁に取られちゃった俺のお話
バナナ男さん
BL
剣や魔法、モンスターが存在する《 女神様の箱庭 》と呼ばれる世界の中、主人公の< チリル >は、最弱と呼べる男だった。 そんな力なき者には厳しいこの世界では【 嫁取り 】という儀式がある。 そこで男たちはお嫁さんを貰う事ができるのだが……その儀式は非常に過酷なモノ。死人だって出ることもある。 しかし、どうしてもお嫁が欲しいチリルは参加を決めるが、同時にキラキラ幼馴染も参加して……? 完全無欠の美形幼馴染 ✕ 最弱主人公 世界観が独特で、男性にかなり厳しい世界、一夫多妻、卵で人類が産まれるなどなどのぶっ飛び設定がありますのでご注意してくださいm(__)m
奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される。
拍羅
BL
転生したら奴隷商人?!いや、いやそんなことしたらダメでしょ
親の跡を継いで奴隷商人にはなったけど、両親のような残虐な行いはしません!俺は皆んなが行きたい家族の元へと送り出します。
え、新しく来た彼が全く理想の家族像を教えてくれないんだけど…。ちょっと、待ってその貴族の格好した人たち誰でしょうか
※独自の世界線
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる