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第二十九章
962 答え
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( リーン )
「 すみません!!急患です!!どうか助けて下さい!! 」
叫んだ男の人はもう一人の人に肩を貸し、殆ど引きずる形でやってきた様だ。
肩を借りてなんとか歩いてきた男の人の方の顔色は真っ青で、意識も混濁しているのか震える唇でブツブツと何かを呟いていた。
一体何事かと周りの人達が悲鳴を上げる中、すぐにソフィア様は駆け寄りそのぐったりしている男の人の状態を観察する。
「 ……【 魔素中毒 】ですね。 」
「 ーーはいっ!こいつ、仲間を助ける為に魔素の固まりに突っ込んで……
どうか助けて下さい! 」
肩を貸していたその人をゆっくりと床に降ろし、祈る様にソフィア様に訴える男の人を見て……周りで見守っていた人達と私達は悲しげに目を伏せた。
【 魔素中毒 】は、魔素を吸い込みすぎた魔力耐性の低い人が稀に起こす症状で、症状が重ければ死に至る非常に恐ろしい現象だ。
仮に命が助かったとしても、後遺症が残り今までの様な戦闘職に復帰できない身体になってしまう事だってある。
仲間を助ける為に無茶をしてしまったという男の人が、死んでしまうかもしれない。
嫌だと思っても何もできない自分にはどうすることもできなくて、ただ下を向く私の前でソフィア様はニコッと笑った。
えっ・・?
驚く私達の前で、ソフィア様は床に横たわる男の人に向かって祈りを捧げ始め、それと同時に男の人の顔色がみるみる良くなっていく。
< 聖妃者の資質 > (ユニーク固有スキル)
< 祈りの聖風 >
魔素によるデバフ効果を弱め、その状態異常を治療する特殊系回復系スキル。
術者の聖属性魔力が高い程その効果は高く、更に回復属性の魔力が高いほどその成功率はUPする。
(発現条件)
一定以上の魔力、魔力操作、聖属性魔力、回復属性魔力を持つこと
一定以下の精神汚染度である事
一定人数以上の状態異常者を治療した経験値を持つ事
そしてーーーー…………
「 あ……あれ? 」
さっきまで重症な魔素中毒だった男の人が何でもない様子で起き上がり、不思議そうに周囲を見回した。
そして更にその直後、泣きながら抱きついてくるもう一人の男の人をこれまた不思議そうに見た後、目の前にいるソフィア様に気づくとギョッ!!と目を剥いて二人は揃ってその場に土下座。
” ありがとうございます! ”
” 聖女様! ”
何度も何度も繰り返し言う男たちに向かって、ソフィア様は優しげに微笑んだ。
「 こちらこそ日々この国を守るために尽力して頂き感謝いたします。
私に戦う術はありませんが、違う形で皆さまのお力になれればと思います。
どうかご無理はせず、これからも共に国を守っていきましょう。 」
二人の男は感極まった様子で「「 ハイッ!! 」」と返事をして、その場を去っていった。
その時、私の身体にピシャーーーーンッ!!!と雷が落ちたかの様な衝撃が走る。
戦い方は一つではない。
こういう戦い方もあるのか!
それはまさに天啓のように私に舞い降りた。
そしてギュッと握った両手の拳を見下ろし、自分が現在持っている回復魔法について考える。
物心ついた頃のおぼろげな記憶。
毎日怪我をして返ってくる母を助けたいと思って突然発動した私の回復魔法。
それが初めて発動した時はお母さんもお父さんも凄く驚いてしまったらしい。
ーーーというのも、回復魔法も使える者達は限られている様で、更にはお父さんもお母さんもそれとは関係ない資質であったためだ。
今まではただ漠然と ” 将来は教会に仕えよう ” と思っていたのだが、それがクッキリと形づいていった。
母の選んだ ” 力 ” とは違い、戦う術を持たぬ私が自分の正義を突き通す方法。
人を助けたいと思う気持ち。
それを叶える方法がこんな身近にあったのだ。
私は ” 聖女 ” 様になりたい!
そう強く願った。
しかし、そう思ったのは私だけではなく、ナッツちゃんも同じだったようで「 私、聖女様になりたい! 」と大声で叫ぶ。
それを隣で聞いてしまった私は、自分の決意がシュンシュン……と凄い勢いでしぼんでいくのを感じた。
ナッツちゃんは凄く可愛くて優しくて回復魔法も上手な私の大事な友達、そして同時に憧れの存在でもある
そんな凄いナッツちゃんが聖女を目指すなら……私はこの夢を諦めるしかない、そう思った。
「 うん!ナッツちゃんにピッタリの夢だね。 」
せっかく形づいた自分の形がぐにゃりと不明瞭に歪んでしまった気がしながら、私は誠意いっぱいの笑顔を見せる。
ナッツちゃんの想いを諦めさせたくない。
だから諦めるのは私でいい。
そう納得して、私達は教会を後にした。
それから何となくモヤッとした日々を過ごしたが、ある日、リーフさんにパンを届けた時に思い切って聖女様に対する想いを打ち明けてみる事にしたのだ。
” 聖女様に憧れている事 ”
” 親友のナッツちゃんがそれを目指しているため諦めるしかない事 ”
重くならない様に軽い感じで話題にしてみたのだが、リーフさんはそれをどう思うんだろう?
ドキドキしながらその答えを待つ。
「 すみません!!急患です!!どうか助けて下さい!! 」
叫んだ男の人はもう一人の人に肩を貸し、殆ど引きずる形でやってきた様だ。
肩を借りてなんとか歩いてきた男の人の方の顔色は真っ青で、意識も混濁しているのか震える唇でブツブツと何かを呟いていた。
一体何事かと周りの人達が悲鳴を上げる中、すぐにソフィア様は駆け寄りそのぐったりしている男の人の状態を観察する。
「 ……【 魔素中毒 】ですね。 」
「 ーーはいっ!こいつ、仲間を助ける為に魔素の固まりに突っ込んで……
どうか助けて下さい! 」
肩を貸していたその人をゆっくりと床に降ろし、祈る様にソフィア様に訴える男の人を見て……周りで見守っていた人達と私達は悲しげに目を伏せた。
【 魔素中毒 】は、魔素を吸い込みすぎた魔力耐性の低い人が稀に起こす症状で、症状が重ければ死に至る非常に恐ろしい現象だ。
仮に命が助かったとしても、後遺症が残り今までの様な戦闘職に復帰できない身体になってしまう事だってある。
仲間を助ける為に無茶をしてしまったという男の人が、死んでしまうかもしれない。
嫌だと思っても何もできない自分にはどうすることもできなくて、ただ下を向く私の前でソフィア様はニコッと笑った。
えっ・・?
驚く私達の前で、ソフィア様は床に横たわる男の人に向かって祈りを捧げ始め、それと同時に男の人の顔色がみるみる良くなっていく。
< 聖妃者の資質 > (ユニーク固有スキル)
< 祈りの聖風 >
魔素によるデバフ効果を弱め、その状態異常を治療する特殊系回復系スキル。
術者の聖属性魔力が高い程その効果は高く、更に回復属性の魔力が高いほどその成功率はUPする。
(発現条件)
一定以上の魔力、魔力操作、聖属性魔力、回復属性魔力を持つこと
一定以下の精神汚染度である事
一定人数以上の状態異常者を治療した経験値を持つ事
そしてーーーー…………
「 あ……あれ? 」
さっきまで重症な魔素中毒だった男の人が何でもない様子で起き上がり、不思議そうに周囲を見回した。
そして更にその直後、泣きながら抱きついてくるもう一人の男の人をこれまた不思議そうに見た後、目の前にいるソフィア様に気づくとギョッ!!と目を剥いて二人は揃ってその場に土下座。
” ありがとうございます! ”
” 聖女様! ”
何度も何度も繰り返し言う男たちに向かって、ソフィア様は優しげに微笑んだ。
「 こちらこそ日々この国を守るために尽力して頂き感謝いたします。
私に戦う術はありませんが、違う形で皆さまのお力になれればと思います。
どうかご無理はせず、これからも共に国を守っていきましょう。 」
二人の男は感極まった様子で「「 ハイッ!! 」」と返事をして、その場を去っていった。
その時、私の身体にピシャーーーーンッ!!!と雷が落ちたかの様な衝撃が走る。
戦い方は一つではない。
こういう戦い方もあるのか!
それはまさに天啓のように私に舞い降りた。
そしてギュッと握った両手の拳を見下ろし、自分が現在持っている回復魔法について考える。
物心ついた頃のおぼろげな記憶。
毎日怪我をして返ってくる母を助けたいと思って突然発動した私の回復魔法。
それが初めて発動した時はお母さんもお父さんも凄く驚いてしまったらしい。
ーーーというのも、回復魔法も使える者達は限られている様で、更にはお父さんもお母さんもそれとは関係ない資質であったためだ。
今まではただ漠然と ” 将来は教会に仕えよう ” と思っていたのだが、それがクッキリと形づいていった。
母の選んだ ” 力 ” とは違い、戦う術を持たぬ私が自分の正義を突き通す方法。
人を助けたいと思う気持ち。
それを叶える方法がこんな身近にあったのだ。
私は ” 聖女 ” 様になりたい!
そう強く願った。
しかし、そう思ったのは私だけではなく、ナッツちゃんも同じだったようで「 私、聖女様になりたい! 」と大声で叫ぶ。
それを隣で聞いてしまった私は、自分の決意がシュンシュン……と凄い勢いでしぼんでいくのを感じた。
ナッツちゃんは凄く可愛くて優しくて回復魔法も上手な私の大事な友達、そして同時に憧れの存在でもある
そんな凄いナッツちゃんが聖女を目指すなら……私はこの夢を諦めるしかない、そう思った。
「 うん!ナッツちゃんにピッタリの夢だね。 」
せっかく形づいた自分の形がぐにゃりと不明瞭に歪んでしまった気がしながら、私は誠意いっぱいの笑顔を見せる。
ナッツちゃんの想いを諦めさせたくない。
だから諦めるのは私でいい。
そう納得して、私達は教会を後にした。
それから何となくモヤッとした日々を過ごしたが、ある日、リーフさんにパンを届けた時に思い切って聖女様に対する想いを打ち明けてみる事にしたのだ。
” 聖女様に憧れている事 ”
” 親友のナッツちゃんがそれを目指しているため諦めるしかない事 ”
重くならない様に軽い感じで話題にしてみたのだが、リーフさんはそれをどう思うんだろう?
ドキドキしながらその答えを待つ。
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