971 / 1,370
第二十九章
956 人ではないモノ達
しおりを挟む
( リーン )
「 ニナさん、ナッツちゃん、リーンちゃんもどうぞ~。 」
「 あ……ありがとうございます! 」
私達に気づいたルルちゃんが暖かいお茶が入ったコップを渡してくれて、御礼を告げてそれを受け取った。
そしてフワッと香るフルーツの匂いがするお茶を一口飲めば、スッ~……と不安な気持ちが落ち着いていく。
それは私達だけではなく他の人達も同じだったようで、お茶を飲んではホッと息を吐き出していた。
そうして落ち着きを取り戻して少し経った頃、今度はバタバタと沢山の教会の神官見習いの人達が駆け込んできて、突然私達に向かって説明を始める。
「 皆さん!落ち着いて聞いて下さい!
先程これより大規模なモンスター行進が始まるとの連絡が教会へ入りました! 」
それに対し、再度ざわつきだした街の人達。
私とナッツちゃんはゴクリとツバを飲み込み、神官見習いさん達の話の続きを黙って聞いた。
「 そのため、これからここにも沢山のけが人達が収容されると思われます!
我々が治療を行いますので、どうかパニックにならずに待機をお願いします。 」
「 更に正体不明のモンスターが一匹出現予定との事ですが、守備隊の方々が必ず守ってくれます。
信じて待ちましょう! 」
神官見習いさん達の言葉に周りはざわつきを強め、中には泣き出してしまう人達もいたが、神官見習いさん達はテキパキとけが人を治療するための準備に取り掛かる。
「 お父さん…… 」
私はそれを見守りながらギュッとコップを強く握り、お父さんの身を案じるとマリンさんがお茶を飲みながらコチラへとやってきた。
「 大変な事になったねぇ。 」
「 ……本当にね。
正体不明のモンスターなんて……もしかして今までのモンスター増加はそいつが原因だったのかしら? 」
マリンさんの話にニナさんがそう答えると、マリンさんはお茶をグイッ!と一気に飲み干す。
「 さぁてね?ーーーまぁ、私達は私達にできる事をするしかないさね。
幸いここには炊き出し用の道具や緊急時のアイテムがたんまりあるから、色々できそうだ。
あとは皆がパニックを起こさないといいけどね。 」
マリンさんは一軒家よりも大きい巨大倉庫を指差しながら困った様に笑い、ニナさんも同様の笑みを浮かべた。
自分にできること……。
マリンさんの言葉を聞いて、私はなんとなく自身の右手首に巻かれている赤色のミサンガ風ブレスレットを見下ろすと…………それをプレゼントしてくれたリーフさんの事を思い出す。
リーフさんは今年の4月からこのグリモアにあるライトノア学院に通い出した学院生で、かつ冒険者もしているとても忙しい人だ。
そんなリーフさんを言葉で表そうとしても私にはそれが凄く難しくて、敢えて一言で表現すれば ” 不思議な人 ”
リーフさんは自分には見えない何かが見えているのではないか?と思う事がしばしばあった。
そんなリーフさんとの最初の出会いはとんでもなく強烈で、今でも目を閉じるとその時の感動や興奮が昨日の事の様に蘇る。
ちょうどこの頃は街の異変によって一番皆が元気がない時で、少しずつ街のライフラインは崩れていき、誰もが不安を抱えていた。
” あっちで輸送中の馬車がモンスターに襲われた! ”
” 飲水の経路がまた一つ駄目になってしまった。 ”
そんな話が毎日の様に街中に飛び交い ” どうしたのか? ” と尋ねても、私達の様な子供には不安を感じない様に ” 大丈夫だ ” としか教えてくれない。
しかし改善可能なトラブルから不可能なモノが増えていくと、街はどんどんと目に見えて暗くなっていった。
そして更にそれに追い打ちを掛けたのは、沢山街に移住してきた大人たちだ。
” 恐喝 ”
” 暴言 ”
” 暴力 ”
何でもありのそいつ等に話しなど通じない。
そのためそいつらが来たら、直ぐに女の人や子供たちを町の人達総出で隠すようにし、その他の人達はただただその嵐を耐え抜く日々が始まった。
文句を言いたくとも言えば何倍もの暴力となって返ってくるし、モンスターに命を脅かされている今、そんな奴らでも私達は頼らなければならなかったからだ。
耐えて耐えて・・
我慢我慢・・・
その悪い大人達は、そんな街の人達の様子が楽しくて楽しくて堪らない。
だから大人達が必死に隠そうとしている子供に偶然出くわした時など、わざと転ばしたり水を掛けたりと、焦って青ざめる大人たちを見てはゲラゲラと笑っていたそうだ。
イシュル神の怒りすら恐れぬそいつ等はきっと人じゃないんだ。
子供心にそう悟り、できるだけ見つからない様にしていた、ある日の事。
腰ほどまでの長さのサラサラヘアーが自慢だったナッツちゃんが、突然おかっぱ頭になってやってきたため、ギョッ!と目を剥いてしまった。
「 ナ・・ナッツちゃん、突然どうしたの・・?
この間までもっと長くするんだって言ってたのに・・ 」
驚いてそう尋ねた私に、ナッツちゃんは胸を張って誇らしげに答える。
「 ニナさん、ナッツちゃん、リーンちゃんもどうぞ~。 」
「 あ……ありがとうございます! 」
私達に気づいたルルちゃんが暖かいお茶が入ったコップを渡してくれて、御礼を告げてそれを受け取った。
そしてフワッと香るフルーツの匂いがするお茶を一口飲めば、スッ~……と不安な気持ちが落ち着いていく。
それは私達だけではなく他の人達も同じだったようで、お茶を飲んではホッと息を吐き出していた。
そうして落ち着きを取り戻して少し経った頃、今度はバタバタと沢山の教会の神官見習いの人達が駆け込んできて、突然私達に向かって説明を始める。
「 皆さん!落ち着いて聞いて下さい!
先程これより大規模なモンスター行進が始まるとの連絡が教会へ入りました! 」
それに対し、再度ざわつきだした街の人達。
私とナッツちゃんはゴクリとツバを飲み込み、神官見習いさん達の話の続きを黙って聞いた。
「 そのため、これからここにも沢山のけが人達が収容されると思われます!
我々が治療を行いますので、どうかパニックにならずに待機をお願いします。 」
「 更に正体不明のモンスターが一匹出現予定との事ですが、守備隊の方々が必ず守ってくれます。
信じて待ちましょう! 」
神官見習いさん達の言葉に周りはざわつきを強め、中には泣き出してしまう人達もいたが、神官見習いさん達はテキパキとけが人を治療するための準備に取り掛かる。
「 お父さん…… 」
私はそれを見守りながらギュッとコップを強く握り、お父さんの身を案じるとマリンさんがお茶を飲みながらコチラへとやってきた。
「 大変な事になったねぇ。 」
「 ……本当にね。
正体不明のモンスターなんて……もしかして今までのモンスター増加はそいつが原因だったのかしら? 」
マリンさんの話にニナさんがそう答えると、マリンさんはお茶をグイッ!と一気に飲み干す。
「 さぁてね?ーーーまぁ、私達は私達にできる事をするしかないさね。
幸いここには炊き出し用の道具や緊急時のアイテムがたんまりあるから、色々できそうだ。
あとは皆がパニックを起こさないといいけどね。 」
マリンさんは一軒家よりも大きい巨大倉庫を指差しながら困った様に笑い、ニナさんも同様の笑みを浮かべた。
自分にできること……。
マリンさんの言葉を聞いて、私はなんとなく自身の右手首に巻かれている赤色のミサンガ風ブレスレットを見下ろすと…………それをプレゼントしてくれたリーフさんの事を思い出す。
リーフさんは今年の4月からこのグリモアにあるライトノア学院に通い出した学院生で、かつ冒険者もしているとても忙しい人だ。
そんなリーフさんを言葉で表そうとしても私にはそれが凄く難しくて、敢えて一言で表現すれば ” 不思議な人 ”
リーフさんは自分には見えない何かが見えているのではないか?と思う事がしばしばあった。
そんなリーフさんとの最初の出会いはとんでもなく強烈で、今でも目を閉じるとその時の感動や興奮が昨日の事の様に蘇る。
ちょうどこの頃は街の異変によって一番皆が元気がない時で、少しずつ街のライフラインは崩れていき、誰もが不安を抱えていた。
” あっちで輸送中の馬車がモンスターに襲われた! ”
” 飲水の経路がまた一つ駄目になってしまった。 ”
そんな話が毎日の様に街中に飛び交い ” どうしたのか? ” と尋ねても、私達の様な子供には不安を感じない様に ” 大丈夫だ ” としか教えてくれない。
しかし改善可能なトラブルから不可能なモノが増えていくと、街はどんどんと目に見えて暗くなっていった。
そして更にそれに追い打ちを掛けたのは、沢山街に移住してきた大人たちだ。
” 恐喝 ”
” 暴言 ”
” 暴力 ”
何でもありのそいつ等に話しなど通じない。
そのためそいつらが来たら、直ぐに女の人や子供たちを町の人達総出で隠すようにし、その他の人達はただただその嵐を耐え抜く日々が始まった。
文句を言いたくとも言えば何倍もの暴力となって返ってくるし、モンスターに命を脅かされている今、そんな奴らでも私達は頼らなければならなかったからだ。
耐えて耐えて・・
我慢我慢・・・
その悪い大人達は、そんな街の人達の様子が楽しくて楽しくて堪らない。
だから大人達が必死に隠そうとしている子供に偶然出くわした時など、わざと転ばしたり水を掛けたりと、焦って青ざめる大人たちを見てはゲラゲラと笑っていたそうだ。
イシュル神の怒りすら恐れぬそいつ等はきっと人じゃないんだ。
子供心にそう悟り、できるだけ見つからない様にしていた、ある日の事。
腰ほどまでの長さのサラサラヘアーが自慢だったナッツちゃんが、突然おかっぱ頭になってやってきたため、ギョッ!と目を剥いてしまった。
「 ナ・・ナッツちゃん、突然どうしたの・・?
この間までもっと長くするんだって言ってたのに・・ 」
驚いてそう尋ねた私に、ナッツちゃんは胸を張って誇らしげに答える。
226
お気に入りに追加
2,014
あなたにおすすめの小説
モブらしいので目立たないよう逃げ続けます
餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。
まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。
モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。
「アルウィン、君が好きだ」
「え、お断りします」
「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」
目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。
ざまぁ要素あるかも………しれませんね
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
【完結】竜を愛する悪役令嬢と、転生従者の謀りゴト
しゃもじ
BL
貴族の間で婚約破棄が流行し、歪みに歪んだサンドレア王国。
悪役令嬢のもとに従者として転生した主人公・グレイの目的は、前世で成し遂げられなかったゲームクリア=大陸統治をし、敬愛するメルロロッティ嬢の幸せを成就すること。
前世の記憶『予知』のもと、目的達成するためにグレイは奔走するが、メルロロッティ嬢の婚約破棄後少しずつ歴史は歪曲し、グレイの予知からズレはじめる…
婚約破棄に悪役令嬢、股が緩めの転生主人公、やんわりBがLしてる。
そんな物語です。
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?
麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる