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第二十八章
943 邪神の子との出会い
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( ジュワン )
そうして私は王宮騎士からライトノア学院の教員として送り込まれ、” 正しい ” 知識を貴族の学生達に植え付けていく。
しかしこの学院の学院長は流石にあのアーサーの支柱の一人と言われているだけあって手強いし、またその志に賛同している教員達も揃いも揃って面倒な奴らが多かった。
中々上手くいかぬ事に多少苛つきを感じたが、それでも少しづつ少しずつ・・・
貴族の生徒達に正しい知識を染み込ませていくと、彼らは徐々に本来の姿に戻っていった。
学院が掲げる ” 平等 ” など邪教であり、高貴なる貴族の同志達のため、平民はその身を犠牲にするのが当たり前。
下の身分の者達が上の身分の者達に従う事が世の摂理である。
順調に正しい思想で学院内が浄化されつつあった、その時ーーー
カール様より邪神の子がライトノア学院を受けようとしているとの連絡が入った。
” 邪神の子は遊んでばかりで実力は落第点 ”
そう聞いていたので、まさか本当にこのNo.1中学院を受けようとするなど思いもしなかったが・・頭も相当悪いのだと思われる。
ため息をつきながら、私はその日を待った。
そうして邪神がライトノア学院を受ける日がとうとうやってきてーーー私は遠目からその子供を見て、思わずクラクラと目眩を起こしてしまう。
何なのだ??あのとてつもなく不器量な子供は・・・??
平民の代表の様な茶色い髪に緑の瞳。
低くてみっともない鼻に汚らしいそばかす。
特徴の一切ない顔に平均的な体格・・
本当にこれが女神さえも嫉妬する程美しいメルンブルク家の血を引いた子供なのか??
私はあまりの出来事に痛みだした頭を抱え、続けてその悲しい事実を嘆いた。
神よ・・何故あの様な慈愛に溢れ、献身的に世を救おうとしているメルンブルク家にこの様な過酷な試練をお与えになったのでしょうか!
そう神に問うたが、返ってくるのは ” 戦え ” という答えだけ。
神は試練を乗り越える事をお望みだ。
私はふてぶてしく学院内に侵入してくる邪神の子を睨みながら、フンッと鼻で笑い、エドワード様に忠誠を誓いし騎士として、必ずやあの邪神の子はこの学院に入れさせるものかと固く誓った。
恐らくは放っておいても聞いていたレベルでは到底入れはしないだろうが、せっかくの邪神の子を消し去るチャンス・・絶対にそれを逃さない。
私は睨みつけていた邪神の子から視線を外し、その場を離れた。
試験でまず行われるのは筆記のテスト。
これは身分によって教室が分けられ、更に高位貴族は席の場所が予め決められているため、私は邪神の子が座る予定の椅子に、ちょっとした細工を施しておいた。
それを思い出し、思わずクックックッと笑いを漏らす。
椅子に貼り付けておいた小さな紙、それは最高レベル10の< 封魔術紙 >だ。
< 封魔術紙 >
魔法を一つ封じ込め、それを自在に使う事のできる魔道具。
魔道具の制作者のレベルにより封印できる魔法のレベルが違い、最高レベルを10としてレベル1~10まで存在している。
私も初めて見る最高ランク10の< 封魔術紙 >
これはカール様より授けられたモノで、中には王都でも指折りの精神干渉系の魔法に長けた者達数十人と、大賢者と名高い王都の高学院【 セントルイス学院 】の名誉講師をしている< フローズ >様が、合同で作り上げた最大級の精神系攻撃魔法が封じ込められていた。
これは解析系の上級資質持ちの者でも解読不可の強力な魔法で、一切の証拠も残さず掛けられた者の精神を蝕みやがて死に至らしめるという、まさに魔法の叡智とも言える芸術品だ。
これに掛かれば、邪神の子は次の試験の最中に発狂し、死に至る事だろう!
その場面を妄想し、込み上げる愉快のまま声を出して笑う。
もちろん通常の高位貴族なら、先に入った専用護衛の者が主人の座る椅子に異常がないか隈なく調べるため、受験の際に使う椅子に仕掛けるなど不可能であったはずはずだがーーー
なんと邪神の子は専属護衛に、街で評判の呪いの化け物を置いているというのだから、笑いは止まらなかった。
街で母親に捨てられた呪いつき!
そんな役立たずを置いてどうするつもりなんだか!
思う存分笑ってやった後、そのまま大人しく次の試験まで待つ。
そうしてやっと次の剣体術の試験が始まり、私は試験官の一人としてその場に立った。
とりあえずは貴族の受験生達には花を持たせ、逆にそれ以外の受験生達には不利になるよう立ち回ていたのだがーーー流石はフランとその周りを固める教員達、それに惑わされる事なく正当な点数をつけていく。
ーーーくそっ!!
それにイライラしていたのが悪かったのか、あまりにもうっとうしい動きを見せる汚い獣人のガキを思いっきりふっ飛ばしてしまった。
するとそのせいで試験官はクビとなってしまったわけだが、寧ろその方が邪神の子が発狂するタイミングをじっくり眺めることができるため、願ったり叶ったりの結果となったわけだ。
もうそろそろ症状が現れるはず・・!
ワクワクしながら、その後の筋書きを頭の中に思い浮かべた。
邪神の子が発狂したら、まずは他の高位貴族の安全を図りつつ何人か平民のガキを邪神の餌食にする。
そしてその後、高位貴族の子息やご令嬢達に危険が及ぶと判断した私が邪神の子の息の根を止めた所でエンドロール。
そんな簡単な事で、私は貴族の子供たちを助けたヒーローになるというわけだ。
必死に笑いが漏れぬよう細心の注意をしながら、邪神の子を見ていたのだーーーが・・?
もう結構な時間が経っているにも関わらず邪神の子に何ら変化は見られない。
これには大きく首を傾げた。
そうして私は王宮騎士からライトノア学院の教員として送り込まれ、” 正しい ” 知識を貴族の学生達に植え付けていく。
しかしこの学院の学院長は流石にあのアーサーの支柱の一人と言われているだけあって手強いし、またその志に賛同している教員達も揃いも揃って面倒な奴らが多かった。
中々上手くいかぬ事に多少苛つきを感じたが、それでも少しづつ少しずつ・・・
貴族の生徒達に正しい知識を染み込ませていくと、彼らは徐々に本来の姿に戻っていった。
学院が掲げる ” 平等 ” など邪教であり、高貴なる貴族の同志達のため、平民はその身を犠牲にするのが当たり前。
下の身分の者達が上の身分の者達に従う事が世の摂理である。
順調に正しい思想で学院内が浄化されつつあった、その時ーーー
カール様より邪神の子がライトノア学院を受けようとしているとの連絡が入った。
” 邪神の子は遊んでばかりで実力は落第点 ”
そう聞いていたので、まさか本当にこのNo.1中学院を受けようとするなど思いもしなかったが・・頭も相当悪いのだと思われる。
ため息をつきながら、私はその日を待った。
そうして邪神がライトノア学院を受ける日がとうとうやってきてーーー私は遠目からその子供を見て、思わずクラクラと目眩を起こしてしまう。
何なのだ??あのとてつもなく不器量な子供は・・・??
平民の代表の様な茶色い髪に緑の瞳。
低くてみっともない鼻に汚らしいそばかす。
特徴の一切ない顔に平均的な体格・・
本当にこれが女神さえも嫉妬する程美しいメルンブルク家の血を引いた子供なのか??
私はあまりの出来事に痛みだした頭を抱え、続けてその悲しい事実を嘆いた。
神よ・・何故あの様な慈愛に溢れ、献身的に世を救おうとしているメルンブルク家にこの様な過酷な試練をお与えになったのでしょうか!
そう神に問うたが、返ってくるのは ” 戦え ” という答えだけ。
神は試練を乗り越える事をお望みだ。
私はふてぶてしく学院内に侵入してくる邪神の子を睨みながら、フンッと鼻で笑い、エドワード様に忠誠を誓いし騎士として、必ずやあの邪神の子はこの学院に入れさせるものかと固く誓った。
恐らくは放っておいても聞いていたレベルでは到底入れはしないだろうが、せっかくの邪神の子を消し去るチャンス・・絶対にそれを逃さない。
私は睨みつけていた邪神の子から視線を外し、その場を離れた。
試験でまず行われるのは筆記のテスト。
これは身分によって教室が分けられ、更に高位貴族は席の場所が予め決められているため、私は邪神の子が座る予定の椅子に、ちょっとした細工を施しておいた。
それを思い出し、思わずクックックッと笑いを漏らす。
椅子に貼り付けておいた小さな紙、それは最高レベル10の< 封魔術紙 >だ。
< 封魔術紙 >
魔法を一つ封じ込め、それを自在に使う事のできる魔道具。
魔道具の制作者のレベルにより封印できる魔法のレベルが違い、最高レベルを10としてレベル1~10まで存在している。
私も初めて見る最高ランク10の< 封魔術紙 >
これはカール様より授けられたモノで、中には王都でも指折りの精神干渉系の魔法に長けた者達数十人と、大賢者と名高い王都の高学院【 セントルイス学院 】の名誉講師をしている< フローズ >様が、合同で作り上げた最大級の精神系攻撃魔法が封じ込められていた。
これは解析系の上級資質持ちの者でも解読不可の強力な魔法で、一切の証拠も残さず掛けられた者の精神を蝕みやがて死に至らしめるという、まさに魔法の叡智とも言える芸術品だ。
これに掛かれば、邪神の子は次の試験の最中に発狂し、死に至る事だろう!
その場面を妄想し、込み上げる愉快のまま声を出して笑う。
もちろん通常の高位貴族なら、先に入った専用護衛の者が主人の座る椅子に異常がないか隈なく調べるため、受験の際に使う椅子に仕掛けるなど不可能であったはずはずだがーーー
なんと邪神の子は専属護衛に、街で評判の呪いの化け物を置いているというのだから、笑いは止まらなかった。
街で母親に捨てられた呪いつき!
そんな役立たずを置いてどうするつもりなんだか!
思う存分笑ってやった後、そのまま大人しく次の試験まで待つ。
そうしてやっと次の剣体術の試験が始まり、私は試験官の一人としてその場に立った。
とりあえずは貴族の受験生達には花を持たせ、逆にそれ以外の受験生達には不利になるよう立ち回ていたのだがーーー流石はフランとその周りを固める教員達、それに惑わされる事なく正当な点数をつけていく。
ーーーくそっ!!
それにイライラしていたのが悪かったのか、あまりにもうっとうしい動きを見せる汚い獣人のガキを思いっきりふっ飛ばしてしまった。
するとそのせいで試験官はクビとなってしまったわけだが、寧ろその方が邪神の子が発狂するタイミングをじっくり眺めることができるため、願ったり叶ったりの結果となったわけだ。
もうそろそろ症状が現れるはず・・!
ワクワクしながら、その後の筋書きを頭の中に思い浮かべた。
邪神の子が発狂したら、まずは他の高位貴族の安全を図りつつ何人か平民のガキを邪神の餌食にする。
そしてその後、高位貴族の子息やご令嬢達に危険が及ぶと判断した私が邪神の子の息の根を止めた所でエンドロール。
そんな簡単な事で、私は貴族の子供たちを助けたヒーローになるというわけだ。
必死に笑いが漏れぬよう細心の注意をしながら、邪神の子を見ていたのだーーーが・・?
もう結構な時間が経っているにも関わらず邪神の子に何ら変化は見られない。
これには大きく首を傾げた。
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