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第二十七章

928 適正と……

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( リーフ )

リーフが案内してくれた場所、そこには小さいながらも綺麗な泉があって、周りには< 星降り茸 >が沢山生えている場所であった。


< 星降り茸 >

魔素を体内に取り込み、自ら光り輝くその姿はまるで星の様。

更に光る胞子が飛ぶ際は星が一斉に降ってきた様に見える事からこの名前がついた。

比較的魔素が濃い場所の近くに生える珍しいキノコ。



「 おおお~……すげぇ綺麗な場所だな。 」


「 ……綺麗……綺麗……。 」


キノコが淡い光りを発しているため、薄暗い森の中が凄く幻想的な景色に見えて、レイドと二人で感動を口に出す。

すると、リーフはレオンの多次元ボックスからパンを受け取り、それをメル達に渡しながらフッフッフ~!と得意げに笑った。


「 実はあげ玉と黒みつが教えてくれたんだよね~。

二人とも将来は森の案内人もありか……。 」


ブツブツと「 いやいや、まだ将来は……。 」「 ……でも時間の融通はきくし……なかなかホワイトな仕事……? 」と呟きながら、座り込んだレオンの上にポスンッと座るリーフ。

そのままパンに齧りつき、今度はパンに夢中になった様だ。

パクパクと食べながら、合間合間に後ろのレオンにも食べさせる。


メルとレイドもリーフに貰った大ボリュームのソーセージパンに齧り付き、その美味しさに唸り声を上げると、バクバクとそれを食べ始めた。


パリパリのソーセージは齧る度に、肉の旨味がギュッと詰まった肉汁が溢れ、パンからは香ばしいバターの香りと、ピリッと刺激があるマスタードのソース!

それが三味一体となって口を襲ってくる。


美味しい!!


「 これ、めちゃくちゃ美味いな!

いつもランチの時に持ってくるパン屋のか? 」


レイドがジ──ン……とその旨味に痺れながら尋ねると、リーフはニヒヒ~と嬉しそうに笑った。


「 そうだよ~。

” りんごの隠れ屋 ” の新作< トロロンソーセージパン >!

このトロロン・ピックのソーセージは油が多くてジューシーだから本当に絶品なんだ。 」


ね~?と言いながら、リーフはレオンの口にそのパンをキュムっと突っ込む。

するとレオンはそれをむしゃむしゃを食べながらコクリと頷いた。


その行動を見ながら、慣れたとは言えレイドと二人、顔を合わせ少々微妙な顔をしてしまう。

いつもいつもリーフとレオンはこうして一つの食べ物を食べさせ合うが、これは獣人からすると、鳥型獣人の求愛行動、もしくは愛情表現なのだが……人族はこれを ” 残飯処理 ” という屈辱的行為としてやるのだという。

つくづく種族によって価値観というものは異なるのだなと、しみじみしてしまった。


「 リーフはこの店のパン屋がお気に入りなんだな。 」


レイドは最後の一口をパクっと口に放り込んでそう言うと、リーフはうんうんと何度も頷き、そのパン屋との出会いや最近の出来事を話し出す。

なんとリーフはいつの間にか冒険者になっていて、更には街で ” 救世主様 ” と呼ばれているそうだ。


リーフは本当に凄い。

メルから見ればパーフェクトな人間だ。


「 ……リーフは……理想の自分見つけられた……? 」


気づけばそんな事を聞いていて、リーフはキョトンとした顔を見せた。


きっと凄いリーフはとっくに自分の理想を見つけていて、既に進む道をまっすぐ走っているに違いない。

メルは純粋にそれが羨ましかった。

一体どうしたらそうなれるのか……それが知りたかったのだ。


しかし……


「 全然見つからないなぁ~。

俺、トリ頭のイノシシ男だから一生走っても見つからなかったし……多分目的を忘れちゃうんだ、走っちゃうと。

三歩どころか一歩で駄目かもしれない……。 」


……だそうだ。


しかもその後は、ハハッ!と笑いながら「 あとは運! 」と身も蓋もないことまで言う。


「 見つからなかったって……まだ12年しか生きてねぇ~じゃん。 」


レイドが、怪訝そうな顔で突っ込むとリーフは、まるで今気づいた!と言わんばかりの顔をした。


「 そうだった、そうだった。

え、えっと~……そうだ!メルちゃんは見つかったの? 」


慌ててごまかす様にリーフは聞いてきたので、少々不思議に思ったが、メルは聞かれた事について改めて考えてみる。


” 自分の理想 ”

” 自分が何をしたいか ”


様々な事がごちゃごちゃと頭の中にあってそれは未だに見つからない。


「 ……見つからない……

でも、とりあえずメルはペンギンとして生きるのはムリ……。 」


とりあえず分かっている事だけを淡々と述べた。


” 慈愛 ” に特化しているペンギンの獣人。

そしてそれを遺憾なく発揮して幸せに生きている母……。


それが一番幸せへの近道なのは分かっている。

でも人は必ずしも能力の適正と性格が合致しない。


それがメルだ。



モヤモヤした気持ちによって次第に心は沈んでしまい、下に視線を下げたのだが、リーフの言葉を聞いて、パッとその視線を上げる。


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