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第二十七章

919 人族が教えてくれた

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( メル )


” 全く違う価値観を持つ同士が集まった場合、どうすればいいか? ”


実はそれを三種族に教えてくれたのは人族だったりする。


人族は一貫した価値観を持つ他の種族達と比べて、多種多様の価値観を持ち、それらを絶妙なバランスで保っている非常にトリッキーな種族であるといえる。


そんな状態でそうやって社会を築いているのか?

それは他の三種族にとってとても不思議な事だ。


獣人族は絶対的な ” 強さ ” に価値を置き、強いやつには従う超実力主義であるため、現状に不満があるなら戦えばいい。


エルフ族に至っても ” 知力 ” に価値を置いた超実力主義であるため、より知能が高い者に従い、それが不満なら知力を持って失脚させてやればいいという価値観を持っているし、ドワーフ族は ” 器用さ ” に重きを置き、これまた如何に優れた作品を創り上げるかでお互いの立場を決め、争いになればその腕前と実績にて勝敗を決める様だ。


この様に価値観が決まった状態では、勿論ゼロにはできないが国としての大きな争いや暴動は起きない。

しかし、その代わりにその価値観に合わない者達は逃げ場がないため、格差が非常に大きい事が問題の一つ。


そのためかつてはそれぞれの価値観による酷い差別や、それに伴う悲しい歴史が数多く存在している。


そんな一つしか価値観を持たない三種族にとって人族の持つ柔軟性と順応力は ” 黒は黒、白は白ではなくグレー状態を保つ ” という非常に理解が難しいモノなのだ。


しかし結局はそれこそが多種多様な考えを持つ者達がいる中で、争いというモノを無くすためには一番必要なモノだと証明してくれた。


そのためこのアルバード王国と同盟を組んだ日から、徐々に他の考え方も受け入れる柔軟さも芽生えてきたようだが・・・

この教室の中の状況を見ているとまだまだ先は長いと思ってしまった。


争いになってないだけ進歩・・

メルはムムッ!とするエルフ族の嫌な空気に耐えながら、ふぅ・・とため息をつく。

そして ” 果たしてこの距離間が埋まる日がくるのだろうか・・? ” と、ありもしない日を妄想し、プププッと笑いを漏らしていると、突然ーーーー



ーーーガラッ!


教室のドアが開いた瞬間、人族以外の全種族が、バッ!!と凄い勢いでそちらを振り向いた。


さっきの・・怖いヤツ・・っ!


ビリビリと体中に訴えてくる ” 逃げろ ” の警戒音。

殺気など感じないのに恐怖で勝手に震える身体!


それと同じ感覚を気配に敏感な人族以外の種族は全員感じた様で、その正体が分からずとも、まるでその怖いヤツの周りに見えない結界が張られた様にスッ・・と距離を取り決して近づこうとしない。

そのせいで、なんと先程まであった種族間の距離が一瞬で縮まってしまった。


距離が埋まる日が来ちゃった・・


世界の抱える問題の一つがあっさりと解決してしまい吹き出しそうになったが、必死で我慢する。

そしてその怖いヤツを警戒しながら視線で追えば、そいつは広々と教室の中心辺りの椅子に座りそのまま動かなくなった。

そのためポツポツと他の受験生たちは全種族混合となってしまった教室内で座り始めたのでメルも座る。

その後は全員がチラチラとその怖いヤツに視線を向けたが、そいつはテスト開始から終了までこの場から動く事はなかった。



◇◇◇


カラ~ンコロ~ン♬


大きな鐘の音?と共にテストが終了し、その後はランチの予定だったが・・全員がなんとなくその怖いヤツを気にして動けず、メルも同じく警戒したままジッ・・とそいつを見つめていた。


しかしーーーー



フッ・・・



突然しっかりと視覚に捉えていたはずのヤツが消えてしまったのだ。


その瞬間ざわつく教室内!

試験官は驚きながらそいつが消えてしまった席に駆け寄ったが、何一つ見つからなかった様で揃って首を傾げる。

まるで白昼夢の様な出来事に他の受験生達も揃って首を傾げるも、結局はーー

 ” 恐らく何かしらのスキルを使ったのだろう ” 

それに落ち着き、ポツリポツリと受験生たちは解散し始めたので、メルもレイドが待つBクラスへと足を運んだのだった。




「 メル!試験どうだった? 」


レイドと合流すると早速そう聞かれたので「 ・・まぁまぁ・・ 」と正直に答える。

するとレイドは「 俺も俺も~! 」と答えた後、突然メルの耳元へ、ス~・・と顔を近づけてきた。


「 なぁ、さっきのネズミの獣人とあのこえぇ~ヤツ、そっちのクラスだったんだろ?

様子はどうだった? 」


レイドいわく、一緒にいたブタの獣人と魚?の獣人は同じBクラスだったそうで、ネズミと怖いのだけいなかったので、メルと同じくCクラスだと思ったそうだ。

先程の怖いヤツの事を考えてブルッ!と震える身体を抑えながら「 あの怖いのだけだった・・。 」と答えると、レイドは、えっ!と驚いた顔を見せる。


「 まじかよ!じゃあ、あのネズミはAクラス・・高位貴族って事かよ!

ーーーんんん~??

でも、ジェンスの高位貴族であんなヤツいなかったと思うが・・

もしかしたらこの国で生まれた獣人かもな。 」


腕を組みながら、うむ!と頷いたレイドを見ながら、メルは内心ちょっと嫌だなと思ってしまった。

ーーーというのも、このアルバード王国の高位貴族は揃って高慢ちきの性格が最悪者達であると聞いていたからだ。


獣人は人族が大好きだし、柔軟に人を受け入れる所は尊敬しているし仲良くしたいと考えている。

しかし、高位貴族は別物。

周りの大人たちは口を揃えてそう言う。


” 人族の高位貴族には関わらない方がいい ”

” 逆らうと即首を切られるんだぜ~ ”


あのネズミはそんな高位貴族の仲間だったらしい。

ーーーと、言う事は・・・

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