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第二十七章
916 作戦会議
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( メル )
そうしてもはやお決まりの場所化している誰もいない弓の練習場に到着すると、レイドは拾った木の枝で、何やら地面にカリカリと文字と絵を描きだす。
「 いいか?メル。
人族は ” 可愛い ” これは理解したな? 」
カリカリと全然可愛くない変な棒人間を書いたレイドが、トントンとその絵を木の棒で叩く。
言葉は合っていたため、メルはコクリと頷いた。
「 よし。じゃあ、その可愛い人族にモテるために必要なモノ。
それがなんだか分かるか? 」
大きなハートと大きなハテナマークに、” 必須 ” と書かれた文字。
難しいと思ったメルはフルフルと首を横に振ると、レイドはヤレヤレ・・と嘆かわしげにため息をつく。
「 全く・・メルは頭が悪いな。
それは火を見るより明らかだろう? 」
カッ!カッ!カッ!
レイドは変な棒人間を複数人書き、それを一つずつバッテンで消していった。
「 モテるために必要なモノ・・それはズバリ! ” 力 ” だ!!
そう! ” 力 ” なんだよ、メル!
さっきのパン屋のヤツだって悪い奴らをこうやって倒したからお嫁さんをゲットできたんだ。
つま~~り………
強くなければ人族のお嫁さんは貰えない!! 」
ズバッ!!と告げられる残酷な真実に、メルはガガーーン!!と大きなショックを受ける。
ここでも必要となるのは ” 力 ”
メルが恵まれなかった才能・・。
ズズズーーーーン・・
目に見えて落ち込んでしまったメルをレイドは怪訝そうに見つめ、その後何故かレイドも同様にズズーーーン・・と落ち込んでしまったため今度はメルが怪訝そうな目でレイドを見つめた。
「 ??何でレイドが落ち込むの・・?
レイドは強い・・メルは犬が羨ましい・・。
メルはペンギンである自分が悲しいから・・。 」
「 そっか・・。
ーーん、ありがとうな、褒めてくれて。
でもさ、俺、メルが言う程羨ましい存在じゃねぇんだ。
俺ってすぐ目移りしちゃうし、だから何でも中途半端で辞めちまう。
だからいつも何も手に入らねぇんだ。 」
そう言ってレイドの耳はぺちゃりと力なくうなだれてしまう。
そして尻尾もへにゃりと情けなく力を失うと、レイドはそれをサスサスと擦りながら続けて言った。
「 何ていうかさ・・例えば初めて何かをする時って大抵のヤツはできないだろ?
でも、俺、割と器用だから何でもできちゃうんだ。
点数にすると80点くらいをサッサッと取っちゃうわけ。
そうするとどうなると思う? 」
依然凹んだままのレイドがそんな質問をメルにしたが、メルは基本そういった場面だと10点も取れないので、正直想像ができない。
「 ・・メルは取れないから分からない・・ 」
正直にそう答えると、レイドは力なく笑った。
「 そうか・・。
まぁ、俺の場合は ” あ~こんなもんか~ ” って思っちまって、それ以上努力できなくなっちまうんだよ。
だから何にも手に入らねぇの。
弱い自分のまま。何も変わらない。
駄目だってわかっているのに、止められないんだよ。
どうしたらいいのか分かんなくて、だから俺はとりあえず目についたモン全部に飛びついてみる事にした。
” 下手な魔法も数撃ちゃ当たる ” ってやつだな! 」
ヘヘッと笑って鼻の頭を掻くレイド。
その顔は笑顔のはずなのに、どこか悲しそうであった。
なんとなくできてしまうから努力ができないレイド。
何にもできないから努力しかできないメル。
全く正反対のメルとレイドだが、きっと探しているモノは同じだ。
ずっと理想の自分を探している。
でも何をすればいいのか分からず、とりあえずレイドは手当たり次第に目の前にあるモノに手を伸ばし、メルはとりあえず一番しっくりくる弓をひたすら打つ。
メル達はそっくりだ。
「 ・・メルも人族のお嫁さん欲しい・・ 」
気づけばメルの口からはそんな言葉が漏れてしまっていた。
先程見た獣人の男と人族の女の人。
その仲睦まじい姿を見て正体不明のムズムズした感覚がしたのは、きっとそこに自分の理想としている何かがあるからだ。
そう考えたメルがブフッ!と鼻息荒く吹けば、レイドは目をキラキラと輝かせた。
「 よっしゃ!!流石俺の親友!
じゃあ、どっちが早くお嫁さん貰うか競争な! 」
レイドは嬉しそうにしながら、メルの身体を持ち上げそのまま空にポポーーン!と投げる。
そしてキャッチし、またもう一度投げてはキャッチしを繰り返しながら、ニカッ!と笑った。
「 俺さ、メルに初めて会った時、すげぇ羨ましかったんだ。
一つの事をただひたすら努力できるメルはホントにすげぇよ!
だから、なんとなくお前と一緒なら見つかりそうな気がするんだ。
俺の欲しい答えってやつ!
一緒に探しに行こうぜ!相棒! 」
メルにないものを沢山持っているレイドは、一つの事しかできないメルを広い世界に強引に連れて行ってくれる。
メルもそんなレイドと一緒なら、答えを持っている誰かを見つける事ができるかもしれないと思った。
そうしてもはやお決まりの場所化している誰もいない弓の練習場に到着すると、レイドは拾った木の枝で、何やら地面にカリカリと文字と絵を描きだす。
「 いいか?メル。
人族は ” 可愛い ” これは理解したな? 」
カリカリと全然可愛くない変な棒人間を書いたレイドが、トントンとその絵を木の棒で叩く。
言葉は合っていたため、メルはコクリと頷いた。
「 よし。じゃあ、その可愛い人族にモテるために必要なモノ。
それがなんだか分かるか? 」
大きなハートと大きなハテナマークに、” 必須 ” と書かれた文字。
難しいと思ったメルはフルフルと首を横に振ると、レイドはヤレヤレ・・と嘆かわしげにため息をつく。
「 全く・・メルは頭が悪いな。
それは火を見るより明らかだろう? 」
カッ!カッ!カッ!
レイドは変な棒人間を複数人書き、それを一つずつバッテンで消していった。
「 モテるために必要なモノ・・それはズバリ! ” 力 ” だ!!
そう! ” 力 ” なんだよ、メル!
さっきのパン屋のヤツだって悪い奴らをこうやって倒したからお嫁さんをゲットできたんだ。
つま~~り………
強くなければ人族のお嫁さんは貰えない!! 」
ズバッ!!と告げられる残酷な真実に、メルはガガーーン!!と大きなショックを受ける。
ここでも必要となるのは ” 力 ”
メルが恵まれなかった才能・・。
ズズズーーーーン・・
目に見えて落ち込んでしまったメルをレイドは怪訝そうに見つめ、その後何故かレイドも同様にズズーーーン・・と落ち込んでしまったため今度はメルが怪訝そうな目でレイドを見つめた。
「 ??何でレイドが落ち込むの・・?
レイドは強い・・メルは犬が羨ましい・・。
メルはペンギンである自分が悲しいから・・。 」
「 そっか・・。
ーーん、ありがとうな、褒めてくれて。
でもさ、俺、メルが言う程羨ましい存在じゃねぇんだ。
俺ってすぐ目移りしちゃうし、だから何でも中途半端で辞めちまう。
だからいつも何も手に入らねぇんだ。 」
そう言ってレイドの耳はぺちゃりと力なくうなだれてしまう。
そして尻尾もへにゃりと情けなく力を失うと、レイドはそれをサスサスと擦りながら続けて言った。
「 何ていうかさ・・例えば初めて何かをする時って大抵のヤツはできないだろ?
でも、俺、割と器用だから何でもできちゃうんだ。
点数にすると80点くらいをサッサッと取っちゃうわけ。
そうするとどうなると思う? 」
依然凹んだままのレイドがそんな質問をメルにしたが、メルは基本そういった場面だと10点も取れないので、正直想像ができない。
「 ・・メルは取れないから分からない・・ 」
正直にそう答えると、レイドは力なく笑った。
「 そうか・・。
まぁ、俺の場合は ” あ~こんなもんか~ ” って思っちまって、それ以上努力できなくなっちまうんだよ。
だから何にも手に入らねぇの。
弱い自分のまま。何も変わらない。
駄目だってわかっているのに、止められないんだよ。
どうしたらいいのか分かんなくて、だから俺はとりあえず目についたモン全部に飛びついてみる事にした。
” 下手な魔法も数撃ちゃ当たる ” ってやつだな! 」
ヘヘッと笑って鼻の頭を掻くレイド。
その顔は笑顔のはずなのに、どこか悲しそうであった。
なんとなくできてしまうから努力ができないレイド。
何にもできないから努力しかできないメル。
全く正反対のメルとレイドだが、きっと探しているモノは同じだ。
ずっと理想の自分を探している。
でも何をすればいいのか分からず、とりあえずレイドは手当たり次第に目の前にあるモノに手を伸ばし、メルはとりあえず一番しっくりくる弓をひたすら打つ。
メル達はそっくりだ。
「 ・・メルも人族のお嫁さん欲しい・・ 」
気づけばメルの口からはそんな言葉が漏れてしまっていた。
先程見た獣人の男と人族の女の人。
その仲睦まじい姿を見て正体不明のムズムズした感覚がしたのは、きっとそこに自分の理想としている何かがあるからだ。
そう考えたメルがブフッ!と鼻息荒く吹けば、レイドは目をキラキラと輝かせた。
「 よっしゃ!!流石俺の親友!
じゃあ、どっちが早くお嫁さん貰うか競争な! 」
レイドは嬉しそうにしながら、メルの身体を持ち上げそのまま空にポポーーン!と投げる。
そしてキャッチし、またもう一度投げてはキャッチしを繰り返しながら、ニカッ!と笑った。
「 俺さ、メルに初めて会った時、すげぇ羨ましかったんだ。
一つの事をただひたすら努力できるメルはホントにすげぇよ!
だから、なんとなくお前と一緒なら見つかりそうな気がするんだ。
俺の欲しい答えってやつ!
一緒に探しに行こうぜ!相棒! 」
メルにないものを沢山持っているレイドは、一つの事しかできないメルを広い世界に強引に連れて行ってくれる。
メルもそんなレイドと一緒なら、答えを持っている誰かを見つける事ができるかもしれないと思った。
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