天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

第二十七章

９０１ おバカさん

（　レナ　）


「　貴族の私達を借金奴隷になどできるはずがないだろう。

バカバカしい。　」


「　い～え？お二人は我がメイキルド家の借金の総額をご存知ですか？

ちょっとした街、約５年分の税金の総額に手が届くくらいありますよ。

これ全～部、貴方達の豪遊費ですけど。　」


「　だからなんなのかしら？

そんなのメイキルド家の当主である貴方がこれから稼いで返せばいいだけでしょう？　」


父と母は交互に私の発言を否定し、私の無知ゆえの戯言であると笑ったが・・私は逆にそんな両親を鼻で笑ってやった。


「　借金の期日は本日までって知りませんでしたぁ～？

そこで払えないならその場で借金奴隷になりますよ。　」


一度も反論した事がなく、強く言えば何でも言う事を聞いていた私が言い返した事は、両親にとって非常に不快な事だったらしい。

あからさまにイラッとした様子を見せ、父は余裕そうにソファーに座る私に怒鳴りだした。


「　馬鹿めっ！それなら法律で　”　親と子　”　はお互いの苦痛を半分にするという義務がある！

金を持たぬお前も借金奴隷になるぞ！！　」


「　・・はぁ・・全く忌々しい法律だこと。

私の才能が開花しなかったら、その法律を使って兄さんに全ての借金を押し付けて逃げるつもりだったんだもんね？

そんな事をさせない様に、私が十分な餌を与えてこの場に立たせてやったのよ。

良かったわ～。あなた達が想像以上のおバカさんで♡　」


フフッと余裕そうに笑う私にカッ！とした父が殴りかかろうとしたその時、大きな音を立てて扉が開く。

ハッ！とした父が動きを止めてドアの方を振り向けば、そこには穏やかそうな外見をした男性とその後ろにはイカつい男性数人が立っていた。


「　こんにちは。＜　フォレスト商会　＞から、借金を回収しに参りました。　」


ニコニコと笑う借金取りの男性とは対称的に、両親の顔は引きつり波が引くかのようにサァアァーー・・と青ざめていく。

私は冷静にその現れた男性に、借金の総額とその借金の返済人についての話をすると、ニッコリ笑った男性は、後ろの若い部下に目線を送った。


「　ケイン、契約書の書き換えを頼むぞ。　」

「　いえっさ～、ボス。　」


ケインと呼ばれた男は直ぐに２枚の白い紙を用意しスキルで契約書を創り出すと、一枚を私に、そしてもう一枚は両親に渡す。

そこに書かれている半分になった自分たちの借金を見て両親は青ざめたまま震えていた。


この国の法律では親と子の絆を尊いモノとし、苦しみはお互い平等に分けるべきという法律が存在する。

確かにその言葉だけ見れば美しいモノに見えるこの法律は、しばしば悪用される事もあり、一番多いのは親が借金を限界までして子供に押し付けて姿を消す事だ。


ちなみに両親もそれを使って最終的に姿を消すつもりだったようだが、私が才能を開花させたことで予定を変更。

そのまま私に寄生し生きていくつもりだったわけだが、勿論私はそんな事を大人しく受け入れるつもりなどない。


そのため何としてでもこの場に両親を引きずり出す必要があった私は、私が現当主と選ばれるこの日を借金の期日としたのだ。


借金をした張本人である両親がこの場にいる場合、借金は親と子で半分ずつとなり、それを払えないならそのまま借金奴隷になる。

更に子が１５歳という成人している大人なら、親の分の借金を肩代わりするかしないかは本人の意思が尊重されるので、まさに絶好のタイミングだ。


「　借金取りさん。私はメイキルド家の爵位を売るわ。

それでこの借金はかえせるでしょう？　」


私が手にした契約書をピラピラと振りながら話しかけると、両親はハッ！！とした様子で私へ視線を向けた。


”　爵位を売る　”　とはその名の通り、貴族の籍、権利、土地、担当している領の自治権・・などなどその全てを売り渡すという事で、勿論それを売れば、当主共々家族全員が平民という身分になる。

ちなみにその売却金の全ては当主一人のモノになるため、つまりはメイキルド家を売ったお金は全てたった今、現当主になった私のモノ。

私の個人財産になるという事だ。


借金取りの男はそれを聞き、ニヤリと笑う。


「　ほぅ？確かにそれなら余裕で借金は返せますね。

では、その差額は後ほどお返ししましょう。　」


「　えぇ。お願いするわ。　」


その売却総額は私の分の半額くらい余裕で返せる金額で、これは兄の元婚約者の男爵家の当主との話し合いで、売却額は既に決まっていた事であった。


兄が娘を匿ってくれた事に対し非常に感謝していたあちらのご両親はとても協力的で、更にあちらとしても現在上手くいっている事業の拡大のため、メイキルド家の所有していた土地や自治権は有り難い申し出であったらしい。

トントン拍子に話は進んでいった。


そうして契約を進めようとする私に対し、両親は大激怒。

怒りのまま私に怒鳴りだした。