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第二十七章

900 正しい姿に・・

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( レナ )

両親に対して浮かんだその小さな感情は、そのままどんどんどんどんどんどん膨れていき、心の中全てを支配すると・・・

私は自分の中にある新たな ” 力 ” に気づいた。



< 化術師の資質 > ( 特殊先天スキル )

< 心の化術構成 >

一定以下の精神汚染度である状態で、一定以上の怒り、憎しみを他者に抱く事、更に一定以下の欲望値でかつ欲望を抱いた経験値、欲望を叶えた経験値が無いこと、一定以上の愛情を受け取った経験がある事で特殊発動する特殊条件付き先天スキル


自身の知力、魔力、魔力操作のステータスに掛かっていた ” 抑制 ” を完全に除去し、本来持つ能力を自在に使う事ができる様になる。

更に精神構造の新たな構成が行われ、パニック状態無効、冷静が極UP、罪悪無効効果を得る。





何だ。

意外と簡単じゃない?

問題を解決するのって



物凄い早さで様々な答えを出していく自分を冷静に見て、” あぁ、これが本当の私だったんだ ” と歓喜に近い気持ちを抱いた。

そして感情に蓋をして生きていく決意をした兄を見下ろし、私はニコリと笑う。



大丈夫

大丈夫


もうね、そんな我慢する事ないの



泣き叫ぶ兄の背中にソッと手を触れ、そのまま優しく撫でた。


ボロボロの服を着させられて、質素な食事や寒さに震えながら寝る必要もない

両親の代わりに面倒な書類仕事をする必要だって、都合の悪い事の責任を全て被る必要だってない

” 実力なき者が ” 力 ” を持つ ”

そんな無駄で非生産的な事が ” 正しくない ” から実力無き者には化術の力は与えられない。

頭の中に浮かぶのはその ” 正しくない ” 両親の姿。



さぁ、世界を ” 正しい姿 ” に戻しましょう。



私は兄が泣きつかれて眠ってしまうまで、その背中を優しく撫で続けた。



それからまるでイモムシが蝶に変わるかの様に、私は頭も身体も成長し始めガラリとその姿を変えていく。

その変化を見て両親達は最初戸惑った様子を見せたが、次第に ” 自分達の役に立つ存在になるかもしれない ” 

そう思った様で、どんどんと私に対する態度も変わっていった。

その姿は資質鑑定を受ける前の兄に対するモノと同じ。

私は ” 金を運んでくる役に立つ魔道具 ”

その扱いは私がとうとう迎えた資質鑑定の結果を聞いて更に破格の扱いになる。


私に告げられた資質は【 化術師 】

まさに化術の真髄とも言えるその資質は、かつてこのメイキルド家を化術の名家にした初代の女当主と同じ資質であった。


” これで我が家は安泰だ! ”


自分たちに訪れる輝かしい未来を想い歓喜する両親。

それを見て私も嬉しくて嬉しくて笑った。


この金に執着するブタ野郎共を地獄に落とせる輝く様な未来を思い描いてーーー



その後、両親は正式に私を跡取りと決めて、兄を除籍しあっさりと家から追い出した。

それと同時に婚約者の女の子も婚約を解消、晴れて自由の身になる。

兄は私を心配し出ていく事に抵抗したが、” 大丈夫 ” と笑顔で言う私に背中を押され、そのまま出て行った。

それからは、遊びに出かける両親を笑顔で見送り、好きなだけ散財させてあげては、 ” 私がいるから大丈夫 ” と言って楽しい楽しい日々を満喫させてあげる。


楽しく

楽しく・・・


幸せに幸せに・・・




ーーーそうそう、両親は知らないみたいだけど、化術って ” 無 ” から何かを創り出すわけじゃなくて、何かを創り出す為にはそれと同等の材料が必要になるのよね。



だから、ね?

何かを創り出すには何かを犠牲にしないと駄目って事



” 幸せ ” も化術と同じ。

何かを犠牲にしないと駄目なの。



素直にその犠牲になってくれてた兄を追い出した時点で、もう犠牲にできるのは自分たちだけっていつ気づくのかな?


幸せそうな両親を見て私は楽しくて楽しくて仕方がなかった。


そうしてその幸せの日々から約3年後。

私が成人である15歳を迎えた日、正式に私は【 メイキルド家 】の当主となった。


私を現当主とする手続きを全て終えた両親はニコニコと笑顔で、私に拍手を贈る。


「 レナ、後の事は頼んだぞ。

それで早速だが、私達用の離れを作ってくれ。

勿論最高級のモノで頼むぞ。

それと従事者もそれに合わせて雇え。 」


「 それとそれに相応しい衣装と装飾品も全て新しいモノに変えましょう。

衣装も家具も最高級の職人を呼んでオーダーメイドしてもらいたいわ。

直ぐに手配してちょうだい 」


いつもの様に私にそう頼んでくる両親だったが、私は何も答えず部屋の中に置かれていたソファーに深く座り込む。

そんないつもと違う私の様子に違和感を感じた両親が、口を開こうとするその前にーーー私は口を開いた。


「 本日より私がこのメイキルド家の当主になりました。

これからあなた達の身分は剥奪、そして借金奴隷になって生きていく事を命じます。 」


私の言葉を冗談だと思ったのか、二人はハハッと笑ったが・・一切笑っていない私を見て本気だと悟り、続けてハッと馬鹿にした様な笑いを漏らす。

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