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第二十六章
890 【 忘却の魔女 】
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( リリア )
スキル< 精神再生 >によりスッ・・と今まで感じていた恐怖や不安な気持ちは全て消え失せる。
そしてそれに引っ張られる様にスキル< 登録図鑑 >とスキル< 創造構成 >が発現すると、新たな力に私は笑った。
さぁ、どうやって邪魔なモノを消してやろうか
凄まじい早さで、ダダンが最も苦しむ排除法を探す。
私のスキルは世界情勢をひっくり返してしまう程の凄い力であることを理解し、 ” この力を使って全員消してやろう ” そう考えていた。
しかしーーー
なんと同時期に兄も新たな能力を発現していたらしく、完全ノーマークであった兄はあっという間にダダンを失墜させる程の不正の証拠を集めて、彼を破滅へと追い込んだ。
その不正の証拠はダダンがやってきた事のほんの一部だった様だが、それでも十分という程の酷い所業の数々に、女王コレットは即座に死刑を言い渡す。
その時周りで見守っていた国民達は一斉に歓声を上げ、まるでお祭り会場の様に騒ぎ出したが、私はその場でとても冷静だった。
母と兄は茫然自失状態のダダンを見て鼻で笑い、遠くでは愛人達が涙を流しながら喜び合っている。
これが ” 愛 ” の成れの果てか
それに愉快を感じフフッと笑った後、絶望にまみれた顔で絞首台の最後尾に並ばされたダダンを見てフッと思った。
簡単に死んではつまらないな
そう思った私は、スキル< 創造構成 >をこっそり発動させて一つの胞子を創り出す。
【 黒死ユリの胞子 】
魔素領域に咲く美しい花。
これを死にゆくダダンに贈ってあげよう。
私は絞首台に向かい一歩また一歩と進んでいくダダンの首筋に小さな傷を見つけると、そのままフワッとその胞子をその首筋に放ってやった。
これでこの花の治療薬【 花下し草 】を飲まなければダダンは死ねない。
フフッと笑いながらダダンの順番が回ってくるのを静かに待つと、ダダンは涙と鼻水を垂れ流しながら「 死にたくない・・! 」「 助けてくれよっ・・! 」と叫び続けていたが、誰一人助ける者などいない。
” 愛 ” は人を苦しめるモノなのだから、助けるわけないでしょ?
その正体を知っている私は酷く冷めた目でダダンの首に縄が掛けられ、とうとう足元の板が外れて吊り下がるのを見守った。
まるで陸に上がった魚の様にバタバタと足を動かすダダンに吹き出しそうになったが、本当に楽しいのはこれから。
周りの人達はダダンが動かなくなった瞬間、拍手喝采を上げていたが・・・
突然また動き出したダダンにギョッと目を剥いた。
ダダンは口から泡を吐き、苦しそうに「 あ・・・がっ・・がっ・・。 」とうめき声を上げながら絶望にまみれたその瞳で必死に助けを乞う。
その苦しみはずっと、ずっ~~っと続く!
その壮絶な光景に唖然とする周りとは対照的に、私はおかしくておかしくて堪らなくて、心の中で腹を抱えて笑ってしまった。
ざまぁみろ!ざまあみろ!!
私を苦しめる ” 愛 ” の死に様はなんて醜く、そして楽しいモノなのだろう!!
アハハハハハハ!!!!!
はははは
ハハハハハーーー!!!
今まで出した事のないくらいの大声で笑い転げる私を心の中で見つめ、” まるで人の心を持たぬ魔女の様だ ” と冷静に思うと、何となく一冊の絵本の存在を思い出した。
『 忘却の魔女 』
その本の主人公は一人の魔女で、愛を信じられず一人で生きる非常に冷徹で孤独な魔女の話だ。
魔女には類まれなる知力と魔法の才があり、誰も彼もが彼女を褒め称え空っぽの ” 愛 ” を与えるが、それを受け取る度にその心は冷えていく。
” 愛 ” の正体とは何なのだろう?
魔女はそう考えたが、どんなに素晴らしい知力を持っていても、莫大な知識を持っていても、その答えは出なかった。
そんな魔女には輝く様に美しい太陽の様な妹がいたのだが、ある日、傍若無人な王様が無理やり妹を側妃の一人に入れようと企てる。
それが気に入らなかった魔女は、たちまちその王を破滅させ、その首に縄を掛けた。
それを見て大笑いしながら、見守る民衆に向かって言う。
” この王に ” 愛 ” を持つ者がいるなら前に進み出よ。
そうすればこいつは助けてやろう ”
その提案を聞いた王妃と数多くいた側妃、そして臣下や国民達はーーーー誰一人名乗り出なかった。
自身を助けてくれる ” 愛 ” などありはしなかった事に気付いた王は絶望の中死に、国は平和を取り戻す。
しかしーーー・・
ある日、漆黒の闇そのものであるような真っ黒なドラゴンが国を襲い、沢山の人々がそのドラゴンの吐き出す黒い炎に飲まれて命を失っていった。
そしてそんな中魔女の妹が逃げ遅れ、まさに今炎に巻かれて死んでしまうと思われた、その時・・・
魔女は一度きりの魔法を発動させて、妹をドラゴンの炎が届かぬ遠い遠い場所へと送り届けた。
” さようなら、私の妹。
どうか幸せに ”
その最後の言葉は魔女の ” 愛 ” の言葉。
それこそが沢山の ” 愛 ” が溢れているこの世の中で、魔女が唯一持っていた ” 愛 ” であった。
そしてその惨劇から数年後ーーー
魔女の ” 愛 ” を受け取った妹は ” 世界の復讐者 ” となっていた。
愛していた姉を殺したドラゴンを探し続け、ひたすら歩く。
前へ前へ・・
たとえその道が間違っていたとしても・・
スキル< 精神再生 >によりスッ・・と今まで感じていた恐怖や不安な気持ちは全て消え失せる。
そしてそれに引っ張られる様にスキル< 登録図鑑 >とスキル< 創造構成 >が発現すると、新たな力に私は笑った。
さぁ、どうやって邪魔なモノを消してやろうか
凄まじい早さで、ダダンが最も苦しむ排除法を探す。
私のスキルは世界情勢をひっくり返してしまう程の凄い力であることを理解し、 ” この力を使って全員消してやろう ” そう考えていた。
しかしーーー
なんと同時期に兄も新たな能力を発現していたらしく、完全ノーマークであった兄はあっという間にダダンを失墜させる程の不正の証拠を集めて、彼を破滅へと追い込んだ。
その不正の証拠はダダンがやってきた事のほんの一部だった様だが、それでも十分という程の酷い所業の数々に、女王コレットは即座に死刑を言い渡す。
その時周りで見守っていた国民達は一斉に歓声を上げ、まるでお祭り会場の様に騒ぎ出したが、私はその場でとても冷静だった。
母と兄は茫然自失状態のダダンを見て鼻で笑い、遠くでは愛人達が涙を流しながら喜び合っている。
これが ” 愛 ” の成れの果てか
それに愉快を感じフフッと笑った後、絶望にまみれた顔で絞首台の最後尾に並ばされたダダンを見てフッと思った。
簡単に死んではつまらないな
そう思った私は、スキル< 創造構成 >をこっそり発動させて一つの胞子を創り出す。
【 黒死ユリの胞子 】
魔素領域に咲く美しい花。
これを死にゆくダダンに贈ってあげよう。
私は絞首台に向かい一歩また一歩と進んでいくダダンの首筋に小さな傷を見つけると、そのままフワッとその胞子をその首筋に放ってやった。
これでこの花の治療薬【 花下し草 】を飲まなければダダンは死ねない。
フフッと笑いながらダダンの順番が回ってくるのを静かに待つと、ダダンは涙と鼻水を垂れ流しながら「 死にたくない・・! 」「 助けてくれよっ・・! 」と叫び続けていたが、誰一人助ける者などいない。
” 愛 ” は人を苦しめるモノなのだから、助けるわけないでしょ?
その正体を知っている私は酷く冷めた目でダダンの首に縄が掛けられ、とうとう足元の板が外れて吊り下がるのを見守った。
まるで陸に上がった魚の様にバタバタと足を動かすダダンに吹き出しそうになったが、本当に楽しいのはこれから。
周りの人達はダダンが動かなくなった瞬間、拍手喝采を上げていたが・・・
突然また動き出したダダンにギョッと目を剥いた。
ダダンは口から泡を吐き、苦しそうに「 あ・・・がっ・・がっ・・。 」とうめき声を上げながら絶望にまみれたその瞳で必死に助けを乞う。
その苦しみはずっと、ずっ~~っと続く!
その壮絶な光景に唖然とする周りとは対照的に、私はおかしくておかしくて堪らなくて、心の中で腹を抱えて笑ってしまった。
ざまぁみろ!ざまあみろ!!
私を苦しめる ” 愛 ” の死に様はなんて醜く、そして楽しいモノなのだろう!!
アハハハハハハ!!!!!
はははは
ハハハハハーーー!!!
今まで出した事のないくらいの大声で笑い転げる私を心の中で見つめ、” まるで人の心を持たぬ魔女の様だ ” と冷静に思うと、何となく一冊の絵本の存在を思い出した。
『 忘却の魔女 』
その本の主人公は一人の魔女で、愛を信じられず一人で生きる非常に冷徹で孤独な魔女の話だ。
魔女には類まれなる知力と魔法の才があり、誰も彼もが彼女を褒め称え空っぽの ” 愛 ” を与えるが、それを受け取る度にその心は冷えていく。
” 愛 ” の正体とは何なのだろう?
魔女はそう考えたが、どんなに素晴らしい知力を持っていても、莫大な知識を持っていても、その答えは出なかった。
そんな魔女には輝く様に美しい太陽の様な妹がいたのだが、ある日、傍若無人な王様が無理やり妹を側妃の一人に入れようと企てる。
それが気に入らなかった魔女は、たちまちその王を破滅させ、その首に縄を掛けた。
それを見て大笑いしながら、見守る民衆に向かって言う。
” この王に ” 愛 ” を持つ者がいるなら前に進み出よ。
そうすればこいつは助けてやろう ”
その提案を聞いた王妃と数多くいた側妃、そして臣下や国民達はーーーー誰一人名乗り出なかった。
自身を助けてくれる ” 愛 ” などありはしなかった事に気付いた王は絶望の中死に、国は平和を取り戻す。
しかしーーー・・
ある日、漆黒の闇そのものであるような真っ黒なドラゴンが国を襲い、沢山の人々がそのドラゴンの吐き出す黒い炎に飲まれて命を失っていった。
そしてそんな中魔女の妹が逃げ遅れ、まさに今炎に巻かれて死んでしまうと思われた、その時・・・
魔女は一度きりの魔法を発動させて、妹をドラゴンの炎が届かぬ遠い遠い場所へと送り届けた。
” さようなら、私の妹。
どうか幸せに ”
その最後の言葉は魔女の ” 愛 ” の言葉。
それこそが沢山の ” 愛 ” が溢れているこの世の中で、魔女が唯一持っていた ” 愛 ” であった。
そしてその惨劇から数年後ーーー
魔女の ” 愛 ” を受け取った妹は ” 世界の復讐者 ” となっていた。
愛していた姉を殺したドラゴンを探し続け、ひたすら歩く。
前へ前へ・・
たとえその道が間違っていたとしても・・
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