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第二十六章
889 新たな力
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( リリア )
知力が重視されるエルフの国では、私は正妻にするにはピカイチな存在なのだそうだ。
しかし、男としてのプライドというモノがあるらしく、自分よりも頭が良いのは癇に障るし、妻が有能であれば有能であるほど自分の役に立ってはくれるが、劣等感は募る。
一緒にいても休まらない、癒やされない。
でも仕事や家の事などを任せるには最高。
だからそこに ” 愛 ” は含まれないが、都合の良い便利な道具としての ” 情 ” はある。
では、 ” 愛 ” はどこに?
ーーーそれは自分を否定する事なく甘やかしてくれる、褒めてくれる、劣等感を刺激しない可愛い可愛い愛人にあげるつもりらしい。
つまり、仕事や家の事など面倒な事は全て私に、そして自分は心から愛する可愛い愛人と楽しく幸せに暮らしたい。
それが彼らにとって全員が幸せになれる素晴らしい案なのだそうだ。
頭が痛くなる様な案に、 ” そんな提案を誰が好き好んで受けるのか? ”
一度本気でそう思って、それを語る男の一人に質問してみた事がある。
すると、その男は本当に不思議そうな顔をしてこう答えた。
” 自分の一番である正妻の座が手に入るのだからそれで十分嬉しいだろう?
君が一番、愛人が二番。
誰もが認めて欲しがる一番を君は手に入れられるんだから、何も文句などないはずだ。 ”
返す言葉もない程呆れてしまったが、驚く事に私にお見合いを申し込んでくる男たちは皆こういった考えを大なり小なり持っていた。
” 正妻は特別な存在で、女として最高の幸せ ”
” 一番の君は愛人達より立場が上の選ばれた存在なんだ。これこそが女の幸せ ”
ーーなんだそうだ。
” 一番 ” ってなんて軽い立場なんだろう。
いや、二番もか・・
ここで私はこの人達の ” 愛 ” を完全に理解した。
一番の正妻には今の暮らしを守り、さらなる豊かさを手にするために ” 情 ” を。
二番の愛人には癒やしと様々な欲を発散させて貰うために ” 欲愛 ” を。
そしてその見返りは、正妻には自分の一番であるという地位と社会的な保証。
そして愛人には贅沢な暮らしを与えるが、自分が飽きれば即その関係は終了、ポイッと捨ててその後の人生には責任は持たない。
だって要らないおもちゃを捨てただけだから。
その全てが揃わないと ” 愛 ” にはならないんだ。
それを理解した私は、 ” 愛 ” に対して酷く冷めた想いを抱いた。
世の中にはそういった考えを理解し良しとする人だっているかもしれないが、少なくとも私にとってその全てが受け入れ難いモノであった。
” そんな不利益な関係はごめんだわ。 ”
そうハッキリ断ると、今度は困った子供を見るかの様にふーー・・と盛大なため息をつかれる。
” 君はまだ子供だね。
” 愛 ” はそんな損得で考えてはいけないモノなんだ。
世界一尊きモノなのだから。 ”
私に不利益と不快を感じさせるモノ、それが ” 愛 ” で世界一尊きモノなの??
納得できない答えしかくれない ” 愛 ”
それに囲まれながらも、私が選んだ選択肢は ” 自立 ” であった。
誰かの為ではなく、自分のためだけに人生を生きる。
それはとても素晴らしい事だと思った。
そしてそれが私の心の拠り所になっていく。
しかしーーーー・・・
そうして出した ” 答え ” すべて壊し奪い尽くそうとする存在が現れた。
それが地位と名誉、金を持った権力者< ダダン >
40代も半ばの親子ほど年が離れている男で、ギラギラとギラつくアクセサリーを山程身体に巻き付け、まさに金を着ているという表現が正しいと思わせる下品な男。
既に沢山の愛人と子供がいるが正妻はおらず、自分の仕事上に相応しい頭脳を持った女を迎えるために品定めをしていたとの事だった。
奴は断っても断っても非常にしつこく、様々な横の繋がりや人数に物を言わせてジワリジワリと迫ってくる
そのせいで流石の母も疲弊し、大変そうな様子を見せていた。
” 自立 ” のための努力が、私を苦しめるだけの ” 愛 ” によって便利な道具にされてしまう。
それが悔しくて悔しくて、 ” 愛 ” が憎くて憎くて堪らない。
私はただ静かに暮らしたいだけなのに・・
毎日荒れ狂う感情と戦い続ける中、その日も家に来たダダンと母のやり取りを見ていて、私は突如気づいてしまった。
あぁ、コイツは私だけではなく、母も兄も手に入れるつもりなんだーーと。
ヤツの目が語る。
私の頭脳、母の美しさと能力、兄の賢さ、可愛さ・・・その全てを好きに扱ってやろう。
それに気づいた瞬間、自分の中から膨れ上がって弾けたのは、怒りと憎しみ。
” 愛 ” は大好きな母と兄を苦しめる悪いモノ。
ドロリドロリと黒く染まっていく心を感じながら、私の新たな力が発現した。
<錬合師の資質>( 特殊条件先天スキル )
< 精神再生 >
怒り、憎しみ、悲しみなどの負の感情ゲージ値がある一定以上に達した時に発動する特殊条件型の先天スキル
これにより精神の構造が変わり、精神的ショックを受けても思考の動きに制限を一切受けなくなる
罪悪感などの感情も消えてしまうため、常に頭では感情を抜きにした選択肢肢を選ぶことができる
知力が重視されるエルフの国では、私は正妻にするにはピカイチな存在なのだそうだ。
しかし、男としてのプライドというモノがあるらしく、自分よりも頭が良いのは癇に障るし、妻が有能であれば有能であるほど自分の役に立ってはくれるが、劣等感は募る。
一緒にいても休まらない、癒やされない。
でも仕事や家の事などを任せるには最高。
だからそこに ” 愛 ” は含まれないが、都合の良い便利な道具としての ” 情 ” はある。
では、 ” 愛 ” はどこに?
ーーーそれは自分を否定する事なく甘やかしてくれる、褒めてくれる、劣等感を刺激しない可愛い可愛い愛人にあげるつもりらしい。
つまり、仕事や家の事など面倒な事は全て私に、そして自分は心から愛する可愛い愛人と楽しく幸せに暮らしたい。
それが彼らにとって全員が幸せになれる素晴らしい案なのだそうだ。
頭が痛くなる様な案に、 ” そんな提案を誰が好き好んで受けるのか? ”
一度本気でそう思って、それを語る男の一人に質問してみた事がある。
すると、その男は本当に不思議そうな顔をしてこう答えた。
” 自分の一番である正妻の座が手に入るのだからそれで十分嬉しいだろう?
君が一番、愛人が二番。
誰もが認めて欲しがる一番を君は手に入れられるんだから、何も文句などないはずだ。 ”
返す言葉もない程呆れてしまったが、驚く事に私にお見合いを申し込んでくる男たちは皆こういった考えを大なり小なり持っていた。
” 正妻は特別な存在で、女として最高の幸せ ”
” 一番の君は愛人達より立場が上の選ばれた存在なんだ。これこそが女の幸せ ”
ーーなんだそうだ。
” 一番 ” ってなんて軽い立場なんだろう。
いや、二番もか・・
ここで私はこの人達の ” 愛 ” を完全に理解した。
一番の正妻には今の暮らしを守り、さらなる豊かさを手にするために ” 情 ” を。
二番の愛人には癒やしと様々な欲を発散させて貰うために ” 欲愛 ” を。
そしてその見返りは、正妻には自分の一番であるという地位と社会的な保証。
そして愛人には贅沢な暮らしを与えるが、自分が飽きれば即その関係は終了、ポイッと捨ててその後の人生には責任は持たない。
だって要らないおもちゃを捨てただけだから。
その全てが揃わないと ” 愛 ” にはならないんだ。
それを理解した私は、 ” 愛 ” に対して酷く冷めた想いを抱いた。
世の中にはそういった考えを理解し良しとする人だっているかもしれないが、少なくとも私にとってその全てが受け入れ難いモノであった。
” そんな不利益な関係はごめんだわ。 ”
そうハッキリ断ると、今度は困った子供を見るかの様にふーー・・と盛大なため息をつかれる。
” 君はまだ子供だね。
” 愛 ” はそんな損得で考えてはいけないモノなんだ。
世界一尊きモノなのだから。 ”
私に不利益と不快を感じさせるモノ、それが ” 愛 ” で世界一尊きモノなの??
納得できない答えしかくれない ” 愛 ”
それに囲まれながらも、私が選んだ選択肢は ” 自立 ” であった。
誰かの為ではなく、自分のためだけに人生を生きる。
それはとても素晴らしい事だと思った。
そしてそれが私の心の拠り所になっていく。
しかしーーーー・・・
そうして出した ” 答え ” すべて壊し奪い尽くそうとする存在が現れた。
それが地位と名誉、金を持った権力者< ダダン >
40代も半ばの親子ほど年が離れている男で、ギラギラとギラつくアクセサリーを山程身体に巻き付け、まさに金を着ているという表現が正しいと思わせる下品な男。
既に沢山の愛人と子供がいるが正妻はおらず、自分の仕事上に相応しい頭脳を持った女を迎えるために品定めをしていたとの事だった。
奴は断っても断っても非常にしつこく、様々な横の繋がりや人数に物を言わせてジワリジワリと迫ってくる
そのせいで流石の母も疲弊し、大変そうな様子を見せていた。
” 自立 ” のための努力が、私を苦しめるだけの ” 愛 ” によって便利な道具にされてしまう。
それが悔しくて悔しくて、 ” 愛 ” が憎くて憎くて堪らない。
私はただ静かに暮らしたいだけなのに・・
毎日荒れ狂う感情と戦い続ける中、その日も家に来たダダンと母のやり取りを見ていて、私は突如気づいてしまった。
あぁ、コイツは私だけではなく、母も兄も手に入れるつもりなんだーーと。
ヤツの目が語る。
私の頭脳、母の美しさと能力、兄の賢さ、可愛さ・・・その全てを好きに扱ってやろう。
それに気づいた瞬間、自分の中から膨れ上がって弾けたのは、怒りと憎しみ。
” 愛 ” は大好きな母と兄を苦しめる悪いモノ。
ドロリドロリと黒く染まっていく心を感じながら、私の新たな力が発現した。
<錬合師の資質>( 特殊条件先天スキル )
< 精神再生 >
怒り、憎しみ、悲しみなどの負の感情ゲージ値がある一定以上に達した時に発動する特殊条件型の先天スキル
これにより精神の構造が変わり、精神的ショックを受けても思考の動きに制限を一切受けなくなる
罪悪感などの感情も消えてしまうため、常に頭では感情を抜きにした選択肢肢を選ぶことができる
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