上 下
830 / 1,315
第二十四章

815 リーフ

しおりを挟む
( レイド )

その言葉にハッ!と正気を取り戻し、全員がメルに視線を向ける中、メルはブフッ!!と勢いよく鼻息を吹く。


「 ソフィアが犠牲になるのも・・皆が犠牲になるのも・・イヤ。

リーフが諦めるって言わないかぎりはメルも諦めない。

・・メルは最後まで戦う。 」


キラッ!と目を輝かせ、メルは任せろと言わんばかりにドンッと胸を叩く。

リーフの名前が出た瞬間、全員の目つきが変わった。



リーフ・フォン・メルンブルク

見た目は平凡、でもこの学院の誰もが認める凄い奴。


俺は最初見た時からピンッ!とくるものがあった。


"   こいつといるとめちゃくちゃ楽しいだろうな~  "

"   退屈しないだろうな~  "  


そういったセンサーにビシビシ引っかかってくるのがリーフであった。


そして更に獣人の勘が告げるのは、リーフから感じる内在的な強さについてだ。

リーフは強い。

物理的にも精神的にも周りを遥かに凌駕する強さと底の見えない可能性を秘めている。


俺の様な祖先が犬や狼など、本来はボスに従い群れで暮らす獣を祖にする者達は、特にそういった強さを持つ者には敏感だ。

それこそ知らず知らずにリーフの動きを目で追っては、気がつくとその背中についていってしまう程。


なんといっても本来ボスを持たぬペンギンの祖先を持つメルや、そういった感覚に鈍い人族ですら同様に追いかけてしまうのだからリーフは本当に凄い奴だと思う。


それこそ始めの頃はレオンという恐ろしい存在によりその存在感はゼロに近かったが・・

今にして思えば、そんなやつを平然と抱え込むリーフが一番ヤバい奴だと今では思っている。


頭の中にフッ・・とレオンの姿が浮かび、その隣に立つ自分を想像するとゾゾゾ~!と背筋が凍りついた。


不可能を可能にする男、それがリーフという男。


ブツブツとすっかり立ち上がってしまった鳥肌を優しく擦った後、いつの間にか心の中の怒りや憎しみは消え、代わりに小さな ” 希望 ” が宿っている事に気づいた。


リーフなら不可能を可能にしてくれるかもしれない。

そんな希望が。


俺がメルの背中をバシッ!と叩くと、全員が順番にパシパシとメルの肩や背中を叩き、手足を伸ばして準備運動を始めた。


こんな所で腐っている場合じゃねぇ

やれる事は全部やってやる


全員が口に出さずとも同じ想いを抱きリリアへ一斉に視線を向けると、リリアは、いつも通りのクールで冷静なリリアへと戻っていた。


「 緊急電煙が上がった時点で守備隊と各ギルドはそれぞれ担当している門の防衛に入る。

卵が孵化した後、初めに起こるのはモンスター行進のはずだからそれを抑えつつ【 聖令浄化 】の準備をするはずよ。

その発動には時間がかかるはずだから、その準備期間に動かないとタイムリミットね。

兄さん、もう少し情報を集められる?

特に街の中とか無人になっている場所がいいわ。 」


「 えっ?できるけど・・・何で人がいない場所なの?

沢山人がいる場所のほうが情報を沢山集められるんじゃないの? 」


俺も他のメンバー達も同様に思ったため同時にウンウンと頷いたがリリアは首を横に振る。


「 【 聖令浄化 】を行うには< 聖浄結石 >という特別な石が必要になる。

だからもし既に準備されているならその場所を特定しておきたいのよ。

この街を囲うとしたら多分4つくらいは必要になるはず・・

無人の場所にあるはずだからそれを探して欲しいの。


それに・・もう一つ気になる事があるのよ。 」


「「「「「 気になる事?? 」」」」」

全員が同時に首を傾げるとリリアは魔導書を取り出しスキルを発動した。




<錬合師の資質>(ノーマル固有スキル)


< 地図マッピング >


自身の歩いた場所を地図として作成し保存する事ができる創作系スキル。

作成できるのはあくまで自身の足で歩いた場所に限る。


(発現条件) 

一定以上の知力、魔力、魔力操作を持つ事

一定距離以上未踏の地を歩くこと




<錬合師の資質>(ユニーク固有スキル)


< 錬合魔力感知 >

魔法陣など誰かが手を加え錬合した魔法の魔力を感知する事ができる感知系スキル。

ただし人の手が加わっていない魔力の感知は一切できない。


(発現条件) 

一定以上の知力、知識、魔力、魔力操作、器用さ、意欲、魔法陣に対する知識を持つ事

一定回数以上魔法陣を発動させた経験値を持つこと



空中には巨大な四角い地図が現れ、その中の建物の一つに大きく点滅する赤い丸、そして他の各場にも沢山の小さな赤い光りがそれぞれピコンピコンと点滅していた。


「 これは・・もしかしてグリモアの地図か? 」


俺はそう尋ねながら地図を見渡し、やはり見覚えのある地理であったため、これがグリモアの地図である事を確信する。


では、あの赤い点達は一体・・?


疑問を持ったのは俺だけじゃなかった様で、モルトが地図上に点滅する赤い光を指さし、リリアに尋ねた。



「 リリアさん、その点滅している赤い点達は何なんだ?

一番大きい赤い点は教会の様だが・・ 」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女召喚!……って俺、男〜しかも兵士なんだけど?

バナナ男さん
BL
主人公の現在暮らす世界は化け物に蹂躙された地獄の様な世界であった。 嘘か誠かむかしむかしのお話、世界中を黒い雲が覆い赤い雨が降って生物を化け物に変えたのだとか。 そんな世界で兵士として暮らす大樹は突然見知らぬ場所に召喚され「 世界を救って下さい、聖女様 」と言われるが、俺男〜しかも兵士なんだけど?? 異世界の王子様( 最初結構なクズ、後に溺愛、執着 )✕ 強化された平凡兵士( ノンケ、チート ) 途中少々無理やり的な表現ありなので注意して下さいませm(。≧Д≦。)m 名前はどうか気にしないで下さい・・

勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話

バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん< 山野 石郎 >改め【 イシ 】 世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中・・俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない< 覗く >という能力だけ。 これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。 無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。 不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜

7ズ
BL
 異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。  攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。  そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。  しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。  彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。  どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。  ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。  異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。  果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──? ーーーーーーーーーーーー 狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛  

【 完結 】お嫁取りに行ったのにキラキラ幼馴染にお嫁に取られちゃった俺のお話

バナナ男さん
BL
剣や魔法、モンスターが存在する《 女神様の箱庭 》と呼ばれる世界の中、主人公の< チリル >は、最弱と呼べる男だった。  そんな力なき者には厳しいこの世界では【 嫁取り 】という儀式がある。 そこで男たちはお嫁さんを貰う事ができるのだが……その儀式は非常に過酷なモノ。死人だって出ることもある。 しかし、どうしてもお嫁が欲しいチリルは参加を決めるが、同時にキラキラ幼馴染も参加して……?    完全無欠の美形幼馴染 ✕ 最弱主人公   世界観が独特で、男性にかなり厳しい世界、一夫多妻、卵で人類が産まれるなどなどのぶっ飛び設定がありますのでご注意してくださいm(__)m

奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される。

拍羅
BL
転生したら奴隷商人?!いや、いやそんなことしたらダメでしょ 親の跡を継いで奴隷商人にはなったけど、両親のような残虐な行いはしません!俺は皆んなが行きたい家族の元へと送り出します。 え、新しく来た彼が全く理想の家族像を教えてくれないんだけど…。ちょっと、待ってその貴族の格好した人たち誰でしょうか ※独自の世界線

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

処理中です...