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第二十三章

802 カッコいいよ

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( リーフ )


「 そんなのいつも役立たずの穀潰し集団、第1騎士団に任せときゃいいんですよ。

せいぜい働いて貰いましょう。

王都が落とされたら王族や貴族も死ぬし、流石に動くんじゃないですか?

それにドノバンさんは俺達第二騎士団の理念をお忘れの様だ。


全く・・これだからおじさんは嫌なんですよ。 」


はぁ~・・と心底面倒くさそうに大きく息を吐き出したユーリスさんは、直ぐにビシッ!と背筋を伸ばし左手を胸元に当てる。


その瞬間ーーーー



真っ黒い空一面に沢山の魔法陣が現れ、そこから次々と騎士団の戦闘服を着た騎士団員達が落ちてきては胸に手を当て敬礼のポーズをとった。


「 ひとーーつ!!

第二騎士団はいかなる身分であろうとも全ての国民を守るためにある! 」


「 ふたーーつ!!

弱きを助け、強きを挫く! 」


「 みっつ!!

この命尽きるまでこの理念を胸に、誇りを忘れるべからず!! 」



守備隊に負けないくらいの人数の騎士団員達がズラッーーーと並び第二騎士団の理念を宣言した。

それにポカーーン・・とする俺達と守備隊員達に対し、ユーリスさんが呆れた様なため息をつく。


「 こんな国民のピンチに我々第二騎士団が駆け付けないわけには行かないでしょう?

おじさんばかりの現場なんてほとんど呪いじゃないですか。

テンション高くて気持ち悪い。 」


「 んなっ!!お前おじさんが呪いって・・・

お前だって直ぐにこっち側だからな?

それにおばさんもいるからな? 」


「 あなた本当に失礼ですね。

女性はいつまでも美しい永遠のレディです。

おじさんとは別物です。 」


ユーリスさんの発言に対し女性隊員からはキャーー!!という黄色い声が上がるが、ドノバンやケンさんを初めとする男性隊員達はチィィッ!!と盛大な舌打ちをした。

更に恨めしい視線を一身に受けながらもユーリスさんは空に浮かぶボワッとした蝶々の形をした呪いの化け物を睨みつける。


「 あれが呪災の卵の中身ですか・・。

黒い蝶・・ドロティア帝国で生まれたものとは別の個体種か。


ーーーー総員戦闘準備っ!!!

それぞれの配置について指示を待て!!

あいつは人が死ねば死ぬほど力を増すと言われているため命を最優先に!けが人は直ちに下がらせよ!! 」



「「「「「 ーーーーはっ!!! 」」」」」


ユーリスさんの指示を受け、騎士団員達はそれぞれの持ち場へ即座に向かい守備隊員達と共に配置につく。

更にユーリスさんは後方の方にいる解析班に向かって< 拡張伝柱 >の設置を指示。

素早く後方へそれが設置された。



< 拡張伝柱 >

大掛かりな戦闘時に立てられる全長2mほどの柱型伝達系魔道具。

これを立てる事でそのフィールド内で交わされる声が大きくなるため伝達がしやすくなるが、お値段も高いため基本は様々なグループの混合戦など、大掛かりな戦闘時のみ使用される。




「 解析班、空の黒い雲の正体は判明したか? 」


『 いえ・・詳しくは解析不能です。

しかし、呪い属性と同じ魔力反応があるので呪いの塊と思ってよいでしょう。 』


「 なるほど・・。

ではあの雲にも触ったらアウト・・って事ですね。 」


ユーリスさんは小さく頷きながら、背中に装着してある折りたたみ式の剣をガチャンッ!と組み立てると、今度は俺とレオンの方へ視線を向けた。



「 リーフ様、レオン君ご無沙汰しております。

貴方がたもこちらで戦ってくれるのですか?

ありがとうございます。


しかし絶対に危ないと思ったら直ぐに後ろに下がって下さい。

貴方がたの様な年の若い方々は全員が助かるようになっています。

命を散らすのはドノバンさんの様なおじさん達と俺達の様な騎士だけです。

約束しましたからね。 」


おじさん言うな!とドノバンや他のおじさんカテゴリーの戦闘員達はブーブーと文句を垂れるが、若い隊員達は一瞬悲しげに瞳を揺らす。


それを見て、俺はそうか・・と心の中で悟った。


ユーリスさんも第二騎士団の人達も ” 代償の選択 ” を知っていてこのグリモアに来たのだ。

子供や若者を、 ” 未来 ” を救うためにたった一つしかない命を使おうとしている。


俺は黒い空を見上げ、そして続けてゾワゾワとどんどん巨大化していく黒い蝶々を見つめた。


おじさんとか言っているけど、ほぼ全員が俺より遥か年下の坊や達だ。

まだまだ人生だって上っている最中で、やりたいことも夢もまだまだ先がある。



どんどん濃くなっていく黒い煙達はバチバチと雷が帯電している様になってきて、それが空全体に伝わっていく。

それを見回しながら俺は再度蝶々のモヤモヤを睨みつけた。



「 皆カッコいいな。


本当に・・ 」



小さく囁いた声は、森の方から聞こえ始めたモンスター達の咆哮と悲鳴によってかき消されてしまい誰にも聞こえる事はなかった。


「 あの黒いモヤが呪い属性ならば、それに覆われてしまった森の中の魔素は瘴気へと進化してしまうじゃろうな。

いつもより数倍はモンスター達は強いと思った方が良い。 」


「 マジかよ~くそ~!

だいたいなんでその呪い属性がモンスター達に効かねぇんだよ!

反則だろうが!! 」


考え込む様に唸るヘンドリクさんと大剣を担ぎながらブーブー文句を言うドノバン。

俺は即座に黒いモヤに向かってスキル< 鑑定( 全 ) >を発動した。



呪災厄の幼生体

( 先天スキル )

< 呪いの祝福 >

自身がそのフィールドにいる限りずっと発動し続ける先天パッシブスキル。
  
自身が認定したモンスターに対し呪い無効効果を付与し、更に魔素の濃度を高める事で瘴気へと進化させパワーアップ効果を与える。

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