上 下
815 / 1,315
第二十三章

800 アレは・・?

しおりを挟む
( リーフ )


「 ・・まぁ、あいつが選んだ死に場所だからこれ以上文句を言うのは野暮ってもんか。 」

ため息をついた後、ケンさんは呆れた様に笑い、マルクさんも無言のまま微笑む。


そしてそれを聞いた俺はというとーーー

 ” し、し、しまった~! ” 

・・と心の中で叫び頭を抱えてしまった。



ライキーさんは本来の未来通りにあのキノコ小屋にいる!



てっきり街の皆同様、教会に避難していると思っていたが・・ライキーさんの未来はそのまま変わっていない様だ。


このままではその小屋でライキーさんは命を落としてしまう!



”  ・・僕・・と・・君を・・繋ぐ・・大事な・・

最後の絆・・・。

絶対に・・離さ・・ないよ。


ーーーあーちゃん・・・  ”


ライキーさんの最後の言葉を思い出し、続けて思い出したのはケンさんが以前言っていた話だ。



” 昔から何かを栽培したり育てたりは好きだったみたいだが・・あんなに執着しだしたのは高学院に入ってからだ ”


” そこでお付き合いした彼女さんが原因らしい ”


” どうやら上手く行かずに別れちまった様だな ”


” 結局それから恋愛の一つもせずにず~っとあそこでキノコ一筋の引きこもりになっちまった。

なんでもキノコがその彼女との唯一の繋がりで ” 幸せ ” の場所なんだと ”



そうか・・。


俺はライキーさんの心の内が何となく分かってポリポリと頭を掻く。



あの場所はライキーさんにとって最も自分が幸せだった頃の居場所だったから、例え死ぬのが分かっていても離れたくなかったのか・・


死ぬ直前のライキーさんの幸せそうな顔を思い出し、何とも言えぬ気持ちになってしまったが・・

俺はぐちゃぐちゃぐちゃ~と髪の毛をかき回し、最後はフンスっ!と勢いよく鼻息を吹く。


やるだけやってみるか!


とりあえずライキーさんのいるであろうキノコ小屋に飛ぼうとした、その時ーーーー



ヒヤッ・・・とした風が森の方角から吹いてきて、守備隊員達は全員険しい顔をそちらへ向けた。


そしてそれとほぼ同時くらいに、森の奥の方で物凄い量の鳥型モンスターや流星コウモリの様な飛行型のモンスター達が一斉に空へ飛び立つ。


「 な・・何だ・・? 」


俺は目を凝らしてジーーッ・・と森の方を見ていると、突然森の中からパッパッパッ!と点滅している蒼い光が空へと打ち上がった。


あれはーーー< 伝令閃光 >だ!




< 伝令閃光 >

トラップや魔法の設置が完了した事を仲間に知らせる閃光弾。

青い点滅した光が空に向かって昇っていく。




森の中に仕掛けたトラップや魔法が設置完了した合図。

もう孵化の時は近い。


その場には緊張した空気が漂い、俺の頬からは一筋の汗が伝って落ちた。

ドロドロと何だか気味の悪い感覚に支配されて、二日酔いの胸焼けの様な・・

とにかく不快な感じが体に絡みつくみたいだ!


流れ落ちる汗を拭うと、それと同時に森の入口付近からポッポ鳥に乗った沢山の人間たちが飛び出してきた。


その中にはヘンドリクさんもいる。


「 卵が孵化する!!全員戦闘準備開始じゃーーー!!! 」


ヘンドリクさんの叫び声を聞き、ケンさんが「 後衛部隊バフ開始!!前衛班でまずは迎え撃つぞっ!!! 」と大声で指示を飛ばす。


「「「 ーーはっ!!!! 」」」」


それに対し全員が一斉に返事を返すと、そのまま後衛班のバフが次々と掛けられていった。


そうしている内にヘンドリクさんと他の、恐らくトラップ系の資質持ちの人達は門の前に到着したのだが、その後直ぐに森の奥の上空が円を描くように黒く染まっていく。


まるで真っ白い紙に墨を溢してしまった様な・・?


唖然としながら空を見上げていると、その黒はどんどんと広がっていき、やがてグリモア上空がすっかり覆われてしまうと、視覚で捉えられる範囲の空は全て黒くなってしまった。


「 まるで世界が黒い世界になってしまった様ですね。 」


「 なんつー不気味な現象だ。

前に一回空が暗くなったやつもこいつの仕業だったのかもな。 」


マルクさんとケンさんが険しい顔で空を見上げながらそう呟いた。


俺も改めて遠くの方まで広がっていく ” 黒 ” を見て、続けてそれに対しガタガタと小さく震えている周りの守備隊員達を見回す。



その瞬間何かのピースがカチッ・・と嵌った様な気がして・・

いや、でも何が?と言われると分からなくて悩んでいると、今度はーー




ズズズズーーーーッ・・・




ーーーという肉を引きちぎる様な・・

なんとも不気味な大きな音が聞こえて、森の奥地から空に向かって真っ黒いモヤモヤした煙の様なモノが立ち昇っていくのが見えた。


全員が固唾を呑みながらそれを見上げていると、空に広がっていくその黒い煙はどんどんと固まっていき、何かの形を形成し始める。


その形はとても見知ったある生物の形で、周りの隊員達からは小さな悲鳴が聞こえだした。


二対の巨大な羽に特徴的なシルエットーーーアレは・・


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女召喚!……って俺、男〜しかも兵士なんだけど?

バナナ男さん
BL
主人公の現在暮らす世界は化け物に蹂躙された地獄の様な世界であった。 嘘か誠かむかしむかしのお話、世界中を黒い雲が覆い赤い雨が降って生物を化け物に変えたのだとか。 そんな世界で兵士として暮らす大樹は突然見知らぬ場所に召喚され「 世界を救って下さい、聖女様 」と言われるが、俺男〜しかも兵士なんだけど?? 異世界の王子様( 最初結構なクズ、後に溺愛、執着 )✕ 強化された平凡兵士( ノンケ、チート ) 途中少々無理やり的な表現ありなので注意して下さいませm(。≧Д≦。)m 名前はどうか気にしないで下さい・・

勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話

バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん< 山野 石郎 >改め【 イシ 】 世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中・・俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない< 覗く >という能力だけ。 これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。 無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。 不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜

7ズ
BL
 異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。  攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。  そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。  しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。  彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。  どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。  ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。  異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。  果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──? ーーーーーーーーーーーー 狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛  

【 完結 】お嫁取りに行ったのにキラキラ幼馴染にお嫁に取られちゃった俺のお話

バナナ男さん
BL
剣や魔法、モンスターが存在する《 女神様の箱庭 》と呼ばれる世界の中、主人公の< チリル >は、最弱と呼べる男だった。  そんな力なき者には厳しいこの世界では【 嫁取り 】という儀式がある。 そこで男たちはお嫁さんを貰う事ができるのだが……その儀式は非常に過酷なモノ。死人だって出ることもある。 しかし、どうしてもお嫁が欲しいチリルは参加を決めるが、同時にキラキラ幼馴染も参加して……?    完全無欠の美形幼馴染 ✕ 最弱主人公   世界観が独特で、男性にかなり厳しい世界、一夫多妻、卵で人類が産まれるなどなどのぶっ飛び設定がありますのでご注意してくださいm(__)m

奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される。

拍羅
BL
転生したら奴隷商人?!いや、いやそんなことしたらダメでしょ 親の跡を継いで奴隷商人にはなったけど、両親のような残虐な行いはしません!俺は皆んなが行きたい家族の元へと送り出します。 え、新しく来た彼が全く理想の家族像を教えてくれないんだけど…。ちょっと、待ってその貴族の格好した人たち誰でしょうか ※独自の世界線

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

処理中です...