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第二十三章

786 思惑が判明して

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( ドノバン )


「 ハハッ、そうか・・。

全くとんでもねぇ事をしでかしてくれたもんだ。エドワードの大馬鹿野郎が・・。

下手をしたら国が滅びるぞ。 」


《 国が滅ぶ事より、自身のプライドを満たす事の方が大事なのだろう。

本当に愚か者だよ、エドワード様も・・この計画に喜んで加担する者達も同様にな。


ーーーしかし、本当に非の打ち所のない作戦だ。

もしこれでソフィア様が犠牲になれば、教会は大司教の派閥が勝利しエドワード派閥に加担。

仮にソフィア様が生き残ったとしても、そのせいで国民の命が奪われたと小さな噂を流すだけで教会に反発する者達が現れ、三代権力の一角が崩れる。

どちらにせよエドワード派閥にとっては旨味しか無い作戦というわけだ。 》



伝電鳥を通してカルパスから語られる敵サイドの思惑に、大きくため息が漏れる。


確かにこれが成功すれば、恐らくどちらに転んでもエドワード派閥の大勝利だろうが、それ以降はどうするつもりなんだか・・。


火を見るよりも明らかな結果に心の底から呆れ果ててしまって言葉も出ないが、恐らく彼らにとっては ” 未来 ” という不確かなモノより ” 今 ” が大事なのだろうという事は分かる。

今の自分のプライドを守る事

贅沢できる環境を維持する事

犠牲に選ばれる者達に対して抱く歪んだ優越感

それが未来を見えなくしてしまっているのかもしれない。


「 まっ、別に個人のクソみてぇな性格に関しちゃ文句は言わねぇけど?

ただ、そういうヤツがトップ層に居座るのは駄目だよな~。 」


《 何をブツブツ言っているのだ・・。

まぁ、ただ連中にとって大誤算だったのは孵化するタイミングが遅すぎた事だ。

せっかく王都からゴミみたいな冒険者達を派遣し卵の餌を存分に与えたのに、我が主君のリーフ様がどうやらそれを食い止めて下さったらしい。


くくっ、コチラに時間を与えてしまった事が致命傷になったな。 》



心底楽しそうに笑うカルパス。

俺もこの後に起こるであろう事を想像し同じく笑いが溢れた。



「 『 代償の選択 』を告げた時のエドワード達の顔は見ものだろうな!

自分たちは高みの見物をするはずだったのに ” 代償 ” にされると知ったら・・・

下手したらショック死するんじゃね?

くぅ~っ!!俺も見たかった!!


ーーっつーか・・またリーフかよ・・。

あいつ何でいつも事件の渦中にいるの?

なんかそういうスキルでも持ってんの?ってくらいジャストなタイミングでいつもやらかすよな。 」



《 さぁな?

ーーーしかしいつも我々では思いもよらぬやり方で、気がつけば解決して下さるから・・

イザベルは ” もしやイシュル神の御使い様なのでは? ” と言っていたよ。

今回も一番BESTな方法へ我々を導いて下さったのだから、あながち間違いではないと今は私も思っている。 》



「 おいおい、やめろって。

あいつはそんな神聖なもんじゃねぇだろ~。

この間なんて ” 美熟女特集 ” 見せたらウヒョヒョ~イ!って鼻の下伸ばしてニタニタしてたぜーーー・・はいっ!嘘~。超嘘~! 」


不穏な空気が伝電鳥から漂ってきたので慌てて口を閉じる。

その後はしばしの沈黙が流れたが、それを破ったのはカルパスの小さな呟き声であった。



《 ドノバン、お前もグリモアで最後を迎えるのか? 》


「 まぁな!俺は死ぬ時は戦いながら死ぬって決めてるんでぇ~。

それに自分の命を使って倒す最強の化け物様をこの目で見ないと勿体ないじゃん。

家族とはとうの昔にお互い覚悟は決めてるから問題ねぇさ。


俺は元騎士として最後まで戦って死ぬ。

俺らしい・・リーフ風に言えばハッピーエンドだろ? 」



ウヒョヒョ~イ!とリーフの真似をして声を上げると、カルパスが小さく笑う声が伝電鳥から伝わってきた。


《 お前は本当にブレないな、ドノバン。


・・私はあの黒みつ君の絵を見た時に、最悪の未来としてこの事態を覚悟したんだ。

その時点で卵は大地と同化し動かせない。

結果、グリモアを中心に多くの者達が犠牲になるだろうーーーとな。


私は分かっていたのに見てみぬ振りをしてしまった。

・・きっと私はこれから地獄に落ちるだろう。 》


しんみりと言ったカルパスの声に対し、俺は大きく息を吐き出し、その息を思い切り目の前にいる伝電鳥に吹きかけてやった。

吐き出された息に対し伝電鳥は "   イヤイヤ~   "   とするようにプルプルと顔を振る。


《 ・・・私の伝電鳥を虐めるのは辞めてくれないか? 》


ズモッ・・と怒気が部屋の中に充満し始めたが、俺はプププーーッと笑いながら、嫌がる伝電鳥の頭を人差し指でクリクリと弄んでやった。

すると益々怒気を強めた様子でカルパスは俺に文句を言ってくる。


《 ・・それはモンスターに対する虐待行為だぞ? 

直ぐにそんな非道な事は辞めるんだな。 》


「 おぉ~怖っ!

お前ってさ~昔っから善人にはものすご~く優しくて、逆に悪さするやつにはものすんごぉぉ~く容赦しねぇよな。

お前の怒った声を聞くとよ、今でも金のお玉ちゃんがヒュヒュンッ!ーーってなるんだよなぁ~。

トラウマじゃん。責任とってぇ~。 」

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