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第二十一章
724 絶望
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( リーフ )
「 ははっ!まだ生きてっか~?ユーリス。 」
「 ・・は?ちょっと辞めて下さいよ。
貴方のようなおじさんと違って俺、若いんで。
少なくとも貴方よりは長く生き残りますから。 」
ドノバンはそれを聞いて嬉しそうに目を細めた後、今度は力なく笑った。
「 カルパスは・・街にモンスターが入り込んじまったところを見ると、先に逝っちまったらしいな。
こりゃ~一匹でも多く道連れにしねぇとあの世でまた怒られるわ~。お~怖っ。 」
「 あんな少ない人数で西門を守るなんて土台無茶な話ですよ。
傭兵ギルドも全滅か・・ここも俺とドノバンさんを残して全滅ですね。 」
まるで日常会話の様に軽く話している二人だが、俺はカルパスの名前が聞こえヒュッ!と息を飲む。
カルパスが死んだ・・?
驚く俺の前でドノバンはいつもの間が抜けた顔で黒く染まった空を見上げた。
「 あーーーー・・・悪くねぇ人生だったよなぁ~。
・・・うん、結構楽しかったわ。
唯一の心残りは未来ある若者まで道連れにしちまう事かね。 」
「 ・・はぁ・・。俺は騎士になった時点でとっくに覚悟は決めてます。
元々両親が死んでからは孤児でしたから悲しむ人達もいませんしね。
モンスターに殺されるのが先か、それとも ” 代償 ” にされるのが先か・・。
俺の心残りは・・・何一つ救えなかった事です。
ーーーーーっ・・・あ~・・・悔しい・・なっ! 」
最後は掠れた声で叫び、目元を乱暴に拭ったユーリスさんを、ドノバンは痛ましそうな顔で一瞬見たが、直ぐにニカッといういつもの人をからかう様な笑顔を浮かべた。
「 何もって事はねぇさ。
これからを生きる奴らに対して必ず何かは残る。
お前は良くやった。流石は俺の弟子だぞ~!
一人で救えるモノにゃ~限りがあるってもんよ。
さぁ、もうひと暴れしようや。
この命、最後まで派手に散らしてやろうぜ! 」
ドノバンは大剣を振りながらモンスターの大群へと突っ込んでいった。
それを見守ったユーリスさんは剣を胸に当て黒い空に向かって叫ぶ。
「 第二騎士団副団長!ユーリス!!
この命、アルバード王国の未来のために捧げる!!
ーーー行くぞっ!!! 」
そしてユーリスさんもモンスターの大群へ突っ込んでいき、やがて二人はその中に消えてしまった。
ーーーー・・・・・
ーーーープツッ・・・
突然電池が切れた様に景色は消え、また別の光景が眼の前に浮かんできた。
沢山の人たちの泣き声や痛みを絶えず訴えるうめき声。
所狭しと床に横たわるケガをし血だらけの人々に、中には明らかにもう助からないと思われる重体者も沢山いて、神官の格好をした人たちが懸命に治療を続けているが全く手が足りていない様子。
どうやらここは教会らしく巨大なイシュル像がドドンと前に立っているが・・あまりに凄惨な光景にいつもは街の人たちがニコニコと笑顔で祈りを捧げる場であった事がとても信じられない。
悲鳴に近い泣き声が常に耳を叩き、まさに絶望としか言いようのない状況の中、一人の女性の力強い声が聞こえた。
「 皆っ!簡単な食事を作ったから少しでもいいから食べて、周りのケガ人達の手当を手伝っておくれ!
動ける奴は下級モンスターでもいいから倒して頑張って助けを待とう! 」
後手で縛られたウエーブがかった茶色い髪、そして意志の強そうなキリッとした顔立ちで周りに向かって必死になって訴えているのはーーーマリンさんだった。
しかしほとんどの人たちは絶望に項垂れ動けず泣きだしてしまう人ばかり。
マリンさんは悲しそうな顔でそれを見回した後、ゆっくりと移動し始めた。
よくよく見ればマリンさんも傷だらけで、手と頭には軽く包帯が巻かれているが血が止まらないのか真っ赤に染まり、足は引きずって歩いている。
” マリンさん! ”
俺は懸命に叫んだが全く聞こえている様子はなく、マリンさんは教会の端の方へ移動すると、そこにはある一人の横たわった女性とその女性に向かって懸命に回復魔法を掛けている二人の女の子達がいた。
二人の子供は真っ赤なリボンがトレードマークのリーンちゃん、そして隣にいるのはぱっつんとしたおかっぱ頭のナッツちゃんだ。
二人は目が溶けそうな程泣いていて、顔をぐちゃぐちゃにしながら必死に回復魔法を掛け続けるが・・・
横たわった女性の傷は素人目から見ても助からないもので、肩から腹まで大きく切り裂かれ、傷から流れる血で床はどんどん赤く染まっていく。
髪は乱れてほとんど解けているが2つに結ばれた三つ編みに優しそうな顔立ちーーーー
赤く染まっている彼女は・・ルルちゃんであった。
ルルちゃんはひゅ~・・ひゅ~と苦しそうにやっと息をしている状態で、マリンさんはそんなルルちゃんを一瞬耐える様な表情で見下ろした後、無理やり笑みを作り懸命に治療を続けてくれているリーンちゃんとルルちゃんの頭を撫でながら「 ありがとう。 」と言った。
そして汗でルルちゃんの額に張り付いている前髪をスッ・・と優しく払い、そのままおでこ辺りをゆっくり撫で始める。
「 ルル、あんたにゃ~苦労掛けたね。
あの人が死んじまってからは二人で頑張ってきて・・・
経営が上手くいかずに辛いときもあったし悲しい事も沢山あったけど楽しかったね。
・・・イシュル神の元に行けばきっともう辛い事も悲しい事も何一つないはずさ。
だから先に行ってあの人と待っていておくれ。
私は一匹でも多く道連れ多く道連れにしてそっちに行くからね。 」
ルルちゃんは苦しそうにしながらもニコッ・・と笑い「 ・・う・・ん・・。 」と返事をした後、そのまま眠るように息を引き取った。
それを見届けてからマリンさんは近くに落ちている剣を拾い手に持つと、大泣きするリーンちゃんとナッツちゃんの頭をもう一度撫でてからーーーー病院の外へと走っていった。
「 ははっ!まだ生きてっか~?ユーリス。 」
「 ・・は?ちょっと辞めて下さいよ。
貴方のようなおじさんと違って俺、若いんで。
少なくとも貴方よりは長く生き残りますから。 」
ドノバンはそれを聞いて嬉しそうに目を細めた後、今度は力なく笑った。
「 カルパスは・・街にモンスターが入り込んじまったところを見ると、先に逝っちまったらしいな。
こりゃ~一匹でも多く道連れにしねぇとあの世でまた怒られるわ~。お~怖っ。 」
「 あんな少ない人数で西門を守るなんて土台無茶な話ですよ。
傭兵ギルドも全滅か・・ここも俺とドノバンさんを残して全滅ですね。 」
まるで日常会話の様に軽く話している二人だが、俺はカルパスの名前が聞こえヒュッ!と息を飲む。
カルパスが死んだ・・?
驚く俺の前でドノバンはいつもの間が抜けた顔で黒く染まった空を見上げた。
「 あーーーー・・・悪くねぇ人生だったよなぁ~。
・・・うん、結構楽しかったわ。
唯一の心残りは未来ある若者まで道連れにしちまう事かね。 」
「 ・・はぁ・・。俺は騎士になった時点でとっくに覚悟は決めてます。
元々両親が死んでからは孤児でしたから悲しむ人達もいませんしね。
モンスターに殺されるのが先か、それとも ” 代償 ” にされるのが先か・・。
俺の心残りは・・・何一つ救えなかった事です。
ーーーーーっ・・・あ~・・・悔しい・・なっ! 」
最後は掠れた声で叫び、目元を乱暴に拭ったユーリスさんを、ドノバンは痛ましそうな顔で一瞬見たが、直ぐにニカッといういつもの人をからかう様な笑顔を浮かべた。
「 何もって事はねぇさ。
これからを生きる奴らに対して必ず何かは残る。
お前は良くやった。流石は俺の弟子だぞ~!
一人で救えるモノにゃ~限りがあるってもんよ。
さぁ、もうひと暴れしようや。
この命、最後まで派手に散らしてやろうぜ! 」
ドノバンは大剣を振りながらモンスターの大群へと突っ込んでいった。
それを見守ったユーリスさんは剣を胸に当て黒い空に向かって叫ぶ。
「 第二騎士団副団長!ユーリス!!
この命、アルバード王国の未来のために捧げる!!
ーーー行くぞっ!!! 」
そしてユーリスさんもモンスターの大群へ突っ込んでいき、やがて二人はその中に消えてしまった。
ーーーー・・・・・
ーーーープツッ・・・
突然電池が切れた様に景色は消え、また別の光景が眼の前に浮かんできた。
沢山の人たちの泣き声や痛みを絶えず訴えるうめき声。
所狭しと床に横たわるケガをし血だらけの人々に、中には明らかにもう助からないと思われる重体者も沢山いて、神官の格好をした人たちが懸命に治療を続けているが全く手が足りていない様子。
どうやらここは教会らしく巨大なイシュル像がドドンと前に立っているが・・あまりに凄惨な光景にいつもは街の人たちがニコニコと笑顔で祈りを捧げる場であった事がとても信じられない。
悲鳴に近い泣き声が常に耳を叩き、まさに絶望としか言いようのない状況の中、一人の女性の力強い声が聞こえた。
「 皆っ!簡単な食事を作ったから少しでもいいから食べて、周りのケガ人達の手当を手伝っておくれ!
動ける奴は下級モンスターでもいいから倒して頑張って助けを待とう! 」
後手で縛られたウエーブがかった茶色い髪、そして意志の強そうなキリッとした顔立ちで周りに向かって必死になって訴えているのはーーーマリンさんだった。
しかしほとんどの人たちは絶望に項垂れ動けず泣きだしてしまう人ばかり。
マリンさんは悲しそうな顔でそれを見回した後、ゆっくりと移動し始めた。
よくよく見ればマリンさんも傷だらけで、手と頭には軽く包帯が巻かれているが血が止まらないのか真っ赤に染まり、足は引きずって歩いている。
” マリンさん! ”
俺は懸命に叫んだが全く聞こえている様子はなく、マリンさんは教会の端の方へ移動すると、そこにはある一人の横たわった女性とその女性に向かって懸命に回復魔法を掛けている二人の女の子達がいた。
二人の子供は真っ赤なリボンがトレードマークのリーンちゃん、そして隣にいるのはぱっつんとしたおかっぱ頭のナッツちゃんだ。
二人は目が溶けそうな程泣いていて、顔をぐちゃぐちゃにしながら必死に回復魔法を掛け続けるが・・・
横たわった女性の傷は素人目から見ても助からないもので、肩から腹まで大きく切り裂かれ、傷から流れる血で床はどんどん赤く染まっていく。
髪は乱れてほとんど解けているが2つに結ばれた三つ編みに優しそうな顔立ちーーーー
赤く染まっている彼女は・・ルルちゃんであった。
ルルちゃんはひゅ~・・ひゅ~と苦しそうにやっと息をしている状態で、マリンさんはそんなルルちゃんを一瞬耐える様な表情で見下ろした後、無理やり笑みを作り懸命に治療を続けてくれているリーンちゃんとルルちゃんの頭を撫でながら「 ありがとう。 」と言った。
そして汗でルルちゃんの額に張り付いている前髪をスッ・・と優しく払い、そのままおでこ辺りをゆっくり撫で始める。
「 ルル、あんたにゃ~苦労掛けたね。
あの人が死んじまってからは二人で頑張ってきて・・・
経営が上手くいかずに辛いときもあったし悲しい事も沢山あったけど楽しかったね。
・・・イシュル神の元に行けばきっともう辛い事も悲しい事も何一つないはずさ。
だから先に行ってあの人と待っていておくれ。
私は一匹でも多く道連れ多く道連れにしてそっちに行くからね。 」
ルルちゃんは苦しそうにしながらもニコッ・・と笑い「 ・・う・・ん・・。 」と返事をした後、そのまま眠るように息を引き取った。
それを見届けてからマリンさんは近くに落ちている剣を拾い手に持つと、大泣きするリーンちゃんとナッツちゃんの頭をもう一度撫でてからーーーー病院の外へと走っていった。
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