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第二十一章

721 地獄

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( リーフ )


ガキィィン、ガキィィーーン、キンッ、キンッーーーー



剣が激しくぶつかり合う音が聞こえ、俺はハッ!と目を覚ます。

すると目の前に広がっていたのはーーー



紛れもないこの世の地獄そのものであった。




一面焼け野原の様になっている地に、まるで絨毯の様に転がっている数えきれない程の死体の数々。

風に乗って臭ってくるのは鉄の匂いや何かが焦げた耐え難い ” 不快 ” を与えてくる匂い。

そして耳に絶えず聞こえてくるのは剣のぶつかり合う音と魔法による爆発音、悲鳴、怒号ーーー


一瞬で気を引き締め、剣を抜こうとしたが身体が全く動かない!!


く、くそ~!!動け!動けーー!


必死に動こうとしたが、やはり指一本動かせない様だったのでせめて状況だけでも掴まなければ!と俺は視線を動かし何が起きているのか把握しようとする。


爆風で悪くなっている視界の中、必死に目を凝らすと大勢の人間たちが戦っているのが分かり、更にお互いの陣地に掲げている大きな旗がそれぞれ見えた。


一方は白銀の鎧に白い旗。

そしてその旗には白い白馬と短剣をモチーフにしたシンボルマークがデカデカと描かれている事から、その集団はイシュル教会が独自に持つ最強戦力


【 聖兵士団 】ーーーであることが分かる。


対してそれと真っ向から衝突している大軍団は、まるで真逆の黒い鎧に黒い旗。

更に旗のマークは黒い馬に血に塗れた短剣、そして周りを交差針が取り囲むというシンボルマークであり、どう考えても教会にいい想いは持っていないであろう事が伺えた。


もしかしてあれはーーー【 反教会組織 】・・??


黒い鎧を着た集団は物凄い気迫で聖兵士団を蹴散らしていき、自分の命さえも簡単に犠牲にしては前へ前へと進んでいく。


「 くそっ!くそっーーー! 」


眼の前で起きている惨状が悲しくて、何度も叫び、懸命に身体を動かそうとしている間にも死体の数はどんどんと増えていった。


その反教会組織?の集団を率いているのは、真っ黒な鎧を着た一人のフルフェイス兜を被った人物。

体格からして多分男で、遠目からもかなりの強さをもっている事が分かる。


そいつが剣を一振りするだけで沢山の聖兵士達の命が散っていき、徐々に聖兵士側の前衛陣は押されていった。


両名の疲弊っぷりからも戦いは既に佳境に入っている様子で、黒いフルフェイス男がとうとう前衛陣を全員切り落とすと、後ろの聖兵士達が怯えだし、後ろに一歩、また一歩と下がり始めた、その時ーーーー



「 狼狽えるなっ!!我らが使命を忘れたかっ!!

我が身はイシュル神と共に。そして平和と平等の精神を守るため、我らは負けるわけにはいかぬ!! 」


強く一喝する声に後ずさっていた聖兵士達全員の足が止まる。


後ろからゆっくり現れたのは白銀の鎧にフルフェイス姿の聖兵士。



ソフィアちゃんの ” 世界で一番大好きな人 ” 

アゼリアちゃんだ!


アゼリアちゃんが黒いフルフェイスの男の前に立つと、そいつはピュ~♬と挑発する様に口笛を吹いた。


「 やっとお出ましか。

え~と?今は聖兵士の中隊を率いているリーダー様だっけ?

随分出世したよな~?

いつの世も人の命を何とも思ってねぇクソみてぇなヤツらが、下を踏み台にして上に上がっていくんだ。

上手いこと言って沢山の人を道具みてぇに殺して・・今の地位もそのお陰だもんな?

お綺麗な王女様は今頃お城の中で優雅にお茶でも飲んでるんだろう~よ。

このクズ野郎共が。


俺はぜってぇお前たちをゆるさねぇ。 」


「 おろかものがっ!!そんなわけないだろう!!

ーーーーあの時だってっ・・・!!


ソフィア様の苦しみを何も知らぬくせに勝手な事を言うなぁぁーー!!! 」


アゼリアちゃんは怒鳴りながら刀を抜くと、全力で黒フェイスの男に斬りかかる!


黒フェイスの男はその攻撃を自身の長剣で難なく受け止め
、そのまま二人は凄まじい剣の打ち合いになった。

その攻撃の余波で辺り一面に激しい風が吹く。


「 お前こそふざけるなっ!!!

そのソフィア様を助けるために一体何千・・いや何万人の人間が死んだんだっ!!

なぁっ!!答えろよっ!!!

たった一人を救うため一体いくつの街を!人の命を!犠牲にしたんだ!?お前らは!!


何も分かってねぇのはお前の方だろう!! 」


ガッっ!!と交わった剣、黒いフルフェイスの男はそこから大きく前に出てアゼリアちゃんの刀を払うとアゼリアちゃんは大きく後ろに飛び、二人の間に距離が開く。


睨み合う二人だったが、突然黒いフルフェイスの男の方が握っていた長剣を地面に放り投げた。


そして何かのスキルを発動したのか、突然黒いフルフェイスの男の横にグニャ~とした空間の穴の様なモノが現れパカッと口を開けると、彼は迷わずその真っ黒な口に片手を突っ込む。


「 やっぱりよぉ~、自分の愛剣じゃねぇと決着は中々つかないよな~。

そうだろう?アゼリア。 」


黒いフルフェイスの男は空間の穴に突っ込んでいた穴から勢いよく手を出すと、そこに握られていたのは巨大な守護大剣で、それを構えた黒いフルフェイスの男はそのまま顔を覆っていたフルフェイスを勢いよく投げ捨てた。

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