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第二十一章

716 終わりの時

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( リーフ )

そしてしばらくして、ハッ!!と正気に戻れば、いつも通りベッドの上に座っているレオンのお膝の上で腹話術人形になっている状態であった。

上を見上げるとレオンは酷く幸せそうに微笑んでいて、ずっとドレスをさわさわと触っている。


何だか幸せそうだな・・


レオンが嬉しそうにしていると、何だか俺も嬉しくなってきて ” ま、いっか~家畜でも ” という気持ちになってきた。


レオンが嬉しい。

レオンが笑う。

レオンが、レオンがーーーー・・・


それがぐるぐると回って、俺はーーーー今、凄く ” 幸せ ” だなと思った。


その心地よい ” 幸せ ” にしばし身を任せていたが、直ぐにヒヤッとしたものが心の中に広がり、急速に意識は覚めていく。


俺は幸せ、でもレオンの幸せは偽物で、俺が楽しい事がイコール、レオンの楽しい事ではない。

レオンは ” あるがまま ” を全て受け入れてしまうから、今の状況を ” 幸せ ” であると受け入れているだけなんだ。


レオンの ” 幸せ ” そうな顔を見ていられなくて、スッと目線を下げて視線を逸らす。


モヤ・・

モヤモヤモヤモヤ~~


嫌なモノが心全体に充満していくのを感じて ” おじさんチョップ! ” ” おじさんチョップ! ” と必死にそれを祓おうとしていると・・・


「 結婚、早くしたいですね。 」


レオンがポツリと言った。



するとモヤモヤした霧の様なものは次第に晴れていき、心の中でおじさんチョップをしていた俺はピタリと止まる。

そして晴れた視界の中から現れたのはレガーノの教会で、扉の前には沢山の人たちがお花や麦のシャワーを準備して今か今かと教会の扉が開くのを待っている様子だった。


モルトとニール。カルパスやドノバン、リーフ邸の皆にあげ玉、黒みつーーー


今まで出会ってきた全ての人たちが全員その場にいて、皆幸せそうにニコニコと笑っていた。


そしてーーー


リ~ンゴンリ~ンゴン!


大きな鐘の音が鳴り響くのと同時に扉が開かれ、皆が一斉に拍手と歓声を上げながら手に持っている物を空へと投げる。


花が空を舞い麦のシャワーが降り注ぐ中、それを一身に浴びながら教会からゆっくり歩いて出てくる白いタキシード姿の男性とウエディングドレスを着ている女性。


女性の方は非常に可愛らしいお嬢さんで、息子の嫁に是非!!と言いたくなるくらい優しそうで慈愛に満ちた笑みを皆と隣にいる花婿さんに向けていた。


そしてそんな花嫁さんを愛おしい目で見つめている花婿はーーーー





レオンだった。




それを見てまず浮かんだのは ” 喜び ”

レオンが幸せで嬉しい。

そんな気持ちが大きく前に出てきて涙がボロボロと流れていった。


レオンが幸せで本当によかったぁぁぁ~。

俺は嬉しい!ホントにホントに良かったよぉぉぉ~~。


レオンのご両親がいたらびっくりするくらいギャギャン!と大泣きしているとーーー

突然真っ黒で世にも恐ろしい化け物の様な姿をした何かが ” 外 ” の世界から入り込んできた。




” 寂しい ”




それは ” 嬉しい ” を次々と食べていってしまい、どんどんどんどんと大きくなっていって、今度はレオンを祝福するために投げられている花や麦シャワーを、そしてとうとう拍手をしている皆まで食べ始めてしまった!!


” や、やめろ!!何してるんだ!! ”


直ぐにダッ!!と駆け寄って、その ” 寂しい ” のお尻から生えている尻尾?の様なモノを引っ張り止めようとしたが全く止まってくれず・・


とうとうそいつは教会も、花嫁さんまでパクリと食べてしまったのだった。


俺はあまりの事に膝をつき呆然とうなだれていると、フッと眼の前に男性の靴先が見えた。


ゆっくりゆっくりと視線を上げていくと次第に白いタキシードが見え、そしてその上にはレオンの顔が見えたが、その顔は憎悪に歪んでいる。














” 何故俺の幸せを邪魔するんですか?











貴方の役目はもう終わりなのに ”








ーーーハッ!!!

意識は現実に戻り、俺は見下ろしてくるレオンの方へ視線を再度向ける。



幸せそうな顔。

それを見て俺は心から嬉しいと思っている。



でもーーーーー






「 結婚・・・嫌だな・・ 」

それと真逆の答えがボツりと口から飛び出し、直ぐにハッ!!として口を両手で押さえる。


俺は何を・・・???


レオンが結婚するのが何となく嫌など、まるで幸せになるのに嫉妬しているみたいじゃないか!

そう思い、自分の真っ黒けな心に大ショックを受けた。


とうとう俺は心まで悪役になってしまったらしい。


あああああ~・・・!!

うめき声が口の奥に響き、今度は自分の醜い心におじさんパンチ!おじさんキック!をバシバシと打ちながら、レオンへ再度チラッと目線を向けるとーーーー



そこには完全なる ” 無 ” を表現したかの様なレオンの顔があった。




おおおおおお!!!??


喉がひっくり返る様な変な音がしたが、それを気にかける余裕もなく初めて見たレオンの大激怒の表情に固まったまま動けずにいると・・

レオンはそのまま淡々と、そして静かに喋りだす。



「 ・・・いやですか・・結婚は。


・・・そうですか・・。 」



「 あ、ごっごめん。俺・・ちょっと変な言葉が滲み出ちゃったっていうか・・。 」



「 俺はーーー 」



レオンが俺のモゴモゴした言葉をバシッ!と切って言った。


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