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第二十章
707 おめでとうございます!
しおりを挟む( アゼリア )
「 ヨセフ司教、彼は平民ではございません。
それに例え平民であったとしても、あっ・・愛人や囲うなどの言葉は失礼にあたりますよ!
その様な事をお考えになるのはお止め下さい。 」
「 へっ??彼、平民ではないのですか?
では、まさか・・下民、もしくは奴隷であると・・
犯罪を犯すようなお方には見えませんし、まさか借金のカタで奴隷に・・?
・・・・
なんとっ嘆かわしいっ!!
私はその手の話が反吐が出るくらい嫌いなのですよ!
では、リーフ君を奴隷にしたご両親を捕まえ早速奴隷にしてやりましょう!
そして彼の身分は教会預かりにすれば問題はないですね。
では、早速・・・。 」
ダッ!と各ギルドへの緊急連絡用魔導具を持って来ようと走り出すヨセフ司教を羽交い締めにしてソフィア様の前に差し出すと、ソフィア様はいつもよりだいぶ強い口調で言った。
「 最後まで話を聞いて下さい!
彼はリーフ・フォン・メルンブルク。
公爵家のご子息ですから貴族なのですよ。
その存在は長らく隠されていたため、私も試験時に初めてお会いしたのですが・・。 」
「 ややっ!!! 」
驚いた様子のヨセフ司教は直ぐにババッ!!とリーフ様の方へ視線を送ったが、リーフ様はレオンに持ち上げられてゴリゴリとその硬い胸に擦られているためこちらを見てはいなかった。
あれは拷問の一種なのか・・?
以前から不思議に思っていた事を改めて思いながらジーーッと見つめていると、ヨセフ司教がそれを遮る様にソフィア様に顔を近づけギラギラした目を見せる。
「 なんとっ!!
それはおめでとうございます!ソフィア様!
貴族ならば結婚するのになんら問題はございません!!
ーーで?いつ頃ご婚約のお話を公表されますか?
結婚式は我が教会の威信をかけて盛大に行いましょう。
アゼリア、勿論その時はお前も一緒に彼の隣に控えなさい。
側室としてリーフ様の脇をぎっちりしっかり固めるのですよ! 」
「「 ヨセフ司教!!! 」」
あんまりな内容に流石にソフィア様と同時に叫んでしまったが、ヨセフ司教はキョトンとした顔で首を傾げ、その後はリーフ様とレオン、そしてソフィア様と私を順々に見て突然、あっ!と声を上げた。
「 分かりましたぞ!!あのやたら強そうな正妻殿のことですね!?
あのとても女性には見えない無駄のない感じの肉体に漂う強者のオーラ・・っ!!
恐らくはかなりの実力を持つ前衛職の者でしょう。
実は私、あの者を視認すると鳥肌が止まらないのですが・・何か特殊なスキルでも持っているのですかね?
まぁ、何にせよアゼリア、お前の出番だぞ!
何としてでもあの正妻殿と決闘し、そして勝つのだ! 」
シュッ!シュッ!と一撃でやられそうなエアーパンチを繰り出すヨセフ司教に全身の力が抜ける。
どこをどう見たらあれが女に見えるのか・・
更に私など鳥肌どころか全身に悪寒が走るほどの化け物に敵うわけがない。
ブツブツ・・と悔しさや恨みを呟く私に汗を掻きながら、ソフィア様は再度説得するため話そうとした、その時ーー「 やややっ!!! 」・・とまた突然ヨセフ司教が叫ぶ。
今度は何だ?とうんざりした目を向けたが、わーーっ!と興奮しているヨセフ司教には見えない様だ。
「 ちょっと待って下さい!
先程公爵家< メルンブルク家 >といいましたか??
・・
あのメルンブルク家ですよね?
ん?んんんんん~???
外見が違い過ぎませんか??全然似ていないですよね?! 」
結構な大声で言ってしまったため、ソフィア様と私で慌てて口を塞ぐ。
しかしリーフ様の耳にバッチリ聞こえてしまった様で、今は子猿の様に抱っこされて耳の辺りの匂いを嗅がれているリーフ様がフッとこちらを振り向いた。
「 そーそー。全然似てないんだよ~、俺。
でもそれを言うと傷つけちゃうから内密で頼むよ~。 」
全く気にする様子もなく、それどころか挨拶をする程度の物言いに私達三人はキョトンとしてしまう。
これは以前からそうであった様だが、リーフ様は自身の境遇やご家族に対し驚くほどあっさりしている。
自分の置かれている境遇を嘆いたりしないのだろうか?
” 家族 ” への渇望はないのだろうか?
ご両親に対して様々な感情が渦巻かないのだろうか・・?
不思議な気持ちが湧き、気がつけば私は口を開いていた。
「 リーフ様はメルンブルク家を・・ご両親に対し想う事はないのですか? 」
少し前に耳にした『 リーフ様暗殺事件 』
結局は謎を残したまま強引に終わらせられそうなこの事件だが・・大体の者達はその犯人を知っている。
それを聞いた時は自身の境遇と重ねて心が痛かったが、それに対しての反応が一切ないリーフ様がただ不思議だとも思った。
だからこそポロッと出てしまった質問だったが、言った後直ぐにハッ!として口元を押さえる。
失礼な事を聞いてしまった・・
そう後悔したが、やはりリーフ様は何でもないかのようにペラペラとそれに答える。
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