712 / 1,370
第二十章
697 愛と孤独
しおりを挟む
( アゼリア )
「 詳しい事は分かりませんが、先程学院の授業中に恐ろしい何かの気配を感じました。
そちらの様子はどうでしたか? 」
「 そうでしたか・・
こちらはほぼ全ての聖職者達が不調を訴え倒れました。
空の色が戻ると同時にそれもなくなりましたが・・
恐ろしい何かの気配とは一体何なのでしょうか・・?
これから各ギルドへと情報を送っておこうと思います。
ソフィア様、詳しいお話を伺っても良いでしょうか? 」
ヨセフ司教の言葉を受け、ソフィア様が学院であった出来事を詳しく説明すると、ヨセフ司教の顔は次第に険しいものへとなっていく。
「 聖職者にのみ影響を与えるとは・・
更にスキル< 鑑定 >を使うという事は、その謎の人物は聖職者である可能性もあると言う事ですか・・。
< 鑑定 >を使える者は未登録の者以外は全て教会に保管されてますので、一応調べておくべきですね。
しかし、グレスター卿の息が掛かった輩からその情報を開示してもらうのは、少々骨が折れますなぁ・・ 」
「 それならば問題ありません。
ジェニファー様にご協力をお願いいたしましたので。 」
ソフィア様のお答えに、ヨセフ司教はおぉ~??と意外そうな表情で動きを止めると、次の瞬間、ニマニマニマ~と目を三日月の様にして胡散臭い笑みを浮かべた。
「 おやおやおや~?
何だかソフィア様、最近色々と変わりましたよね?
明るくなったというか笑顔も増えた様な気がします。
人をこの様にガラリと変えてしまうモノは一つしかございません!
ーーーズバリ!!恋の病ですねっ!!?? 」
ズギャギャーーン!!と凄い熱量を込めて断言するヨセフ司教に、私とソフィア様は盛大なため息をついた。
このヨセフ司教、普段は大変有能で上にも下にも尊敬されている司教様ではあるが、人の恋路に関わる事だけはその有能さが発揮されない。
その為、多くを巻き込む盛大な余計なお世話をする事でも非常に有名なお方なのである。
それはプライベートだけならまだしも仕事にまで持ち込まれるので、つい最近では未婚の男女を集めて一緒に祈る『 お祈り来い・恋パーティー 』などというふざけたイベントを企画し、上層部から苦情が入った。
” 教会を訳の分からぬ事に使うな、無礼者 ” ーーーと。
至極真っ当過ぎる返答に対し周りは大いに納得したが、肝心のヨセフ司教はプンプンと子供の様に怒り狂った。
” こうなったら実力行使するしかありませんね! ”
そんな訳のわからぬ事を言い出し、大量のカユジ虫を持って教会本部まで行こうとしたので、周りの部下たちがそのカユジ虫の一匹をソッ・・と取り出し、ヨセフ司教に投げつけ落ち着かせた事もあった。
だからこんな状況には慣れたもの。
そのため私とソフィア様はじっとりした目を向け、” また始まった・・・ ” と動じること無くヨセフ司教を見つめ落ち着くのを待った。
しかしそんなあまり好意的ではない私達の目など気にすることもなく、ヨセフ司教はニヤニヤ、ウロウロ~と私達の周りをうろつくので致し方なく私は口を開く。
「 ヨセフ司教・・ソフィア様にその様な者はおりません。
毎回毎回よく分からぬ邪推をしないで頂きたい。 」
「 ほほ~う?果たして本当にそうなんですかねぇ~?
そういえばアゼリア、お前もどうしたというのですか?その変わりようは?
まるで牙を抜かれたネコちゃん!
・・・はははは~ん???
もしやもしや~ーーーーー・・貴方も恋しちゃってますね!!? 」
ズビシッ!と指を私の頬に突き刺し、更に目が孤を描くのを見て・・・ピクピクとこめかみが蠢く。
ヨセフ司教は上司・・ヨセフ司教は上司・・・
ブツブツと呟きながら何とか気持ちを落ち着けていると、突然フッとヨセフ司教の纏う空気が変わった。
「 恋・・愛・・それは本当に素晴らしい感情です。
人を幸せに導く、生きるための希望となる事でしょう。
しかしーーーー 」
ヨセフ司教は、私の頬に触れていた指をゆっくりと外す。
「 それは人を新たな絶望へと追いやる原因にもなるのですよ。
その2つはまさに表裏一体!・・とても危うい感情だ。
そして希望を絶望に変える原因は ” 孤独 ” であると、私はそう思っています。
そして ” 愛 ” と ” 孤独 ”
この2つは絶望的に相性が悪い。 」
ヨセフ司教は最後はポツリとそう言って天井に描かれているイシュル神の絵画を見上げた。
「 ” 愛 ” を知ってしまった者が ” 孤独 ” になること。
これは心に狂気を生み出します。
その狂気はいずれ自身だけではなく全てを飲み込むこの世で最も恐ろしいものへと進化してしまうのですよ。
それこそ、その全てを受け入れ共存できる人間がいたとしたら・・・
人はそれを ” 神 ” と呼ぶのでしょうね。
人が持ち続けるには大きすぎる感情だ。 」
上を向いて話し続けるヨセフ司教がどんな表情をしているのか私には見えなかったが・・
その直後、ふぃ・・と下がってきた顔は先程同様ニヤニヤ~とニヤついた不快極まりない笑顔であった。
「 詳しい事は分かりませんが、先程学院の授業中に恐ろしい何かの気配を感じました。
そちらの様子はどうでしたか? 」
「 そうでしたか・・
こちらはほぼ全ての聖職者達が不調を訴え倒れました。
空の色が戻ると同時にそれもなくなりましたが・・
恐ろしい何かの気配とは一体何なのでしょうか・・?
これから各ギルドへと情報を送っておこうと思います。
ソフィア様、詳しいお話を伺っても良いでしょうか? 」
ヨセフ司教の言葉を受け、ソフィア様が学院であった出来事を詳しく説明すると、ヨセフ司教の顔は次第に険しいものへとなっていく。
「 聖職者にのみ影響を与えるとは・・
更にスキル< 鑑定 >を使うという事は、その謎の人物は聖職者である可能性もあると言う事ですか・・。
< 鑑定 >を使える者は未登録の者以外は全て教会に保管されてますので、一応調べておくべきですね。
しかし、グレスター卿の息が掛かった輩からその情報を開示してもらうのは、少々骨が折れますなぁ・・ 」
「 それならば問題ありません。
ジェニファー様にご協力をお願いいたしましたので。 」
ソフィア様のお答えに、ヨセフ司教はおぉ~??と意外そうな表情で動きを止めると、次の瞬間、ニマニマニマ~と目を三日月の様にして胡散臭い笑みを浮かべた。
「 おやおやおや~?
何だかソフィア様、最近色々と変わりましたよね?
明るくなったというか笑顔も増えた様な気がします。
人をこの様にガラリと変えてしまうモノは一つしかございません!
ーーーズバリ!!恋の病ですねっ!!?? 」
ズギャギャーーン!!と凄い熱量を込めて断言するヨセフ司教に、私とソフィア様は盛大なため息をついた。
このヨセフ司教、普段は大変有能で上にも下にも尊敬されている司教様ではあるが、人の恋路に関わる事だけはその有能さが発揮されない。
その為、多くを巻き込む盛大な余計なお世話をする事でも非常に有名なお方なのである。
それはプライベートだけならまだしも仕事にまで持ち込まれるので、つい最近では未婚の男女を集めて一緒に祈る『 お祈り来い・恋パーティー 』などというふざけたイベントを企画し、上層部から苦情が入った。
” 教会を訳の分からぬ事に使うな、無礼者 ” ーーーと。
至極真っ当過ぎる返答に対し周りは大いに納得したが、肝心のヨセフ司教はプンプンと子供の様に怒り狂った。
” こうなったら実力行使するしかありませんね! ”
そんな訳のわからぬ事を言い出し、大量のカユジ虫を持って教会本部まで行こうとしたので、周りの部下たちがそのカユジ虫の一匹をソッ・・と取り出し、ヨセフ司教に投げつけ落ち着かせた事もあった。
だからこんな状況には慣れたもの。
そのため私とソフィア様はじっとりした目を向け、” また始まった・・・ ” と動じること無くヨセフ司教を見つめ落ち着くのを待った。
しかしそんなあまり好意的ではない私達の目など気にすることもなく、ヨセフ司教はニヤニヤ、ウロウロ~と私達の周りをうろつくので致し方なく私は口を開く。
「 ヨセフ司教・・ソフィア様にその様な者はおりません。
毎回毎回よく分からぬ邪推をしないで頂きたい。 」
「 ほほ~う?果たして本当にそうなんですかねぇ~?
そういえばアゼリア、お前もどうしたというのですか?その変わりようは?
まるで牙を抜かれたネコちゃん!
・・・はははは~ん???
もしやもしや~ーーーーー・・貴方も恋しちゃってますね!!? 」
ズビシッ!と指を私の頬に突き刺し、更に目が孤を描くのを見て・・・ピクピクとこめかみが蠢く。
ヨセフ司教は上司・・ヨセフ司教は上司・・・
ブツブツと呟きながら何とか気持ちを落ち着けていると、突然フッとヨセフ司教の纏う空気が変わった。
「 恋・・愛・・それは本当に素晴らしい感情です。
人を幸せに導く、生きるための希望となる事でしょう。
しかしーーーー 」
ヨセフ司教は、私の頬に触れていた指をゆっくりと外す。
「 それは人を新たな絶望へと追いやる原因にもなるのですよ。
その2つはまさに表裏一体!・・とても危うい感情だ。
そして希望を絶望に変える原因は ” 孤独 ” であると、私はそう思っています。
そして ” 愛 ” と ” 孤独 ”
この2つは絶望的に相性が悪い。 」
ヨセフ司教は最後はポツリとそう言って天井に描かれているイシュル神の絵画を見上げた。
「 ” 愛 ” を知ってしまった者が ” 孤独 ” になること。
これは心に狂気を生み出します。
その狂気はいずれ自身だけではなく全てを飲み込むこの世で最も恐ろしいものへと進化してしまうのですよ。
それこそ、その全てを受け入れ共存できる人間がいたとしたら・・・
人はそれを ” 神 ” と呼ぶのでしょうね。
人が持ち続けるには大きすぎる感情だ。 」
上を向いて話し続けるヨセフ司教がどんな表情をしているのか私には見えなかったが・・
その直後、ふぃ・・と下がってきた顔は先程同様ニヤニヤ~とニヤついた不快極まりない笑顔であった。
87
お気に入りに追加
2,014
あなたにおすすめの小説
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?
麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
悪役令息の死ぬ前に
やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」
ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。
彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。
さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。
青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。
「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」
男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。
巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる