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第二十章

695 教会内の派閥

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( アゼリア )


「 ーーーうぅ~・・・。

私は王女で聖女でしっかりしなければと思っているのですけど、最近何だか直ぐ忘れてしまって・・

駄目なのに感情も顔に出てきそうになってしまうの。

だから最近ではリーフ様って本当はイシュル神様では?ーーなんていう妄想にまで到達してしまったわ。 」


目を細めて視線の先にあるイシュル神様の姿をジッ~と疑わしそうに見るソフィア様に続いて、私も多分同じ想いを込めた目でそれを見つめるがーーーー



全然似ていない・・



全くと言っていいほど似ていない姿に、ソフィア様も私もうう~ん・・と考え込んでしまった。


ソフィア様も私同様、リーフ様と出会ってから随分と変わった様に思える。


以前は張り詰めた空気と、人の上に立つ者独特の冷たさが入り混じり人を寄せ付けにくい雰囲気をしていたが、それが少し丸みを帯びた気がする。


一言で言うと剣は失ってはいないが鋭く尖っていた先端が削れている様なイメージだろうか・・?


本当は剣など持たずにいられたらと思うが・・


私は現在のソフィア様の置かれている立場と、教会の状況について改めて考え、ふぅ・・と困った様に息を吐いた。





現在の教会内の派閥は2つ。


1つ目はソフィア様が率いる


【 ソフィア派 】


これは以前より教会が貫いてきた< 中立 >という立場を守り、教会は完全に独立した権力のままでいるべきだという思想を貫く派閥。



そして2つ目はソフィア様を除けば教会のトップである大司教グレスター率いる


【 グレスター派閥 】


この派閥は一応は< 中立 >という立場ではあるが、積極的に国と強力する事、そして各地を治めている貴族達との間に同盟を結び、もっと広く苦しむ人々を救おうという思想を持つ新たな派閥である。


この派閥のいう貴族達との同盟とは、貴族から教会に毎年治められるお布施の他にも毎月固定した金額のお布施を追加で治めてもらい、その代わりに貴族に教会への発言権などの一部の権力を渡すというものであった。


それにより教会が運営している施設や全国で行っている救済活動の質を上げることができ、そしてその質が上がれば教会の支持率も上がるため、教会として損はないという話であったがーーー


問題なのはそのほとんどの貴族が< エドワード派閥 >であるという事だ。



少しの権力もそれが集まれば大きな権力となる。


つまりざっと見積もっても教会の約3割程度・・もしかするとそれ以上の権力が< エドワード派閥 >に流れ、その時点で教会の< 中立 >は崩壊。

最終的には< エドワード派閥 >に実権を握られてしまう。


そうなれば今の絶妙なバランスで保たれている今の国の情勢は崩れ去り、最悪内戦が起こる可能性だってあるというのに・・グレスター卿はそれを積極的に結ぼうとしているのだ。



それをいち早く察知したソフィア様が直ぐに教会内の権力者達を集めて派閥を立ち上げ、今の所は【 ソフィア派閥 】が圧倒的に優位であるが、相手は教会内のいわばNO・2。


下手に刺激する訳にはいかず、現在も膠着状態が続いている。


それでも何度もソフィア様はグレスター卿と話し合いを持ちかけ、説得を試みているが・・彼の心にその言葉が届いている様には見えない。


頭が痛くなる状況に、私は頭を軽く振って何とかその突破口はないものかと考えたが、残念ながら何一つ思い浮かんでこなかった。



グレスター卿は私が聞く限り酷くお金に執着しているお方で、自らが先頭に立ち常に各地を回って積極的な活動をしている。

そして稼いだお金を湯水の如く一人娘である< ジェニファー >様への贈り物のために使っているそうだ。


それが本当の事である事は、毎日見ているジェニファー様の身につけているモノの数々を見れば分かる。



目を閉じて浮かぶのは、美しい真っ赤なドレスを翻しそれ一つで下手をすれば平民の10年分の給料程はあると思われる装飾品を身につけたジェニファー様の姿。

そして続けて浮かんでくるのは、豪勢なパーティーではそれを身につけ幸せそうに微笑む・・そんな姿だ。



綺羅びやかな姿の裏にこんな深刻な状況にあるのだとジェニファー様は理解している様には見えない。

そうであれば、あんな贅を尽くしたモノを身につけあんなに幸せそうに笑うことなどできないはずだ。


それを考えると少々不快な気持ちが湧くのと同時に、フッと先程起きた事を思い出し、私はソフィア様の方へ視線を向けた。



「 そういえば、ソフィア様。

最近ジェニファー様の事を随分と気にかけていませんか?

先程は協力を申し出るなどの行動も見られ・・そんな事、今までなかった様に思えます。

正直驚きました。 」

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