708 / 1,370
第二十章
693 間違えては駄目
しおりを挟む
( アゼリア )
” 何で産まれてきたのかしらね?誰も望んでなんかいないのに!ほんと疫病神。 ”
” ちょっと遊んだだけだったのに・・。ーーはぁ~・・。
お前さえできなきゃ誰も嫌な思いしないですんだんだぞ?分かってるのか? ”
” 父を誘惑し財産や地位に目が眩んだ汚い女の子供。お前と同列などあり得ない。
視界に入るな。汚らしい混じりモノめ。 ”
沢山の私を拒絶する言葉達は心の奥底で根を張り、” 周りが認めてくれた! ” ” 凄いって言ってくれた! ” そして誰かが ” そんな事はないよ ” と慰めてくれても、逃さないと言わんばかりに否定の言葉を囁き続ける。
それは何かにつけて現れては一瞬消え、現れては一瞬消え・・嫌な事があった時、迷いが生じた際は更に威力を増して襲ってくる。
弱みを見せればあっという間に襲ってくるそれが怖くて、だから周りには常に何でもないように振る舞い続けた。
” 私は何も思っていない。 ”
” 私は強いから大丈夫だ ”
そう必死にアピールし虚勢を張る。
” 可哀想 ”
” 大変だね ”
” だからどうにかしてあげたいな ”
” 辛いなら辛いって言っていいよ ”
そう言われる度、思われる度に更に心は深く沈んでいく。
私が欲しかったのは ” 共感 ” やその境遇に関しての ” 違い ” を感じさせる言葉たちではなかった。
それなら暴言を吐かれている方がマシ。
同じ世界線に立っていると感じる事ができるから。
きっと私は普通じゃない。どうしようもなく歪んでいる。
” 世界 ” から見た自分という存在の歪みを認識すると、心の奥に根を張った想い達はまたあっという間に私を殺そうと絡みついて締め付けてきた。
” 普通 ” だったらここで素直に救いの手を伸ばし、助けてと素直に言えるのかもしれない。
でも私にはそれはできない。
” 歪み ” が救われる事を拒む。
その根本にある想いは ” 自分が嫌い ” ーーーーだ。
嫌いなヤツを助けたくない。
それが分かると、心の中に根を張り否定の言葉を掛け続けるモノの正体は・・・
” 自分 ” であるという事に気づいた。
気づいてしまった・・。
嫌いな ” 自分 ” を助けたくない
だから救われたくない
ーーーー何故??
更にボロボロと流れ出てきてしまった涙を止めようと、頭を抱え込みその場にしゃがみ込み目を閉じる。
そしてパチッと目を開くとーーーー・・・
私はいつの間にか狭い何もない空間に立っていた。
「 ・・・ここは? 」
その部屋の中は真っ白で、本当に何もない。
ドアどころか窓も。
狭い箱の中の様な場所?
そんな閉鎖空間に閉じ込められている事に恐怖をーーー不思議と感じない。
寧ろ心穏やかでどちらかといえば落ち着く様な・・そんな感情を持ちながら、漠然とこここそが自分のいるべき場所なのだと思えた。
” 外 ” を見る必要はない、その方が幸せ。
誰も入ってこれない、安全で安心できる場所だ。
それにホッとしていると、その空間の中に自分以外の ” 何か ” がいる事に気づく。
・・
いや、自分がいる事に気づいた。
・・
自分は「 あ~あ・・。 」と心底面倒くさそうに声を吐き出し、両手を頭の後ろで組むと、まるで古くから仲よくしている友人の様に馴れ馴れしく私に話しかけてきた。
『 世の中にはないほうが良いモノって結構沢山あると思わないか? 』
・・・・・・・
『 ” そんな事ない! ” って言う奴らは、そうじゃない奴らだからな。
差し出される手の先に行っても奴らの ” 正しい ” 世界で ” 正しくないまま ” の自分を見続けるだけだろう? 』
『 ” 正しくない ” と思っているから人は手を差し出す。
そしてその自分の世界こそが ” 正しい ” と信じる世界に引っ張って、一生そいつは ” 正しくない ” 自分を否定され続けるんだ。 』
『 嫌いな自分のまま。自分を ” 正しくない ” ものとする世界で生きていくのは・・辛いだろう。 』
『 だから何も入れないここが一番いい。 』
全てを分かっていると言わんばかりの言い方に私は視線を下に向け、もう記憶も朧気な母について考える。
母は私のせいで全てを失った。
輝く様な未来全てを取り上げられ、不幸な人生を歩む羽目になったはずだ。
” 貴族のお手つき ”
” 貴族に取り入ろうとして失敗した売女 ”
そう言われて何処に行っても嘲笑われ、働き口もなかった母は当てもなく遠い遠い土地に行くしかなかったのだと思う。
誰がなんと言おうとそれが結果で、私がいなかったら母はそんな目に合わなかった。
・
押し黙る私に対し、私は満足気に微笑んで笑顔で拍手をする。
『 そうだろう、そうだろう。
これが ” 正しい ” のだからこのままでいい。
ーーあ~これで皆幸せだ!悪いのは私。後は考えなくていい。 』
「 皆幸せ・・・悪いのは・・・私・・ 」
まるで自分に言い聞かせるようにブツブツと口の中で呟いた、その時ーーーー耳元に小さな声が聞こえた。
” 大体不義の子のくせにっていうけど子供に一体何の罪があるんだい ”
耳元で聞こえた囁き声は段々と大きくなっていく。
” あんな無垢で純粋な存在に悪いところなんて一つもないさ ”
” もし不義の子が悪いものだっていうなら、それを生み出した親が悪いに決まっているだろう ”
” 何故原因である悪い親御さんの方を責めないんだい? ”
視線はゆっくりと上がっていき、眼の前にいる自分を見ると・・酷く焦っている様な表情を浮かべているのが見えた。
必死になって『 違う! 』『 悪いのは・・!! 』と大声で叫んでくるが、不思議な事に静かにささやく声の方が私の耳にはしっかりと聞こえる。
” 責められるべきは加害者、そんなの八つ当たり以外の何者でもない ”
” 恨みを抱く対象がそもそも間違っているんだ ”
” 怒りをぶつける相手を間違えちゃ駄目だ。絶対に ”
” 何で産まれてきたのかしらね?誰も望んでなんかいないのに!ほんと疫病神。 ”
” ちょっと遊んだだけだったのに・・。ーーはぁ~・・。
お前さえできなきゃ誰も嫌な思いしないですんだんだぞ?分かってるのか? ”
” 父を誘惑し財産や地位に目が眩んだ汚い女の子供。お前と同列などあり得ない。
視界に入るな。汚らしい混じりモノめ。 ”
沢山の私を拒絶する言葉達は心の奥底で根を張り、” 周りが認めてくれた! ” ” 凄いって言ってくれた! ” そして誰かが ” そんな事はないよ ” と慰めてくれても、逃さないと言わんばかりに否定の言葉を囁き続ける。
それは何かにつけて現れては一瞬消え、現れては一瞬消え・・嫌な事があった時、迷いが生じた際は更に威力を増して襲ってくる。
弱みを見せればあっという間に襲ってくるそれが怖くて、だから周りには常に何でもないように振る舞い続けた。
” 私は何も思っていない。 ”
” 私は強いから大丈夫だ ”
そう必死にアピールし虚勢を張る。
” 可哀想 ”
” 大変だね ”
” だからどうにかしてあげたいな ”
” 辛いなら辛いって言っていいよ ”
そう言われる度、思われる度に更に心は深く沈んでいく。
私が欲しかったのは ” 共感 ” やその境遇に関しての ” 違い ” を感じさせる言葉たちではなかった。
それなら暴言を吐かれている方がマシ。
同じ世界線に立っていると感じる事ができるから。
きっと私は普通じゃない。どうしようもなく歪んでいる。
” 世界 ” から見た自分という存在の歪みを認識すると、心の奥に根を張った想い達はまたあっという間に私を殺そうと絡みついて締め付けてきた。
” 普通 ” だったらここで素直に救いの手を伸ばし、助けてと素直に言えるのかもしれない。
でも私にはそれはできない。
” 歪み ” が救われる事を拒む。
その根本にある想いは ” 自分が嫌い ” ーーーーだ。
嫌いなヤツを助けたくない。
それが分かると、心の中に根を張り否定の言葉を掛け続けるモノの正体は・・・
” 自分 ” であるという事に気づいた。
気づいてしまった・・。
嫌いな ” 自分 ” を助けたくない
だから救われたくない
ーーーー何故??
更にボロボロと流れ出てきてしまった涙を止めようと、頭を抱え込みその場にしゃがみ込み目を閉じる。
そしてパチッと目を開くとーーーー・・・
私はいつの間にか狭い何もない空間に立っていた。
「 ・・・ここは? 」
その部屋の中は真っ白で、本当に何もない。
ドアどころか窓も。
狭い箱の中の様な場所?
そんな閉鎖空間に閉じ込められている事に恐怖をーーー不思議と感じない。
寧ろ心穏やかでどちらかといえば落ち着く様な・・そんな感情を持ちながら、漠然とこここそが自分のいるべき場所なのだと思えた。
” 外 ” を見る必要はない、その方が幸せ。
誰も入ってこれない、安全で安心できる場所だ。
それにホッとしていると、その空間の中に自分以外の ” 何か ” がいる事に気づく。
・・
いや、自分がいる事に気づいた。
・・
自分は「 あ~あ・・。 」と心底面倒くさそうに声を吐き出し、両手を頭の後ろで組むと、まるで古くから仲よくしている友人の様に馴れ馴れしく私に話しかけてきた。
『 世の中にはないほうが良いモノって結構沢山あると思わないか? 』
・・・・・・・
『 ” そんな事ない! ” って言う奴らは、そうじゃない奴らだからな。
差し出される手の先に行っても奴らの ” 正しい ” 世界で ” 正しくないまま ” の自分を見続けるだけだろう? 』
『 ” 正しくない ” と思っているから人は手を差し出す。
そしてその自分の世界こそが ” 正しい ” と信じる世界に引っ張って、一生そいつは ” 正しくない ” 自分を否定され続けるんだ。 』
『 嫌いな自分のまま。自分を ” 正しくない ” ものとする世界で生きていくのは・・辛いだろう。 』
『 だから何も入れないここが一番いい。 』
全てを分かっていると言わんばかりの言い方に私は視線を下に向け、もう記憶も朧気な母について考える。
母は私のせいで全てを失った。
輝く様な未来全てを取り上げられ、不幸な人生を歩む羽目になったはずだ。
” 貴族のお手つき ”
” 貴族に取り入ろうとして失敗した売女 ”
そう言われて何処に行っても嘲笑われ、働き口もなかった母は当てもなく遠い遠い土地に行くしかなかったのだと思う。
誰がなんと言おうとそれが結果で、私がいなかったら母はそんな目に合わなかった。
・
押し黙る私に対し、私は満足気に微笑んで笑顔で拍手をする。
『 そうだろう、そうだろう。
これが ” 正しい ” のだからこのままでいい。
ーーあ~これで皆幸せだ!悪いのは私。後は考えなくていい。 』
「 皆幸せ・・・悪いのは・・・私・・ 」
まるで自分に言い聞かせるようにブツブツと口の中で呟いた、その時ーーーー耳元に小さな声が聞こえた。
” 大体不義の子のくせにっていうけど子供に一体何の罪があるんだい ”
耳元で聞こえた囁き声は段々と大きくなっていく。
” あんな無垢で純粋な存在に悪いところなんて一つもないさ ”
” もし不義の子が悪いものだっていうなら、それを生み出した親が悪いに決まっているだろう ”
” 何故原因である悪い親御さんの方を責めないんだい? ”
視線はゆっくりと上がっていき、眼の前にいる自分を見ると・・酷く焦っている様な表情を浮かべているのが見えた。
必死になって『 違う! 』『 悪いのは・・!! 』と大声で叫んでくるが、不思議な事に静かにささやく声の方が私の耳にはしっかりと聞こえる。
” 責められるべきは加害者、そんなの八つ当たり以外の何者でもない ”
” 恨みを抱く対象がそもそも間違っているんだ ”
” 怒りをぶつける相手を間違えちゃ駄目だ。絶対に ”
93
お気に入りに追加
2,014
あなたにおすすめの小説
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
【完結】竜を愛する悪役令嬢と、転生従者の謀りゴト
しゃもじ
BL
貴族の間で婚約破棄が流行し、歪みに歪んだサンドレア王国。
悪役令嬢のもとに従者として転生した主人公・グレイの目的は、前世で成し遂げられなかったゲームクリア=大陸統治をし、敬愛するメルロロッティ嬢の幸せを成就すること。
前世の記憶『予知』のもと、目的達成するためにグレイは奔走するが、メルロロッティ嬢の婚約破棄後少しずつ歴史は歪曲し、グレイの予知からズレはじめる…
婚約破棄に悪役令嬢、股が緩めの転生主人公、やんわりBがLしてる。
そんな物語です。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?
麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。
悪役令息の死ぬ前に
やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」
ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。
彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。
さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。
青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。
「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」
男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる