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第十九章

681 バレてる・・

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( リーフ )


「 君、この本を落としたよ。

それに荷物が随分重そうだから、よかったら手伝おうか? 」


声を掛けた瞬間ビクッ!と体を揺らしたその女の子は直ぐにコチラを振り向いたのだが・・お互い顔を見合わせて、あっ!と叫ぶ。


「 ルルちゃんじゃないか!こんにちは。

髪の毛がいつもみたいに三つ編みじゃなかったから気づかなかったよ。 」



【 森の恵み 】のマリンさんの娘さんである< ルルちゃん >

いつもは長い髪を2つに三つ編みにしているのだが、お出かけスタイルなのか本日は解いている。


ルルちゃんはホッと息を吐きながら「 リーフさんこんにちーー・・ 」と挨拶を返そうとしてきた、その時ーーーー


俺の手にある本を目にしピタリと動きを止めた。



「 ????ルルちゃん? 」


呼吸してる??と心配になりそうなくらい完全に止まってしまったので心配になって声を掛けると、次の瞬間ものすごい速さで俺の差し出している本をもぎ取り、ダラダラと滝の様な汗を流す。


「 み、見ました? 」


「 えっ?・・あ、うん。拾った時に表紙だけ見たよ。

凄く綺麗なイラストだね~。

最近流行っているご本なのかな?それ。 」


軽い話題としてそう聞くと何やらルルちゃんは両手で顔を隠し、更にそのまま空を見上げた。


「 ・・・・中身、見ました? 」


ゴゴゴゴゴ・・・と轟音が聞こえてきそうなオーラを醸し出し、指の隙間からコチラを睨みつける様にみてくるルルちゃん・・

それに気圧されながらフルフルと首を横に振る。

するとルルちゃんは手を顔からゆっくりと外し、いつもの大人しくて優しそうなオーラに戻った。


「 すみません・・。

何だかちょっと貧血がおきちゃったみたいで・・。 」


「 そ、そうだったんだ。大丈夫かい? 」


首を小さく振るルルちゃんを気遣うと、彼女はニッコリと控えめな笑顔を見せる。


「 はい!もう大丈夫ですので安心して下さい。

あれ?リーンちゃんとナッツちゃんとご一緒だったんですか。

これから皆さんでどこかに行かれるんですか? 」


後ろにいるリーンちゃんとナッツちゃんに気づいたルルちゃんは不思議そうに尋ねてきたので、俺は遠慮するルルちゃんの手から重い荷物を取り上げその説明をする。


「 実はドレスを見に行きたくてね。

これから二人に案内してもらうんだ。 」


そう言った瞬間、ルルちゃんは突然膝から崩れ落ちてしまった。


ギョッ!として慌てて声をかけようとしたが、ルルちゃんは地面に顔を向けたまま・・

「 き・・着るのですか・・? 」と尋ねてくる。



うん、レオンが。


・・・とは言えないので、どう答えようかとオロオロしていると、ルルちゃんはブルブル震えながら「 ・・・尊し・・ 」と呟いた。




?????



と、遠とし??

もしかして家までの距離の事??


ちょっと良く分からないがそう聞こえた俺は、確かに家まで遠いなと思い「 そうだね! 」と答えると、ガクンッ!と顔が地面に落下しそのまま地べたに顔をベチョッとくっつけた。


ビクッ!!と驚いてレオン以外の俺たち三人がその様を唖然と見つめていると、「 ドレス・・最高か・・ 」「 神様ありがとうございます・・ 」と何故か神に感謝を捧げだす。

更にはーー「 奴隷に着せるのが・・イイな~!! 」と言ってビクビクッ!と体を揺らすルルちゃんに、リーンちゃんとナッツちゃんはオロオロ・・レオンは完全なる無反応。


俺はというと・・・

バ、バレている・・と内心動揺を隠せずモゾモゾと体を動かした。


なぜかルルちゃんにレオンにドレスを着せようとしている事がバレている。

その理由はさっぱり分からないが、もしかして【 森の恵み 】で食事中に何かのヒントを得てしまったのかもしれない。



ふ~む・・


考え込んでいる俺に、突然顔を勢いよく上げたルルちゃんが「 是非!!ご一緒させて下さい!! 」と怒鳴るように叫んだ。


普段の消極的な姿しか知らなかったのでその勢いに驚きつつリーンちゃんとナッツちゃんの方を向くと、2人は赤べこさんの様にコクコクと縦に首を振っていたので俺もそれに便乗して首を振る。


するとルルちゃんは決定的なゴールを決めたサッカー選手の様にガッツポーズをとった後、ススっと俺とレオンの後ろに周り込みニッコニコ。


ルルちゃんの意外な一面を知って驚いている間にレオンが俺の手から荷物を取り上げ多次元ボックスへ入れてくれたので「 ありがとう。 」とお礼を告げると、ルルちゃんも「 ごちそうさ・・ありがとうございまーす!。 」と言ってニコニコ・・。


その後ルルちゃんは大事そうに手提げ袋を持ったまま、リーンちゃんとナッツちゃん、そしてその後についていく俺とレオン・・の後ろにピタリとくっついたまま大人しくついてきた。


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