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第十九章
680 るるなる?
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ナッツちゃんに連れられて来た場所は【 商業区域 】の入り口からほど近い正面商業店の立ち並ぶ一角。
とにかくアホみたいに大きく人も沢山賑わっているこの【 商業区域 】だが、どんな雰囲気か?と言われると前世でいうネズミさんの夢の国みたいな感じ。
しかもそれプラス中に川だって流れているし巨大な森林公園だってあるしで、とても街の中とは思えないほどの広さがある。
寧ろここだけで国って言われてもへぇ~って納得できるほど。
でも王都はこれより大きいらしいが・・
どんなもんかと考えようとしても、想像力貧弱な俺には全く想像ができなかった。
色とりどりの家の色合いやそれぞれのセンスが光るお店達を眺めながら、ただただ圧倒され、ほぇ~と驚きの声をあげる。
「 凄いや。正面の入り口から大通りに沿っていくとこんなにお店が並んでいるんだね。
マリンさんのお店やリーンちゃんのお店がある方はもう少し静かな感じなのに。 」
「 それはここがちょうど街の中心部に向かうメインストリートだからだよ。
他の分岐していく道はもっと落ち着いているから、お店もそれに合わせて落ちついた雰囲気なんだ。
さっきいた場所もそんな感じ。 」
俺は屋根のない馬車みたいな乗り物に乗りながらお店の景観を楽しんでいる人たちを見て、な~るほど!と納得する。
確かに故郷のレガーノも街の中心地に向かう道だけ華やかで、あとは基本、木と草、畑であった。
要は他の街から来た人たちに見せる ” 顔 ” の様なものだから一番華やかに見せたい、そういう事か。
キラキラ目を輝かせながら周りをキョロキョロしていると、後ろでムス~としているレオンの顔が突然目に入ってきた。
レオンは人の多い所が好きじゃないため大変不服そう。
せっかくのモテモテチャンスなのに~。
俺はチラッと周りで注目してくる人たちに視線を送り、救世主様~♬と手を振る人たちに緩く手を振ってニコリと笑う。
ーーが!実は若いお姉さんの視線は俺を通り越し後ろのレオンへと注がれている事を知っている!
キラッ!と目を輝かせ再度レオンの方へと視線を戻す。
相変わらずの同じ霊長類だと思えないほど長くてすらっとした足にガチッとしているが決して太くない程よいマッチョな筋肉!
まさに奇跡のスタイルを持っているレオンの存在は、顔が見えなくとも相変わらずイケメンセンサーにバシバシと引っかかっている様子。
大正解~!
どう?どう?うちの子カッコいいでしょ~?
何だか見せびらかしてやりたくてレオンの前でカサカサとゴキブリの様に動き回っていると、巨大なイシュル象が立つ噴水広場に着き、そこでナッツちゃんと同じ様なバスケットを持った真っ赤なリボンが印象的、リーンちゃんの姿を発見した。
「 あ、リーンちゃんめ~っけ!
おーーい!リーンちゃ~ん! 」
俺が手を振りながら大声で叫ぶと、リーンちゃんはこちらを見てまんまるお目々を見開いた。
「 あれ?何でリーフさんとレオンさんがナッツちゃんと一緒にいるの? 」
そう言いながら駆け寄ってくるリーンちゃんにナッツちゃんが先程の出会いから可愛いドレスが売っているお店に案内して欲しいという旨を全部説明してくれた。
するとリーンちゃんは快くいいよ!と言ってくれて、更にナッツちゃんと二人でゴニョゴニョと相談しだし、「 やっぱりあそこじゃない? 」「 私も一度行ってみたかったんだよね~。 」と言ってクスクスと笑い合う。
どうやら行くお店が決まったようだ。
俺は不機嫌なレオンのマントをキレイにシワ伸ばししたり、細かいホコリをとったりと更にうちの子を輝かせようとしていたが、少し離れた場所にヨタヨタと歩いている腰まで髪を垂らした女の人を見つけた。
手には布製の手提げ袋を引っ掛け、両手一杯に大きな紙袋。
それが相当重いらしく足元がだいぶおぼつかない様子だ。
更によく見ると紙袋からは野菜類がはみ出しているので、どうやら食品の買い出しのようだが・・一般家庭のお夕飯としては随分多い印象がある。
ヨタヨタ~フラフラ~。
右へ左へ。
大丈夫かとヒヤヒヤしながらその様子を見守っていると、手に下げている手提げからちょろっと顔を覗かせていた本が落ちてしまったのが目に入った。
しかしその女の人はそれに気づかず歩いていってしまう。
これはいかん!と俺は機嫌が上昇してきたレオンから離れて、直ぐにその本を拾うと自然にその表紙が目に入ってきた。
顔半分に火傷の跡。
そしてこの世界では禁忌であるはずの黒髪を持つものすご~くイケメンな青年と、茶色い髪のまさにお姫様の様な壮絶な可愛さを持った少年?が結構な至近距離でくっついているイラストで、右下には【 るるなる 】という謎の文字が印刷されていた。
この【 るるなる 】はこの本の作者さんの名前かな?
って事はこれは小説か何かなのだろうか・・?
俺はそのイラストの美しさに思わず綺麗だな~と見とれてしまったが、これが落とし物だという事を思いだしすぐにその落とし主の女の子に声を掛けた。
応援ありがとうございます!
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