上 下
692 / 1,315
第十九章

677 救世主様

しおりを挟む
( リーフ )


俺はというと増々訳が分からず首を傾げると、ケンさんはビシッ!と人差し指を一本立てて俺の目の前に出してきた。



「 ヘッド・ハンマーモグラの討伐。

それにより畑の作物の生産量が爆上がり、かつそれに準ずる畜産業や飲食店への供給が復活。

他にも定期的に高ランクモンスターを駆逐してギルドに卸してくれているだろ?

それによって低ランク冒険者達がモンスター肉の調達ができる様になって肉の流通が回復してきた。

まぁ、これには謎の黄色い綿ホコリみたいな奴と最近では黒豆みたいな謎の物体も関係していてな~。

凄い速さで高ランクモンスターを倒して回っているみたいなんだ。

正体も目的も不明だが、街では ” 神獣様 ” って言われているぜ。 」



ピッピッと指の数を増やしていくケンさん。


黄色い綿ホコリと黒豆・・


俺の脳裏には毎朝 ” 遊びに行ってきま~す♬ ” とウキウキしながら森に遊びにいくあげ玉と黒みつが浮かぶ。



ま、まさかね・・?


俺が首を横に振ってそれを否定していると、ケンさんはまだまだ指の数を増やしていく。



「 後は川に大量に住み着いた< ヘドロ・クモ >も全部討伐してくれたんだって?

そのお陰で飲水も復活したから隣町からクソ高い水を輸入しなくてもよくなった。


あとは~・・・ 」



< ヘドロ・クモ >

体長5cm程の蜘蛛型Fランクモンスター。

川や湖、泉など水辺に好んで住み、その水を吸ってヘドロの様な排泄物を出すため増え過ぎれば公害を起こす公害指定モンスターである。

適度な個体数なら排泄物は土にとって適度な栄養になり特に問題はないが、他の種族が大量発生すると大量に卵を産んで集団化し川底の土と一体化、土地が腐敗してしまう。




< 公害指定モンスター >

個体の強さとしては驚異ではないが、存在することで自然や人の生活に多大な被害を及ぼすモンスターの事。





川の中~下流部の大半を占拠してしまっていた< ヘドロ・クモ >

それが上流部までその支配範囲を広げていたらしいが、ちょうどその上流川付近で休憩していた時の事。

そこがちょっと臭かったため、何か臭~い!とブツブツ文句を言いながら木を切って真ん中をくり抜き巨大ストローを作り出すと、それをドスッ!と川底に突き刺す。


そしてそれに向かって俺は《 ボェェェェ~!!! 》と空気を震わせる声を発した。





< 魔術騎士の資質 >  ( ノーマル固有スキル )



< クジラの子守唄 >


特殊な超音波を多重発生させ、自身より一定以上レベルが低い対象に睡眠と麻痺効果を与える事ができる。

そのレベル差が大きければ大きいほどその成功率と睡眠・麻痺時間は長くなり、魔力量が多いほど、その攻撃範囲は大きい。


(発現条件) 


一定回数以上の魔力量と状態異常耐性値を持つこと

一定回数以上状態異常攻撃を受けそれに耐える事





するとなんと川底からそれこそ星の数程のヘドロ・クモ達がプカピカ~と浮いてきて川がペンキを塗りたくった様に真っ黒に。


それにゾゾッ!!として固まる俺。


ピクピクと足を痙攣させたクモが所狭しと浮かんだまま次から次へと流れていく姿は、まさに圧巻の光景で、多分虫が嫌いな人が見たら即失神するレベルであった。


そして固まっている俺とは対称的にレオンは平然とその川を見下ろし、直ぐにスイッと指を下に動かすと一瞬で川の表面に火が着く。


何だかおしゃれなレストランなんかでシェフさんが眼の前で直接お肉を焼いてくれるのに似てる・・


そんな事を考えながら川の表面がボッ!と燃え広がっていったのを見ていると、それがまた一瞬で消えた時は、もうクモの姿はどこにもなかった。



川は透き通り、匂いも爽やかな草の匂いに復活したため、そこで思う存分リフレッシュした後はまた修行。

そしてその日の夕方ギルドに行くと、エイミさんが「 ・・ヘドロ・クモに何かした? 」と聞いてきたのであっさりと朝起きた事を伝えると、カウンターの奥からモサッと金貨が入ったお金を渡されたのだった。


そんな思い出を振り返りながら、ケンさんの話を聞いていると話が終わったケンさんは嬉しそうにハハッ!と笑う。



「 これ全部どうしようもできない街の公害問題だったんだぜ。

これに街の連中の心に火が着いてな~。

皆やる気満々で街の活気が戻って・・いや、前以上に盛り上がっちまったってこった。

そんでそんな街の奴らがそれを導いたお前さんの事を< 救世主様 >って言い出して、それが次々と伝染してすっかり定着しちまったって感じだな。 」



「 そうだったのかい。

でも俺は別にそんなたいそれたことしてないよ。

レオンやあげ玉と黒みつと一緒に普通に依頼をこなしているだけなんだけど・・ 」


その依頼だって高ランク依頼!・・っというわけではないし、レオンと、そしてたまにあげ玉、黒みつに手伝ってもらいながら割りと楽しく依頼を受けているだけだったので本当にそんな凄いことはしていない。

それをしっかり伝えたつもりだったが、ケンさんは「 分かってる分かってる~♬ 」とイマイチ分かっていなそうな反応を返してくる・・。


それに思わず無言で返すと、次にケンさんは本当に不思議そうな顔をしながらジロジロと俺を上から下まで余すこと無く見つめてきた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女召喚!……って俺、男〜しかも兵士なんだけど?

バナナ男さん
BL
主人公の現在暮らす世界は化け物に蹂躙された地獄の様な世界であった。 嘘か誠かむかしむかしのお話、世界中を黒い雲が覆い赤い雨が降って生物を化け物に変えたのだとか。 そんな世界で兵士として暮らす大樹は突然見知らぬ場所に召喚され「 世界を救って下さい、聖女様 」と言われるが、俺男〜しかも兵士なんだけど?? 異世界の王子様( 最初結構なクズ、後に溺愛、執着 )✕ 強化された平凡兵士( ノンケ、チート ) 途中少々無理やり的な表現ありなので注意して下さいませm(。≧Д≦。)m 名前はどうか気にしないで下さい・・

勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話

バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん< 山野 石郎 >改め【 イシ 】 世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中・・俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない< 覗く >という能力だけ。 これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。 無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。 不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜

7ズ
BL
 異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。  攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。  そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。  しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。  彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。  どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。  ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。  異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。  果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──? ーーーーーーーーーーーー 狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛  

【 完結 】お嫁取りに行ったのにキラキラ幼馴染にお嫁に取られちゃった俺のお話

バナナ男さん
BL
剣や魔法、モンスターが存在する《 女神様の箱庭 》と呼ばれる世界の中、主人公の< チリル >は、最弱と呼べる男だった。  そんな力なき者には厳しいこの世界では【 嫁取り 】という儀式がある。 そこで男たちはお嫁さんを貰う事ができるのだが……その儀式は非常に過酷なモノ。死人だって出ることもある。 しかし、どうしてもお嫁が欲しいチリルは参加を決めるが、同時にキラキラ幼馴染も参加して……?    完全無欠の美形幼馴染 ✕ 最弱主人公   世界観が独特で、男性にかなり厳しい世界、一夫多妻、卵で人類が産まれるなどなどのぶっ飛び設定がありますのでご注意してくださいm(__)m

奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される。

拍羅
BL
転生したら奴隷商人?!いや、いやそんなことしたらダメでしょ 親の跡を継いで奴隷商人にはなったけど、両親のような残虐な行いはしません!俺は皆んなが行きたい家族の元へと送り出します。 え、新しく来た彼が全く理想の家族像を教えてくれないんだけど…。ちょっと、待ってその貴族の格好した人たち誰でしょうか ※独自の世界線

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

処理中です...