上 下
679 / 1,315
第十九章

664 マリオンの性格

しおりを挟む
( リーフ )


今までこの国が歩んできた数々の争いの歴史と前世での世知辛い世の中ってヤツを振り返り、思わず顔は渋顔に。



悲しい事にこの世界はまだまだ決して平和というわけではない。


内戦・・とまではいかなくとも各地で貴族同士の領境界線での小競り合いやちょっとした戦いなどは結構頻繁に起こってはいる。


『 こちらの方が有利だぞ! 』


そう嗅ぎつけるや否やあっという間に攻め込んで強引に ” 不利しかない条約を結ばせる ” ” 協力という名の下利益を掠め取ろうとする ” などなど・・

そうされない為にもけっして隙を見せない事は貴族の絶対的なルール。


"  見て分かる様な高級品を手元に置いて戦わずとも相手を威圧する事  "

"  贈り物として相手に贈り貴族間の友好関係を良好に保つ事 "


ブランド力はそういう意味では貴族にとってはなくてはならない非常に重要なアイテムなのだ。



確かに社運をかけた大事な会議にパジャマのまま出勤、そして手土産は庭で採れた柿。

いかに仕事が有能で商品は良くても、そして柿がどんなに美味しくて栄養価の高い果物だとしても絶対契約してくれない。


ビシッ!とブランドスーツに高級菓子!

そこから既に商談は始まっている!


それに大いに納得した俺はうんうんと頷き、お次はマリオンのお兄さんの主張を考えてみる。




マリオンパパさんとまさに正反対のマリオンお兄さんの主張はーー


『 平民さんのみをターゲットにする事 』


これも決して間違ってはいない。



この世界には前世にあった様な科学に基づいた生活を豊かにしてくれる電化製品類は一切なく、魔法だって使える人が限られる一般平民さん達は何でも手動が基本の生活を営んでいる。

勿論魔道具の中には電化製品に匹敵・・いやそれ以上と言えるモノがあれど、アホみたいに高いお値段がするため一般平民さんにとっては雲の上の様なもの。


よって現在の平民さん達の生活は全手動が原則。


そんな大忙しな平民さん達が魔導具を使えればその分適度なお休み時間を得る事ができる。

その結果作業効率も上がり、最終的にそれを治めている貴族にも利益が生じるので全員がハッピー!


ーーというわけだ。



"  何でも従者がやってくれる貴族ではなく、本当の意味で魔導具を必要としているのは平民なんだ!  "


ーーーというのが多分お兄さんの主張。


これにも納得~の俺は大きく頷いて、そのままう~ん・・と頭を悩ませた。


この二人の視点から考えると、お互い独立して各々が信じる道を行くしかないなぁと思うが・・この場合、一番辛いのは一人残されてしまったマリオンだ。


家族の争いを目の当たりにして子供心としては辛かっただろうし、更にご両親の悲しそうな顔を見れば自分がしっかりしなければと思うはず。


そんなマリオンの心の内を想像するとおじさんはホロリとしてしまった。



多分ね~

マリオンってツンツンした態度の裏では実はいろ~んな事を考えてて、それを捨ててまで自分のやりたい事を突き通せない子なんだよ。

両親の気持ち~とか、お仕事の責任とか家が守らなきゃいけない領民達の事とか・・?



” 気にせず自分のやりたい事やるべき ” 

"  結局その程度で諦められる願望だったんでしょ? "


ーーな~んて思う人もいるかもしれないが、多分そこで自分を突き通しても逆に振り切った他の事が気になって苦しくなってしまうやつ。

本人の性格、性格。


きっと本人なりに悩んで悩んで、色~んなことを考えてその選択肢を取る事を決めた。


だからきっとマリオンは性格的にお兄さんと同じ熱量の想いはあっても、今後も同じ選択肢を取ることはないだろうと思われる。



俺は顎に手を当て考え込みながらほとほと困り果てた。



"   全部捨てて自分のやりたいことを~・・  "

・・と個人的には言いたいが、それを言ってしまうとーーー何だかマリオンの決意や今まで頑張って来たことを否定してしまう様な気がして、俺はその言葉をもぐもぐゴクリと飲み込んだ。



” うおぉぉぉーーー!!頑張れマリオン!! ” 



目線を下げたままのマリオンをチラッと見て、そんな気持ちが込み上げた俺は、シュバッ!!とマリオンの前に移動し背中を向けて大きく屈む。



「 マリオンは凄い!偉い!!

そんな頑張っているマリオンを俺がおんぶして差し上げよう!

さぁ!おいで!! 」



「 ・・えっ?・・・えぇぇぇーーー・・・??? 」



混乱してしまったマリオンに対し有無を言わさぬ勢いで、さぁさぁ!!と後ろに回した両手をクイクイと動かすと、マリオンは観念したのか、やがてポスっ・・と背中に覆い被さってきた。


それを確認した後ゆっくりと立ちあがると、その瞬間ーーー今度はレオンからドス黒いオーラが立ちのぼりブスブスと突き刺す様な攻撃的視線を向けてきた事にすぐ気づく。


それを一身に受けながらマリオンと共にレオンの方へ視線をむけると、そこには絶賛子供返り中のレオンが、それはもう穴ぼこだらけにされるくらい憎しげに睨んでくる姿があった。



” ずるい、ずるい、ずるい! ”

” マリオンだけおんぶなんてずるい!! ”

” 俺も俺も!おんぶおんぶ!! ”



兄弟がいるご家庭あるあるの王道を貫いてくるレオンに、俺はニッコリ笑いながら優しく宥めるように語りかけた。



「 レオンは上手に我慢できるかな~?

そんな我慢ができた良い子にはあとで抱っこと撫で撫でしてあげようね~。


今は、が~ま~ん! 」



顔を横にふりふりして歌うように言えば、レオンはムッ!!としながらもピタリと動きを止めた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女召喚!……って俺、男〜しかも兵士なんだけど?

バナナ男さん
BL
主人公の現在暮らす世界は化け物に蹂躙された地獄の様な世界であった。 嘘か誠かむかしむかしのお話、世界中を黒い雲が覆い赤い雨が降って生物を化け物に変えたのだとか。 そんな世界で兵士として暮らす大樹は突然見知らぬ場所に召喚され「 世界を救って下さい、聖女様 」と言われるが、俺男〜しかも兵士なんだけど?? 異世界の王子様( 最初結構なクズ、後に溺愛、執着 )✕ 強化された平凡兵士( ノンケ、チート ) 途中少々無理やり的な表現ありなので注意して下さいませm(。≧Д≦。)m 名前はどうか気にしないで下さい・・

勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話

バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん< 山野 石郎 >改め【 イシ 】 世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中・・俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない< 覗く >という能力だけ。 これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。 無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。 不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜

7ズ
BL
 異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。  攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。  そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。  しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。  彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。  どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。  ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。  異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。  果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──? ーーーーーーーーーーーー 狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛  

ヘタレな師団長様は麗しの花をひっそり愛でる

野犬 猫兄
BL
本編完結しました。 お読みくださりありがとうございます! 番外編は本編よりも文字数が多くなっていたため、取り下げ中です。 番外編へ戻すか別の話でたてるか検討中。こちらで、また改めてご連絡いたします。 第9回BL小説大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございました_(._.)_ 【本編】 ある男を麗しの花と呼び、ひっそりと想いを育てていた。ある時は愛しいあまり心の中で悶え、ある時は不甲斐なさに葛藤したり、愛しい男の姿を見ては明日も頑張ろうと思う、ヘタレ男の牛のような歩み寄りと天然を炸裂させる男に相手も満更でもない様子で進むほのぼの?コメディ話。 ヘタレ真面目タイプの師団長×ツンデレタイプの師団長 2022.10.28ご連絡:2022.10.30に番外編を修正するため下げさせていただきますm(_ _;)m 2022.10.30ご連絡:番外編を引き下げました。 【取り下げ中】 【番外編】は、視点が基本ルーゼウスになります。ジーク×ルーゼ ルーゼウス・バロル7歳。剣と魔法のある世界、アンシェント王国という小さな国に住んでいた。しかし、ある時召喚という形で、日本の大学生をしていた頃の記憶を思い出してしまう。精霊の愛し子というチートな恩恵も隠していたのに『精霊司令局』という機械音声や、残念なイケメンたちに囲まれながら、アンシェント王国や、隣国のゼネラ帝国も巻き込んで一大騒動に発展していくコメディ?なお話。 ※誤字脱字は気づいたらちょこちょこ修正してます。“(. .*)

【 完結 】お嫁取りに行ったのにキラキラ幼馴染にお嫁に取られちゃった俺のお話

バナナ男さん
BL
剣や魔法、モンスターが存在する《 女神様の箱庭 》と呼ばれる世界の中、主人公の< チリル >は、最弱と呼べる男だった。  そんな力なき者には厳しいこの世界では【 嫁取り 】という儀式がある。 そこで男たちはお嫁さんを貰う事ができるのだが……その儀式は非常に過酷なモノ。死人だって出ることもある。 しかし、どうしてもお嫁が欲しいチリルは参加を決めるが、同時にキラキラ幼馴染も参加して……?    完全無欠の美形幼馴染 ✕ 最弱主人公   世界観が独特で、男性にかなり厳しい世界、一夫多妻、卵で人類が産まれるなどなどのぶっ飛び設定がありますのでご注意してくださいm(__)m

奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される。

拍羅
BL
転生したら奴隷商人?!いや、いやそんなことしたらダメでしょ 親の跡を継いで奴隷商人にはなったけど、両親のような残虐な行いはしません!俺は皆んなが行きたい家族の元へと送り出します。 え、新しく来た彼が全く理想の家族像を教えてくれないんだけど…。ちょっと、待ってその貴族の格好した人たち誰でしょうか ※独自の世界線

処理中です...