上 下
679 / 1,370
第十九章

664 マリオンの性格

しおりを挟む
( リーフ )


今までこの国が歩んできた数々の争いの歴史と前世での世知辛い世の中ってヤツを振り返り、思わず顔は渋顔に。



悲しい事にこの世界はまだまだ決して平和というわけではない。


内戦・・とまではいかなくとも各地で貴族同士の領境界線での小競り合いやちょっとした戦いなどは結構頻繁に起こってはいる。


『 こちらの方が有利だぞ! 』


そう嗅ぎつけるや否やあっという間に攻め込んで強引に ” 不利しかない条約を結ばせる ” ” 協力という名の下利益を掠め取ろうとする ” などなど・・

そうされない為にもけっして隙を見せない事は貴族の絶対的なルール。


"  見て分かる様な高級品を手元に置いて戦わずとも相手を威圧する事  "

"  贈り物として相手に贈り貴族間の友好関係を良好に保つ事 "


ブランド力はそういう意味では貴族にとってはなくてはならない非常に重要なアイテムなのだ。



確かに社運をかけた大事な会議にパジャマのまま出勤、そして手土産は庭で採れた柿。

いかに仕事が有能で商品は良くても、そして柿がどんなに美味しくて栄養価の高い果物だとしても絶対契約してくれない。


ビシッ!とブランドスーツに高級菓子!

そこから既に商談は始まっている!


それに大いに納得した俺はうんうんと頷き、お次はマリオンのお兄さんの主張を考えてみる。




マリオンパパさんとまさに正反対のマリオンお兄さんの主張はーー


『 平民さんのみをターゲットにする事 』


これも決して間違ってはいない。



この世界には前世にあった様な科学に基づいた生活を豊かにしてくれる電化製品類は一切なく、魔法だって使える人が限られる一般平民さん達は何でも手動が基本の生活を営んでいる。

勿論魔道具の中には電化製品に匹敵・・いやそれ以上と言えるモノがあれど、アホみたいに高いお値段がするため一般平民さんにとっては雲の上の様なもの。


よって現在の平民さん達の生活は全手動が原則。


そんな大忙しな平民さん達が魔導具を使えればその分適度なお休み時間を得る事ができる。

その結果作業効率も上がり、最終的にそれを治めている貴族にも利益が生じるので全員がハッピー!


ーーというわけだ。



"  何でも従者がやってくれる貴族ではなく、本当の意味で魔導具を必要としているのは平民なんだ!  "


ーーーというのが多分お兄さんの主張。


これにも納得~の俺は大きく頷いて、そのままう~ん・・と頭を悩ませた。


この二人の視点から考えると、お互い独立して各々が信じる道を行くしかないなぁと思うが・・この場合、一番辛いのは一人残されてしまったマリオンだ。


家族の争いを目の当たりにして子供心としては辛かっただろうし、更にご両親の悲しそうな顔を見れば自分がしっかりしなければと思うはず。


そんなマリオンの心の内を想像するとおじさんはホロリとしてしまった。



多分ね~

マリオンってツンツンした態度の裏では実はいろ~んな事を考えてて、それを捨ててまで自分のやりたい事を突き通せない子なんだよ。

両親の気持ち~とか、お仕事の責任とか家が守らなきゃいけない領民達の事とか・・?



” 気にせず自分のやりたい事やるべき ” 

"  結局その程度で諦められる願望だったんでしょ? "


ーーな~んて思う人もいるかもしれないが、多分そこで自分を突き通しても逆に振り切った他の事が気になって苦しくなってしまうやつ。

本人の性格、性格。


きっと本人なりに悩んで悩んで、色~んなことを考えてその選択肢を取る事を決めた。


だからきっとマリオンは性格的にお兄さんと同じ熱量の想いはあっても、今後も同じ選択肢を取ることはないだろうと思われる。



俺は顎に手を当て考え込みながらほとほと困り果てた。



"   全部捨てて自分のやりたいことを~・・  "

・・と個人的には言いたいが、それを言ってしまうとーーー何だかマリオンの決意や今まで頑張って来たことを否定してしまう様な気がして、俺はその言葉をもぐもぐゴクリと飲み込んだ。



” うおぉぉぉーーー!!頑張れマリオン!! ” 



目線を下げたままのマリオンをチラッと見て、そんな気持ちが込み上げた俺は、シュバッ!!とマリオンの前に移動し背中を向けて大きく屈む。



「 マリオンは凄い!偉い!!

そんな頑張っているマリオンを俺がおんぶして差し上げよう!

さぁ!おいで!! 」



「 ・・えっ?・・・えぇぇぇーーー・・・??? 」



混乱してしまったマリオンに対し有無を言わさぬ勢いで、さぁさぁ!!と後ろに回した両手をクイクイと動かすと、マリオンは観念したのか、やがてポスっ・・と背中に覆い被さってきた。


それを確認した後ゆっくりと立ちあがると、その瞬間ーーー今度はレオンからドス黒いオーラが立ちのぼりブスブスと突き刺す様な攻撃的視線を向けてきた事にすぐ気づく。


それを一身に受けながらマリオンと共にレオンの方へ視線をむけると、そこには絶賛子供返り中のレオンが、それはもう穴ぼこだらけにされるくらい憎しげに睨んでくる姿があった。



” ずるい、ずるい、ずるい! ”

” マリオンだけおんぶなんてずるい!! ”

” 俺も俺も!おんぶおんぶ!! ”



兄弟がいるご家庭あるあるの王道を貫いてくるレオンに、俺はニッコリ笑いながら優しく宥めるように語りかけた。



「 レオンは上手に我慢できるかな~?

そんな我慢ができた良い子にはあとで抱っこと撫で撫でしてあげようね~。


今は、が~ま~ん! 」



顔を横にふりふりして歌うように言えば、レオンはムッ!!としながらもピタリと動きを止めた。


しおりを挟む
感想 264

あなたにおすすめの小説

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

【完結】竜を愛する悪役令嬢と、転生従者の謀りゴト

しゃもじ
BL
貴族の間で婚約破棄が流行し、歪みに歪んだサンドレア王国。 悪役令嬢のもとに従者として転生した主人公・グレイの目的は、前世で成し遂げられなかったゲームクリア=大陸統治をし、敬愛するメルロロッティ嬢の幸せを成就すること。 前世の記憶『予知』のもと、目的達成するためにグレイは奔走するが、メルロロッティ嬢の婚約破棄後少しずつ歴史は歪曲し、グレイの予知からズレはじめる… 婚約破棄に悪役令嬢、股が緩めの転生主人公、やんわりBがLしてる。 そんな物語です。

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?

麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

悪役令息の死ぬ前に

やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」  ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。  彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。  さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。  青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。 「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」  男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。

処理中です...