669 / 1,315
第十九章
654 スタンティン家
しおりを挟む
( マリオン )
「 マリオン!お前が先日作った ” オルゴール ” 凄いじゃないか!
今、どこの貴族からもそれを求めて注文の連絡が殺到している。
特にあのメルンブルク家のマリナ様も大層気に入ったそうでな、これからもっと増えるだろう。
流石は我がスタンティン家の次期当主、よくやってくれた。
これからも期待しているぞ。 」
「 ありがとうございます。父様。 」
淡いピンク色の髪にストレートの髪を後ろにしっかりと撫でつけ、キリッとした目元にスッと高い鼻、スラリとした体格に文句の付け所がないくらい凛とした美しい姿勢。
まさに付け入る隙などない完璧な貴族といえる男。
伯爵【 スタンティン家 】現当主
< オルガノ >
この俺、マリオンの実の父親でもあるオルガノは息子の俺から見ても完璧な人物で、魔導具を作る技術力も貴族を相手にした交渉術や社交界を渡っていく処世術もまだまだ足元にも及ばないと思わされる最も尊敬する人の一人である。
そんな父に褒められ嬉しくない訳がないが、貴族としてそれを表情に大きく出す事はせず、あくまで冷静に淡々とお礼を告げた。
それを見て父様は満足そうに微笑み、近くに設置されているソファーへ座るように勧められる。
それに逆らう事なく腰を掛けると、父もそれに続いて向かい側にあるソファーへと座り、後ろに控えていた母もそれに続いて父の隣に座った。
「 本当に素晴らしいわ、マリオン。
貴方はこのスタンティン家の・・いえ、この母の誇りよ。
我がスタンティン家の歴史上最も優秀で素晴らしい当主となってくれるでしょう。 」
橙黄色のサラサラヘアーをしっかりと上にUPし、父同様凛とした美しい姿勢に堂々たる態度。
華奢な体格だがくっきりとした印象的な目元と漂う高潔な雰囲気に弱々しさは一切感じられない女性。
伯爵【 スタンティン家 】現当主の妻
< アリシア >
俺の母であるアリシアはまさしく貴族の女性の鏡とも言える貞淑で賢い女性で、常に父の一歩後ろで夫を立て、社交界ではしっかりと妻としての役目を完璧にこなす。
そんな非の打ち所がない完璧な貴族女性であった。
俺はそんな二人の息子として生を受け、今の今までそれに恥じない様努力をしてきたつもりだ。
母様からの称賛の声に対しても「 ありがとうございます。 」と淡々と答え、俺は侍女が用意したお茶に口をつける。
そんな俺を見て母も嬉しそうに微笑み、父はハハッ!と朗らかに笑いながら侍女たちを下がらせた。
「 まさか宝石箱と音楽を一緒にするなど考えもしなかったぞ。
一体どこでそんなアイディアを思いついた? 」
ワクワクしながら尋ねてくる父様。
魔導具の話の時だけ父はまるで少年の様に好奇心旺盛な面を見せる。
それについて特に隠し立てする気もなかったので、俺は直ぐに「 リーフ様に教えて頂きました。 」と答えた。
すると父様と母様は表情にハッキリとは出さずとも、気まずそうな雰囲気を出し動きを一瞬止める。
シン・・と静かになった部屋の中で、父様は眼の前のテーブルに置かれているカップに手を伸ばし、中の紅茶に口をつけた。
「 メルンブルク家のリーフ様か・・。 」
そう言って口ごもる父様と目を伏せわずかに眉を寄せる母様。
二人が何故こんなにも気まずそうにしてしまったのか、その理由はなんとなく理解している。
リーフ様は不義の子
そしてたった一人で家族に捨てられてしまったいらない子供だからだ。
それは小学院前に初めて父様からレガーノの学院に通うであろう公爵家の< リーフ様 >の絵を見せられた時に直ぐに気づいた。
茶色い髪に緑色の瞳、そしてどこにも突出した特徴のない容貌・・
唯一覚えられそうな特徴がそばかすだけというメルンブルク家の血筋など何一つ感じない容姿を見ればそんなもの嫌でも気づく。
多分それを気づかせるため父様は事前に俺にそれを見せ、そして今後の付き合い方は自分で決めよという意図を持っていた様だが、俺の答えなどとうに決まっていた。
” 捨てられた高位貴族の子 ”
” 将来我が家にとって何のメリットもない相手 ”
ならば付き合い自体する意味がない。
当時の俺は、フッと鼻で笑って差し出されたリーフ様の絵をビリビリに破いた。
同時に提示された調査書によれば公爵家の子息というのに護衛は若い女が一人、更に使用人は数人に家庭教師もたった二人。
男爵家でももっとマシだという暮らしをしているようで、勿論一度としてメルンブルク家の人間はレガーノの家を尋ねることも手紙一つもよこすことはないらしい。
とるに足らない相手、かつ将来は平民落ちするであろうデメリットだらけの者
そんなヤツをこのマリオンが相手するわけがない。
そんな思いと共に破いてしまった絵を床に落とし、そのゴミを呼びつけた侍女に片付けさせると、父様は小さく息を吐き出し「 お前の好きにしなさい。 」と何とも言えない表情で言った。
「 マリオン!お前が先日作った ” オルゴール ” 凄いじゃないか!
今、どこの貴族からもそれを求めて注文の連絡が殺到している。
特にあのメルンブルク家のマリナ様も大層気に入ったそうでな、これからもっと増えるだろう。
流石は我がスタンティン家の次期当主、よくやってくれた。
これからも期待しているぞ。 」
「 ありがとうございます。父様。 」
淡いピンク色の髪にストレートの髪を後ろにしっかりと撫でつけ、キリッとした目元にスッと高い鼻、スラリとした体格に文句の付け所がないくらい凛とした美しい姿勢。
まさに付け入る隙などない完璧な貴族といえる男。
伯爵【 スタンティン家 】現当主
< オルガノ >
この俺、マリオンの実の父親でもあるオルガノは息子の俺から見ても完璧な人物で、魔導具を作る技術力も貴族を相手にした交渉術や社交界を渡っていく処世術もまだまだ足元にも及ばないと思わされる最も尊敬する人の一人である。
そんな父に褒められ嬉しくない訳がないが、貴族としてそれを表情に大きく出す事はせず、あくまで冷静に淡々とお礼を告げた。
それを見て父様は満足そうに微笑み、近くに設置されているソファーへ座るように勧められる。
それに逆らう事なく腰を掛けると、父もそれに続いて向かい側にあるソファーへと座り、後ろに控えていた母もそれに続いて父の隣に座った。
「 本当に素晴らしいわ、マリオン。
貴方はこのスタンティン家の・・いえ、この母の誇りよ。
我がスタンティン家の歴史上最も優秀で素晴らしい当主となってくれるでしょう。 」
橙黄色のサラサラヘアーをしっかりと上にUPし、父同様凛とした美しい姿勢に堂々たる態度。
華奢な体格だがくっきりとした印象的な目元と漂う高潔な雰囲気に弱々しさは一切感じられない女性。
伯爵【 スタンティン家 】現当主の妻
< アリシア >
俺の母であるアリシアはまさしく貴族の女性の鏡とも言える貞淑で賢い女性で、常に父の一歩後ろで夫を立て、社交界ではしっかりと妻としての役目を完璧にこなす。
そんな非の打ち所がない完璧な貴族女性であった。
俺はそんな二人の息子として生を受け、今の今までそれに恥じない様努力をしてきたつもりだ。
母様からの称賛の声に対しても「 ありがとうございます。 」と淡々と答え、俺は侍女が用意したお茶に口をつける。
そんな俺を見て母も嬉しそうに微笑み、父はハハッ!と朗らかに笑いながら侍女たちを下がらせた。
「 まさか宝石箱と音楽を一緒にするなど考えもしなかったぞ。
一体どこでそんなアイディアを思いついた? 」
ワクワクしながら尋ねてくる父様。
魔導具の話の時だけ父はまるで少年の様に好奇心旺盛な面を見せる。
それについて特に隠し立てする気もなかったので、俺は直ぐに「 リーフ様に教えて頂きました。 」と答えた。
すると父様と母様は表情にハッキリとは出さずとも、気まずそうな雰囲気を出し動きを一瞬止める。
シン・・と静かになった部屋の中で、父様は眼の前のテーブルに置かれているカップに手を伸ばし、中の紅茶に口をつけた。
「 メルンブルク家のリーフ様か・・。 」
そう言って口ごもる父様と目を伏せわずかに眉を寄せる母様。
二人が何故こんなにも気まずそうにしてしまったのか、その理由はなんとなく理解している。
リーフ様は不義の子
そしてたった一人で家族に捨てられてしまったいらない子供だからだ。
それは小学院前に初めて父様からレガーノの学院に通うであろう公爵家の< リーフ様 >の絵を見せられた時に直ぐに気づいた。
茶色い髪に緑色の瞳、そしてどこにも突出した特徴のない容貌・・
唯一覚えられそうな特徴がそばかすだけというメルンブルク家の血筋など何一つ感じない容姿を見ればそんなもの嫌でも気づく。
多分それを気づかせるため父様は事前に俺にそれを見せ、そして今後の付き合い方は自分で決めよという意図を持っていた様だが、俺の答えなどとうに決まっていた。
” 捨てられた高位貴族の子 ”
” 将来我が家にとって何のメリットもない相手 ”
ならば付き合い自体する意味がない。
当時の俺は、フッと鼻で笑って差し出されたリーフ様の絵をビリビリに破いた。
同時に提示された調査書によれば公爵家の子息というのに護衛は若い女が一人、更に使用人は数人に家庭教師もたった二人。
男爵家でももっとマシだという暮らしをしているようで、勿論一度としてメルンブルク家の人間はレガーノの家を尋ねることも手紙一つもよこすことはないらしい。
とるに足らない相手、かつ将来は平民落ちするであろうデメリットだらけの者
そんなヤツをこのマリオンが相手するわけがない。
そんな思いと共に破いてしまった絵を床に落とし、そのゴミを呼びつけた侍女に片付けさせると、父様は小さく息を吐き出し「 お前の好きにしなさい。 」と何とも言えない表情で言った。
51
お気に入りに追加
1,993
あなたにおすすめの小説
貧乏貴族の末っ子は、取り巻きのひとりをやめようと思う
まと
BL
色々と煩わしい為、そろそろ公爵家跡取りエルの取り巻きをこっそりやめようかなと一人立ちを決心するファヌ。
新たな出逢いやモテ道に期待を胸に膨らませ、ファヌは輝く学園生活をおくれるのか??!!
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!
黒木 鳴
BL
「これが人生に三回訪れるモテ期とかいうものなのか……?そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!そして俺はモブっ!!」アクションゲームの世界に転生した主人公ラファエル。ゲームのキャラでもない彼は清く正しいモブ人生を謳歌していた。なのにうっかりゲームキャラのイケメン様方とお近づきになってしまい……。実は有能な無自覚系お色気包容主人公が年下イケメンに懐かれ、最強隊長には迫られ、しかも王子や戦闘部隊の面々にスカウトされます。受け、攻め、人材としても色んな意味で突然のモテ期を迎えたラファエル。生態系トップのイケメン様たちに狙われたモブの運命は……?!固定CPは主人公×年下侯爵子息。くっついてからは甘めの溺愛。
甥っ子と異世界に召喚された俺、元の世界へ戻るために奮闘してたら何故か王子に捕らわれました?
秋野 なずな
BL
ある日突然、甥っ子の蒼葉と異世界に召喚されてしまった冬斗。
蒼葉は精霊の愛し子であり、精霊を回復できる力があると告げられその力でこの国を助けて欲しいと頼まれる。しかし同時に役目を終えても元の世界には帰すことが出来ないと言われてしまう。
絶対に帰れる方法はあるはずだと協力を断り、せめて蒼葉だけでも元の世界に帰すための方法を探して孤軍奮闘するも、誰が敵で誰が味方かも分からない見知らぬ地で、1人の限界を感じていたときその手は差し出された
「僕と手を組まない?」
その手をとったことがすべての始まり。
気づいた頃にはもう、その手を離すことが出来なくなっていた。
王子×大学生
―――――――――
※男性も妊娠できる世界となっています
攻略対象5の俺が攻略対象1の婚約者になってました
白兪
BL
前世で妹がプレイしていた乙女ゲーム「君とユニバース」に転生してしまったアース。
攻略対象者ってことはイケメンだし将来も安泰じゃん!と喜ぶが、アースは人気最下位キャラ。あんまりパッとするところがないアースだが、気がついたら王太子の婚約者になっていた…。
なんとか友達に戻ろうとする主人公と離そうとしない激甘王太子の攻防はいかに!?
ゆっくり書き進めていこうと思います。拙い文章ですが最後まで読んでいただけると嬉しいです。
俺の伴侶はどこにいる〜ゼロから始める領地改革 家臣なしとか意味分からん〜
琴音
BL
俺はなんでも適当にこなせる器用貧乏なために、逆に何にも打ち込めず二十歳になった。成人後五年、その間に番も見つけられずとうとう父上静かにぶちギレ。ならばと城にいても楽しくないし?番はほっとくと適当にの未来しかない。そんな時に勝手に見合いをぶち込まれ、逃げた。が、間抜けな俺は騎獣から落ちたようで自分から城に帰還状態。
ならば兄弟は優秀、俺次男!未開の地と化した領地を復活させてみようじゃないか!やる気になったはいいが………
ゆるゆる〜の未来の大陸南の猫族の小国のお話です。全く別の話でエリオスが領地開発に奮闘します。世界も先に進み状況の変化も。番も探しつつ……
世界はドナシアン王国建国より百年以上過ぎ、大陸はイアサント王国がまったりと支配する世界になっている。どの国もこの大陸の気質に合った獣人らしい生き方が出来る優しい世界で北から南の行き来も楽に出来る。農民すら才覚さえあれば商人にもなれるのだ。
気候は温暖で最南以外は砂漠もなく、過ごしやすく農家には適している。そして、この百年で獣人でも魅力を持つようになる。エリオス世代は魔力があるのが当たり前に過ごしている。
そんな世界に住むエリオスはどうやって領地を自分好みに開拓出来るのか。
※この物語だけで楽しめるようになっています。よろしくお願いします。
ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む
紫楼
ファンタジー
酔っ払って寝て起きたらなんか手が小さい。びっくりしてベットから落ちて今の自分の情報と前の自分の記憶が一気に脳内を巡ってそのまま気絶した。
私は放置された16歳の少女リーシャに転生?してた。自分の状況を理解してすぐになぜか王様の命令で辺境にお嫁に行くことになったよ!
辺境はイケメンマッチョパラダイス!!だったので天国でした!
食べ物が美味しくない国だったので好き放題食べたい物作らせて貰える環境を与えられて幸せです。
もふもふ?に出会ったけどなんか違う!?
もふじゃない爺と契約!?とかなんだかなーな仲間もできるよ。
両親のこととかリーシャの真実が明るみに出たり、思わぬ方向に物事が進んだり?
いつかは立派な辺境伯夫人になりたいリーシャの日常のお話。
主人公が結婚するんでR指定は保険です。外見とかストーリー的に身長とか容姿について表現があるので不快になりそうでしたらそっと閉じてください。完全な性表現は書くの苦手なのでほぼ無いとは思いますが。
倫理観論理感の強い人には向かないと思われますので、そっ閉じしてください。
小さい見た目のお転婆さんとか書きたかっただけのお話。ふんわり設定なので軽ーく受け流してください。
描写とか適当シーンも多いので軽く読み流す物としてお楽しみください。
タイトルのついた分は少し台詞回しいじったり誤字脱字の訂正が済みました。
多少表現が変わった程度でストーリーに触る改稿はしてません。
カクヨム様にも載せてます。
双子は不吉と消された僕が、真の血統魔法の使い手でした‼
HIROTOYUKI
BL
辺境の地で自然に囲まれて母と二人、裕福ではないが幸せに暮らしていたルフェル。森の中で倒れていた冒険者を助けたことで、魔法を使えることが判明して、王都にある魔法学園に無理矢理入学させられることに!貴族ばかりの生徒の中、平民ながら高い魔力を持つルフェルはいじめを受けながらも、卒業できれば母に楽をさせてあげられると信じて、辛い環境に耐え自分を磨いていた。そのような中、あまりにも理不尽な行いに魔力を暴走させたルフェルは、上級貴族の当主のみが使うことのできると言われる血統魔法を発現させ……。
カテゴリをBLに戻しました。まだ、その気配もありませんが……これから少しづつ匂わすべく頑張ります!
【完結】偽聖女め!死刑だ!と言われたので逃亡したら、国が滅んだ
富士とまと
恋愛
小さな浄化魔法で、快適な生活が送れていたのに何もしていないと思われていた。
皇太子から婚約破棄どころか死刑にしてやると言われて、逃亡生活を始めることに。
少しずつ、聖女を追放したことで訪れる不具合。
ま、そんなこと知らないけど。
モブ顔聖女(前世持ち)とイケメン木こり(正体不明)との二人旅が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる