上 下
667 / 1,315
第十八章

652 伸ばされる手

しおりを挟む
( レオン )



まるで禁忌を犯したかの様な罪悪感が胸を締め付けたが、それすらも大きく上回る喜びに混ぜ込まれドロリドロリとした ” 気持ちいい ” へと変化していく。


すると突然、それを与えてくれたリーフ様が可愛くて愛おしくて堪らない気持ちになって思わずその身体にくっついた。


何だ?

何だ?

これは一体何なんだ??


ドキドキ、バクバクと胸の鼓動はどんどん早くなっていき、ペタペタ、スリスリとできるだけ多くの体の面積をリーフ様に擦り付け "  コレがもっと欲しい、もっと欲しい "  と無意識に強請る。


なんだかその状態が、リーフ様によって自分の中身を全てぐちゃぐちゃに壊された様な気がして、今度はとても不思議な気持ちになった。


そんな酷い事をされているのに気持ちいいなんて・・?


未知の感覚を与えてくるリーフ様が怖い。

感情の力はとてつもない ” 力 ” なのだと改めて思い知り、体が震える。



その震えを必死に隠しながら、俺はリーフ様にしっかりと抱きつく。



頭の中には、自分の心を容赦なくめちゃくちゃに壊し尽くしたリーフ様が立っていて、その前で幸せそうに跪いている自分の姿が見えた気がした。






また俺に新たな感覚をくれたリーフ様。

可愛くて愛おしくて一番怖い存在のリーフ様。


そんなリーフ様に結局あの後は容赦なく担がれ、連れ回されて最後は修行のお手伝い。


リーフ様が楽しいなら俺も楽しい

いつもと同じく結局はそこに辿り着き苦笑い。


その後はとうとう限界を迎えて倒れて眠ってしまったリーフ様を丁寧に回収し、そのまま ” レオンの家 ” へ持って帰った。


逃さない様にしっかり身体に手を巻き付け、幸せの塊を抱きしめたまま俺は微睡みはじめたーーーが・・??





「 レオン・・レオン・・・ 」



少し経った頃、突然リーフ様はうなされ始めた。


いつも一度眠ってしまえば朝まで死んだ様に眠っているのに・・?

トイレの時以外は。


汗を額からダラダラと垂れ流し、とても苦しそうな表情で俺の名前を呼び続けるリーフ様。


どうしたのだろう?

不思議に思いながら目の前の可愛いおでこに自身のおでこをくっつけた。


「 ・・・あぁ、もしかして迷子になっちゃったんですか? 」


本来辿り着けないはずの場所で何やら叫んでいるリーフ様を見つけ少々驚いたが・・それよりも不安で俺の名前を呼んでくれている事が嬉しくて思わず笑みが溢れる。


このままもう少し見てたいとも思ったが、可哀想で可愛いリーフ様を早く安心させてあげたい気持ちが勝ったため、俺はパチンッーー・・と指を弾いた。



するとその瞬間、 ” レオンの家 ” の景色はパッ!と変わり、ただ何もない真っ黒な空間へと変化する。

そして目の前には必死になって俺の方へ手を伸ばしているリーフ様の姿がーーー


可愛い・・


小さい手を必死に俺に伸ばすリーフ様が可愛くて可愛くて、俺はご機嫌でその手を取ろうとしたのだが・・・・

リーフ様の目に映る俺の姿は今より随分と貧相で、ボロボロに薄汚れた格好をしている事に気づいた。


あぁ、これが俺の姿か・・



それに気づいてしまい、はぁ・・とため息をつく。



もう役目はないのに。




会えたから。





口元を僅かに歪めながらリーフ様の差し出される手を超え、その可愛い顔にソッと手を伸ばしてみた。


リーフ様には俺が伸ばす手が見えていない。


それをいいことに俺はその頬を、鼻先のそばかすを愛おしげに指の腹で撫でまわし、可愛く開く唇を親指でゆっくりなぞった。


「 手なんて伸ばさなくても俺はいつでも側にいますよ。

これからは、永遠に。

・・でも、手を伸ばされるってこれも凄く幸せな事なんですね。

嬉しい。 」


自分に向かって伸ばされる手は痺れる様な喜びを与えてくれる。



だがーーー・・


俺は唇に触れていた手を離し、今度は伸ばされたリーフ様の手のひらを包み込む様に握りしめ、一本一本ゆっくりと指を絡めていった。


  
「 にはこの可愛い手、伸ばさないで下さいね?



・・無くなっちゃうと悲しいでしょう? 」



ググっと絡めた手に力を入れると、リーフ様は手を伸ばしながら僅かに体は前へ。

近づいてくる可愛い顔、そしてその輝く瞳に映る自分のみすぼらしい姿はユラユラ揺れてーー


姿へと変わる。



このままここで二人きりの楽園を作ってもいいかな?


そんな事を考えながら空いている方の手でリーフ様の腰に手を回し、そのまま腕の中に閉じ込めーーー



・・ようとしたのに、一瞬でリーフ様は煙の様に消えてしまった。



また逃げられてしまった・・



リーフ様にしっかりと絡めていたはずの手を見下ろし、そのままギュッと握りしめると、点々と続く足跡を追いかけてジグザグと複雑に曲がりくねった道を一瞬で飛んでいった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女召喚!……って俺、男〜しかも兵士なんだけど?

バナナ男さん
BL
主人公の現在暮らす世界は化け物に蹂躙された地獄の様な世界であった。 嘘か誠かむかしむかしのお話、世界中を黒い雲が覆い赤い雨が降って生物を化け物に変えたのだとか。 そんな世界で兵士として暮らす大樹は突然見知らぬ場所に召喚され「 世界を救って下さい、聖女様 」と言われるが、俺男〜しかも兵士なんだけど?? 異世界の王子様( 最初結構なクズ、後に溺愛、執着 )✕ 強化された平凡兵士( ノンケ、チート ) 途中少々無理やり的な表現ありなので注意して下さいませm(。≧Д≦。)m 名前はどうか気にしないで下さい・・

勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話

バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん< 山野 石郎 >改め【 イシ 】 世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中・・俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない< 覗く >という能力だけ。 これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。 無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。 不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜

7ズ
BL
 異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。  攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。  そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。  しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。  彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。  どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。  ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。  異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。  果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──? ーーーーーーーーーーーー 狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛  

【 完結 】お嫁取りに行ったのにキラキラ幼馴染にお嫁に取られちゃった俺のお話

バナナ男さん
BL
剣や魔法、モンスターが存在する《 女神様の箱庭 》と呼ばれる世界の中、主人公の< チリル >は、最弱と呼べる男だった。  そんな力なき者には厳しいこの世界では【 嫁取り 】という儀式がある。 そこで男たちはお嫁さんを貰う事ができるのだが……その儀式は非常に過酷なモノ。死人だって出ることもある。 しかし、どうしてもお嫁が欲しいチリルは参加を決めるが、同時にキラキラ幼馴染も参加して……?    完全無欠の美形幼馴染 ✕ 最弱主人公   世界観が独特で、男性にかなり厳しい世界、一夫多妻、卵で人類が産まれるなどなどのぶっ飛び設定がありますのでご注意してくださいm(__)m

奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される。

拍羅
BL
転生したら奴隷商人?!いや、いやそんなことしたらダメでしょ 親の跡を継いで奴隷商人にはなったけど、両親のような残虐な行いはしません!俺は皆んなが行きたい家族の元へと送り出します。 え、新しく来た彼が全く理想の家族像を教えてくれないんだけど…。ちょっと、待ってその貴族の格好した人たち誰でしょうか ※独自の世界線

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

処理中です...