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第十八章

652 伸ばされる手

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( レオン )



まるで禁忌を犯したかの様な罪悪感が胸を締め付けたが、それすらも大きく上回る喜びに混ぜ込まれドロリドロリとした ” 気持ちいい ” へと変化していく。


すると突然、それを与えてくれたリーフ様が可愛くて愛おしくて堪らない気持ちになって思わずその身体にくっついた。


何だ?

何だ?

これは一体何なんだ??


ドキドキ、バクバクと胸の鼓動はどんどん早くなっていき、ペタペタ、スリスリとできるだけ多くの体の面積をリーフ様に擦り付け "  コレがもっと欲しい、もっと欲しい "  と無意識に強請る。


なんだかその状態が、リーフ様によって自分の中身を全てぐちゃぐちゃに壊された様な気がして、今度はとても不思議な気持ちになった。


そんな酷い事をされているのに気持ちいいなんて・・?


未知の感覚を与えてくるリーフ様が怖い。

感情の力はとてつもない ” 力 ” なのだと改めて思い知り、体が震える。



その震えを必死に隠しながら、俺はリーフ様にしっかりと抱きつく。



頭の中には、自分の心を容赦なくめちゃくちゃに壊し尽くしたリーフ様が立っていて、その前で幸せそうに跪いている自分の姿が見えた気がした。






また俺に新たな感覚をくれたリーフ様。

可愛くて愛おしくて一番怖い存在のリーフ様。


そんなリーフ様に結局あの後は容赦なく担がれ、連れ回されて最後は修行のお手伝い。


リーフ様が楽しいなら俺も楽しい

いつもと同じく結局はそこに辿り着き苦笑い。


その後はとうとう限界を迎えて倒れて眠ってしまったリーフ様を丁寧に回収し、そのまま ” レオンの家 ” へ持って帰った。


逃さない様にしっかり身体に手を巻き付け、幸せの塊を抱きしめたまま俺は微睡みはじめたーーーが・・??





「 レオン・・レオン・・・ 」



少し経った頃、突然リーフ様はうなされ始めた。


いつも一度眠ってしまえば朝まで死んだ様に眠っているのに・・?

トイレの時以外は。


汗を額からダラダラと垂れ流し、とても苦しそうな表情で俺の名前を呼び続けるリーフ様。


どうしたのだろう?

不思議に思いながら目の前の可愛いおでこに自身のおでこをくっつけた。


「 ・・・あぁ、もしかして迷子になっちゃったんですか? 」


本来辿り着けないはずの場所で何やら叫んでいるリーフ様を見つけ少々驚いたが・・それよりも不安で俺の名前を呼んでくれている事が嬉しくて思わず笑みが溢れる。


このままもう少し見てたいとも思ったが、可哀想で可愛いリーフ様を早く安心させてあげたい気持ちが勝ったため、俺はパチンッーー・・と指を弾いた。



するとその瞬間、 ” レオンの家 ” の景色はパッ!と変わり、ただ何もない真っ黒な空間へと変化する。

そして目の前には必死になって俺の方へ手を伸ばしているリーフ様の姿がーーー


可愛い・・


小さい手を必死に俺に伸ばすリーフ様が可愛くて可愛くて、俺はご機嫌でその手を取ろうとしたのだが・・・・

リーフ様の目に映る俺の姿は今より随分と貧相で、ボロボロに薄汚れた格好をしている事に気づいた。


あぁ、これが俺の姿か・・



それに気づいてしまい、はぁ・・とため息をつく。



もう役目はないのに。




会えたから。





口元を僅かに歪めながらリーフ様の差し出される手を超え、その可愛い顔にソッと手を伸ばしてみた。


リーフ様には俺が伸ばす手が見えていない。


それをいいことに俺はその頬を、鼻先のそばかすを愛おしげに指の腹で撫でまわし、可愛く開く唇を親指でゆっくりなぞった。


「 手なんて伸ばさなくても俺はいつでも側にいますよ。

これからは、永遠に。

・・でも、手を伸ばされるってこれも凄く幸せな事なんですね。

嬉しい。 」


自分に向かって伸ばされる手は痺れる様な喜びを与えてくれる。



だがーーー・・


俺は唇に触れていた手を離し、今度は伸ばされたリーフ様の手のひらを包み込む様に握りしめ、一本一本ゆっくりと指を絡めていった。


  
「 にはこの可愛い手、伸ばさないで下さいね?



・・無くなっちゃうと悲しいでしょう? 」



ググっと絡めた手に力を入れると、リーフ様は手を伸ばしながら僅かに体は前へ。

近づいてくる可愛い顔、そしてその輝く瞳に映る自分のみすぼらしい姿はユラユラ揺れてーー


姿へと変わる。



このままここで二人きりの楽園を作ってもいいかな?


そんな事を考えながら空いている方の手でリーフ様の腰に手を回し、そのまま腕の中に閉じ込めーーー



・・ようとしたのに、一瞬でリーフ様は煙の様に消えてしまった。



また逃げられてしまった・・



リーフ様にしっかりと絡めていたはずの手を見下ろし、そのままギュッと握りしめると、点々と続く足跡を追いかけてジグザグと複雑に曲がりくねった道を一瞬で飛んでいった。



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