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第十八章

633 リーフ様の好みは

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( レオン )



夜にうじゃうじゃと発生する羽虫の様に握りつぶせたら・・



フッと過った妄想もその後リーフ様に怒られるだろう未来が即座に思い浮かんだため緩く首を振ってそれを散らす。


その後は大した時間も掛からず目的地の教室に到着し、中に入れば既に8割程の生徒たちが全員着席していた。


なんとなくいつもより部屋の中の空気がムワッとしている様な・・?


リーフ様が不快を感じてないか慎重に様子を伺っていると、前にいる三人は適当に空いているスペースをキョロキョロしながら探し始めた。



ここは【 多目的講義室 】と呼ばれている場所で大勢の人間が集まる際に使われる部屋だそうだ。


部屋の前方部には巨大なスクリーン。

そしてその前には横並びに20人くらいは座れそうな扇状の長い机がズラリと並べられている。

スクリーンからの距離に比例して後ろに向かって壇上のようになっているため、机の最後尾は見上げるほど。

ざっと見回した限り席は有り余るほど空いているようだったーーが・・


何故か着席している者達は全員中央に固まっていて両端の席はガラガラ。


なら端に座ればいいのだが、前にいる3人は「 真ん中・・」「 真ん中・・ 」「 真ん中・・ 」とブツブツ呟きながら中央の席が空いている後ろの方へ向かって机の横に設置されているゆるい階段を登っていく。


目覚めた時に見知った顔があった方が良いか・・


ボンヤリしながらブツブツと呟き続けるリーフ様を見下ろしそう判断した俺は、そのままそんな3人の後に続いた。


そしてやっと中央部分が空いている机に辿り着くとそこに3人は並んで座ったため、その真後ろの席に俺も座る。


その後はまたワイワイと煩くお喋りを始める3人を完全に無視し、大人しいリーフ様を優しく抱きしめた。


この ” 夢タイム ” もリーフ様を独り占め出来るチャンスの一つ。


願ってもない幸運に見舞われご機嫌で可愛い小さな手をゆるゆると握ったり摩ったりしていると、その間に前に並んで座っている3人が ” 平民組に可愛い子がいる ” やら ” 貴族組、トップ3! ” などと興奮した様子で語り合っている様子だったが、突如赤犬だけがクルッとこちらを向いた。


「 お~い、リーフ。

お前はどんな雌が好みなんだ?


ーーって・・あ~、まだ起きてないのか。 」


ちぇ~と残念そうに口を尖らせる赤犬に続き、細い方も振り返り考え込こむ仕草を見せる。


「 う~む。これは当分起きない感じだな。

授業の最中に目覚めてパニックにならないといいが・・


俺の様な大人と違って急な衝撃的出来事に驚いてしまうかもしれない。

心配だな。 」



「 そうか~?

寧ろ何かリーフって動じることなくねぇ?


なんつーか、こう・・・禁欲的・・???

・・う~ん、違うな。性欲なさそうな感じ?


なぁなぁ、もしかしてリーフって雌に興味ねぇの? 」



不思議そうにそう言った赤犬の頭を両隣にいる細い方、太い方がパパーン!!と同時に思い切り叩く。


「 フギャンっ!! 」


小さい悲鳴をあげてから「 何すんだよ! 」と文句を言う赤犬に、細い方と太い方はもう一度その頭を叩いて机に沈めた。



「 失礼な事をいうな!本当にお前はデリカシーがない! 」


「 流石にそういう事をいうのはどうかと思うっす!

だからレイドは女性にモテないんすよ! 」



その言葉が聞こえたらしく周りからはクスクスという控えめな笑い声と「 ドンマイ、レイド~。 」「 ファイト~。 」という声が聞こえてくる。


赤犬は面白くなさそうな顔をしながら、叩かれた頭をサスサスと撫でる。



「 だってよ~・・皆だって興味あんだろ?


リーフって女に対して普通過ぎるし・・だからと言って男相手でも普通じゃん。

人嫌いでもねぇし、でもベタベタでもねぇしさ。

なんだかすげぇ不思議な距離感を持ってるヤツだよな。

でも気が良くて面白いから結構モテるんじゃねぇの?


まぁ、恋愛対象としてかは分からねぇけど・・。 」



「 おまっ!!レイド!

お前は本当~に無礼なやつだな!

リーフ様はモテモテだぞ!!・・・・子供とお年寄りに( ボソッ )


それにリーフ様は女性に興味がないわけではない!

だたちょっと・・・その・・・あれなんだよ・・。 」



赤犬に対し即座に反論した細い方だったが何故か最後の方は歯切れが悪く、それに対し赤犬は首を傾げる。



「 ??? ” あれ ” って何だ?? 」


「 ・・いや~・・だから・・その・・。 」


「 年上の女性が好きっぽいんすよね~。 」


言い淀む細い方に変わって太い方がズバッ!と答えると、赤犬はへぇ~と言いながら目をキラキラさせる。


「 マジかよ!だから同級生には無反応ってわけか!

へぇ~、ふ~ん、ほほぉ~。

近所のお姉さんとかそういう系か? 」



「 いや~そんな些細な年齢差じゃないんすよね・・。

もっと年上、俺たちの母親の世代よりもう少し上の世代が好みみたいっす。

だいたい50代前半くらいがドンピシャみたいで、そのくらいのお年の綺麗なレディーを見かけるとわかり易く ” うひょーー!! ” 

・・・って叫んでる気がするっす。目で。 」


「 更に加えるならスレンダータイプよりむっちりしたふくよかな女性がタイプの様だ。

ウチの叔母がちょうどその条件に当てはまる人でな・・。

街に遊びに来た時、ばったり会った時などデレデレだったぞ。

まぁ、その時はレオンの姿に驚いた叔母が悲鳴を上げて逃げて帰ってしまったからそれきりだが・・。 」



興味満々な様子の赤犬、話し終わった後しみじみしている細い方に、「 あ~あった、あった、そんな事! 」と言って頷く太い方・・・本当に煩い。



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