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第十七章

627 復讐

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( カール )



「 ・・では何故、神に選ばれし俺が全力で叩き出した250点をあっさり越え、300点越えをとることができたのですか?

ライトノア学院で不正を行うことは決してできません。


・・俺は幼き頃からずっと努力し続けてきました。

最高ランクの家庭教師、最高の環境、コンディション。

ーーーなのに100点以上の点差をつけられての合格です。 」



「 そ・・それは・・。 」


言い淀む私を見て、フッと自傷気味の笑みを溢したグリードはそのままペラペラと早口で話続ける。


「 それにお聞きになりました?


は愚かにも蛮族共の集まりである< 冒険者ギルド >に登録し、慈善事業の真似事をして国民からの支持を爆発的に稼いでいるそうですよ。

その仕事ぶりから ” 神によって遣わせし救世主様 ” などと崇められているそうです。


醜い弟に負ける俺・・・そして、” 救世主様 ” と崇められているアレ・・。


こんな事が・・・こんな事がっ!!!

ーーーっ許されてたまるものか・・・っ!!! 」



グリードは顔を大きく歪め、耐えられないっ!と言わんばかりに頭を両手で抱えて叫ぶ。



” 神が遣わせし救世主様 ” 


その噂話は少し前に私の耳にも入ってきていた。


” 優秀なご子息が慈善事業をなさっているそうで、グリモアは今凄い勢いで盛り返しているそうですね。 ”


” なんでも滞っていた流通が急に復活したのは ” 救世主様 ” のお陰なんだとか・・

なんとおめでたいニュースでしょう。 ”



” そんな素晴らしいご子息のお披露目はいつ頃して頂けるのかしら? ”




小うるさい蝿共があれやこれやと毎日ひっきりなしに聞いてくる声がうっとおしくてうっとおしくてーーー

以前はあれだけ毎日開いていたパーティーもお茶会も、全てのイベントを欠席せざるを得なくなってしまった。


また怒りがふつふつとぶり返してきて眉を寄せ険しい顔をする私にグリードは「 ・・・復讐だ。 」とポツリと呟く。


よく聞こえなかった私が聞き返そうとした、その時ーーーグリードは突然バッ!!と顔を上げ恐怖に歪んだ顔で叫んだ。


「 復讐だと言ったのですよ!!


は俺たちの事を心から憎んでいる!!


先日、俺の友人の弟であるライロンド家の< マービン >が、遊びでアレに裸にされ、皆の前で辱められたそうです!


他にも多くの高貴なる高位貴族のご子息達がその犠牲に・・・

ご令嬢など顔に酷い絵を描かれて当分家から出ることさえできなくなったそうではないですか!


我がメルンブルク家を陥れる目的なのは明白!!これはアレの宣戦布告でしょう。 


しかもその序曲であると見て間違いない・・。 」



私の青白く変わっていく顔色を見て、グリードは泣きそうな顔でハハッ!と笑う。



つい先日の事、ライトノア学院内にて辺境伯のライロンド家のご子息< マービン >を初めとする多くの高位貴族のご令息が裸にされた挙げ句、何と公衆の面前で磔にされたという信じられない知らせが届いた。


幸いにもご令嬢はそれを免れたものの、顔に落書きをされるという貴族女性としては致命的とも言えるほどの屈辱を与えられてしまったそうで、その被害者達の名だたる名家達は直ぐに ” この状況を説明せよ ” と、ライトノア学院の学院長フランを呼び出し糾弾する。


勿論我々メルンブルク家もその場を取り仕切る責任者としてマリナと共に出席し、その非を最大限に使ってアーサー派閥を追い込んでやろうと考えていたのだが・・・


結果的に追い込まれてしまったのはこちらの方であった。




何と言っても高位貴族のご子息、ご令嬢に対しこれだけの酷い仕打ちをしたのだから、その現場となったライトノア学院側の有罪は明らか。

それを止めなかった低位クズ教師とその責任者であるフラン学院長は即刻クビ、更には犯罪奴隷として厳粛な法律の元裁いてやるとチャンスとばかりに集まった高位貴族達の誰もがフランを激しく責め立てたのだが・・・


フランはふてぶてしい事に、弾丸の様に浴びせられる批判の声の数々に怯むこと無く周囲を見渡しフッ・・と鼻で笑った。



カッ!!となった周囲の貴族達が更に責め立てようと口を開こうとした瞬間ーーー


先にフランは話し始めた。




「 我々に責任など一つもございません。

我々はあなた方が普段声高々に仰っている ” 正しき ” ルールに基づき行動しただけです。


” 低位の者が高位の者に口を出すな、手を出すな。全ては高位の者の好きにさせよ。 ”

そう仰ってましたでしょう?


此度の行動は公爵家< リーフ >様がされたこと。


その場の誰よりも高位なお方がされたことに、一体何の文句がお有りなのでしょうか? 」



ズバッ!と言い放たれた言葉に、私とマリナは固まり、周囲の者達は己の発言に首を絞められ誰一人口を開くことができずに口を閉じる。


そしてその後、その場の同志達の視線は一斉に我々へと向き、様々な想いを乗せた多数の目に晒されてた事で屈辱と怒りで眼の前が真っ赤に染まった。


ギロッと怒りのままにフランを睨みつけたが、流石はアーサー陣営の中でも支柱の一人と呼ばれている程の人物、これしきの事で怯むことはない。


しらっと憎たらしいほど平静な顔をしたままのフラン、そして視線だけで人を殺せそうな目で睨みつける私達を交互に見た周囲の者達は、私とマリナの本気の怒りを察し慌てて私達から視線を逸らすと今度は内輪もめを始めてしまった。


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