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第十七章

623 長老です

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( リーフ )



「 う~む・・やはり敵が多数の時は、周りとの連携が重要になってくるな。

特に即興のパーティーの場合はお互いの間合いの把握、それに有利属性を取れる配置を即座に選ぶ事・・

やはり司令塔の様な存在がいない場合は、それが中々難しい。 」



いつも通りの場所、いつも通りのメンバーでランチ。

そこで先程の合同演習・・という名の三年生特級組との団体戦について、アゼリアちゃんが白い紙にその反省点を書きながら、レイドとメルちゃんと3人で真剣に話し合っている。


そしてサイモンとリリアちゃんは今日の出来事を如何にセンセーショナルに新聞にしようかと相談しあい、モルトとニールも鋭い切り口でそれに意見を出す・・と、それぞれワイのワイのと楽しそうにお喋りしている最中だ。


若者がやる気メラメラだと未来が明るいね~と思いながら、おじさんは興味ゼロどころかマイナスのレオンの上でニッコリ~ホタホタ~と笑っていたら、不意に隣に座っていたソフィアちゃんに話しかけられた。



「 私、あんなにドキドキしたのは初めてでした!

何だか、こう・・叫びたくなるくらい衝撃的でっ・・!


凄い!凄い!って飛び跳ねたかったくらいです。 」



キラキラした目でそう語る王女様。


ソフィアちゃんは恐らくお象さんとは、” 初めまして、こんにちは~ ” の初対面のはず・・


多分そのドキドキはそれが大部分だと思われる。



ピタリとホタホタ笑いを止めて、そのままヒュッ!と息を飲んだが、ソフィアちゃんは俺のそんな様子には気づかず話を続けた。




「 ・・貴族の平民に対する法律では『 明らかに不当な暴力行為 』それに加えて『 怒鳴るなどの行為による暴言、恐喝、脅し行為 』などが問題が起きた際の焦点になります。


つまり、私の立場上、 ” マービン様が女子生徒に身体的に危害を加える ” または、

” 怒鳴りつけて脅迫する ” などがなければその行為を咎める事ができません。


それを分かっていてあの様な方法をとっているのですよ。

学院側もそんなマービン様に相当手を焼いていた様ですね。 」



困った様に微笑むソフィアちゃんに、立場が上であるほど好きには動けなくなるというのは本人としては本当に苦しいだろうなと相変わらずの苦労にホロリときてしまう。


身分に重きを置くこの国では平民は基本泣き寝入りするしかない状態が多く、完全な証拠がなければ逆に不敬罪で首を撥ねられる事だってある。

仮に証拠があっても報復が怖くて結局我慢するしかないという状況も多い。


勿論、ソフィアちゃんやドノバンの様にそれに異議申し立てする王族や貴族達もいるが、その際は今ソフィアちゃんが言った法律を盾に戦うしかないのだ。


つまりそれを分かっているマービン君達は、女性徒に自ら触れる事はせず、怒鳴って威圧する様な行為もしない。


しかし勿論怒鳴ってないとは言え、言っている事は脅迫以外の何者でもない。


” 言う通りにしないとどうなるか・・・分かっているよね? ”


ーーと、遠回しにマイルド~に言ってそれをするよう仕向けると言うこと。



全く~・・なんて悪知恵が働くスケベ坊やだ!


ふぅーー!と大きくため息をつくと、先程のスケベ坊やとペンギンの雛達、そしてピーチクパーチクお嬢さん達について考えた。


お互い同等に口を出し合える子供同士の喧嘩なら別にいいが、残念ながらこの世界の子供たちは身分や派閥により軽率な行動がとれない。


自分が原因で大きな争いになったらと考えると口を閉じるしかないーーと大半の子供達がコレ。

常に周りの派閥が~やら身分が~やらを考えて行動しなければならないというわけだ。


この世界の子供たちは常にスーパーハードモード!


どうにもならない現実に疲れた俺は、レオンにグタッともたれ掛かりリラックスおねだりモードに。

それを察したレオンが腕を末端の方から中心の方へ向かう動きでスリスリしてくれて最高級のリラックスタイムを提供してくれる。


もう俺、これないと生きていけな~い・・


ウットリしながら、後頭部をスリスリ~と擦り付けて更なるおねだりモードを全開にすると、レオンは更に揉み込む動きもプラスしてくれた。



あ、ちなみにそういったごちゃごちゃ~とした事に対して俺は基本問題なし。

何故ならば俺の家はゴリゴリのエドワード派閥かつ公爵家という立場だから。



いわば、なか~ま!という立ち位置なので、あれしきの事は子供たちのよくある喧嘩程度で片付けられる事だろう。


そもそも基本問題を起こすのはエドワード派閥のお家の子なので、お仲間の俺は自由~に、マイペースに動く事ができるというわけだ。



リーフに生まれてラッキーラッキー!と思いながらも、そんな環境によって子供達の可能性が狭まってしまう事に対し年長者としては憂いを感じた。



「 困ったもんだね。

何だか親御さんの派閥だの何だのの問題に子供たちが巻き込まれるのは悲しいよ。


中には両親を喜ばせたくて無理に変わろうとする子もいるだろうしね。 」



ソフィアちゃんは俺の言葉を聞いて、僅かに驚いた様な様子を見せた。



「 そう・・でしょうか?

そこを切り離して考えた事はありませんでした。

過激な思想を持つ家のご令息やご令嬢は言動や行動を同じくとしている方々ばかりなので、ご両親と同じ志を持っているだろうと・・ 」



「 まぁ、もちろんコピーの様にそっくりな親子もいるけど、意外とそうでもないんだよ。

違う思想や価値観を持つから親子関係って難しいんじゃないかな~?

子供はママさんとパパさんが好きだからそれに合わせようともするし、でも自分の考えはこうだっていうのもあるしで日々葛藤するみたいだよ。

貴族は家のルールなんかも厳しいから余計拗れて色々見失っちゃうんだろうね。

だから親御さんのゴタゴタはできるだけ子供に見せない方がいいと思うんだけどな、俺は。 」


む~ん・・と渋い顔をしながら俺はそう語った。



クローンみたいにそっくりだと楽かもしれないが、正反対の気質や考え方を持っている親子もいてどうしても分かり合えない事だってある。


それでもまだキーキー親子喧嘩できるような仲だといいが、貴族の子供達は自身の気持ちを外に出さぬべし!と教育されて育っているので中々それもできない様子だし・・


必死にご両親の喜ぶ様にと自分の気持ちを押さえつけて変わろうとする子も多いかもしれないな・・。


困った様な気持ちとレオンのマッサージの気持ち良さに ” あ~う~・・ ” とうめき声を上げると、ソフィアちゃんは、一瞬何かを考えた後「 何だかリーフ様って凄く歳が上の方みたい・・ 」と言って小さく笑った。



そうそう、俺70歳~

ゲームで例えるなら主人公達が立ち寄った村の長老だから~



頷いてそれを肯定した後、レオンによっていい感じのツボを押され、はぅぅっ!!と声を漏らしながらビクビクしていると、ソフィアちゃんが困った様に眉を下げて話し出す。



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