上 下
626 / 1,315
第十七章

611 苦労する人達

しおりを挟む
( リーフ )


リリアちゃんは俺の姿を見つけると、驚いたのか僅かに目を見開く。

「 リーフ様?何故こちらに? 」

そう質問してきたので「 時間に余裕があったから遠回りしてみたんだ。 」と答えると納得した様子を見せた。


リリアちゃんはレナ先生が顧問する【 化術部 】の部員であるため、朝の水撒きを手伝いをしていたのだそう。


レナ先生がリリアちゃんに向かい「 お疲れ様~リリアさん。毎朝ありがとうね~。 」とお礼を告げると、リリアちゃんはニコッと微笑む。

そしてレナ先生はリリアちゃんの方へと近づき、その肩をポンポンと叩いて嬉しそうに笑った。



「 もう、本当にリリアさんは優秀な部員でね!

新種の薬草もまだ一年生なのにバンバン開発しちゃってるのよ~。

凄いでしょ!

しかも薬草の管理までこうしてお手伝いしてくれて、凄く助かっちゃう。 」



まるで我が子自慢の様にペラペラと語りだすレナ先生に、リリアちゃんは少し恥ずかしそうだが嬉しそうにしている。


リリアちゃんの資質は< 錬合師 >

まさにこの【 化術部 】はその能力を生かす絶好の場であると言えよう。


それに加えてリリアちゃんは努力を惜しまずできる子で、時間を無駄にせず日々図書館に通ってはあらゆる知識を吸収し続けている。


「 それは凄いね!

その資質は生かすのが難しいのにリリアちゃんは見事に開花させてて本当に凄いと思うよ、俺は。 」


うんうんと頷きながら尊敬の念を伝えると、リリアちゃんは更に照れながらも「 ありがとうございます。 」とお礼を言った。


まさに努力する天才!それがこのリリアちゃんだ。


おじさんになると頑張る若者が可愛くて仕方がな~い!などと思いながら上機嫌でニコニコしていると、レナ先生が突然、あっ!と小さく叫んだ。



「 そうそう!ずっと言おうと思ってたんだけど、兄が大変お世話になったみたいで・・

私ってば基本研究室から出ないし噂に疎いから最近やっと知ってね。

遅くなってゴメンナサイ。


あの人、本当に変わってたでしょ?

もう妹としては恥ずかしくて恥ずかしくて・・何か迷惑掛けなかった? 」



「 ???へっ?兄って? 」



さっぱり何の事だか分からず聞き返すとレナ先生はフフッと笑って「 あのキノコマニアの変態よ。 」と結構辛辣な言葉で言ったが、悲しい事にそれでバッチリ伝わってしまった。


「 えっ!もしかしてライキーさんのこと!? 」


ライキーさんはよく拉致されてくるため話す機会が多々あるのだが、基本会話の10割がキノコの話なので全然知らなかった。


なんと言っても黙っていると延々とキノコの話を語りだし、キノコの形の美しさ、生い立ち、その素晴らしい効能~などなど、最終的には ” キノコこそが世界の中心である ” まで行くので、聞いている俺は常に苦笑い。


熱が入ると止まらないのは一度話して理解したので、俺はイエス、イエ~スと全て頷きながら聞いているのだが、適度な所で、煩い!とばかりにあげ玉が口の中の唾をぺっ!!と吐き出し、ライキーさんの頭にクリーンヒット。

上手いこと気絶させてくれるので、別にそこまで困った事はなく良い関係を築いていると思っている。


そのため俺が首をブンブンと横に振ると、レナ先生はホッとした様子を見せた。



「 迷惑掛けてないなら良かったわ~。

あの人、本当にキノコの事しか頭にない人で色んな所で騒動を起こすのよ。

その度に私が後始末をしないといけないわけ!


困った兄を持つと妹は大変だわ~。 」



はぁ~・・と大きなため息をつくレナ先生に続き、隣にいるリリアちゃんも分かります!と言わんばかりに同じため息をつく。


そして俺も今までの学院生活を思い出し、目をスッと細めた。


リリアちゃんの双子の兄、サイモンもライキーさんとは方向性が違うやんちゃ型の困ったさんな所が多々あって、結構なトラブルメーカー。


ただ、その破天荒っぷりなりにきちんとした正義感を持って行動しているし、空気を読むのに特化した守護霊でもいるの?と聞きたくなるくらい立ち回りが上手いため、基本恨みも買わない。


それでいて可愛い顔をしているサイモンは男の子という点を差し置いてもとても魅力的らしく、なんといつの間にやらファンクラブなるものまで出来上がっていた。


よってそんな目立ちまくるサイモンと一緒に行動する事の多いリリアちゃんもその分表舞台に引き釣り出される機会が増えてしまい、それに日々ため息をついている。


そして漏れなく俺もほぼ100%の確率でその騒ぎに巻きこまれているため、やれやれ・・とため息を漏らした。


シン・・と黙ってしまった俺とリリアちゃん。


それに一切構わず、レナ先生はマイペースにポケットから懐中時計を取り出しそれを見下ろすと、俺達に「 そろそろ授業の時間ね~。じゃあ、三人ともそろそろ教室へ向かいなさいな。じゃあね! 」と言い残しその場を去っていった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女召喚!……って俺、男〜しかも兵士なんだけど?

バナナ男さん
BL
主人公の現在暮らす世界は化け物に蹂躙された地獄の様な世界であった。 嘘か誠かむかしむかしのお話、世界中を黒い雲が覆い赤い雨が降って生物を化け物に変えたのだとか。 そんな世界で兵士として暮らす大樹は突然見知らぬ場所に召喚され「 世界を救って下さい、聖女様 」と言われるが、俺男〜しかも兵士なんだけど?? 異世界の王子様( 最初結構なクズ、後に溺愛、執着 )✕ 強化された平凡兵士( ノンケ、チート ) 途中少々無理やり的な表現ありなので注意して下さいませm(。≧Д≦。)m 名前はどうか気にしないで下さい・・

勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話

バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん< 山野 石郎 >改め【 イシ 】 世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中・・俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない< 覗く >という能力だけ。 これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。 無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。 不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜

7ズ
BL
 異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。  攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。  そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。  しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。  彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。  どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。  ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。  異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。  果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──? ーーーーーーーーーーーー 狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛  

【 完結 】お嫁取りに行ったのにキラキラ幼馴染にお嫁に取られちゃった俺のお話

バナナ男さん
BL
剣や魔法、モンスターが存在する《 女神様の箱庭 》と呼ばれる世界の中、主人公の< チリル >は、最弱と呼べる男だった。  そんな力なき者には厳しいこの世界では【 嫁取り 】という儀式がある。 そこで男たちはお嫁さんを貰う事ができるのだが……その儀式は非常に過酷なモノ。死人だって出ることもある。 しかし、どうしてもお嫁が欲しいチリルは参加を決めるが、同時にキラキラ幼馴染も参加して……?    完全無欠の美形幼馴染 ✕ 最弱主人公   世界観が独特で、男性にかなり厳しい世界、一夫多妻、卵で人類が産まれるなどなどのぶっ飛び設定がありますのでご注意してくださいm(__)m

奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される。

拍羅
BL
転生したら奴隷商人?!いや、いやそんなことしたらダメでしょ 親の跡を継いで奴隷商人にはなったけど、両親のような残虐な行いはしません!俺は皆んなが行きたい家族の元へと送り出します。 え、新しく来た彼が全く理想の家族像を教えてくれないんだけど…。ちょっと、待ってその貴族の格好した人たち誰でしょうか ※独自の世界線

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

処理中です...