610 / 1,370
第十六章
595 幸せの場所
しおりを挟む
( リーフ )
キノコの栽培場『 ライキーきのこ 』は南と西の門のちょうど中間あたり。
それぞれの門を出て少し歩いたところにある開けた場所に建設されている。
そのため俺達はあげ玉に乗りそのまま門の防壁を突破した後は、空からその栽培所らしき場所を探し出しそのままドス────ン!と着地した。
「 上空から見たら、確かこの辺に……。 」
周辺をキョロキョロ探し回ると、『 ライキーきのこ 』と書かれた一つの立札をみつけ、ビンゴ!と指を鳴らす。
日陰でジメジメッ~としている一帯の中、ポツンと立てられているボロボロの立札。
確信を得て、そのまま進んでいくと、沢山の小さな木の小屋らしきものが建っている場所に出た。
「 多分依頼者はここにいるはず。
だけど……? 」
俺はキョロキョロと周囲に建っている小屋達を見渡す。
すると全ての小屋が、ツギハギの様に板が打ち付けられていてボロボロで……正直廃墟と言われても全く違和感がない状態になっていた。
流星コウモリの襲撃によって、こんなになっちゃったんだろうか……?
「 こんにちは────!! 」
とりあえず大声で挨拶すると、比較的まだマシと言えるボロボロの小屋からガタガタガタ!!と音がして、突然扉が大きく開いた。
そこから出てきたのは真っ白いもじゃもじゃした毛の塊!
その姿はまるで巨大なたんぽぽの綿毛の様であった。
モ、モンスター!??
一応警戒体制をとったが、続いてその白い塊はピタリと止まり震えだすと、そのままドバッ!!と左右に飛び散る大量の水が飛び出したため、ポカ~ンと口を開ける。
そのまま黙っている俺の前で、その白い毛玉はおーいおいおいと大声で泣き出した。
「 も、も、もしかして冒険者の人達ですか!?
うわぁぁぁ────んっ!!来てくれてあ”り”がどう”~~!! 」
そのままひたすら泣き続けるその白い物体。
どうやらモンスターではなさそうだ。
煩いから排除しようとするレオンと、好戦的にガンを飛ばすあげ玉を押しのけ、俺はその白いもじゃもじゃに近づく。
そして、フサァ~と顔?を覆う毛を掻き分けると、中からはピャーピャーと大号泣する男性の顔が出てきた。
ヒェッ!!
驚きすぎて体を大きく震わせてしまったが、その人物は気にせずグススンと泣きながら、出てきた小屋を指差す。
「 どうぞどうぞ~良かったら僕の特製キノコ茶でも飲んで下さい~。 」
そのままスゴスゴと肩を落として小屋へ入っていく白い毛玉を見つめながら、俺達は大人しくそれについていった。
◇◇◇
「 いや~こんな依頼にまた誰か来てくれるなんて思わなかったから嬉しいよ。
本当にありがとぉぉぉ~!
僕はこの『 ライキーきのこ 』の所長の< ライキー >!
────って言っても従業員はゼロなんだけどね! 」
アハハ~!と笑う依頼者の< ライキー >さん。
俺は案内された小屋の中にあるソファーに座ろう……としたが、その前にレオンにいつも通り腰をガッチリ掴まれそのお膝の上にONさせられた。
その後はライキーさんお手製だという美味しいキノコ茶を飲みながら、今回の依頼者であるライキーさんへチラッと視線を向ける。
恐らく歳は40前後くらいの男性で、無精髭にボサボサのカーキ色の髪。
そして相手が思わず気が抜けそうなくらい、ぼんやりとした雰囲気を持つ人だ。
何だか凄くいい人そうな青年だな~と思いながら、俺はライキーさんに自己紹介するため、一度お茶をボロボロのテーブルの上に置いた。
「 俺はリーフ。後ろにいるのはレオンで、外で遊んでいるのがあげ玉に黒みつだよ。
今日はよろしくお願いしま~す!
なんだか小屋がすごい被害を受けている様で驚いたよ。
モンスター避けの結界は? 」
「 そんなものとっくに壊されちゃったよ。
本当にすごい数の流星コウモリなんだ。
だから今まで魔導具をフルに使って追い返してきたけど、それも限界でねぇ。
もう栽培場は風前の灯火で、もう諦めるしかないよって街の人達は言うんだけど……。 」
ライキーさんは窓……というかもうただの穴になってしまったぽっかり開いているそこから外を見て、悲しそうに眉を下げる。
「 ここは僕の ” 幸せの場所 ” なんだ。
だから離れるなんて絶対したくないんだよ。 」
ライキーさんは何かを思い出したのか悲しそうだった顔は笑顔に変わり、その後はスクっ!と立ち上がった。
そして鼻息を勢いよく吹き出す。
「 だからね!僕は毎日この『 ジャマジャマきのこアーマー 』を着て、必死にアイツラを追い払ってきたんだ!
これは< ジャマー・マッシュ >っていうモンスター達が嫌う匂いを発するキノコから作った僕のお手性アーマーで────。 」
< ジャマー・マッシュ >
モンスターにとってあまり好ましくない匂いを発するキノコ。
人型種は問題ないが食べると苦いため食用としては人気がない。
どうやら先程から着ている白いもじゃもじゃした毛の服は、モンスター対策のためライキーさんが自作したものらしい。
それについての説明をペラペラペラ~と語りだしたら、止まらなくなってしまった。
「 ────~で、そもそも菌類っていうのはねっ!
無限の可能性を秘めたロマン溢れるモノで~────ペラペラペラペラ~。 」
「 …………。 」
とりあえず難しい理論はさっぱり。
しかし、ライキーさんにとってここはとても大事な場所、そしてきのこを心から愛している事だけは理解した。
ふんわり香る松茸の香りに似た匂いのキノコ茶を今度は ” 椅子 ” になっているレオンに飲ませて貰いながらウンウンと頷く。
そして話を聞き続けていると、ライキーさんの話は一応一段落した様で今度はキョロキョロとしだした。
「 とりあえずこのアーマーを着て転がり回って撃退してきたけど、あいつらの中には< ジャマー・マッシュ >の匂いに耐性を持った奴らがいて、この有様さ。
一匹でも倒してくれたら本当に嬉しいよ。
────で、他のお仲間さん達は何処に? 」
キノコの栽培場『 ライキーきのこ 』は南と西の門のちょうど中間あたり。
それぞれの門を出て少し歩いたところにある開けた場所に建設されている。
そのため俺達はあげ玉に乗りそのまま門の防壁を突破した後は、空からその栽培所らしき場所を探し出しそのままドス────ン!と着地した。
「 上空から見たら、確かこの辺に……。 」
周辺をキョロキョロ探し回ると、『 ライキーきのこ 』と書かれた一つの立札をみつけ、ビンゴ!と指を鳴らす。
日陰でジメジメッ~としている一帯の中、ポツンと立てられているボロボロの立札。
確信を得て、そのまま進んでいくと、沢山の小さな木の小屋らしきものが建っている場所に出た。
「 多分依頼者はここにいるはず。
だけど……? 」
俺はキョロキョロと周囲に建っている小屋達を見渡す。
すると全ての小屋が、ツギハギの様に板が打ち付けられていてボロボロで……正直廃墟と言われても全く違和感がない状態になっていた。
流星コウモリの襲撃によって、こんなになっちゃったんだろうか……?
「 こんにちは────!! 」
とりあえず大声で挨拶すると、比較的まだマシと言えるボロボロの小屋からガタガタガタ!!と音がして、突然扉が大きく開いた。
そこから出てきたのは真っ白いもじゃもじゃした毛の塊!
その姿はまるで巨大なたんぽぽの綿毛の様であった。
モ、モンスター!??
一応警戒体制をとったが、続いてその白い塊はピタリと止まり震えだすと、そのままドバッ!!と左右に飛び散る大量の水が飛び出したため、ポカ~ンと口を開ける。
そのまま黙っている俺の前で、その白い毛玉はおーいおいおいと大声で泣き出した。
「 も、も、もしかして冒険者の人達ですか!?
うわぁぁぁ────んっ!!来てくれてあ”り”がどう”~~!! 」
そのままひたすら泣き続けるその白い物体。
どうやらモンスターではなさそうだ。
煩いから排除しようとするレオンと、好戦的にガンを飛ばすあげ玉を押しのけ、俺はその白いもじゃもじゃに近づく。
そして、フサァ~と顔?を覆う毛を掻き分けると、中からはピャーピャーと大号泣する男性の顔が出てきた。
ヒェッ!!
驚きすぎて体を大きく震わせてしまったが、その人物は気にせずグススンと泣きながら、出てきた小屋を指差す。
「 どうぞどうぞ~良かったら僕の特製キノコ茶でも飲んで下さい~。 」
そのままスゴスゴと肩を落として小屋へ入っていく白い毛玉を見つめながら、俺達は大人しくそれについていった。
◇◇◇
「 いや~こんな依頼にまた誰か来てくれるなんて思わなかったから嬉しいよ。
本当にありがとぉぉぉ~!
僕はこの『 ライキーきのこ 』の所長の< ライキー >!
────って言っても従業員はゼロなんだけどね! 」
アハハ~!と笑う依頼者の< ライキー >さん。
俺は案内された小屋の中にあるソファーに座ろう……としたが、その前にレオンにいつも通り腰をガッチリ掴まれそのお膝の上にONさせられた。
その後はライキーさんお手製だという美味しいキノコ茶を飲みながら、今回の依頼者であるライキーさんへチラッと視線を向ける。
恐らく歳は40前後くらいの男性で、無精髭にボサボサのカーキ色の髪。
そして相手が思わず気が抜けそうなくらい、ぼんやりとした雰囲気を持つ人だ。
何だか凄くいい人そうな青年だな~と思いながら、俺はライキーさんに自己紹介するため、一度お茶をボロボロのテーブルの上に置いた。
「 俺はリーフ。後ろにいるのはレオンで、外で遊んでいるのがあげ玉に黒みつだよ。
今日はよろしくお願いしま~す!
なんだか小屋がすごい被害を受けている様で驚いたよ。
モンスター避けの結界は? 」
「 そんなものとっくに壊されちゃったよ。
本当にすごい数の流星コウモリなんだ。
だから今まで魔導具をフルに使って追い返してきたけど、それも限界でねぇ。
もう栽培場は風前の灯火で、もう諦めるしかないよって街の人達は言うんだけど……。 」
ライキーさんは窓……というかもうただの穴になってしまったぽっかり開いているそこから外を見て、悲しそうに眉を下げる。
「 ここは僕の ” 幸せの場所 ” なんだ。
だから離れるなんて絶対したくないんだよ。 」
ライキーさんは何かを思い出したのか悲しそうだった顔は笑顔に変わり、その後はスクっ!と立ち上がった。
そして鼻息を勢いよく吹き出す。
「 だからね!僕は毎日この『 ジャマジャマきのこアーマー 』を着て、必死にアイツラを追い払ってきたんだ!
これは< ジャマー・マッシュ >っていうモンスター達が嫌う匂いを発するキノコから作った僕のお手性アーマーで────。 」
< ジャマー・マッシュ >
モンスターにとってあまり好ましくない匂いを発するキノコ。
人型種は問題ないが食べると苦いため食用としては人気がない。
どうやら先程から着ている白いもじゃもじゃした毛の服は、モンスター対策のためライキーさんが自作したものらしい。
それについての説明をペラペラペラ~と語りだしたら、止まらなくなってしまった。
「 ────~で、そもそも菌類っていうのはねっ!
無限の可能性を秘めたロマン溢れるモノで~────ペラペラペラペラ~。 」
「 …………。 」
とりあえず難しい理論はさっぱり。
しかし、ライキーさんにとってここはとても大事な場所、そしてきのこを心から愛している事だけは理解した。
ふんわり香る松茸の香りに似た匂いのキノコ茶を今度は ” 椅子 ” になっているレオンに飲ませて貰いながらウンウンと頷く。
そして話を聞き続けていると、ライキーさんの話は一応一段落した様で今度はキョロキョロとしだした。
「 とりあえずこのアーマーを着て転がり回って撃退してきたけど、あいつらの中には< ジャマー・マッシュ >の匂いに耐性を持った奴らがいて、この有様さ。
一匹でも倒してくれたら本当に嬉しいよ。
────で、他のお仲間さん達は何処に? 」
56
お気に入りに追加
2,014
あなたにおすすめの小説
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
【完結】竜を愛する悪役令嬢と、転生従者の謀りゴト
しゃもじ
BL
貴族の間で婚約破棄が流行し、歪みに歪んだサンドレア王国。
悪役令嬢のもとに従者として転生した主人公・グレイの目的は、前世で成し遂げられなかったゲームクリア=大陸統治をし、敬愛するメルロロッティ嬢の幸せを成就すること。
前世の記憶『予知』のもと、目的達成するためにグレイは奔走するが、メルロロッティ嬢の婚約破棄後少しずつ歴史は歪曲し、グレイの予知からズレはじめる…
婚約破棄に悪役令嬢、股が緩めの転生主人公、やんわりBがLしてる。
そんな物語です。
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?
麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。
悪役令息の死ぬ前に
やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」
ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。
彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。
さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。
青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。
「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」
男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる