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第十六章

595 幸せの場所

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( リーフ )

キノコの栽培場『 ライキーきのこ 』は南と西の門のちょうど中間あたり。

それぞれの門を出て少し歩いたところにある開けた場所に建設されている。


そのため俺達はあげ玉に乗りそのまま門の防壁を突破した後は、空からその栽培所らしき場所を探し出しそのままドス────ン!と着地した。


「 上空から見たら、確かこの辺に……。 」


周辺をキョロキョロ探し回ると、『 ライキーきのこ 』と書かれた一つの立札をみつけ、ビンゴ!と指を鳴らす。

日陰でジメジメッ~としている一帯の中、ポツンと立てられているボロボロの立札。

確信を得て、そのまま進んでいくと、沢山の小さな木の小屋らしきものが建っている場所に出た。


「 多分依頼者はここにいるはず。

だけど……? 」


俺はキョロキョロと周囲に建っている小屋達を見渡す。

すると全ての小屋が、ツギハギの様に板が打ち付けられていてボロボロで……正直廃墟と言われても全く違和感がない状態になっていた。

流星コウモリの襲撃によって、こんなになっちゃったんだろうか……?


「 こんにちは────!! 」


とりあえず大声で挨拶すると、比較的まだマシと言えるボロボロの小屋からガタガタガタ!!と音がして、突然扉が大きく開いた。


そこから出てきたのは真っ白いもじゃもじゃした毛の塊!

その姿はまるで巨大なたんぽぽの綿毛の様であった。


モ、モンスター!??


一応警戒体制をとったが、続いてその白い塊はピタリと止まり震えだすと、そのままドバッ!!と左右に飛び散る大量の水が飛び出したため、ポカ~ンと口を開ける。

そのまま黙っている俺の前で、その白い毛玉はおーいおいおいと大声で泣き出した。


「 も、も、もしかして冒険者の人達ですか!?

うわぁぁぁ────んっ!!来てくれてあ”り”がどう”~~!! 」


そのままひたすら泣き続けるその白い物体。

どうやらモンスターではなさそうだ。


煩いから排除しようとするレオンと、好戦的にガンを飛ばすあげ玉を押しのけ、俺はその白いもじゃもじゃに近づく。

そして、フサァ~と顔?を覆う毛を掻き分けると、中からはピャーピャーと大号泣する男性の顔が出てきた。

ヒェッ!!

驚きすぎて体を大きく震わせてしまったが、その人物は気にせずグススンと泣きながら、出てきた小屋を指差す。


「 どうぞどうぞ~良かったら僕の特製キノコ茶でも飲んで下さい~。 」


そのままスゴスゴと肩を落として小屋へ入っていく白い毛玉を見つめながら、俺達は大人しくそれについていった。


◇◇◇


「 いや~こんな依頼にまた誰か来てくれるなんて思わなかったから嬉しいよ。

本当にありがとぉぉぉ~!

僕はこの『 ライキーきのこ 』の所長の< ライキー >!

────って言っても従業員はゼロなんだけどね! 」


アハハ~!と笑う依頼者の< ライキー >さん。


俺は案内された小屋の中にあるソファーに座ろう……としたが、その前にレオンにいつも通り腰をガッチリ掴まれそのお膝の上にONさせられた。

その後はライキーさんお手製だという美味しいキノコ茶を飲みながら、今回の依頼者であるライキーさんへチラッと視線を向ける。


恐らく歳は40前後くらいの男性で、無精髭にボサボサのカーキ色の髪。

そして相手が思わず気が抜けそうなくらい、ぼんやりとした雰囲気を持つ人だ。

何だか凄くいい人そうな青年だな~と思いながら、俺はライキーさんに自己紹介するため、一度お茶をボロボロのテーブルの上に置いた。


「 俺はリーフ。後ろにいるのはレオンで、外で遊んでいるのがあげ玉に黒みつだよ。

今日はよろしくお願いしま~す!

なんだか小屋がすごい被害を受けている様で驚いたよ。

モンスター避けの結界は? 」


「 そんなものとっくに壊されちゃったよ。

本当にすごい数の流星コウモリなんだ。

だから今まで魔導具をフルに使って追い返してきたけど、それも限界でねぇ。

もう栽培場は風前の灯火で、もう諦めるしかないよって街の人達は言うんだけど……。 」


ライキーさんは窓……というかもうただの穴になってしまったぽっかり開いているそこから外を見て、悲しそうに眉を下げる。


「 ここは僕の ” 幸せの場所 ” なんだ。

だから離れるなんて絶対したくないんだよ。 」


ライキーさんは何かを思い出したのか悲しそうだった顔は笑顔に変わり、その後はスクっ!と立ち上がった。

そして鼻息を勢いよく吹き出す。


「 だからね!僕は毎日この『 ジャマジャマきのこアーマー 』を着て、必死にアイツラを追い払ってきたんだ!

これは< ジャマー・マッシュ >っていうモンスター達が嫌う匂いを発するキノコから作った僕のお手性アーマーで────。 」



< ジャマー・マッシュ >

モンスターにとってあまり好ましくない匂いを発するキノコ。

人型種は問題ないが食べると苦いため食用としては人気がない。



どうやら先程から着ている白いもじゃもじゃした毛の服は、モンスター対策のためライキーさんが自作したものらしい。

それについての説明をペラペラペラ~と語りだしたら、止まらなくなってしまった。


「 ────~で、そもそも菌類っていうのはねっ!

無限の可能性を秘めたロマン溢れるモノで~────ペラペラペラペラ~。 」


「 …………。 」


とりあえず難しい理論はさっぱり。

しかし、ライキーさんにとってここはとても大事な場所、そしてきのこを心から愛している事だけは理解した。


ふんわり香る松茸の香りに似た匂いのキノコ茶を今度は ” 椅子 ” になっているレオンに飲ませて貰いながらウンウンと頷く。

そして話を聞き続けていると、ライキーさんの話は一応一段落した様で今度はキョロキョロとしだした。


「 とりあえずこのアーマーを着て転がり回って撃退してきたけど、あいつらの中には< ジャマー・マッシュ >の匂いに耐性を持った奴らがいて、この有様さ。

一匹でも倒してくれたら本当に嬉しいよ。

────で、他のお仲間さん達は何処に? 」


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