上 下
608 / 1,370
第十六章

593 頑張るぞ〜!

しおりを挟む
( リーフ )

「 ……それってここでも書いてもらう事はできる? 」


「 多分書いてくれるんじゃないかな?

黒みつ~昨日の絵をまた書いてくれるかい? 」


黒みつは俺の質問に対し ” 問題なし! ” と言わんばかりにニュ~ッと伸ばした2本の触手で大きな丸を作る。

そしてエイミさんが取り出した紙とペンが机の上に置かれると、ピョンっ!とそこへ軽く飛んで移動し、触手を使って昨日と全く同じ絵を書いた。

エイミさんはそれを見下ろしゾッと青ざめ「 なんだかゾッとする絵ね……。 」と呟いたので俺も大きく頷いてそれに同意する。


「 俺も最初見た時は怖いって思ったよ。そのせいで変な夢まで見ちゃったくらい。 」


「 確かに私も今夜は怖い夢を見ちゃうかも……。

黒スライム君はこの絵に関して他に何か教えてくれたの? 」


俺は首を横に振ってそれに ” NO ” と答えた。


「 それがこれ以上の事は黒みつにも分からないみたいなんだ。

とりあえずお墓ではなさそうなんだけど……。 」


黒みつはお墓の存在にピンッときてなさそうだったが、” モンスターが沢山死んでいるところ? ” と聞いてみたら、う~ん……と悩んでいる様子を見せた後、プルプルと左右に揺れて ” 違う ” を訴えた。


エイミさんは俺の話を聞きながら黒みつの絵を持ち上げ、更にジッと見つめるとそのまま困った様に眉を下げる。


「 そうなのね。じゃあ、やっぱり森の奥に行ってみるしかないって事か~。

でもまだ少し時間が掛かりそうなのよね。

モンスター増加のせいで魔素も濃くなっているし、下手に強いモンスター達の縄張りに突っ込んでしまうと、他のモンスター達も触発して街に危険が及ぶ可能性もあるから調査は慎重に行わないといけないし……。

浅いところからゆっくり……か。


────はあ~……先は長くなりそうね。 」


「 何事も上から崩すのは難しいからね~。

下からゆっくり……。もどかしいけど仕方ないね。 」


だるまさん落としも、上のだるまを落としたらゲームオーバー。

下手に奥にいる強いモンスターを刺激すれば、そこから水の波紋の様にその刺激はモンスター達に広がり一気に人里に降りてくる恐れもある。

まさに雪山の雪崩の様だ。


これほど大きな森だとホント大変なんだな~……。


しみじみその苦労を想像していると、エイミさんは、そういえば……と俺がレガーノに帰省している間に起こった出来事に関して話してくれた。


「 つい昨日、急に魔素が強くなって森の一部に大きめの< 瘴気 >が発生した事件があったんだけど、直ぐに教会からソフィア様が来て魔素に戻してくださったのよ。

やっぱりすごいわね~。

現在唯一魔素に対して有効なスキルを持っている聖女様は。

街に来てくれて本当に心強いわ。

でも、ソフィア様の能力はいざって時に使って頂かないと、本当に危ない時にスキルが使えない状態になるかもしれないからね。

だからその負担を減らすため冒険者一同、モンスター討伐をガンガンしてその数を減らさないと! 」


ゴッ!と燃え上がるエイミさん。

それに釣られた俺もゴッ!と燃え上がる。


「 よ~しっ!じゃあ、俺もモンスター討伐頑張らないといけないね!

ちょっと依頼、見てくる! 」


やる気満々になった俺は、直ぐに依頼ボードまで走り、良さげな依頼書をキョロキョロと探す。

そしてやはり俺の目を引くのはボロボロの長く放置されているであろう依頼書達で、端にゴソッと貼られているそれをペラペラとめくり、一番古そうな依頼書を手に取った。


するとその依頼書には『 流星コウモリ 』の討伐と書かれていた。



< 流星コウモリ >

体長30cm程のコウモリ型Fランクモンスター。

普段は温厚で主食は木の実やきのこなどの草食で人を襲ってくる事は滅多にないが、個体の強さとしてはEランク、さらにそれが集団化するとDランク相当といわれているランク越えモンスター。

特にスピードが凄まじく早い為、空から一直線に飛んで仕掛ける体当たりはまるで流星のようであると言われている。



この流星コウモリは空から体当たりという単調な攻撃しか仕掛けてこないが、これが非常に厄介で、とにかく早い。

しかも集団の場合は空から四方八方、360°どこからでも襲ってくるため、集団の討伐になると最低5人以上のパーティーで挑む必要がある。


遠距離攻撃が可能な人を真ん中に配置し、その周りを前衛班で囲む。

そして四方八方からの攻撃を前衛班が防ぎながら、真ん中の後衛が遠距離攻撃をぶっ放して倒していく────というのがセオリーな倒し方だ。

勿論地味に時間が掛かるし、苦労が多い割に流星コウモリのお肉は唐揚げ一個分くらいしかとれない。

その上スピード特化の防御力は紙レベルのため、こちらの攻撃により派手に飛び散り、それと共に瘴核も大抵は粉々!

そのせいで素材収入は雀の涙程なのに依頼ランクも集団は全て一律Eランク……とくれば確かに人気のないのも頷ける依頼である。

しおりを挟む
感想 264

あなたにおすすめの小説

モブらしいので目立たないよう逃げ続けます

餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。 まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。 モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。 「アルウィン、君が好きだ」 「え、お断りします」 「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」 目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。 ざまぁ要素あるかも………しれませんね

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

【完結】竜を愛する悪役令嬢と、転生従者の謀りゴト

しゃもじ
BL
貴族の間で婚約破棄が流行し、歪みに歪んだサンドレア王国。 悪役令嬢のもとに従者として転生した主人公・グレイの目的は、前世で成し遂げられなかったゲームクリア=大陸統治をし、敬愛するメルロロッティ嬢の幸せを成就すること。 前世の記憶『予知』のもと、目的達成するためにグレイは奔走するが、メルロロッティ嬢の婚約破棄後少しずつ歴史は歪曲し、グレイの予知からズレはじめる… 婚約破棄に悪役令嬢、股が緩めの転生主人公、やんわりBがLしてる。 そんな物語です。

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?

麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

処理中です...