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第十五章

568 黒いあれデビュー

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( リーフ )


またしても新スキルが発現してる!


「 凄いぞ~黒みつ! 」


新たなスキル発現に、目を光らせながら、その真っ黒ボディーを上にポンポンっと投げると黒みつは楽しそうに震える。

そして、そんな動く黒みつを見ている、レオンとあげ玉もそのボールの動きを追う猫の様にジッ~……と見ていて楽しそう。


そして何度も黒みつを投げている内に、バレーボールのトスを思い出して楽しくなってしまい、そのままポンポンと投げて飽きるまで遊んだ。


そんな凄い黒みつ!しかし真に凄いのはここからであった。


グニグニとひんやりボディーを弄びながら黒みつの活躍を思い出し、俺はフフフ……と思わず笑いを漏らす。



ドロドロに汚れていた俺達4人はそのままお風呂に直行し、身体を洗おうとしたのだが、またしても石鹸を買い忘れた事に気づいた。

使う時になって初めて思い出す……そんな加齢のパッシブスキルはしっかり効いている。

あああ~……と凹んでいると、なんとそれを見ていた空気が読める子、黒みつが突然スキル< ホワイト・バブルシャワー >を発動。


白い泡々を大量に吐き出した。


まるで雲の中に突入したかの様な一面泡の中、おおおお────っ!!と感動しながら、俺は泡まみれになった身体を手で擦ってみる。

すると、たった一度だけ擦っただけなのに泥や汚れがごっそりと落ちていった。


す、凄い!!


その石鹸の上位互換の様な泡達に感動し、俺は黒みつに「 ありがとう! 」と御礼を告げると、黒みつは ” どういたしまして~ ” と言わんばかりにぷるるんッと揺れる。


俺は今回の功労者である黒みつをワシっ!とつまみ上げ、そのまま泡でコスコスと洗ってあげた後、温泉へポーンと投げ入れた。

そして次に ” 何コレ~? ” と不思議そうに泡に顔を突っ込んで遊んでいるあげ玉を捕獲し、レオンと共にワッシワッシと全身洗い終わった後は黒みつと同様に温泉へポポーン。


二人はそのまま温泉にプカプカと浮かんで気持ちよさそう。


次はモジモジしているレオンをガシッ!と捕獲し、お風呂用の椅子に座らせると、そのまま背中をタオルでゴシゴシと洗う。

するとレオンは直ぐに ” 幸せ~幸せ~ ” と言わんばかりにうっとりしながら身体を預けてくるので、更によしよしするように頭を洗ってあげると、レオンはキュッ……と目を瞑りプルプルと身体を震わせた。


人に頭を洗って貰うのって気持ちいいよね~!


理容室に行った時の一番のお気に入りサービスを思い出しニコニコしていると、レオンは前回よりはマシかな?という動きで俺の身体をペタペタ、スイ~スイ~と洗ってくれる。


「 ありがとう! 」


これならスキル< 石男 >で耐えられるレベル!

俺はなんとか擽ったさを耐え凌ぎ御礼を告げた。


そして、ふぃ~と何かをやり遂げた雰囲気で満足気に息を吐くレオンと共に湯船にザブンッと飛び込むと、全員でプカプカ浮かんで温泉を嫌というほど堪能した。


そしてその後────。

脱衣所に戻った俺の眼の前にドンッと飛び込んできたのは、ドロドロに汚れた衣服とタオル達だ。

” そろそろ洗濯しないとな~……。 ”

そう思いながら、ふぅ~と思わずため息が漏れる。


リーフ邸にいた頃は侍女のジェーンが全てやってくれていたが、寮生活では勿論自分でしなければならない。


前世と違って洗濯機がないので少々面倒だが手洗いか……。


仕方がないと割り切って、汚れている衣服の山に手を伸ばそうとした、その時────突然黒みつがススっ……とそれに近づいてきた。

そして繁々とそれを見上げると、突然空中に巨大な水の玉が現れる。


おおおお????


何だ?何だ?とその様子を見守っていると、黒みつは次々とその水の玉に汚れた衣服を放り込み、それをまるで洗濯機の様に回しだした。


どうやら黒みつは先天スキル< 洗浄ミキサー >を発動し、出現した聖水で衣服を洗ってくれている様だ。


” 聖水 ” は聖職者系の資質持ちの人が創り出す、ゴースト系や腐食属性などなどあらゆる不浄なモノの効果を弱めるアイテムなのだが、これがまたべらぼうに高い。


それをふんだんに使った黒みつの聖水洗濯機……。


勿論汚れなど一瞬で消滅。

衣服に染み込んだ、いや~な匂いも完全消去!


ひょえ~と目を見開いてその様子を見ていると、洗濯を終えた衣服達は洗濯かごの中へボトボトと落ちてくる。


エッヘン!


胸を張るようにグイ~と縦長に伸びた黒みつに、俺とあげ玉はおお~!と拍手。

その後、風魔法で一瞬で乾かしてくれたレオンにも追加で拍手した。


褒められたのがそうとう嬉しかったのか、黒みつはその場でポンッポンッ飛び跳ねながら、そのまま更にスキル< 大食いバキューム >を発動する。

クワアァァァ~~~!!

大きく息を吸い込み始め、部屋中の汚れやチリ、埃が全て吸い込まれていった。


「 お……おぉぉぉー……。 」


そしてピカピカになった脱衣所を見渡し呆然としていると、どう?どう?と俺の周りを飛び跳ねる黒みつ。


黒いルンバ……。


俺の頭の中では、黒みつがウィンウィンと音を立てながら部屋中を歩き回って汚れを吸い込む映像が浮かぶ。


何十年もずっとコード付き掃除機を使い続け、ルンバに憧れていた自分の前世を思いだしキラッ!と目を輝かせた。


そして────飛び跳ねる黒みつをワシっ!と掴む。


「 いい子いい子~。 」


ビクビクしている黒みつを優しく撫で回し、とうとうルンバデビューができた自分を密かに喜んだ。

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