上 下
582 / 1,315
第十五章

567 初めての帰省

しおりを挟む
( リーフ )


「「 うわあぁぁぁぁ────────!!!!! 」」


ポッポ鳥に乗ったモルトとニールが必死にその首にしがみつき、振り落とされないようにしながら悲鳴を上げ続ける。


「 は、早すぎるっ────!! 」 

「 ちょっ、ちょっと待つっすー!!ストップストップっす~! 」


そしてその叫ぶ様子を、俺とレオンは走るあげ玉に乗ったまま見ていた。



学院のスケジュールは前世の教育機関と同じく月曜日~金曜日まで。

そして土日は休みとなっている。


そのため俺達幼馴染~ズは、最初の週は忙しかったため帰れなかったが、その次の週の土曜日、その早朝から故郷のレガーノに帰省しようと向かっている最中なのだ。


帰るならまた強化馬車をレンタルかな~と思い、その早朝に馬車屋さんに行こうとしたら、あげ玉がそれをいち早く察知。

ズサッ────っ!!と俺とレオン、モルト、ニールの前に回り込んだ。


「「「 …………。 」」」

「 …………。 」


────スチャッ……。


黙ってあげ玉の行動を見守る中、俺は静かにレイピアを抜こうとするレオンを制す。


そのままわちゃわちゃとレオンと戯れあっていると、あげ玉が突然「 クピョピョピョ────ッ♬ 」と歌うように鳴き始めた。


……???

あ、お歌かな~??


そう思った俺は、レオンから手を離しパンッパンッ!と手拍子しながらステップを踏んでいたのだが、どうも違った様だ。

突然森の方角から、別のポッポ鳥が2匹飛んで来てドス────ンッ!!とすぐ近くに着地した。


焼き鳥にするべく ” 着火 ” を使おうとするレオンの人差し指をギュムッと掴んで止めると、あげ玉とその2匹は集まり何やらボソボソと話しだした。


「 クッポプププ~? 」


あげ玉が鳴きながら、首元にある多次元バックからお化けさやえんどうを2つボボボンっ!と出すと、2匹のポッポ鳥の前にスイ~と押し出す。


「 クピョっ────────!!!??? 」


「 クぺぺぺペ────────っ!!!?? 」


差し出されたお化けさやえんどうを見下ろし2匹は大絶叫をあげた後、ガッガッガッ!!と凄い勢いでそれを食べ始めた。

そして完食後、ペロリっと口元を舌で舐め回すと、今度はモルトとニールの方へとテッテッテ~と近づいてきた。

ビクビクしながらそのポッポ鳥を見上げていた2人だったが、直ぐにそれぞれのポッポ達に襟元を掴まれポポンッと空へ。


「「 ────────っ!!!?? 」」


突然の浮遊感に驚く二人に対し、ポッポ鳥達は気にする様子も見せずにそれぞれの背中に2人を乗せ、そのままダダッ!!と走り出す。


どうやら乗せて行ってくれるらしい。


それに気づいた俺があげ玉に乗ると、そのままレオンも俺の後ろに乗り腕の安全バーを俺の腰にセット。

あげ玉はその後直ぐに走り出した。


そして追いついたあげ玉を真ん中に3匹のポッポ鳥達は防壁を駆け上がり、悲鳴を上げるモルトニールを完全無視して頂上からダイブ!!!

そして小さい羽を広げてのグライダー飛行へ飛び立つ。


「 ぎゃあぁぁぁぁぁぁ────!!! 」


「 ひぃぃぃぃぃ────!!! 」


モルトとニールは泣き叫んでいたが、俺はもう慣れたもの。

鼻歌を歌いながらちょうど登ってきた朝日を見つめ、綺麗だな~と感動していた。


「 綺麗ですね。 」


「 うん。夜空とはまた違うキラキラだね。朝日は。 」


レオンが後ろから抱きつきながらそう言ったので、俺もそれに肯定を返すと、あげ玉の首にスカーフの様に巻き付いていた黒いスライム君、改め< 黒みつ >が ” そうだね! ” と言うようにプルプルと震えた。


新たな家族となった黒スライム君の< 黒みつ >


家族に迎え入れた後直ぐに、俺とレオンはあげ玉の時同様、名前を必死に考えたのだが、レオンは ” 黒 ” 俺は ” おはぎ ” 

そんな ” ちょっとどうかな~? ” 的な名前しか思いつかなかったので、夜にモルトとニールの寮へ突撃し、名前について相談してみた。


するとニールは ” 黒こげ ” !!と俺達と同レベルの事を言ってきたが、モルトがすかさずパーンッとニールにビンタをする。

そして────……。


” クローディア・ミューズ・ツヴァイス……でいかがでしょうか? "


結局モルトが、そんな有り難~い偉大な人々の名前を付けてくれて、頭文字をとって< 黒みつ >に命名したというわけだ。

その時の事を思い出し、俺は嬉しそうに震える黒みつをグニグニしながら、その後の事も思い出した。


"   名前は< 黒みつ >でどうだろうか?  "


家に帰った俺たちは、早速……と本人に尋ねたのだが、返事を聞くまでもなく歓喜しながらの   "   YES   "   

そしてその喜びを表現する様に、みょんみょん!とそこらじゅうを飛び回ったあげく、なんとまたしても白く輝き出したので腰を抜かしそうになった。


ま、まさか……!?


そう思いながら、直ぐにスキル< 鑑定 ( 改 ) >を発動し、黒みつを見てみると────やはり予想通りの内容が書かれていた。



<聖王スライムのモンスター資質>  

( 特殊スキル )

< 家族の拠点 > 

ありとあらゆる妨害系スキルの干渉を受けることなく、どこにいても家族の居場所が分かる様になる。

またスキル< 深淵の魔術スライム >を持っている場合、家族の元へ空間移動することも可能。

( 発動条件 )

名前を付けてもらう事

” 家 ” に居場所を作ってもらう事



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女召喚!……って俺、男〜しかも兵士なんだけど?

バナナ男さん
BL
主人公の現在暮らす世界は化け物に蹂躙された地獄の様な世界であった。 嘘か誠かむかしむかしのお話、世界中を黒い雲が覆い赤い雨が降って生物を化け物に変えたのだとか。 そんな世界で兵士として暮らす大樹は突然見知らぬ場所に召喚され「 世界を救って下さい、聖女様 」と言われるが、俺男〜しかも兵士なんだけど?? 異世界の王子様( 最初結構なクズ、後に溺愛、執着 )✕ 強化された平凡兵士( ノンケ、チート ) 途中少々無理やり的な表現ありなので注意して下さいませm(。≧Д≦。)m 名前はどうか気にしないで下さい・・

勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話

バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん< 山野 石郎 >改め【 イシ 】 世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中・・俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない< 覗く >という能力だけ。 これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。 無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。 不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜

7ズ
BL
 異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。  攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。  そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。  しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。  彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。  どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。  ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。  異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。  果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──? ーーーーーーーーーーーー 狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛  

【 完結 】お嫁取りに行ったのにキラキラ幼馴染にお嫁に取られちゃった俺のお話

バナナ男さん
BL
剣や魔法、モンスターが存在する《 女神様の箱庭 》と呼ばれる世界の中、主人公の< チリル >は、最弱と呼べる男だった。  そんな力なき者には厳しいこの世界では【 嫁取り 】という儀式がある。 そこで男たちはお嫁さんを貰う事ができるのだが……その儀式は非常に過酷なモノ。死人だって出ることもある。 しかし、どうしてもお嫁が欲しいチリルは参加を決めるが、同時にキラキラ幼馴染も参加して……?    完全無欠の美形幼馴染 ✕ 最弱主人公   世界観が独特で、男性にかなり厳しい世界、一夫多妻、卵で人類が産まれるなどなどのぶっ飛び設定がありますのでご注意してくださいm(__)m

奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される。

拍羅
BL
転生したら奴隷商人?!いや、いやそんなことしたらダメでしょ 親の跡を継いで奴隷商人にはなったけど、両親のような残虐な行いはしません!俺は皆んなが行きたい家族の元へと送り出します。 え、新しく来た彼が全く理想の家族像を教えてくれないんだけど…。ちょっと、待ってその貴族の格好した人たち誰でしょうか ※独自の世界線

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

処理中です...