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第十五章

557 それはいかん!

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( リーフ )

ルーン先生に呼ばれた俺達は、学院内にある教員用の宿舎へと連れられ、先生の自室へとやってきた。


「 本当に悪いな!

お茶入れてくるからそこらへんに座っててくれよ!  」


そう言ってルーン先生は、俺たちを置いて奥にあるキッチンらしき場所へと消える。


ポツンとその場に残された俺とレオン。

俺はそこでどうしようかと思いながら、ゆっくりと周囲を見渡した。


まずルーン先生のお部屋というこの場所。

流石は実力高きエリート教員しか入れぬライトノア学院の教員用の宿舎!

とにかく広い!


今いる客間らしき場所だけで、家族10人くらいは住めるぞ!?というくらいの広さ。

更に、設置してあるソファーやテーブルなどの家具も恐らく最高級品なのは、キンキラリンの外見からして分かる。

しかし────……。


俺は真っ直ぐ水平に向けていた視線を、やや下に移した。


すると、そこにはそれらを全て台無しにするほどの大量の酒瓶が、絨毯の様に床の上に転がっている。


「 …………。 」


無言で下に転がっている酒瓶をヒョイッと持ち上げると、見事に空っぽ。

どうやらこの酒瓶達は全て空の様だ。


そんな空の瓶は床だけではなく、テーブルやソファーの上にもこれでもかと散らばっていて、更に脱いだ服や魔法書などの本、何かの書類なんかも至るところに落ちているため部屋の中はごっちゃごちゃ。


こんなに広い部屋なのに座る場所がない。


こ、この部屋だけ……?

そう思ったが、ルーン先生が消えた方向からガシャンガシャンという不穏な音が聞こえている事から、多分全ての部屋がこんな感じなんだろうと俺は予想した。


全く~!あんたって子はっ!


だらしない子供に文句をいいながら、お片付けするマッマの様にソファー周りのお掃除を始める。

するとレオンも "    何かしないと!   "   と思ったらしく、ソファーに掛けてあったハンカチの様なものを手にとった。


────ピラっ……。


レオンが手に取ったそれは……『 パ 』から始まる一枚の布であった。


未成年にはまだ早い!!


即座に俺がレオンの手にあるそれを、シュパッ!!と取り上げると、魔法書の間に押し花の様に挟んでおく。


「 ???? 」


「 いや~わりぃわりぃ!ちょっとコップが何処にあるのか分からなくてな!

ちょっと時間かかっちまったぜ~!


────お?立ってまってたのか?座っててくれれば良かったのに。 」


不思議そうな顔をしているレオンの後ろの方から、あっけらか~んとした様子でご登場したルーン先生。

レオンがいる手前、破廉恥な事で怒るわけにもいかず、言葉をグッと飲み込む。


「 ……後でこの本の245ページを開いてみてね。 」


とりあえず、それだけ伝えて『 パ 』がつく布を挟んだ魔法書を、部屋の隅にソッ……と置いておいた。


「 ??おぉ、わかったぜ! 」


レオンに負けず劣らず、訳のわからない様子で頷くルーン先生は、俺がお片付けしてなんとか座れるスペースを確保したソファーとテーブルの方へと向かう。


そして持ってきたお茶をそのテーブルの上に置いた後は、ドカッとソファーに座った。


「 じゃ~早速話をするから座ってくれよ! 」


そういってお茶と共に持ってきた中身が詰まった酒瓶を慣れた手つきで開け、そのままゴップゴップと一気飲み。


「 ……。 」


ちょっとお酒好きすぎない?


” アル中 ” という言葉が頭を過りながら、ルーン先生の向かいのソファーへと腰掛けようとしたのだが……。


────ガシっ!


やはりというかほぼ予想通りに俺のお尻は、レオンに掴まれそのまま流れるような動きでス────ッとレオンの上に乗せられる。


────うん、知ってた。


レオンはNO・1の ” 椅子 ” の称号を手に入れ、今後もずっとこうして世界で一番のそれを俺に提供し続ける。


多分もうコレ、どんなに頑張っても拒否しても駄目なやつだ……。


馴染み深いホカホカガッチガチの ” 椅子 ” に身体全てを預けながら、俺はやっと覚悟を決めた。


俺は悪の象徴、最強性悪の悪役 

< リーフ・フォン・メルンブルク >!

英雄様の ” 椅子 ” をたっ~ぷりと堪能し、思う存分虐げてやろうではないか!


……決してゴネられるからめんどくさくなったとかではない!


俺はもそもそもそ~と動き、自身の収まりが良い場所へ身体をセットすると「 お茶ぁぁ~。 」と偉そうに言い放つ。


すると、レオンはパァァァ~と嬉しそうにお茶を持ち、赤子にミルクを飲ませる様に、俺の口にお茶を近づけた。


……なんか、お茶の葉っぱの匂いと共にアルコール臭するけど大丈夫?


不安を感じながらも、それをコクコクと飲むと、レオンは更に嬉しそうにコップを置いた後俺の前髪をスイ~と分けてくる。

そしてそのままプロもびっくり仰天!いつものヘッドマッサージをしてくるもんだから「 う”ぃぃぃぃ~……。 」と温泉に浸かる時と同じ声が漏れてしまった。


絶妙な指使いに俺はウットリ~。


「 ……おいくらですか? 」


ついついそう尋ねてしまった程。


レオンはハテナを頭の上に出して考え込んだ後、俺に質問を返してくる。


「 俺は無料です。リーフ様はおいくらですか? 」

” 俺は無料だと思いますが、リーフ様は俺のマッサージはおいくらの価値があると思いますか? ” 


いやいや~。この素晴らしいマッサージに価値などつけられないぞ~?


そう心の底から思った俺が「 世界中のお金を集めても足りないかもしれないねぇ。 」と正直に答えると、レオンはフッと憂いのある笑みを見せた。

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