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第十四章

556 誰かの一番、誰かの……

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( リーフ )

マリオン、クラーク君、ジェニファーちゃんは、プリプリしながら我先にと去っていき、他の生徒達も逃げる様に去って、その場に残ったのは俺とモルト、ニール、ソフィアちゃん。


モルト、ニール、ソフィアちゃんはレオンの方をチラッと見てから大きく息を吐き出したが、この後にある部活の楽しみを思い出した様で、直ぐにニコニコと笑いだした。


「「 リーフ様~とレオン!ソフィア様~!また明日お願いしまーす! 」」


「 こちらこそ明日もよろしくお願いします。 」


三人は、上機嫌のまま手を振って去っていった。

ソフィアちゃんにとっては学院にいる間だけが自由に自分の好きな事を好きなだけ調べられる時間らしく、そりゃ~もう凄く嬉しそうに。


表だけ見ると綺羅びやかな世界に見えても、王女様は本当に大変だ……。


目につくもの全てに飛びついていた自分の小さい頃を思い出し、ついついしんみりとした気分になってしまった。


やりたい事を思い切りできないのは、辛かろう辛かろう。


大人心としてはそう残念に思いながらも、それを見せない様にするソフィアちゃんは本当に凄いと尊敬の念も持つ。


そしてそれと同時に────ソフィアちゃんが我慢しなければならない最大の原因でもある彼女のお兄さん、エドワード坊やについては、全く……とため息をついた。


物語の中でもかなり苛烈で極端な思考を持ったエドワードは、最後まで一貫して自身の考えを曲げることはしなかった。


こうであるべき!という確固たる信念を持つこと自体は、別に時と場合を考えれば別に良い。


しかし、問題はそれを全員に強制する事、更に叶えてしまう事も可能な ” 権力 ” という強大な力を持っている事だと俺は思う。


"   この後どうしますか?  "   

そう言いたげな顔で見下ろしてくるレオンを見て、物語のレオンハルトの事を思い出しもう一度息を大きく吐いた。


悪役リーフが失脚後、レオンハルトが英雄と認められた後も、あの手この手と姑息なお手々をワサワサと使いながら、レオンハルトの存在を否定し続けたエドワード坊や。


” レオンハルトは英雄ではない!

あの様な身分も外見も賤しい者が英雄なものか!! ”


そう最後まで声高々に訴え続け、更に物語の進行と共に嫌がらせと妨害は加速する。



第二王子のアーサーに、” 自身の持つ価値観を突き通し、この世界と心中するおつもりですか? ” などと最初にスッパリ言われてもその考えはとうとう変わる事はなかった。


レオンハルトが旅立たねば、世界が終わるのが分かっているのに尚、妨害してくるその気持ち。

正直俺にはさっぱり分からない。


「 リーフが中ボスなら、最後の大ボスは彼になるねぇ……。 」


「 ??? 」


レオンが不思議そうな顔を見せてきたので、何でもないよと首を横に振った。


俺が考えるに、大ボスエドワードは、大事なモノの優先順位がパシと決まっている人なんだろうとは思う。


エドワードにとっては自身の持つ価値観こそが最も譲れないモノで、それが不動のNO・1。

他の事はそれよりかなり下に位置していたからこそ譲れなかったのかもしれない。


それこそ沢山の人の命や自身の価値観を受け入れようとしない ” 世界 ” はその遥か下……だったのかな。


むしろ壊してやりたいモノの一つだったのかも……。


俺は見下ろしてくるレオンの右手を触り、ちゃんとある事を確認できてホッとする。


勿論そんなエドワードだけが悪いとは言わないが、俺は彼がそれを突き通そうとする世界は ” 悲しい ” が沢山あって好きではない。


誰かの一番は誰かの最下位。


誰かがまっすぐ道を進む為には、必ず他の誰かが自分の一番を我慢して道を譲ってぐにゃりと曲がらなければならない。


それは沢山の人がいる世界では仕方のない事だが、ただ俺はその譲る人がずっと同じ人であるべきではないと思う。


きっとさぁ、ずっと譲り続けたら嫌いになっちゃうと思うんだよ、自分のいる世界の事。


それこそ心を持ってないとかじゃない限りは……。


レオンの右手から手を外し、次に左目をそっと触った。。



俺が失脚した後、今度は大ボスエドワードがレオンの進もうとする道をことごとく邪魔してくる。

きっとどうしようもできないくらい巨大で要塞化したような "  世界 "  をこれでもかとレオンにぶつけてくるはずだ。


そんなヤツに負けたら駄目だぞ~。


サワサワサワサワ~と労るように左目を揉み込み心の中で頑張れ!頑張れ!と応援を送った。


レオンはレオンで譲ったり譲ってもらったり、色々考えて世の意地悪と戦って……それで今いる ” 世界 ” がどんなものかしっかり見て、考えて、世界の未来を選んでおくれ。


気分は意地悪なクラスメートに虐められてトボトボ帰ってきた我が子を見るのと同じ気持ち!

うちの子虐めた悪い子ど~こ~だ~?と全力で特攻したいが、そこは我慢。

その嫌な体験も将来戦国時代の様な社会で戦うためには必要な事なのだ!


頭の中では悪ガキエドワードが、茶色い汚物を刺した棒を持ってソフィアちゃんやレオンに意地悪しようと追いかけてくる姿が浮かび、ゴッ!!と怒りの炎が燃え上がったが…………考えてみれば俺もその最たる悪役の一人!


ガガ────ン!!


今更ながらにショックをうけて、燃え上がった怒りの炎は、凄い勢いで鎮火した。


お、俺は茶色い汚物を持つ側の一人……。


その強烈なイメージに青ざめながら、俺はブツブツと呟く。

そしてそんな俺の前では、レオンが真っ赤な顔でクシャッと丸めたティッシュの様な表情をしていた。


「 ……お、お~い……もう話しかけていいか? 」


黄色のあげ玉がいれば、俺達信号機だね!な状態の俺達に向かい、何者かの呼びかける声が、突然背後から聞こえる。

ハッと正気に戻った俺が声がした方向へ目線を向けると、そこには木の影に隠れているルーン先生が……。


「 はーい!大丈夫でーす! 」


俺がピッ!と手を挙げてそう答えると、ルーン先生はルンルンとご機嫌で木の影から出てきて、俺に言った。



「 ちょっとリーフとレオンに頼みがあるんだぜ!

今からあたいの部屋に来てくれないか? 」

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