559 / 1,370
第十四章
544 あれ??
しおりを挟む
( リーフ )
「 確かに恋愛の話をしたり可愛いって言ったり抱きしめたりも本当なんだけど、それは……。 」
────と言いかけたその時、ポポンッ!!という音と白い煙とともにレイドが、そしてあまり間を開けずにメルちゃんが現れ、話は中途半端で途切れる。
「 レイド!30階制覇!22分45秒!
メル!同じく30階層制覇!22分55秒! 」
クリアーした二人はコチラに向かって歩いてきたのだが、まるで弓が本体かと問いたくなるほどの巨大弓を背負うメルちゃんはいつも通りだったのだが、レイドは何故か意気消沈していた。
「 あ”あ”~~~……。」
口からは濁音を出し、ご自慢のピンッ!とした耳とふさふさ尻尾は可哀想なくらいへんにょりしている。
それに歩き方もトボトボと力が入っていない様子だったので、俺はそんなレイドに声を掛けた。
「 レイド、どうしたんだい?
クリアーしたのに元気がないじゃないか。 」
すると、レイドは自分の背中に背負っていた大剣を前に出し、ガシャンっ!と大きな音を立てて大盾に形状を変えてみせた後、めしょめしょと泣き始める。
「 俺の武器は大剣と大盾の2つの形態で戦える< 守護大剣 >なんだけどよ~……。
ナメクジ・ミミズとめちゃくちゃ相性悪かった。
盾はあいつらの粘液でねちゃねちゃだし、大剣はさらにねっちょりだし……。
それに大剣だと体ごと潰しちまうから、酸性の粘液を全身に浴びまくって、俺、5階層くらいからずっとほぼ全裸で戦ってたんだ。
ボス戦の前には武器以外何も身につけてなかったんだぜ?
」
レイドは自分の尻尾を撫で撫でしながら、尚もめそめそと泣き続ける。
その悲しげな姿に対し笑ってはダメだと踏ん張ったが、耐えきれずブブ────ッ!!と吹き出してしまった。
すると、我慢するつもりなどサラサラなかったサイモンとメルちゃんと共に、結構なボリュームで笑い転げる。
それにガガ──ンとショックを受けるレイド。
そしてその横で、アゼリアちゃんが何故か顔面蒼白になったまま立ち尽くしている。
ヒーヒー好き放題笑いながらも、レイドの特殊な武器< 守護大剣 >に視線を送った。
< 守護大剣 >は大剣と盾を自在に変形させることができる変形型の武器である。
攻撃力がもっとも大きい大剣と守備もできるこの武器は、まさに攻守ともに非常に優れている武器だが、扱いが難しいのと、こういった弱いモンスター相手だと手加減が出来ないのが弱点でもある。
パワー重視の大剣では、柔らかいモンスターの体は一撃で粉砕し、それにともない粘液や体液も花火の様に飛び散る。
そしてそれを浴びて……と、考えるだけで背筋がゾワゾワ~としてしまうが、裸で真剣に戦うレイドの事を想像してしまうとどうしても笑いが込み上げてしまった。
周りにいた生徒達もそれに釣られて笑いだしたが、一部の生徒達はシーン……と黙ったまま遠い目をしていた事から、多分レイド同様、裸にはならなかったが類似の恐怖を味わってきた様だ。
レイドは自分が笑われている事に気づき、更にしょんぼりしたが、固まっているアゼリアちゃんに気づいて " あれ? " という顔をした。
「 お??何でアゼリアも固まってんの?
────あ~、こいつも全裸組か! 」
不名誉な妄想を口にしたので、俺はシッ!!と急いでレイドを黙らせ、コソコソとその理由を話す。
" サイモンと相撲した事 "
" エルフ族の恋愛は難しいねっていう話をしていた事 "
" それを聞いて破廉恥センサーが限界になってしまった事 "
それをザッ!と教えると、いつもそのセンサーに引っかかり戦闘に突入するレイドは大きく頷いた。
「 あ~…なるほどなぁ。 」
納得した様子を見せたレイドは、一歩アゼリアちゃんから遠ざかる。
しかし、何故か急に固まっていたアゼリアちゃんは「 す、相撲……? 」「 エルフ族の……恋愛……?? 」と呟きながら、しゅっ~と風船が萎んでいく様に落ち着いていった。
「 ちぇ~!もう少し遊びたかったのにぃ~。 」
すっかり落ち着いたアゼリアちゃんを見たサイモンは、面白くなさそうにツツ~ンとしながら言うので、アゼリアちゃんはギンッ!とサイモンを睨みつけ、そこから喧嘩が勃発する。
過酷なダンジョン攻略後なのに元気だな~。
汗を掻きながらそんな二人を見守っていたが、そうやってギャーギャー!と戯れ合う二人は何だかんだと楽しそう。
そのため、とりあえず傍観していると────大きな影と小さい影が、俺にグイ!と顔を近づけてきた。
「 俺もやりたい!相撲やろうぜ! 」
顔を近づけてきたのは、レイドとメルちゃん。
キラキラ目を輝かせて誘って来たので、獣人のパワーに興味があった俺は「 いいね!やろう!! 」と二つ返事でイエスと返す。
簡単な説明をした後、俺は早速レイドと睨み合い~……ぶつかり合う!!
────バァンっ!!
ぶつかり合う体と体。
しっかりと相手のまわし……いやズボンの腰部分を持ち、押して押されての大健闘に、周りの生徒達は、おおおお────!!という歓声や野次を飛ばす。
「 あ……抱きしめ……これか……。 」
そんな中、アゼリアちゃんだけが、ボソボソと呟いていたが、直ぐに大きな歓声に声はかき消されてしまった。
俺はグイグイと押されながらもテクニックを駆使し右へ左へと体を揺らしそれに耐える!
しかし、やはり力で勝る獣人には敵わず、結局────ポポーーンと投げ飛ばされてしまった。
「 わあぁぁぁぁぁ────! 」
地面に叩きつけられて、その後コロコロ転がって止まると、悔しさから、その場でワーワー!と騒ぐ。
「 くやし~!!もう一度────……。 」
────と、申し出たところで、ハタっ……と気づいた。
あれ?まだレオン戻ってなくない??
「 確かに恋愛の話をしたり可愛いって言ったり抱きしめたりも本当なんだけど、それは……。 」
────と言いかけたその時、ポポンッ!!という音と白い煙とともにレイドが、そしてあまり間を開けずにメルちゃんが現れ、話は中途半端で途切れる。
「 レイド!30階制覇!22分45秒!
メル!同じく30階層制覇!22分55秒! 」
クリアーした二人はコチラに向かって歩いてきたのだが、まるで弓が本体かと問いたくなるほどの巨大弓を背負うメルちゃんはいつも通りだったのだが、レイドは何故か意気消沈していた。
「 あ”あ”~~~……。」
口からは濁音を出し、ご自慢のピンッ!とした耳とふさふさ尻尾は可哀想なくらいへんにょりしている。
それに歩き方もトボトボと力が入っていない様子だったので、俺はそんなレイドに声を掛けた。
「 レイド、どうしたんだい?
クリアーしたのに元気がないじゃないか。 」
すると、レイドは自分の背中に背負っていた大剣を前に出し、ガシャンっ!と大きな音を立てて大盾に形状を変えてみせた後、めしょめしょと泣き始める。
「 俺の武器は大剣と大盾の2つの形態で戦える< 守護大剣 >なんだけどよ~……。
ナメクジ・ミミズとめちゃくちゃ相性悪かった。
盾はあいつらの粘液でねちゃねちゃだし、大剣はさらにねっちょりだし……。
それに大剣だと体ごと潰しちまうから、酸性の粘液を全身に浴びまくって、俺、5階層くらいからずっとほぼ全裸で戦ってたんだ。
ボス戦の前には武器以外何も身につけてなかったんだぜ?
」
レイドは自分の尻尾を撫で撫でしながら、尚もめそめそと泣き続ける。
その悲しげな姿に対し笑ってはダメだと踏ん張ったが、耐えきれずブブ────ッ!!と吹き出してしまった。
すると、我慢するつもりなどサラサラなかったサイモンとメルちゃんと共に、結構なボリュームで笑い転げる。
それにガガ──ンとショックを受けるレイド。
そしてその横で、アゼリアちゃんが何故か顔面蒼白になったまま立ち尽くしている。
ヒーヒー好き放題笑いながらも、レイドの特殊な武器< 守護大剣 >に視線を送った。
< 守護大剣 >は大剣と盾を自在に変形させることができる変形型の武器である。
攻撃力がもっとも大きい大剣と守備もできるこの武器は、まさに攻守ともに非常に優れている武器だが、扱いが難しいのと、こういった弱いモンスター相手だと手加減が出来ないのが弱点でもある。
パワー重視の大剣では、柔らかいモンスターの体は一撃で粉砕し、それにともない粘液や体液も花火の様に飛び散る。
そしてそれを浴びて……と、考えるだけで背筋がゾワゾワ~としてしまうが、裸で真剣に戦うレイドの事を想像してしまうとどうしても笑いが込み上げてしまった。
周りにいた生徒達もそれに釣られて笑いだしたが、一部の生徒達はシーン……と黙ったまま遠い目をしていた事から、多分レイド同様、裸にはならなかったが類似の恐怖を味わってきた様だ。
レイドは自分が笑われている事に気づき、更にしょんぼりしたが、固まっているアゼリアちゃんに気づいて " あれ? " という顔をした。
「 お??何でアゼリアも固まってんの?
────あ~、こいつも全裸組か! 」
不名誉な妄想を口にしたので、俺はシッ!!と急いでレイドを黙らせ、コソコソとその理由を話す。
" サイモンと相撲した事 "
" エルフ族の恋愛は難しいねっていう話をしていた事 "
" それを聞いて破廉恥センサーが限界になってしまった事 "
それをザッ!と教えると、いつもそのセンサーに引っかかり戦闘に突入するレイドは大きく頷いた。
「 あ~…なるほどなぁ。 」
納得した様子を見せたレイドは、一歩アゼリアちゃんから遠ざかる。
しかし、何故か急に固まっていたアゼリアちゃんは「 す、相撲……? 」「 エルフ族の……恋愛……?? 」と呟きながら、しゅっ~と風船が萎んでいく様に落ち着いていった。
「 ちぇ~!もう少し遊びたかったのにぃ~。 」
すっかり落ち着いたアゼリアちゃんを見たサイモンは、面白くなさそうにツツ~ンとしながら言うので、アゼリアちゃんはギンッ!とサイモンを睨みつけ、そこから喧嘩が勃発する。
過酷なダンジョン攻略後なのに元気だな~。
汗を掻きながらそんな二人を見守っていたが、そうやってギャーギャー!と戯れ合う二人は何だかんだと楽しそう。
そのため、とりあえず傍観していると────大きな影と小さい影が、俺にグイ!と顔を近づけてきた。
「 俺もやりたい!相撲やろうぜ! 」
顔を近づけてきたのは、レイドとメルちゃん。
キラキラ目を輝かせて誘って来たので、獣人のパワーに興味があった俺は「 いいね!やろう!! 」と二つ返事でイエスと返す。
簡単な説明をした後、俺は早速レイドと睨み合い~……ぶつかり合う!!
────バァンっ!!
ぶつかり合う体と体。
しっかりと相手のまわし……いやズボンの腰部分を持ち、押して押されての大健闘に、周りの生徒達は、おおおお────!!という歓声や野次を飛ばす。
「 あ……抱きしめ……これか……。 」
そんな中、アゼリアちゃんだけが、ボソボソと呟いていたが、直ぐに大きな歓声に声はかき消されてしまった。
俺はグイグイと押されながらもテクニックを駆使し右へ左へと体を揺らしそれに耐える!
しかし、やはり力で勝る獣人には敵わず、結局────ポポーーンと投げ飛ばされてしまった。
「 わあぁぁぁぁぁ────! 」
地面に叩きつけられて、その後コロコロ転がって止まると、悔しさから、その場でワーワー!と騒ぐ。
「 くやし~!!もう一度────……。 」
────と、申し出たところで、ハタっ……と気づいた。
あれ?まだレオン戻ってなくない??
65
お気に入りに追加
2,014
あなたにおすすめの小説
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
【完結】竜を愛する悪役令嬢と、転生従者の謀りゴト
しゃもじ
BL
貴族の間で婚約破棄が流行し、歪みに歪んだサンドレア王国。
悪役令嬢のもとに従者として転生した主人公・グレイの目的は、前世で成し遂げられなかったゲームクリア=大陸統治をし、敬愛するメルロロッティ嬢の幸せを成就すること。
前世の記憶『予知』のもと、目的達成するためにグレイは奔走するが、メルロロッティ嬢の婚約破棄後少しずつ歴史は歪曲し、グレイの予知からズレはじめる…
婚約破棄に悪役令嬢、股が緩めの転生主人公、やんわりBがLしてる。
そんな物語です。
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?
麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
悪役令息の死ぬ前に
やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」
ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。
彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。
さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。
青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。
「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」
男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる