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第十四章

543 うむ!深い!

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( リーフ )


前世の俺の給料では決して手が届くはずもない東京都の一戸建てを思い浮かべて、俺はくっ・・と悲しみに耐える表情を浮かべる。


だから平民さんでは相当お金がある人しか買えないので、結局行き着くところは ” 異性がいいよね! ” になってしまうのだ。


ただ、オーガニック主義のエルフ族が同性間の結婚OKなのはこの魔道具の存在が大きく、

” 同性同士に対して多少違和感はあるけど子孫繁栄できるなら別にOKだよね! ”

ーーというやはり人族にはよく分からない価値観の元、同性結婚を良しとしている様。



それに実際にこれを使って子供をご出産されている方々もいるので、存在すること自体はとても良い事だが、実際使うとなるとお金・・という世知辛い問題が絡んできてしまう。

愛だけでは越えられない問題がこの世には多々あるのだ。


「 恋愛って難しいねぇ・・?

性別とか外見とか匂いとかさ、価値観に性格に、そんな難所をせっかく通過出来ても今度は世の中のどうしようもない壁にぶつかったり・・・

それにせっかくそれを全部クリアーできてお付き合いできても、お互いの恋愛ペースが合わないとだめだしね。


う~ん・・深いなぁ~・・ 」



自分の実らなかった恋愛を思い出してしみじみ。


本当に難しいと心の底から思って真剣に言ったのに、サイモンは何かのツボに入った様に大爆笑。


その笑いっぷりに俺はヤレヤレとため息をつく。

大人になるとねぇ~愛だけじゃなく責任とかがねぇ~と語ってやろうとした、その時ーー

サイモンはピタリと笑いを止め、チラッと俺の方へ一瞬視線を向けると、また直ぐに逸した。



「 それにさ、僕の資質ってあんまり私生活を一緒にするの嫌がられちゃうんだ~。

知られたくないことまで知られちゃったりするからさ。

そういう資質ってやっぱりずっと一緒にはいて貰えないのかな・・ 」



ポツッ・・と サイモンは小さい声で呟やいた。


確かサイモンの資質【 盗賊猫 】やその他類似している資質は、戦闘や諜報に適してはいるものの本人の意思なく相手の知られたくない情報まで覗いてしまうスキルも存在しているため嫌がられる・・

ーーーと聞いたことがある様な気がする。



確かに人によってはそれを脅威と感じる人もいるだろう。



だがーーーー・・







物心ついた時からプライベート皆無の俺にはいまいちその気持ちが分からない。




基本は孤児院に入り浸り。

我が家は近所の子供やおじいちゃんおばあちゃんの休憩所。


そして何よりびっくりするほどの距離感で側にいるレオンの存在により、そんなものは転生してからより一層皆無となってしまった。


もう一度チラッとコチラを見てくるサイモンに向かって俺は真面目な表情でそれに答えた。



「 サイモンの資質って諜報に役にたつから凄くいいと思うよ。

それに俺、知られて困る事ないから生活一緒にして嫌なのはよく分かんない。


油断してるとレオンにお尻まで拭かれてるし・・


なんかそれ以上隠したい事ってないと思うんだよ。

ほら、人生の最後らへんで一番嫌で隠したいのって排泄介助だからさ。

だからそんなの全然大丈夫だよ。 」


かなり真剣に答えたつもりだったが、サイモンはまたも大爆笑してしまいちょっと複雑な気分になってしまった。


人生最大の修羅場だぞ~?排泄介助は!

心の中でだけプリプリ抗議していると、またもや新しい場所でポポンッ!!という音とともに白い煙が上がる。

そこから姿を現したのはアゼリアちゃんで、すかさずクルト先生が「 アゼリア殿、30階層制覇!19分10秒! 」と叫んだ。


おお~と周りの拍手に迎えられたアゼリアちゃんは、ふーーっ・・と息を大きく吐き出してから俺とサイモンの方へやってくる。


「 トラップが非常に厄介で時間が掛かってしまいました。

しかしリーフ様はまだしも破廉恥エルフに負けるとは・・


ーーーくっ!!このアゼリア、一生の不覚!! 」


ぎりぎり・・と非常に悔しそうに歯ぎしりするアゼリアちゃんにサイモンの目はキランッと光る。

そしてすかさず俺の腕にグイッと近づいて、ニヤ~と意地悪そうな笑みを浮かべた。


「 僕とリーフ様はツートップでクリアーしたんだぁ~♡

それでぇ~さっきまで恋愛について語ってたんだけどぉ~リーフ様ったら僕の事凄く可愛いっていってくれたの!

それにギュゥゥ~って強く抱きしめられちゃった♡

リーフ様ってば大胆♡ 」


ふふふ~と笑いながら今度は自身の体を抱きとめ、くねくね体を動かすサイモンに、俺の脳裏には紫色のもじゃもじゃしたドノバンが思い浮かんだ。


そういえばドノバンも異性の魅力を語る時よくあの動きやってたな・・


その後即座にレオンに攻撃されていたのを続けて思いだしプッと小さく笑っていると、アゼリアちゃんはちょうどその時のレオンの反応と同様に嫌そうな表情を浮かべながら「 はぁ? 」と口に出す。

そしてフンッと馬鹿にするように鼻で笑うと俺に向かって言った。


「 リーフ様、そこの破廉恥エルフが何やら戯言を申しておりますが、不敬罪で即刻切り捨ててやりましょう。

おい、破廉恥エルフ、覚悟しろ。 」


刀に手を掛けジリジリ近づこうとするアゼリアちゃんに、余裕そうにキャーーっと言いながら俺の後ろにヒョイッと隠れるサイモン。


アゼリアちゃんをからかうサイモンに俺は振り返ってまたおでこをペペンっとした後、破廉恥が嫌い嫌いなアゼリアちゃんの誤解を解くため、きちんと説明をし始めた。


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