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第十四章

534 前で良かった

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( リーフ )


学院のオリエンテーションは昨日で終わり、本日から本格的な授業がはじまる。


そんなわけで午前中は昨日顔合わせした特級組のクラスで一般教養の授業を受けたが、これは小学院とほとんど授業形態が変わらない。


なので俺はあの指定された前の見世物席に座り授業を受けたわけだが・・俺が腰を掛けた場所はまたしてもレオンの上。


勿論その事態を打開すべく、俺は今朝も頑張った。


本当に本当に頑張った!!



思い出すのは朝、登校して直ぐの事。


流石にレオンの気持ちも多少は落ち着いただろうと考えた俺は、レオンのあのご立派な椅子を自分の指定椅子の隣に置き、「 隣に座って授業を受けてもいいからね~。 」と許可をだした。


しかしレオンは一切それに興味を示さず、また俺の腰を掴みそのまま持ち上げ ” 椅子 ” になろうとしてくるので俺はそれを踏ん張る事で阻止。



するとまたしてもレオンがごねだしてしまう。



「 リーフ様には世界一素晴らしい ” 椅子 ” に座って頂きたいので・・。 」


そういって腰を掴む手に力を入れるレオンに俺は負けじと口を動かす。


「 ずっと俺を乗せていると辛いよ~?俺、重いからさ! 」


「 リーフ様は羽の様に軽いです。

飛んでいかないようにしっかり後ろから押さえつけますね。 」



羽・・・


結構なパワーを感じるその言葉に一瞬思考は止まりそうになったが、ブルブルと首を横に振りトリ頭をフル活動させた。



「 俺の後ろにいると、きっとお勉強に集中できないと思うよ。

流石に中学院のお勉強は難しいからそうなるとレオン困っちゃうんじゃないの~? 」


「 後で全ての本の知識を頭に入れておきますので大丈夫です。

授業など俺には元々必要ありませんから。 」



ズバズバッ!と迷いなく告げられるレオンの言葉に俺はお手上げ。



だいたいいつものパターンだとーーー


レオンごねる ➔ 俺譲る ➔ それ以後はそれがレオンの常識になる


がセットなので、このままでは毎日レオンの腹話術人形として授業を受けるようになってしまう。



レオンがごねるのはそんなに多い事ではないので普段はできるだけ叶えてあげているのだが・・流石にこれは許すわけにはいかない!と朝はそのまま揉めに揉めた。


周りの生徒たちは俺とレオンの喧嘩に口は挟まず傍観してくれているが、正直あまり揉めていると迷惑だろうと思い俺は最終手段を発動。


「 じゃあ、命令だよ。

レオンは俺の隣に座って授業を受けること!はいっ!決まり! 」



主人から奴隷への強制命令、これには流石に逆らえないはずーーーーと思われたが・・


レオンは無言。


ムスッとしながら無言で立ったまま動かない!



くそ~

レオンの赤ちゃん!

幼児帰り!ママっ子!!



反抗期真っ只中の様なレオンに対し心の中で悪口を言いまくってしまったが、これでは駄目だ。


怒りをぶつけるだけでは反抗期の子供には勝てない。

その言い分を認めてあげることも必要・・!


俺はすぅ~・・と大きく息を吸い込み自身の気持ちを落ち着けると、ホタホタと胡散臭い笑顔を浮かべながらムスッとして動かないレオンに優しく話しかけた。



「 レオンの ” 椅子 ” が世界一なのはよく分かっているよ。


だからランチの時にしようね!

レオン、いい子だから隣に座って授業受けよう。 」



だいぶ優しく諭したつもりだったがレオンは胡散臭いオジさんを見つめる幼児のようにジト~とした目を向けてきて、次に隣合わせになっている俺とレオンの椅子を見下ろす。



イケるか?と思ったのは一瞬。

レオンは爆発したかの様に急に大声で怒鳴り始めた。



「 俺の方が優れているのにリーフ様はこいつの方が好きなんですか!?俺よりも?!

だから俺ではなくこいつに体を預けようとしてるんですね?!


リーフ様は ” むっちんむっちんが大好きだ ” とそう言ってたじゃないですか!!


なら、こんな奴は即刻捨てて俺を選ぶべきです!


リーフ様に選ばれるのは俺。

その体を預けてもらうのも俺だけ!


そうですよね!!??リーフ様!!! 」




ーーーーーホタ・・


胡散臭い笑顔のまま俺は固まった。



考えてみてくれ。

同級生・・しかも女の子もいる中で、もっとも恥ずかしい性癖について暴露された時の衝撃を。


怖すぎて後ろの子供たちのお顔が見れな~い・・


固まってしまった俺を見て、レオンは自分の考えが正しいと理解してくれた!と思ったらしくパァッと眩しいほどの笑顔を見せた。



「 良かったです。ちゃんとリーフ様が理解してくれて!


じゃあこいつには端っこで俺達の事を見せつけてやりましょう!

一瞬でもリーフ様の心を奪った罰です! 」



レオンの良くわからない自論は俺の停止した頭を風の様に通り抜けていき、真っ白になった俺の目の前でレオンは椅子を一つズリズリと教室の端へと引きずっていき、そこへバンッ!!と乱暴に置いた。


そしてそれを見下ろし、ざまあみろ的な目を椅子に向けてニヤッと笑みを溢すレオン。


その後満足気に俺の方へテッテッテ~と戻ってきて、俺の体を丁寧な手つきで持ち上げるとそのまま自身の膝の上にセット。


ノートを出したりペンを出したりいそいそと授業のスタンバイを始めてしまう。


俺はその時、初めて一番前の席で良かったと心の底から思った。


何故なら恐らくゴミを見るかのような目をしているであろう女子生徒の目と軽蔑をこめた他の同級生の目を見なくて済んだから・・。


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