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第十四章

533 分かってないんだよな〜・・

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( リーフ )




なるほどねぇ~としみじみしながら俺は小さく頷く。



” 主人にお金を献上する事 ”

そしてそれを受け取ってもらって、よしよ~しされるのがレオンが一番欲しい物なのだそうだ。



俺は ” 嬉しい?嬉しい? ” とワクワクそわそわした目で見下ろしてくるレオンに対しなんとも言えない気持ちを抱く。



これ洗脳解けたら黒歴史~

あとで絶対憤死する系のやつ~


真っ赤なお目々で敵を屠るまで前進し続ける巨大ダンゴムシの映像がフッと頭を過ぎって思わず体はブルブル。

ここで突っ返すと、恐らく俺が受け取るまでその巨大ダンゴムシの様に突進し続けるのだろう。


そして俺はパパーン!!とそれに跳ね飛ばされてそのまま眠る様に息を引き取り金色の触手達の上で手を広げ・・はしないが、レオンは盛大にごねる!絶対に!


それが容易に想像できたので、俺はそれを素直に受け取り今後はレオン用貯金として全て取っておくことに決めた。


ありがと~と告げて、受け取ったお金はあげ玉の多次元バックへ。


それが終わったタイミングを見計らってレオンはキラッ!と目を輝かせると、スススッ・・と俺に近づいてきて昨日同様俺の体をペタペタと触りまくる。


はいは~い。俺、怪我一つしてないよ~


心の中でそう伝えながら、リーンちゃんの家に着くまで好きに触らせといた。


そして最終的にペタペタ~と背中に引っ付いて離れなくなってしまったレオンを軽く背負い、到着したリーンちゃんのお家の扉の前に立つと、直ぐにドアが開きマルクさんが顔を出す。


「 こんばんは!もしかしてリーンを送り届けてくれたんですか?

お疲れでしょうにどうもありがとうございます。 」


「 こんばんは~!

全然疲れてないよ。リーンちゃんとお喋りできて楽しかった。


あと、パンも凄く美味しかったよ!

沢山くれてどうもありがとう。また明日が楽しみだな。 」


お互いペコペコ~と頭を下げてご挨拶するとマルクさんはアセアセと焦りながら両手をブンブン振った。


「 御礼を言うのはこっちの方ですよ!

頂いたお肉でパンを作ったらそれはもう!好評でして・・

久しぶりに美味しいって言って貰えて嬉しかったです。


・・・最近嫌な事ばかりでね。

肉も野菜も段々と流通が滞ってきて、貯蓄分はどの店もなくなる寸前で・・。

街の人達はなんとか頑張っていたけど、先が見えなくて随分と疲弊していたんだ。


自分で狩りをしようと思ってもそんな余裕はないし、戦闘職の人達もほとんで寝ずに討伐続きでこれ以上はもたないってところだったんですよ。 」



あげ玉の背中でウトウトしているリーンちゃんをマルクさんはゆっくり下ろし起こさない様に抱っこすると、その顔を見下ろしながらニコッと笑う。


モンスターの被害は何も直接的な怪我などだけではなくこうした様々な商品の流通が滞る事も問題なのである。


モンスターが増えすぎてしまえば先ほどの畑同様、様々な作物や海の幸なども大打撃、そして当然街を行き来する商人さん達も移動困難により輸入も困難かつ高額になっていく。


たとえ防壁は守られても、そんな状況で人は暮らしていく事はできず、結局は街を破棄せざるを得ないというわけだ。


困ったもんだ~と眉を寄せ、難しい顔を見せると、マルクさんはフフッと小さく笑って言った。


「 すみません。不安にさせてしまいましたね。


でも、なんと!先ほど大量にお肉が入ってきたとのお知らせが冒険者ギルドから届いたので明日はきっと大騒ぎですよ。

久しぶりの明るい話題で嬉しいです。

また明日も頑張ってパンを作りますからね~!期待してて下さい! 」


ゴッ!!と燃えるマルクさんにリーンちゃんはむにゃむにゃと起きそうになってしまい、おおっとっと~とマルクさんと二人でシ~・・とする。


マルクさんを始めとするグリモアの人達は本当にいい人達ばかりで、頑張ってこの街の為に自分が出来る限りの事を必死にしようとしている。



俺はそれにとっても感動した!



だから俺も頑張りたいなと心の底から思い、ドンッ!と胸を叩いて言った。



「 大丈夫!安心してほしい!

実は俺は物凄~く強いから、迷惑なモンスター達はちょちょいちょいなんだ!

だから二人は美味しいパンを作って待っていておくれ。

このオジ・・じゃなくて、リーフ様に任せて任せて~! 」


フォッフォッフォ~とちょっとお年が出ている笑いを漏らしながら得意げに言うと、マルクさんはポカンとしながら俺を見下ろした後、

「 じゃあ、とびきりのパンを作って待ってますね! 」と言いながら嬉しそうに笑う。


” とびきりのパン ” にワクワクしながら大きく頷き、そのまま帰ろうと思ったのだが、そこでマルクさんが突然コショコショと小さな声で話しかけてきた。


「 実は、まだ公になっていませんが、一昨日くらいから森の中で高ランクモンスターが正体不明のモンスターに次々と倒される事件が起きてまして・・

そのせいで守備隊の仕事がガクンと減って助かっているらしいのですが、その正体はいまだ不明です。


目撃者によると黄色い ” 何か ” らしいですよ。

何でも動きが早すぎて見えないんだとか・・・。


今朝モンスターが少なかったのも、もしかしてそいつのせいかもしれません。 」



俺は、ほほぅ・・と驚きながら頷いた。


多分目撃者は戦闘職の人だと思われるのでそれが目で負えぬスピードなど相当強いモンスターだと思われる。


俺もレオンも毎朝森に行くし、あげ玉など一日中森にいるので気をつけなければ・・


ゴクリッと喉を鳴らし、レオンとあげ玉に ” 分かった? ” という注意喚起を込めて視線を投げかけたが・・

レオンは省エネモード、あげ玉は何故かドヤ顔をしながらニタリッと好戦的な表情をしている。



保護者のオジさんは心配だ!



レオン~と呼びかけながら身体をゆすゆすと揺さぶり電源ONを促し、あげ玉には、喧嘩、めっ!と軽く叱咤しておいたが、2人は何も分かっていない様子でとりあえず頷くだけなので、俺はガックリ肩を落とす。


そして肩を落としたまま俺はマルクさんに本日の分のお肉を渡し、そのまま家へと帰っていった。

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