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第十四章
523 ” 力 ”
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( ナックル )
「 クソがっ!!! 」
冒険者ギルドに向かう途中、俺は近くに設置されていた鉄製のゴミ箱を思い切り蹴飛ばした。
ーーーガランッガランッ・・・
その衝撃でゴミ箱がベコベコにヘコみ地面に転がっていく様を見て、後ろにいる仲間達がサァ・・と青ざめたが、俺は気にせずズンズンと前に進んで行った。
先日冒険者ギルドでザップルの野郎といつも通りチクチクとやり合っていたところに、突然仲間の3人がギルドに駆け込んできてこう言った。
” モーニング・スターベアを見つけた! ” ーーと。
モーニング・スターベアはCランクモンスター。
Cランクモンスターは通常ソロでは討伐できず、大人数での討伐が基本となるモンスターだが勿論その分報酬はデカい。
そういったモンスター討伐はクラス総出で倒すのがセオリーだが、そんな事をバカ正直にやったところでデカい利益は得られない。
だがーーー
このモーニング・スターベアはやり方次第ではGランクモンスター並みに簡単に倒す事ができる。
それはこのモンスターの習性にヒントがあって、こいつは通常はクソ見てぇに早いし強いしまともにやり合うなら犠牲も覚悟しなけりゃーならないが、獲物を喰っている時だけは隙だらけ。
簡単に倒せちまうというわけだ。
” そこを狙え ” と仲間たちには徹底して教え込み、更にその隙を ” 作る ” 方法も教えてある。
それを忠実に実行したとお互い目配せした瞬間に理解し、更に口元はニヤッと上に上がった。
・・
それを証明するのは難しく基本は目撃者の発言頼りとなってしまうため、それなら数が多い俺達の独壇場。
アホみたいに真面目に依頼をこなしているザップルのクラスのめんどくせぇ冒険者達はそれを見張るまでの余裕なんてない。
ほ~んと ” 真面目に生きる ” 事ほど損な事はねぇっつーのに何でそんな生き方を選ぶ奴がいるんだろうなぁ?
俺には死を望んでいるようにしか見えねぇわ、ば~か。
心の中でそれを嘲笑いながら、だからこそそれを望まぬ俺がそういう奴らを ” 使って ” やっているのに何がそんなに不満なんだかと心底呆れる。
俺はペッ!と唾を吐き、毒を吐きながら歩き続けた。
新人や実力のねぇ奴を利用するのの何が悪い?
嫌ならどうにかするしかねぇし?
それが出来ないなら自然の流れで淘汰されちまうのは当然の事。
それをごちゃごちゃと・・うっとおしいったらありゃしねぇ!
俺は次第にグングンと上がっていく怒りの感情を少しでも落ち着かせるため、お気に入りの赤い宝石がついたペンダントを手に取りそれをジッと見下ろした。
” 真面目 ” になんざやっていたら決して手に入れる事などできないソレは、俺の心に満足感と優越感を与えくれて・・
脳裏には今までの自分が歩んできた光り輝く " 幸せ " な過去達が過っていく。
俺は元々王都で冒険者をしていて、元々の戦闘の高い実力、そして頭の回転が早く自身の ” 得 ” を即座に見抜く力に運良く恵まれたお陰で、その才能を遺憾なく発揮しあっという間にCランクまで駆け上がった。
人生まさにイージーモード!
あっという間に一流の仲間入り~!
そう有頂天になっていた俺だったが、ある日突然ある試練が立ちふさがる。
” Bランクの大きな壁 ”
ほとんどの冒険者はCランクで頭打ち、そう言われているほどDランクから上の昇級は難しく、” Cランクの壁 ” を越える事は出来たが、それ以上は難しかった。
冒険者にとってここが最大の分かれ道で、上に行ける奴はそのままトントンとまるでスキップするようにあっという間に駆け上がるし、行けねぇ奴はココで止まっちまう奴が多い。
更に王都には飛び抜けた実力を持った奴らがゴロゴロいて、立ち止まった俺を軽々と飛び越えどんどん先に進んでいく。
憎かった。
悔しくて悔しくて仕方なかった。
それ以上自分の力で上にはたどり着けねぇ、やがてそう悟った俺はどうしたか?
そりゃ~用意するだろう?
・・・
上に昇るための踏み台ってやつを。
そう理解した俺はまず人を集め始めた。
同じ様に上に上がれず腐っている連中に声を掛け、下を犠牲にすることで簡単に味わえる蜜の味を体験させてやれば後は簡単。
それだけで全員にとってそこは最高の場所になり、自分を幸せな勝者にしてくれるこの場所を誰も彼もが必死になって守ろうとする。
そして気がつけば、同じ様に蜜を吸いたい連中や自分だけは犠牲になりたくないと奪う側を選んだ連中が後は勝手に集まってくるってわけだ。
俺はな~にも損も努力もしてねぇよ?
・・・
ただ使い方を教えただけ。
それだけで自分が頂点でいられる最高の居場所が手に入っちまった。
それを知った時は笑いが止まらなかったよな~。
だって普段は役に立たねぇ弱者をちょいと皆で共有して " 使う " だけで、汗水垂らして土臭い努力なんざしなくとも、決して届かなかった強大な ” 力 ” を手に入れちまったんだから。
” 数の力 ” という最強ともいえる力を。
この【 氷龍の宝玉 】は俺の ” 力 ” そのもの、そして同時に楽園のような ” 世界 ” なのだ。
だからこのクラスに手を出そうとする奴や舐めた真似してくる奴は、全員この ” 力 ” を使ってねじ伏せてきた。
そしてそんな噂を聞きつけたエルフのお偉いさんが懇意にしてくれて、クラスは更に巨大化。
残念ながらそいつは失脚してしまいそれから多少ごたついたが、そのまま王都でそれなりにうまくやっていた。
そんなある日の事。
ある貴族の使いとやらがやって来て、大金と共にある話を持ちかけられた。
” グリモアにモンスターが大発生したからクラス丸ごと移動してくらないか? ” と。
かなりの大金を前に多少警戒はしたものの、その貴族の使い曰くーー
” 好きに過ごして貰って構わない ”
” ある程度の問題はこちらでもみ消してやる ”
・・・
” いつもと変わらぬやり方でやってほしい ”
ーーーーだそうだ。
・・・・・・・・
いつもと変わらぬやり方ーーねぇ?
どうやらこの貴族はよっぽどの恨みがグリモアにあるのか・・
それとも何か別の理由があるのか・・
それは分からなかったが、用意された大金と最近活発になったモンスター達の動きからかなり稼げると思った俺はその場で承諾の返事をする。
・・
ま、ヤバくなったら使えるモノは沢山あるしな。
・
外にも内にも。
用意された金をギラギラした目で見下ろす ” 仲間 ” たちを見回し、俺はフッと笑みを溢した。
「 クソがっ!!! 」
冒険者ギルドに向かう途中、俺は近くに設置されていた鉄製のゴミ箱を思い切り蹴飛ばした。
ーーーガランッガランッ・・・
その衝撃でゴミ箱がベコベコにヘコみ地面に転がっていく様を見て、後ろにいる仲間達がサァ・・と青ざめたが、俺は気にせずズンズンと前に進んで行った。
先日冒険者ギルドでザップルの野郎といつも通りチクチクとやり合っていたところに、突然仲間の3人がギルドに駆け込んできてこう言った。
” モーニング・スターベアを見つけた! ” ーーと。
モーニング・スターベアはCランクモンスター。
Cランクモンスターは通常ソロでは討伐できず、大人数での討伐が基本となるモンスターだが勿論その分報酬はデカい。
そういったモンスター討伐はクラス総出で倒すのがセオリーだが、そんな事をバカ正直にやったところでデカい利益は得られない。
だがーーー
このモーニング・スターベアはやり方次第ではGランクモンスター並みに簡単に倒す事ができる。
それはこのモンスターの習性にヒントがあって、こいつは通常はクソ見てぇに早いし強いしまともにやり合うなら犠牲も覚悟しなけりゃーならないが、獲物を喰っている時だけは隙だらけ。
簡単に倒せちまうというわけだ。
” そこを狙え ” と仲間たちには徹底して教え込み、更にその隙を ” 作る ” 方法も教えてある。
それを忠実に実行したとお互い目配せした瞬間に理解し、更に口元はニヤッと上に上がった。
・・
それを証明するのは難しく基本は目撃者の発言頼りとなってしまうため、それなら数が多い俺達の独壇場。
アホみたいに真面目に依頼をこなしているザップルのクラスのめんどくせぇ冒険者達はそれを見張るまでの余裕なんてない。
ほ~んと ” 真面目に生きる ” 事ほど損な事はねぇっつーのに何でそんな生き方を選ぶ奴がいるんだろうなぁ?
俺には死を望んでいるようにしか見えねぇわ、ば~か。
心の中でそれを嘲笑いながら、だからこそそれを望まぬ俺がそういう奴らを ” 使って ” やっているのに何がそんなに不満なんだかと心底呆れる。
俺はペッ!と唾を吐き、毒を吐きながら歩き続けた。
新人や実力のねぇ奴を利用するのの何が悪い?
嫌ならどうにかするしかねぇし?
それが出来ないなら自然の流れで淘汰されちまうのは当然の事。
それをごちゃごちゃと・・うっとおしいったらありゃしねぇ!
俺は次第にグングンと上がっていく怒りの感情を少しでも落ち着かせるため、お気に入りの赤い宝石がついたペンダントを手に取りそれをジッと見下ろした。
” 真面目 ” になんざやっていたら決して手に入れる事などできないソレは、俺の心に満足感と優越感を与えくれて・・
脳裏には今までの自分が歩んできた光り輝く " 幸せ " な過去達が過っていく。
俺は元々王都で冒険者をしていて、元々の戦闘の高い実力、そして頭の回転が早く自身の ” 得 ” を即座に見抜く力に運良く恵まれたお陰で、その才能を遺憾なく発揮しあっという間にCランクまで駆け上がった。
人生まさにイージーモード!
あっという間に一流の仲間入り~!
そう有頂天になっていた俺だったが、ある日突然ある試練が立ちふさがる。
” Bランクの大きな壁 ”
ほとんどの冒険者はCランクで頭打ち、そう言われているほどDランクから上の昇級は難しく、” Cランクの壁 ” を越える事は出来たが、それ以上は難しかった。
冒険者にとってここが最大の分かれ道で、上に行ける奴はそのままトントンとまるでスキップするようにあっという間に駆け上がるし、行けねぇ奴はココで止まっちまう奴が多い。
更に王都には飛び抜けた実力を持った奴らがゴロゴロいて、立ち止まった俺を軽々と飛び越えどんどん先に進んでいく。
憎かった。
悔しくて悔しくて仕方なかった。
それ以上自分の力で上にはたどり着けねぇ、やがてそう悟った俺はどうしたか?
そりゃ~用意するだろう?
・・・
上に昇るための踏み台ってやつを。
そう理解した俺はまず人を集め始めた。
同じ様に上に上がれず腐っている連中に声を掛け、下を犠牲にすることで簡単に味わえる蜜の味を体験させてやれば後は簡単。
それだけで全員にとってそこは最高の場所になり、自分を幸せな勝者にしてくれるこの場所を誰も彼もが必死になって守ろうとする。
そして気がつけば、同じ様に蜜を吸いたい連中や自分だけは犠牲になりたくないと奪う側を選んだ連中が後は勝手に集まってくるってわけだ。
俺はな~にも損も努力もしてねぇよ?
・・・
ただ使い方を教えただけ。
それだけで自分が頂点でいられる最高の居場所が手に入っちまった。
それを知った時は笑いが止まらなかったよな~。
だって普段は役に立たねぇ弱者をちょいと皆で共有して " 使う " だけで、汗水垂らして土臭い努力なんざしなくとも、決して届かなかった強大な ” 力 ” を手に入れちまったんだから。
” 数の力 ” という最強ともいえる力を。
この【 氷龍の宝玉 】は俺の ” 力 ” そのもの、そして同時に楽園のような ” 世界 ” なのだ。
だからこのクラスに手を出そうとする奴や舐めた真似してくる奴は、全員この ” 力 ” を使ってねじ伏せてきた。
そしてそんな噂を聞きつけたエルフのお偉いさんが懇意にしてくれて、クラスは更に巨大化。
残念ながらそいつは失脚してしまいそれから多少ごたついたが、そのまま王都でそれなりにうまくやっていた。
そんなある日の事。
ある貴族の使いとやらがやって来て、大金と共にある話を持ちかけられた。
” グリモアにモンスターが大発生したからクラス丸ごと移動してくらないか? ” と。
かなりの大金を前に多少警戒はしたものの、その貴族の使い曰くーー
” 好きに過ごして貰って構わない ”
” ある程度の問題はこちらでもみ消してやる ”
・・・
” いつもと変わらぬやり方でやってほしい ”
ーーーーだそうだ。
・・・・・・・・
いつもと変わらぬやり方ーーねぇ?
どうやらこの貴族はよっぽどの恨みがグリモアにあるのか・・
それとも何か別の理由があるのか・・
それは分からなかったが、用意された大金と最近活発になったモンスター達の動きからかなり稼げると思った俺はその場で承諾の返事をする。
・・
ま、ヤバくなったら使えるモノは沢山あるしな。
・
外にも内にも。
用意された金をギラギラした目で見下ろす ” 仲間 ” たちを見回し、俺はフッと笑みを溢した。
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