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第十四章

518 終わっている……

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( リーフ )


教会に大きな恨みを持つ【 反教会組織 】


しかもこの国の最高戦力である騎士団と張れるほどの巨大戦力< 聖兵士団 >に、大打撃を与えるくらいだから相当大きな組織だったと思われる。


そしてその巨大組織の全員に、命を掛けてまで戦う程教会を強く憎む理由があった……?


そこで大きな謎にぶち当たり、大いに頭を悩ませた。


もしそんな理由があったのなら、それを知ることさえ出来れば戦い自体を事前に止めることが可能かもしれない。

今ならまだ間に合うんじゃないか?


そこで少し落ち着きを取り戻し、かき混ぜてチャグチャになった髪をスッスッと撫でて整えながら冷静に考えをまとめていく。



戦いなんてもんは一度始まってしまえばピタリと止める事はとても難しい。

それにより発生した遺恨なんてもんは一生無くならないからだ。


” 憎しみや復讐は何も生み出さない ”

” だから争うのはやめよう ”

” それは悪い事なんだ ”


違う立場の者が囁く声は余計にその人達を苦しめ、最終的にはきっと今生きている世界そのものを憎むようにすらなるかもしれない。


《 大切なものを奪われ、こんな地獄の様な場所に自分を閉じ込め続けるこの ” 世界 ” は正しいのか? 》


そうして辿り着く先には "  世界  "  にとって不都合で不正解な展開だけが絶対にある。



復讐の怖い所は、関係ない人達にまでそれが飛び火する事。

そうなったら戦いはどんどん大きくなっていってしまう。



だからこそ争いなんてものは憎しみが発生する前に動かなければ全てアンハッピーエンド。

全員にとってのハッピーエンドは迎えられない。



目を瞑りそうして考えを纏めた後、俺はゆっくり目を開く。



なら、まずすべきことは大きな戦いが始まる前に、【 反教会組織 】の憎しみを抱く理由を知ること。

それが最優先事項だ。



一応の方針が決まった事でヘニョっと体の力は抜けて、とりあえずフル稼働してくれたトリ頭はスリープモードに突入。


ぽやっとしながらも、そこでちょっとした疑問が浮かぶ。


でも、今の教会にそこまで憎しみを抱いている人達がいるのか……?


今のところ、そんな不満の声は一つも聞いたことはないので、んん??と首を傾げる。


ただたんに表沙汰になっていないだけで、既にその片鱗はあるのかな??


疑問に感じた俺は直ぐにソフィアちゃんにそれとなく聞いてみようと、視線を上げた、その瞬間……目の前にある机の上には見慣れぬ本が一冊あった。



「 ????? 」


なにコレ~??

疑問に思いながら、その本をジッと見下ろすと、そこには『 どーなってるの?どーやるの?正しい性教育! 』────という題名が書かれてある事に気づき、更にハテナが頭から飛び出す。


「 あ、あれ??? 」


とりあえず前にある机に置いてあるそれをソロっ~と手に取ると、やっとここが先ほどのランチを食べていた屋外でない事、そして大きな教室の室内でありその一角に座っている事( ただし椅子はレオン )に気づいた。


気分はまるで浦島太郎!


「 …………。 」


思わずジーッと目の前の本を凝視していると、突然前に並んで座っていたモルトとニールが後ろを振り返り、俺と目線が合うと、あっ!と揃って声を出す。



「 お目覚めに鳴りましたか、リーフ様。

ちょっとリーフ様には刺激が強すぎる話でしたね。

思考が止まってしまうのは仕方がない事でしょう!


俺は大丈夫でしたが。大人ですので。 」



「 人には人のペースがあるので恥じる事ではないと思うっすよ~。

まぁ、俺はペースが早い方なのでちょっと物足りなかったっすけど……。


逆に俺はもう少し子供でいたかったっすね! 」



ヤレヤレ~と言わんばかりに首を振るモルトとニール。



いや、俺、還暦超えのおじじなんだけど……?



心の中で静かにツッコミを入れていると、モルトとニールの間に挟まれるように座っているレイドが、自身の分と思われる同じ本を両手でギュッ……と抱きしめた。


「 俺、勉強は苦手だけどめっちゃ読む……暗記する。 」


感極まった様子のレイドを見守った後、教室内を見回すと「 さっ、部活部活~。 」やら「 今日の夕飯何かな~? 」などと話しながら去っていく生徒達を見て、悟っちゃったよね~。


性教育の授業終わってるじゃん────ってね!


それに気づいた瞬間、あああああ~…………!!とめちゃくちゃ凹んで手に持っている本をレイド同様ギュッ!と抱きしめた。


オリエンテーションの中、一番楽しみにしていた< 性教育 >の講義。

色々考えていたせいで俺、何も……何も覚えていない!!


うううぅ……と悲しみに暮れる俺を見て、前に座っている3人は生ぬるい目を向けてくる。


「 子供が卵からじゃないのはショックでしたね? 」


「 大人を恨んではだめっすよ。卵も恨んじゃだめっす、美味いんで。 」


「 どんなやり方でも愛は変われねぇから、卵じゃなくても気にすんな。 」



えっ、何?卵……??


疑問に思ったのは一瞬で、この世界の子供の常識は ” 愛しあった男女には卵が~ ” であったことを思い出し、慌ててレオンを振り返れば安定の無表情。


ホッとしたのも束の間、モルトとニールはチィィッ!!と威嚇音にも似た舌打ちをした。


「 ちょっとばかり先に進んでいるからといっていい気にならない事だ。 」


「 そんな小指ほどのリーチ、なんの自慢にもならないっすよ! 」


そんな憎まれ口をつらつら言う2人の口を、俺は身体強化を使い直ぐに塞ぎ、そのまま2人を抱え上げタタターッと教室の隅に移動する。


「 レオンの傷口を抉っては駄目! 」


そしてそのまましっかりお説教した後、最後にデコピンをかましてやったが聞いているのかいないのか……。


「「 ……分かりました~。 」」


デコピンされておでこを押さえた二人は、一応と渋々返事をして、レオンの方をジトジト~と睨みつけている。


全く反省していない様子に ” もう一発いっとくか ” と指を構えたその時、どうしたどうした~?とのんきにレイドが近づいてきたので、俺は膝裏をカーン!と蹴った。
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