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第十三章

491 ゴミはーー

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( レオン )



そうして依頼とやらを報告し、ついでに熊を提出したらリーフ様が突然聞いたこともないほど大きな声でーー

「 ひゃっ、百万円!!!???

ーーーーじゃなかった!白金貨1枚!!?? 」


・・と叫んだ後、更にギャーーーっ!!と悲鳴をあげる。



心配になるくらいガクガク震えながら硬貨がジャラジャラ入った麻袋を受け取りそのままフラフラ~と出口へ向かって歩いていってしまったので、勿論俺はそれを追いかけた。


おぼつかない足取りに始めはヒヤヒヤしたが、歩いているうちに段々と落ち着いてきた様で鼻歌を歌いながらあのクッション女のところへご飯を食べに向かうリーフ様。


そうしてお店に到着した後は先ほど手に入れた熊の手を女にプレゼントしようとしたのだが、そこで俺の物理的接触センサーが警告を鳴らし直ぐにそれを取り上げ女に押し付ける。



いくらクッション的な存在とはいえ近づくなら容赦はしない


そういった意味を込めて睨みつけてやったが、女はニヤニヤ~と何処かで見たことのあるような笑みを見せ笑ったので、頭の端に顔を出す紫のモサモサしたモノに不快感がこみ上げた。


警戒しつつ ” 椅子 ” としての職務を終えた俺に、ご機嫌の様子のリーフ様が「 少し一緒に歩いてみないかい? 」と誘ってくれたので、イライラは一瞬で消え去りほわほわへと変わる。


後ろについていくのも好きだが、横に並んで歩くのも好き。

同じ場所にいるんだと思えるから



俺はスッと横に移動しその喜びに浸りながら歩いていると、リーフ様がジャラジャラと音をたてながら先ほど貰った硬貨をもう一つの麻袋に詰め始め、大きく膨らんでいる方の麻袋を俺に差し出してきた。



「 はい、レオンの取り分~。 」



硬貨・・金額にして金貨80枚

俺の??と確認する様にリーフ様に視線を向ければ可愛い笑顔。



恐る恐るその袋を受け取りながら「 俺の・・お金ですか・・? 」と尋ねればリーフ様は大きく頷いて言った。



「 レオンが稼いだレオンのお金だよ。

好きに使っていいからね。 」



俺のお金!!

勿論使い道は一つだけーーー


俺は何のためらいもなくそれをそのままリーフ様に差し出した。




「 どうぞ、リーフ様貰って下さい。 」



「 へっ??

・・いや、それはレオンの分だから好きに使っていいんだよ。


お金欲しかったんでしょ? 」



謙虚な答えが返ってきて、その奥ゆかしさがまた可愛らしいなと思わず笑みが溢れる。


こんな程度のお金では恐らくは砂漠の中の一粒の砂にも届かぬほどのはずで、身請けするには全く届かないだろうが・・・

俺はチラッチラッとお金を受け取ったリーフ様の様子を注意深く観察する。



金貨80枚だとどのくらい触ってもいいのだろうか・・?



人によってその値段に差があり、素晴らしい人物であればあるほどその値段は高いと、リーフ様は言っていた。


これは慎重に見極めなければ・・


俺は更にジッ・・とリーフ様の動きに注意しながら、怖がらせない様にススっ・・と近づき横にくっつと、まずは腰や背中辺りをスルスルと優しく撫でてみた。


これはOK


リーフ様から駄目!が出なかったので、続けて俺はペタペタと肩や二の腕、頭、首などを沢山触ったのにも関わらず、嫌がる事なく素直に触れせてくれるリーフ様。

更に無垢で汚れが一切ないキラキラした目で俺を見上げてくる。


ただでさえドキドキして落ち着かない状態なのにそんな目で見つめられてしまい、感極まった俺は思わず正面からギュッとその身体を抱きしめてしまった。



沢山触って、それを受け入れてもらってーー



なんて幸せ



じんわりと刺激してくるその幸せの感覚を素直に受け止めうっとりしていると、突然リーフ様にギュッ!と抱きしめられて、体は驚きビクビクッ!!と跳ね上がる。



” 嬉しい ” を返してもらう事、それが凄く幸せになれる行為だと俺はもう既に知っている。


それは一人きりの世界には決して存在しない最も貴重で尊いものだ。


結局、幸せにしてくれるモノほど形がなくて手に入れるのが難しいのは、それが ” 代償 ” だからで、持っていても直ぐにいらなくなってしまうものほど手に入れるのはとても簡単。


しかしそれがまさかお金で手に入ってしまうとは思わず、たった金貨80枚程度でこんなにも幸せを感じる事ができるとは思いもよらなかった。



幸せの簡単な入手法を発見し気分が酷く高まった俺は、ありったけの気持ちを込め、


” 嬉しいを返してもらえて嬉しい ”

” 貴方と出会えて本当に良かった! ”


そう伝えれば、リーフ様も同じ気持ちだとまたしてもその気持ちを俺に返してくれたのだ!



その瞬間、がむしゃらに襲いかかってくる沢山の ” 嬉しい ” に、まるで溺れてしまいそうだと思いながら、途端に美しくキラキラ光りだす世界の眩しさに目を細めた。


そしてその現象を起こしてくれる愛おしいリーフ様を抱きしめると、押さえきれなくなってきた感情達がポロポロと外に溢れだしては更に世界を輝かせてくれる。


本当に世界はなんて美しいのだろう



綺麗で美しいモノを見た事で、湧き上がる感動の気持ちに気分は更に上がっていったーー







ーーーーーが・・





視界の端に写った黒いモノ達を見て、心は一瞬で波一つ立つことのない泉の様に静まりかえり、感情は消え失せた。




あぁ、それを汚すゴミが邪魔だな


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