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第十三章

489 参ったな

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( レオン )

そうしてリーフ様の番が終わると、その後は俺もという事だったので、素直に触れれば結果は ” 白 ” 


これも予想通り。


俺の存在は外部からの刺激に対し、一切の ” 影響 ” というものを受けないため、常に一定の状況から動く事はない。


今、この場に立っていてもまるで別の世界からこの世界を見下ろしている様で……その感覚は日々強くはっきりとしていくが、俺は今いるこの ” 幸せ ” から離れたくないから必死にここにしがみつく。

     ・・
リーフ様がここにいる限りは。


本来は決して交わるはずのない数々のものと繋がってしまうのは、リーフ様の存在のせい。


どうやらリーフ様は====……に決められた ” 人 ” のプログラムの全てに全く影響されない様子。



それは隠された────────…………。







「 俺、この依頼を受けようと思うんだけど、レオンはどうする? 」


オズオズと差し出された紙には、《 薬草10本納品 》と書かれていて、どうやらこれを達成する事で ” お金 ” が貰えるらしいと気づいた俺は、コクリと頷いた。


最終目標< 結婚 >まで、一体いくつの依頼とやらをこなさねばならないのか……。

見えぬ未来に気持ちはズーーン……と重くなる。


しかし俺はリーフ様に初めて触れた男。

そして愛し合う行為を将来してもいいと軽い口約束ではあるがしてもらえて、今は2人の家まである。


そう考えると多少気持ちは軽くなった。


人以外の生物は、基本自身が作った巣に雌……もしくは雄が入った時点で番になることを受け入れたという事である。


だから今のところ俺が一番。

そのため結婚してもいいと少なくとも思っていてくれているからこそ、リーフ様は俺の作った家に住んでいるはず。

しかし、それは絶対というわけではない……。


そう考えるとまたしても気持ちは沈み、相変わらず忙しい自分の心に内心苦笑いをしてしまった。


実際の俺とリーフ様の関係は ” 奴隷と主人 ” で、それは奴隷陣という絶対に切れない絆によって結ばれているが、リーフ様はその他に ” 結婚 ” という、人としては最強ともいえる絆を誰かと結べる権利を所持しているのだ。


つまり、俺という ” 奴隷 ” を所有しながら ” 妻 ” という名の家族を手にすることもできる。


そうなってしまえば、俺はその ” 家族 ” の絆に負けて、急にいらないと捨てられてしまうかもしれない────そんな心配が頭を過ぎった。


結局俺達は、どうあがいても国が認める様な ” 家族 ” というものにはなれない。


【 身請け契約 】で身分を買って結婚できたとして、” 買う ” というから、恐らく所有物の部類に入るはずなので ” 家族 ” ではない。


” 同じ性を名乗る ” 

それが決して手に入らない俺としては、それを持っている者達が心底羨ましい……。



またしても心はどんどんと暗くなっていくのを感じ、必死にそれを諌めていると、依頼を受けにカウンターに立ったリーフ様が突然俺に言った。


「 レオンは今後どうする?一人がいいかい? 」


” 私達、今後は一人になった方がいいと思うの。 ”



ついさっき思い浮かんだ、女が想い合っていた男に告げたお別れの言葉、まさにそれと同じ事を言われて凍りつく。


俺はその別れを告げられた男と全く同じ事をリーフ様に訴えた。


” なんでそんな事をいうんですか!? ”

” 俺の何が駄目なんですか!? ”

” 一緒じゃなきゃ嫌です!! ”


” 捨てないで…… ”



しかし、そんな必死な訴えを前に、リーフ様は困った様に眉を下げる。


「 じゃあ、一緒にいようね~。 」


それだけ言って俺から視線を逸してしまった。



” 今後も一緒にいようね。



ただし、奴隷と主人としてね。 ”




最後に女の方が言っていた完全なお別れの言葉が頭の中でリーフ様の声に変換されると、たまらず俺はリーフ様の腕を掴み、そのまま無理やり目と目を合わせる。


キョトンと驚いた様な表情を見せるリーフ様。


その瞳の中に、俺に対する気持ちはない様子であった。



捨てられた……。


俺はリーフ様に捨てられたんだ……。



絶望に心は黒く染まっていく。


どうしようどうしようとパニックを起こしながら、何が悪かったのか?どうすれば良かったのか?

それを必死で考えながら、一つの答えに辿り着いた。





” 外 ” を消そう





” 心が狭い男 ” と何をもって誤解されてしまったのかは不明。

俺は買い物をするリーフ様と店員の男が話しても怒ってなどいないし、最大限にそうならないよう細心の注意をしていた。


なのに、結果はこうなった。



なら、その誤解される可能性そのものを潰すしか無い。


” 外 ” を全部消す。


そうしたらもう二度と誤解されることはない。



明確な殺意に気づいた周囲の奴らは動かなくなったが、それでいい。

どうせどこにも逃げ場などないのだから。



これで問題は全て解決。

あぁ、良かった!


ホッとしながらリーフ様を抱きしめる力を強めたその時……なんと "    嬉しい!   "   と言わんばかりにリーフ様に抱きしめ返されたのだ!



俺は有頂天になった。



リーフ様も俺との2人きりの世界を歓迎している!!


嬉しい、嬉しい、嬉しい、嬉しい────!



そう歓喜していたのだが……突如、グイ──ッ!!と、そのまま上に持ち上げられてしまい、驚いて目をパチクリと見開く。




「 大丈夫!!悪い奴らは俺が全員ぶっ倒してあげるから!!


だから一緒にお外に出よう!


まずは近くの森から始めようね。

薬草一緒にさ~がそっ! 」




そう言ってリーフ様は、キラキラ輝く様な瞳を俺に向けてきた。


参ったな……。


心の中でそう呟きながら、優しく揺すられる振動が気持ちよくて……俺の体からは力がふにゃふにゃと抜けていった。

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