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第十三章

486 お金は凄いもの

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( レオン )

腕の中に大人しく収まっている温かくて小さな幸せの塊────愛しい愛しいリーフ様を抱きしめながら俺の心は幸せで一杯になっていた。



お金は凄いモノだ。

あんなもので願いを叶える事ができるなど、思ってもいなかった。


抱き上げたリーフ様の背中を擦りながら ” お金を稼ぐ事 ” の重要性をたった今、俺は嫌というほど理解する。


リーフ様を他の誰にも触れさせぬよう必要な【 専属契約 】と、その身分を買い取り結婚する事ができる【 身請け契約 】


それを交わすにはお金が沢山必要であると教えてもらったわけだが……その稼ぐ方法がイマイチ思いつかなかった。

更に稼ぐためにはリーフ様の傍を離れる時間が必要になってしまうかもしれないと考え、俺は頭を悩ませる。


そうしてどうしたものかと考えていたのだが、リーフ様が冒険者になると言った時は心に一筋の光が差す思いであった。


冒険者とは、頼まれごとを叶える代償にお金を貰う職業の一種。

それならば確実にお金が手に入るし、リーフ様と一緒なら離れなくて済む。


正に俺が理想とするお金の入手法だと思っていたのだが……俺の心の中には一抹の不安も存在していた。

俺はつい今朝に起こった出来事についてフッと思い出す。


今朝は少しだけリーフ様の様子がおかしく、少々心配していたのだが、何故か突然 ” 神に会いに旅にでるのはどうか? ” ────という主旨の言葉を言われて、モヤッとしたものが心に漂った。


別にリーフ様が会いたいというなら喜んで行く。


世界の中心に立つ巨大な光る大樹のあたりにいるようだし、なんならここに無理やり引きずって連れてきたって良い。


だが、” 旅に出よ ” とは……??


なんとなく違和感を感じ ” リーフ様と一緒ですよね? ” と確認すれば "  違う  "  と言うので、モヤモヤは黒いドロドロとなって心に覆い被さった。


"   では行かない。  "  


そんな当たり前の事を言っているのに、更にリーフ様はゴニョゴニョと言いにくそうに言う。
 

” 困る人がいるから……。 ” 


困る人???


サッパリ意味がわからず……しかし何となく自分から離れたいと言われた気がして、ブワッ!と怒りが湧いた。


そもそも、何故俺がそんなどうでもいい存在の為に、リーフ様から離れなければいけないのか??


イライラ。

イライライライラ~……!


収まりそうにない怒りに支配されながら、思うことは──── "   そんな存在の為にリーフ様の傍からどうしても離れなければならないというなら、消えるべきは要らぬ存在の方。 "  と答えを出す。

────いや、根本の目的であるらしき ” 神 ” ごと消えてしまえばいいのか……。



完全な解決法を見つけ、俺はニヤリと笑った。


あの世界の中心に立つデカい木を切ってしまえば、直ぐに ” 人 ” は全滅だ。

” 神 ” を消し、向かうべき場所も消せば、ついでに ” 人 ” も……。


パァ~!と気持ちは明るくなっていき、怒りはすっかり吹き飛んだ。

          ・
俺は消してない、ただ木を切っただけ。

だからリーフ様の言う ” 正しき ” は守っている事になる。


逆に ” 嫌な事を強いるのは悪い事 ” で、嫌だと言っているのに ” 自分達が困るから行け ” と命じる事は悪い事なのだから……別にいいのでは?


そんな悪い事をしてくるモノを排除するため、目的の神と場所を排除し、ついでに ” 人 ” が消えてしまうのは────仕方がない。



俺は満足気に頷きながら ” その通りだ! ” という答えを期待して待っていたのだが……リーフ様は首を振り、"   嫌だ。 "   という意思を示した。



残念……。,


しかし嫌だというならしない。



そのため、その事に関しての興味は一切なくなったが、ならば何故そんな事を言い出したのか?という疑問が頭を過ぎったその時……俺は一つの恐ろしい可能性を思いつき、ゾッ……と背筋を凍らせる。


「 まさか新しい巣でも探しに旅へ……? 」


その口にするのも恐ろしい可能性を口に出してみて、フルっ……と体を震わせた。


俺がいない間に新たに魅力を感じる巣を物色するつもりなのでは……?


そう考えた瞬間、頭に浮かぶのはレガーノで過ごした日々の事────。


黄色いヒヨコもどきはレガーノにいる間中、” レオンの家 ” の周辺に、何かの草やモンスターの毛の様なモコモコした物を集めては、それで巨大な塊を作っていた。


非常に邪魔だったので見かける度に吹き飛ばしていたが、それでもせっせと作っては花で飾り付けまでし始めたため、その日も吹き飛ばしてやろうとレイピアを抜いた瞬間────突如一緒にいたリーフ様にその行動を止められる。


「 ??? 」


疑問に思いながらリーフ様に視線を送ると、彼は人差し指を口に付け、シ~……と言いながら、近くの茂みに俺を連れ込み、その塊を指差す。

大人しくリーフ様の指の先を追いかけると、別のヒヨコもどきがその塊に近づいてきたのに気づいた。


近づいてきたそいつはその塊をしげしげと見つめたりつついたり……。

何をしているのか?と思ったのも束の間、最後はプイッ!!とそっぽを向いてテッテッテ~と去っていってしまった。

それにガガ────ン!!とショックを受けたらしいヒヨコもどきは、その場にバターンと倒れ、ピクピクと震えている。


「 …………。 」


急に倒れてしまった黄色いヒヨコもどきの奇行に、呆れながらジーと眺めていると、リーフ様は心底悲しそうに首を横に振って言った。

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