上 下
495 / 1,315
第十三章

480 腹が減っては

しおりを挟む
( リーフ )

フフフ~ン♬

鼻歌を歌いながら、俺は金貨がもっさりと入った麻袋とリボンでラッピングされた熊のトゲトゲのお手々を持って、マリンさんの店へと向かう。


熊をちょっと倒しただけで100万円!!

これなら目標金額の5000万まで意外と早く届くかもしれないぞ!


計画が一歩どころか1万歩くらい進んだ事が嬉しくて、俺はヤッホ~イ!と飛び上がった。


俺達の住むレガーノでは冒険者ギルドなどの戦闘系機関はなく、勿論素材の買い取りなども一切ない。


とりあえずモンスターを仕留めたら、どうぞどうぞ~と街の人達全員におすそ分け。

余ったら教会に持って行って街のボランティア……というか手が空いている人達が炊き出しを始めて皆で食べるため、こんなにも高額で売れるものというのは初めて知った。


お金を稼ぎたいと言っていたレオンも、これには嬉しかったのかニッコニコと始終機嫌が良い。

俺も負けずにニコニコしながら、金貨の入った袋を振ってチャリチャリという音を楽しんだ。


ご飯を食べ終わったらお金を山分けしよう。

この間レオンの狩ったモンスターの瘴核を色んな人にあげてしまったので、弁償代も兼ねて今回はレオン多めの8対2くらいの割合で山分けかな~?


そんな事を考えながらマリンさんのお店【 森の恵み 】に到着したのだが────なんと『 本日売り切れ! 』と書かれた札が店のドアに掛けられていた。


ガガーン!!

お店が閉まっている事にショックを受け、今日は駄目か……とトボトボ帰ろうとした、その時……。


────バァンっ!!!


大きな音を立ててドアが開け放たれ、そこには今朝別れたばかりの美しさ大爆発の立ち姿……文句のつけようもないほど完璧なむっちんむっちんボディを揺らしたマリンさんが立っていた。


前のめりでドアを開けた事で目の前にババンっ!と現れたお胸の谷間様に、俺の目は釘付け。


そんなエロエロ目線などお構いなしに、マリンさんはズカズカと俺とレオンに近づくと、ポンポンと俺達の肩を叩いた。


「 待ってたんだよ!二人共お疲れさん!

いや~、今日はあんた達がくれた肉でお店は大繁盛!

皆久しぶりにこんなに肉料理食べれたって、泣きながら帰っていったほどさ。

本当にありがとね。


ほらっ!早く中に入ってご飯を食べな。

明日のお弁当も作っておいたからね。 」


至近距離で視覚を破壊せんとする2つのむっちんに、むひょ……?と声を漏らしながら一瞬固まる。

そして、その後に続くふんわりと香る控えめなお花の匂いに導かれる様に、俺は中へ手招きするマリンさんにフラフラ~とおぼつかない足取りでついていった。


お店の中ではこの間と同様、ルルちゃんが各テーブルを拭いて回っていたので、俺が「 こんばんは~。 」と声を掛けると、ルルちゃんはピャッ!!と小さく飛び上がってテーブルの影に隠れてしまう。


あれれ?嫌われている??と疑問に思ったのも束の間。


真っ赤な顔でじーっ……と俺とレオンを交互に見ながら「 こんばんは! 」と元気よくあいさつを返してきたので、どうやら嫌われてはいない様子だ。


多分恥ずかしがり屋さんなんだろうな!


そう思い、俺はニッコリ笑いながら手を振った。

マリンさんはそんな俺達のやり取りをご機嫌で眺めながら、キッチンの方へと行ってしまったので、名残惜しげにその姿を目で追っていると、急に窓をコツコツと叩く音が聞こえて俺とルルちゃんが同時にそちらを振り向く。


すると窓の外には、薄汚れた黄色い色のモワモワがヌッと姿を現し、二人同時にヒエッ!!と驚き飛び上がったのだが────。


「 クエェェ~( ただいま~ )

クピピピ~! ( 中に入れて~! ) 」


その独特の鳴き声からその正体があげ玉だと知り、ホッと胸を撫で下ろした。


だいぶ汚れて埃の塊みたいになってしまったあげ玉は、モソ~と入り口のドアに体をねじ込み中に入ってくると、コロンっと床に転がってしまう。


どうやら森の中で随分とはしゃいで来たようだ。


そしてグ~グ~と鳴ったお腹の音に空腹である事に気づいたルルちゃんは、あげ玉用の豆の詰め合わせを取りにカウンターの奥へ。

そしてバケツ一杯の色とりどりの豆を持ってきてくれた。

すると────……。


「 クピョ────────!!!! 」


揚げ玉が突然歓喜の鳴き声を上げると、凄い勢いでその豆達を食べ始めてしまったため、俺はルルちゃんにペコリと頭を下げて御礼を告げる。

しかしルルちゃんは慌てて首を振り、その豆についての豆知識を教えてくれた。


「 実はこの豆達は ” 魔素のアク ” が強すぎて破棄されてしまう豆なんです。

だから寧ろ処分に困る物なので、本当に気にしないで下さい。 」


「 へぇ~。 」


< 魔素のアク >

魔素を吸い取って育った動物や植物の中にはその吸収率が非常に高く、体内で濃厚に凝縮した塊になってしまう事がある。

それを魔素のアクと呼ぶ。

モンスターなら無問題だが人型種が食べれば具合を壊したり、最悪の場合死んでしまう場合もあるほど濃厚な魔素を体内に持つ個体もあるため注意が必要。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女召喚!……って俺、男〜しかも兵士なんだけど?

バナナ男さん
BL
主人公の現在暮らす世界は化け物に蹂躙された地獄の様な世界であった。 嘘か誠かむかしむかしのお話、世界中を黒い雲が覆い赤い雨が降って生物を化け物に変えたのだとか。 そんな世界で兵士として暮らす大樹は突然見知らぬ場所に召喚され「 世界を救って下さい、聖女様 」と言われるが、俺男〜しかも兵士なんだけど?? 異世界の王子様( 最初結構なクズ、後に溺愛、執着 )✕ 強化された平凡兵士( ノンケ、チート ) 途中少々無理やり的な表現ありなので注意して下さいませm(。≧Д≦。)m 名前はどうか気にしないで下さい・・

勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話

バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん< 山野 石郎 >改め【 イシ 】 世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中・・俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない< 覗く >という能力だけ。 これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。 無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。 不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜

7ズ
BL
 異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。  攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。  そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。  しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。  彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。  どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。  ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。  異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。  果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──? ーーーーーーーーーーーー 狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛  

【 完結 】お嫁取りに行ったのにキラキラ幼馴染にお嫁に取られちゃった俺のお話

バナナ男さん
BL
剣や魔法、モンスターが存在する《 女神様の箱庭 》と呼ばれる世界の中、主人公の< チリル >は、最弱と呼べる男だった。  そんな力なき者には厳しいこの世界では【 嫁取り 】という儀式がある。 そこで男たちはお嫁さんを貰う事ができるのだが……その儀式は非常に過酷なモノ。死人だって出ることもある。 しかし、どうしてもお嫁が欲しいチリルは参加を決めるが、同時にキラキラ幼馴染も参加して……?    完全無欠の美形幼馴染 ✕ 最弱主人公   世界観が独特で、男性にかなり厳しい世界、一夫多妻、卵で人類が産まれるなどなどのぶっ飛び設定がありますのでご注意してくださいm(__)m

奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される。

拍羅
BL
転生したら奴隷商人?!いや、いやそんなことしたらダメでしょ 親の跡を継いで奴隷商人にはなったけど、両親のような残虐な行いはしません!俺は皆んなが行きたい家族の元へと送り出します。 え、新しく来た彼が全く理想の家族像を教えてくれないんだけど…。ちょっと、待ってその貴族の格好した人たち誰でしょうか ※独自の世界線

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

処理中です...