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第十二章

473 自分で選ぶ、大事!

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( エイミ )




「 ・・ははっ!そうだよなぁ~?

確かに俺は先輩冒険者として下の新人冒険者にも指導してやんねぇといけねえよな?



じゃあ~その通りに俺が・・ーーー教えてやるよっ!! 」



そう言い終わった瞬間に、凄まじいスピードでナックルは目の前にいるリーフ君に向かって拳を振る!

そのスピードと威力は新人など一撃で即死するレベル、それに対しザップルさんが直ぐに動こうとしたのだが、それより早くーーーー・・




ヒョイッ



リーフ君は揺れる猫じゃらしの様に軽く顔を傾けてそのパンチを避けると、一瞬で距離を詰め、そのままナックルの鳩尾に思い切りパンチを当てた。


腹から受けたパンチは背中まで衝撃は伝わり、ナックルの体が上へと持ち上がると・・

「 ・・・!!!がっ・・はっ!!! 」

ーーーと息の詰まるようなうめき声がヤツの口から聞こえた。



その衝撃に浮き上がった体は重力に引っ張られ、当然の如く下へーー

そして膝から崩れ去ろうとするがそれを手助けするとばかりに、リーフ君は大きく振り上げた右足でナックルの頭を床へと叩きつける!!


その衝撃で床は凹み、しこたま頭に打撃をうけたナックルは白目を剥いて完全に沈黙ーーー


床に伏せたまま一切動かなくなってしまったことからどうやら気絶したらしい。



目玉がポーンと至るところで飛び出し、私もザップルさんも同じく飛び出た目玉でリーフ君を見つめていたが、リーフ君はやはりマイペースにプンプンと怒りながら気絶したナックルに向かって言った。



「 結構だよ。

俺は嘘を言って意地悪する君が好きじゃない。

教えてもらう先輩は自分で選ぶさ。 」



シーンとしていたその場だったが、リーフ君がそう言い放った瞬間ーーーワッ!!と割れるような拍手と歓声が飛び交う。


ザップルさんもムズムズ~と喜びを我慢できない!といった様な表情でリーフ君に走り寄り、パシパシッとその背を叩きながら、ニカッと物凄く嬉しそうな笑みを浮かべた。



「 リーフ!!お、お前!!凄く強かったんだな!本当に驚いたぞ!?

てっきり俺はレオンの方が戦闘担当でお前はサポーターかと思っていたが・・逆だったのか!


いや~凶暴なモンスターが現れたって聞いて心配してたが、これなら隙を見て逃げるのも問題ないな。


こりゃ~とんでもない新人が現れたもんだ!そうだろ?皆!

なんたってCクラス冒険者のナックル様を『 一撃で! 』ぶっ飛ばしちまった『 新人冒険者の子供! 』だからな~!


そんな子供にぶっ飛ばされた~ナックル様が王都に戻ったところで仕事がはたしてあれば良いけどな~!! 」



はっはっはっーー!!と高笑いしながら、気絶したナックルとそれを呆然と見下ろしているその仲間達に向かって言い放てば今まで散々迷惑被ってきた周りもそれに便乗しだす。


「 よっ!油断していたとはいえ子供に負けたCクラス様ー!! 」


「 ひゃっひゃっひゃっ!!こりゃ~当分ここで悪させずに真面目に働くしかねぇな! 」


「 冒険者にそんな噂が広がったらおしまいだねぇ!

こりゃ~汚名返上しないと帰れないんじゃないのか~い? 」


などなどアチラこちらから声が上がり、腕を組んで踊りだす人達まで・・



お調子者達~と呆れるが、犠牲者なし、更にずっとぶっ飛ばしたかったナックルの気絶した姿に、何より名だたる冒険者でもなければ巨大なクラスに敗れた・・ではなく、まだ冒険者になりたての子供に負けたという事実に、その喜ぶ気持ちは良~く分かる。


冒険者に限る事ではないが戦闘職は基本実力が重んじられる世界であり、それに伴って実績というものをとても重要視している。


要は、パーティーやクラスで手にした手柄はその組織の影響力をそのまま反映され、それにより依頼を出す際の指名や報酬などなどが決定されるわけだが、

新人に負けたなどの ” 実績 ” がプラスされてしまえば、一気にその権威は失墜してしまう。


そうなれば、汚名返上とばかりに凄い手柄でも立てなければ王都に戻ったところで仕事など勿論回って来なくなる。


リーフ君はいまのところどのクラスにも所属していないため、クラス同士の争いにすることも出来ず、仮に仕返しとばかりにリーフ君に戦いを挑んで勝ったところで ” 新人冒険者に勝った ” ・・という全くもって実績とはいえない出来事がプラスされるだけ。



まさに最高のシチュエーションでナックルをぶっ飛ばしてくれたのだ!


私もよっしゃっ!!と思わずガッツポーズ。


それと同時に、リーフくんの予想を遥かに越えた強さに少々の驚きが湧き上がる。


Cクラス冒険者が反撃も出来ずにあっさりやられてしまったわけだが、派手な動きなど微塵もなくまるで静かに流れる小川の様な・・一切の無駄のない動きであった。


その動きからも相当の実力が伺える。


私は、なんだか良く分からないけどとりあえず便乗!とばかりに手を叩きヤッホ~イ!と楽しそうに笑うリーフ君に視線を向ける。


これほどの実力があればナックル達が下手に襲いかかっても敵わないだろう。

この絶望的な状況を吹き飛ばすような人材が、最高のタイミングで来てくれた事により暗くなっていた心がパァッと照らされる様だ。


私も周り同様、拍手をしてその喜びに交じると、急にリーフ君が、あっ!と何かに気づいた様に叫んだ。


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