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第十二章
470 事件の匂い!
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( エイミ )
ザップルさんとナックルの間に、全く気配を感じることなく一人の白髪と長い白ひげを生やした老人が立つ。
背丈は準成人前の子供ほど。
チマっとしていて更に笑っている表情はまるでイタズラを成功させた少年の様にも見えるが、年齢はバッチリ分かるような外見をしているため一言で言えば、 ” ひょうきんな近所のおじいちゃん ” ……だろうか?
そんな隙しかなさそうな人物ではあるが、それなりの実力がある者達からすれば ” 隙など1mmもない ” と恐怖するこの方こそ────……。
冒険者ギルド、グリモア支部長
< ヘンドリク >
元Sランク冒険者という肩書きを持ち、その実力は折り紙つき。
現在はたった一人でモンスター増加の原因を突き止めるため森に調査に行ってくれている。
そして今がその調査から約一週間ぶりの帰還であった。
「「 ヘンドリク様!! 」」
ザップルさんと私が同時に叫べば、ヘンドリク様はフォッフォっと朗らかに笑いながらギロリと睨みつけてくるナックルに向かって話しかけた。
「 ナックルよ。
お前さんの行動はち~とばかし目に余るぞい。
そんなに溜まっているならソロでモンスターでも狩ってきたらどうじゃ?
た~くさん依頼があるぞい。 」
ヘンドリク様がニヤつきながら、依頼書の束をバサバサと見せつけるように振ると、ナックルは忌々しいと言わんばかりの表情と態度を隠す事なく見せる。
「 ……これはこれは、支部長ヘンドリク様ではありませんかぁ~。
随分とお早いお帰りで。 」
ヘンドリク様は、そんな嫌な態度にも全く気にしてなさそうに「 儂って優秀なんで~。 」とのほほんと返す。
その事で更にナックルの怒りを誘ったが、ヘンドリク様はそれを一切無視してザップルさんと私に話しかけてきた。
「 儂がいない間、ベテラン組には苦労を掛けるのぉ~。
本当にすまん。
更に迷惑ついでにこれから少しばかり老人の話し相手につきあってくれぬか?
ザップル、エイミよ。 」
私とザップルさんはそれに「 はい。 」と答え、支部長室へ向かおうと踵を返した瞬間────……。
バア────ンッ!!!!
大きな音を立てて入り口の扉が開かれ、3人の男達がギルド内に雪崩込んできた。
それに驚く周囲を他所に、その男達は興奮した状態でナックルに近づき話しかける。
「 ナックルの旦那!< モーニング・スターベア >です!
東門にいるから今がチャンスっすよ!
人数をかき集めて行きやしょう!! 」
そのモンスター出現の言葉を聞いて場は凍りついた。
< モーニング・スターベア >はとても凶暴で、目に付く生き物を殺しては食べて暴れる別名 ” 狂食熊 ” と呼ばれているCランクモンスター。
一度暴れ出せば大人しくなるのは、獲物と決めたターゲットを食べている間だけなので、目撃され次第緊急の討伐依頼が各戦闘機関に通達される。
獲物の中でも特に " 人 " が大好物の彼らは、それを食べている間はご機嫌で大人しくなるため、その性質を利用し討伐のために悪事を働く者が多い事でも有名なモンスターでもある。
そのモンスターの名前の後に続く ” 今がチャンス ” という言葉────。
その意味が頭の中にスルッと入ってきたその時、同時にある可能性に行き着いたらしいザップルさんが、凄まじい殺気を放つ。
「 おい、お前ら、今がチャンスとはどういう事だ?────答えろ。 」
その殺気に当てられ、駆け込んできた三人の男達の表情はヒクッと引きつった。
しかしその殺気からかばうようにナックルが前に立ちニヤつく顔を見せれば、3人の男達は途端に調子を取り戻しヘラヘラと笑いながら説明を始める。
「 いや~、俺達受注した依頼からの帰還の最中だったんだが、そこでモーニング・スターベアが新人っぽい2人の奴らを殺して食べてるのを見かけちまってよ!
そんであわてて知らせに来たっつーわけだ! 」
「 そうそう!そいつら一目見て即死してたから仕方ねぇだろ?
このまま放置すりゃ~また犠牲者が出ちまうと思って、俺達急いで知らせに来たんだぜ?!
そりゃ、生きていそうなら俺達だって命がけで助けたさ。 」
「 皆のためを思って報告しに来たのに、その態度はねぇんじゃね~の? 」
3人の男たちはまるで三文役者の様なわざとらしい態度で口々にそう言い放つ。
それに対しナックルは片手で目元を覆い、わざとらしい鳴き真似を始めた。
「 くぅぅ~お前たちはなんて良い奴らなんだ!泣かせるぜ~! 」
お~いおいと大袈裟に泣き叫んだ後、覆った手の平の隙間から片目を出してニヤッと笑う。
あからさまな態度に周りにいる冒険者の何人かは、怒り心頭と言わんばかりに体を動かすが、近くにいる他の冒険者達が首を振り止めた。
ザップルさんも私もあまりの事に言葉無く手を握りしめると、それを見て更に笑みを深めたナックルはまるで舞台の役者の様に両手を大きく広げる。
「 ウチの奴らはぁ~この通り正義感溢れるい~い奴らなんですよ!
他のクラスの冒険者の心配までして……ほ~んと!最高の仲間っすわ~。
早速今から人をかき集めて討伐してきますねぇ?
2人の冒険者達の敵は俺達が、必ずや!とってご覧にいれましょ~。 」
ザップルさんは直ぐにザッ!と周りを見渡し、それぞれ自身のパーティーメンバーが欠けていないかを、その場の全員とアイコンタクトで確認したが全員が首を振った。
どうやらザップルさんのクラス内のメンバーではなさそう。
では、犠牲になったのはまだクラスに参入していない新人、もしくはソロの冒険者ということになるが……ソロならそう簡単に騙せれる様な失敗はしないため恐らくは新人……。
そして現在まだ帰ってきてない新人といえば────……。
ザップルさんとナックルの間に、全く気配を感じることなく一人の白髪と長い白ひげを生やした老人が立つ。
背丈は準成人前の子供ほど。
チマっとしていて更に笑っている表情はまるでイタズラを成功させた少年の様にも見えるが、年齢はバッチリ分かるような外見をしているため一言で言えば、 ” ひょうきんな近所のおじいちゃん ” ……だろうか?
そんな隙しかなさそうな人物ではあるが、それなりの実力がある者達からすれば ” 隙など1mmもない ” と恐怖するこの方こそ────……。
冒険者ギルド、グリモア支部長
< ヘンドリク >
元Sランク冒険者という肩書きを持ち、その実力は折り紙つき。
現在はたった一人でモンスター増加の原因を突き止めるため森に調査に行ってくれている。
そして今がその調査から約一週間ぶりの帰還であった。
「「 ヘンドリク様!! 」」
ザップルさんと私が同時に叫べば、ヘンドリク様はフォッフォっと朗らかに笑いながらギロリと睨みつけてくるナックルに向かって話しかけた。
「 ナックルよ。
お前さんの行動はち~とばかし目に余るぞい。
そんなに溜まっているならソロでモンスターでも狩ってきたらどうじゃ?
た~くさん依頼があるぞい。 」
ヘンドリク様がニヤつきながら、依頼書の束をバサバサと見せつけるように振ると、ナックルは忌々しいと言わんばかりの表情と態度を隠す事なく見せる。
「 ……これはこれは、支部長ヘンドリク様ではありませんかぁ~。
随分とお早いお帰りで。 」
ヘンドリク様は、そんな嫌な態度にも全く気にしてなさそうに「 儂って優秀なんで~。 」とのほほんと返す。
その事で更にナックルの怒りを誘ったが、ヘンドリク様はそれを一切無視してザップルさんと私に話しかけてきた。
「 儂がいない間、ベテラン組には苦労を掛けるのぉ~。
本当にすまん。
更に迷惑ついでにこれから少しばかり老人の話し相手につきあってくれぬか?
ザップル、エイミよ。 」
私とザップルさんはそれに「 はい。 」と答え、支部長室へ向かおうと踵を返した瞬間────……。
バア────ンッ!!!!
大きな音を立てて入り口の扉が開かれ、3人の男達がギルド内に雪崩込んできた。
それに驚く周囲を他所に、その男達は興奮した状態でナックルに近づき話しかける。
「 ナックルの旦那!< モーニング・スターベア >です!
東門にいるから今がチャンスっすよ!
人数をかき集めて行きやしょう!! 」
そのモンスター出現の言葉を聞いて場は凍りついた。
< モーニング・スターベア >はとても凶暴で、目に付く生き物を殺しては食べて暴れる別名 ” 狂食熊 ” と呼ばれているCランクモンスター。
一度暴れ出せば大人しくなるのは、獲物と決めたターゲットを食べている間だけなので、目撃され次第緊急の討伐依頼が各戦闘機関に通達される。
獲物の中でも特に " 人 " が大好物の彼らは、それを食べている間はご機嫌で大人しくなるため、その性質を利用し討伐のために悪事を働く者が多い事でも有名なモンスターでもある。
そのモンスターの名前の後に続く ” 今がチャンス ” という言葉────。
その意味が頭の中にスルッと入ってきたその時、同時にある可能性に行き着いたらしいザップルさんが、凄まじい殺気を放つ。
「 おい、お前ら、今がチャンスとはどういう事だ?────答えろ。 」
その殺気に当てられ、駆け込んできた三人の男達の表情はヒクッと引きつった。
しかしその殺気からかばうようにナックルが前に立ちニヤつく顔を見せれば、3人の男達は途端に調子を取り戻しヘラヘラと笑いながら説明を始める。
「 いや~、俺達受注した依頼からの帰還の最中だったんだが、そこでモーニング・スターベアが新人っぽい2人の奴らを殺して食べてるのを見かけちまってよ!
そんであわてて知らせに来たっつーわけだ! 」
「 そうそう!そいつら一目見て即死してたから仕方ねぇだろ?
このまま放置すりゃ~また犠牲者が出ちまうと思って、俺達急いで知らせに来たんだぜ?!
そりゃ、生きていそうなら俺達だって命がけで助けたさ。 」
「 皆のためを思って報告しに来たのに、その態度はねぇんじゃね~の? 」
3人の男たちはまるで三文役者の様なわざとらしい態度で口々にそう言い放つ。
それに対しナックルは片手で目元を覆い、わざとらしい鳴き真似を始めた。
「 くぅぅ~お前たちはなんて良い奴らなんだ!泣かせるぜ~! 」
お~いおいと大袈裟に泣き叫んだ後、覆った手の平の隙間から片目を出してニヤッと笑う。
あからさまな態度に周りにいる冒険者の何人かは、怒り心頭と言わんばかりに体を動かすが、近くにいる他の冒険者達が首を振り止めた。
ザップルさんも私もあまりの事に言葉無く手を握りしめると、それを見て更に笑みを深めたナックルはまるで舞台の役者の様に両手を大きく広げる。
「 ウチの奴らはぁ~この通り正義感溢れるい~い奴らなんですよ!
他のクラスの冒険者の心配までして……ほ~んと!最高の仲間っすわ~。
早速今から人をかき集めて討伐してきますねぇ?
2人の冒険者達の敵は俺達が、必ずや!とってご覧にいれましょ~。 」
ザップルさんは直ぐにザッ!と周りを見渡し、それぞれ自身のパーティーメンバーが欠けていないかを、その場の全員とアイコンタクトで確認したが全員が首を振った。
どうやらザップルさんのクラス内のメンバーではなさそう。
では、犠牲になったのはまだクラスに参入していない新人、もしくはソロの冒険者ということになるが……ソロならそう簡単に騙せれる様な失敗はしないため恐らくは新人……。
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