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第十二章

463 パーティー

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( リーフ )

レオンがピクリとわずかに動いたのに気づいたが、そんな事は気にせず、俺はレオンの体を抱きしめたまま力一杯上に持ち上げ、大声で叫んだ。


「 大丈夫!!悪い奴らは俺が全員ぶっ倒してあげるから!!


だから一緒にお外に出よう!


まずは近くの森から始めようね。

薬草一緒にさ~がそっ! 」


口をわずかに開け、固まってしまったレオンを持ち上げたまま右へ左へと小さく揺らしてあやして上げれば、レオンの体はゆっくりと弛緩していき最後はフニャッフニャになる。


よしっ!なんか大丈夫っぽい。


そう判断した俺は、そのまま覆いかぶさるほどの大きさのレオンを肩にフンッ!と担ぐと、その姿は運動会の弾幕を背負う応援団長の様になった。


レオンは黒くて大きな弾幕の様。

こんなに大きく育ってくれて俺は嬉しい!


ずっしり重いレオンの身体に、思わずニッコリしてしまう。


そしてベローンと大人しく垂れ下がるレオンを担いだまま、青ざめて固まってしまっていたギルドの受付の男の人へ視線を移した。


「 じゃあ、俺とレオンでパーティー登録お願いします! 」


キッパリとお願いすると、その受付員の人は、ブルブル震える手で一枚の紙を取り出す。


「 で……では……パーティー名をお願いします……。 」


そう言ってきたので俺はピタリと止まった。


オヨヨ??パーティー名とな?


それを聞いて思いだしたのは ” 春の三毛猫 ” という名前だ。


パーティー名とは、要は家族の名前みたいなもので、このメンバーでウチの家族ですよ~と周りに認知してもらうものであると思われる。


< 〇〇さんの家の△△さん >的なモノ。


これは一人で決めるわけにはいかないな~。


俺はグテ~としているレオンを慎重に隣に下ろし、まだぼんやりしているレオンに聞いてみた。


「 レオン、パーティー名どうしようか?

あ、パーティー名っているのは、 ” 俺達家族ですよ~ ” って皆に知らせるものなんだ。

俺とレオンのファミリーネームってやつだよ。迷うね~。 」


「 か……家族っ!! 」


すると、それを聞いたレオンは弛緩していた体をまたしてもガチンっと硬直させて静止してしまった。


レオンは何かに名前をつけるという行為自体が苦手なため、パーティー名という非常に抽象的な言葉に対し多分パニックを起こした模様。


分かる分かる~!俺も超苦手だからさ!


前世を含めた人生の中、命名する機会があった思い出を振り返り、ハハッ……と乾いた笑いを漏らす。


なんてったってレオンを最初見た時は ” クロ ” 

昔孤児院に居着いてしまった白猫は ” ご飯 ” 

ヤギは ” メェ~ちゃん ” 

鳥は一律 ” ピーちゃん ”


俺の実力ではこの程度。


そんなセンス皆無な俺にとっても、パーティー名という抽象的なモノに対し、命名する事は非常にハイレベル……。

どうしたもんか……。

困りながら考えていたら、マリンさんに貰ったお昼のお弁当を思い出した。


「 あ、じゃあ『 肉巻き定食 』でお願いします。 」


「 はっ??……えっ?肉?? 」


キョトンとする受付の男の人をよそに、薄い花びらの様なお肉がバター芋の周りにクルクルと巻かれ、更にカリッと焼かれたマリンさんお手製定食、通称『 肉巻き定食 』を思い出しジュルリとヨダレが口の中で溢れる。


アントンの料理と甲乙つけがたい!

俺はどっちも大好きー!


アントンの特性ハンバーグの味も思い出し、お口の中が大洪水になっていると、受付の男の人がオズオズと話しかけてきた。


「 あ、あの~……本当にそれでいいんですか?

パーティー名は、もっとこう……< 龍の息吹! >とか、< 紅の不死鳥! >とか……。

多少名前に威圧感があるものの方が後々良いと思いますよ。

パーティー名で判断されるお貴族様も多いので……。 」


今度は俺がキョトンとした表情を浮かべた後、言われた言葉を反芻しながら考え、なるほど~と納得した。


多分お貴族様が指名依頼を出す時は、そういった強そうな名前の方が目に付きやすいということだろう。

確かに同じレベルなら大体の人はインパクトがある名前の方を選ぶ。


なるほど~。

インパクトか……。


受付の男性の言う通り、確かにインパクトがある名前にすべきだなと考えた。

最近一番インパクトを感じた出来事はなっだっけ??


  頭の中の記憶をほじくり出しほじくり出し────……ピンッ!とそれに該当する記憶を思い出す。


「 じゃあ、『 あげ玉の寝姿 』でお願いします! 」


「 はぁ???? 」


多分それが今年のNO1インパクト賞。

あげ玉の寝る時の姿は。


改めてそのびっくりな寝姿を思い出し、大きく頷いた。


なんてったって、スゥ……と眠ったと思ったら急に巨大な黄色い毛玉に早変わり!

本当にびっくりしたもんだ。


運動会で使いた~い!と、頭の中では一人運動会が始まってしまう

大好きな大玉転がしを思い浮かべながら更にニコニコしていると、受付の男の人は一瞬無言になった後、控えめな笑顔を見せてくれた。


「 では、『 肉巻き定食 』にしましょう。 」


受付の男性はそう言って、素早く俺達の冒険者証に魔力を纏ったペンで何かを書いてそれを返してくる。

その返された冒険者証を改めて確認すると、なんと自分の名前の上にパーティー名【 肉巻き定食 】と新たに追加されているではないか。


おお~!


初めてのパーティーなるものに興奮していると、その間に受付さんは直ぐに俺達が持ってきた依頼書の方もパパッと手続きし『 受注完了 』のハンコが押された依頼書を渡してくれた。


「 ありがとうございま~す! 」


御礼を告げて、さぁ。冒険者の第一歩!

意気揚々とクルッと後ろを振り返ると────……すぐ後ろにズラッと並んでいたはずの人達はいなくなっていた。


「 …………?? 」


あれ?と不思議に思いながら視線を更に後ろの方へと移していくと、遥か後方の方でゴチャ!と冒険者達が固まっている。

そしてそれは両隣の人達も同じで、気がつけば俺とレオンの周りは人っ子一人いない無人島に……。


お顔は真っ青、汗ビャービャーで引きつった表情を浮かべたままレオンを凝視している周りの人達を見て、俺は、うん……と大きく頷いた。
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